ユーザビリティ指標で UX デザインの成功を測る | アドビ UX 道場 #UXDojo

Tracy Dai によるイラストレーション

デバイスや、その上で動作するアプリケーションは、人々が遭遇する問題を解決するためのものです。人とテクノロジーを繋ぐ存在として、デザインは、人々が有意義な使い方を見出せるものであることが重要です。

デザインの有用性を把握すれば、デザインの出来栄えを評価するのに役立ちます。しかし、ユーザビリティテストにコストがかかることを理由にして、アプリやサービスのユーザビリティ測定に投資をしない組織は多数存在します。

もし、ユーザー調査の予算を確保できたなら、ユーザビリティが与える影響について、より深い洞察を得られます。この記事は、ユーザビリティテストがどのようなもので、そこから得られるユーザビリティ指標が、有意義で有用なデザインを作成する上で、どのように役立つのかを探ります。

ユーザビリティの測定

下のリストは、特定の状況で特定のアプリあるいはサービスを操作するユーザーにとってのユーザビリティを評価する際に、指針となる目標です。有効性、効率性、満足度に関する成功の基準を作成することにより、アプリまたはサービスのユーザビリティを測定できます。

もし、有効性、効率性、満足度の目標を達成できなければ、ユーザビリティの目標にも、ユーザーの目標にも、到達することはできません。

ユーザビリティフレームワーク

ユーザビリティフレームワーク 出典: UI Designer

ユーザビリティを測定するべき理由

ユーザビリティは、アプリケーションをあらゆる面から下支えします。もしアプリケーションのユーザビリティが不十分なら、ユーザーはそれを適切に操作できないでしょう。もし、容易に必要な機能を発見でき、試してみることなく機能を理解でき、タスクを素早く苦労せずに達成できたなら、ユーザーは何度も戻ってくるでしょう。ユーザビリティを測定すれば、アプリの何がうまくいっていないのかを突き止めて、デザインを改善することができます。

理想的なユーザビリティは、相手によって異なります。アプリケーションをデザインするとき、デザイナーは、最終的に使用することになる複数のタイプの人々を考慮することになります。それぞれのグループは、固有の振る舞い、属性、課題、目標を持っています。各フォーカスグループの特徴を特定するには、ペルソナを作成し、快適な体験をつくりだすために有効なユーザビリティ指標を検討します。

ペルソナを念頭に置いて、ユーザビリティテストと指標の評価を行えば、デザインの使いやすさを検証できます。また、以下のことも可能です。

5 つのユーザビリティ指標とその測定方法

適切なユーザビリティ指標を選択することは時に困難です。ここでは、デザインを改善するために使用できる 5 つの代表的な指標を紹介します。これらの指標は、記事の最初に紹介した 3 つの目標を達成できているかを知るのに役立ちます。

1: タスク時間

「タスク時間」は、アプリやサービスの効率と生産性を測定します。アクションの完了にユーザーが長い時間を費やす場合、インタラクションが適切にデザインされていないことを意味します。タスク時間は、デザインの有効性を検討する際の重要な要素です。たとえば、必要な機能が簡単に見つかれば、ユーザーの満足度は高くなります。

測定方法:ユーザー/フォーカスグループが完了すべきシナリオを作成し、タスクの完了に費やされた時間を監視します。時間の記録は、秒単位で行います。テスト後に被験者に質問すると、時間を取られた課題を特定できます。

以下は記録すべき項目です。

タスク時間は、タスク完了にかかる時間を測定します。

タスク時間は、タスク完了にかかる時間を測定する 出典: Unsplash

考慮点:タスク時間は相対的な値です。テストの環境次第では、被験者の注意をそらす存在が、タスクの完了を妨げる可能性があります。

テスト例:ウェブサイト上の CTA ボタンを見つける - 10 人のユーザーに、CTA ボタンの場所を見つけるように依頼します。各参加者がタスクに費やした時間を記録し、作業完了にかかった平均時間を求めます。平均時間が想定よりも長い場合、デザイナーは情報階層を考慮しながら、改善案を検討する必要があります。

2: エラー

ユーザビリティ指標の「エラー」は、ユーザーが目標を達成しようとしているときにどこで問題に出会うのか、そしてどのようにそのトラブルに巻き込まれるのかを理解するのに役立ちます。エラーは、ユーザーの満足度を低下させ、アプリを再び使用する意欲を妨げます。操作中に犯したエラーの数は、ユーザーにとっての実際の使いやすさを明らかにします。

測定方法:ユーザーが実行すべきタスクを作成します。ユーザーのすべてのミス、意図されていない行動、見落としがあれば記録します。

操作エラーがほとんど発生しないアプリケーションは、ユーザビリティが高いと考えられます。

操作時のエラーがほとんど発生しないアプリケーションは、ユーザビリティが高いとみなされる 出典: Unsplash

考慮点:ユーザーが出会うエラーの種類を分類できると、より効果的に対策ができるようになります。エラーの検出と防止は、常に優先的に考慮されるべき項目です。

テスト例:オンラインで請求書の支払い - 現実のシナリオを模倣します。ユーザーにタスクを実行させて、オンライン請求書支払いを成功させるという目標を達成させます。ユーザーがアプリを操作する様子を観察し、ミスがあったら、犯したミスと、ミスに至った経緯を記録します。ユーザーが多くのミスを犯している場合は、ユーザビリティの問題をより注意深く調査します。

3:達成率

「達成率」は、重要でわかりやすいユーザビリティ指標です。データは、合格/不合格のどちらかであるため、理解することが容易です。

測定方法:成功の判定基準を事前定義したテストを作成します。ワイヤーフレームの段階でテストを実施すると、テストの結果を最大限に活用できます。

高い達成率は、ユーザーの満足度が高いことを意味します。

高い達成率は、ユーザーの満足度の高差を示唆する 出典: Unsplash

考慮点:達成率には、使用状況が大きく影響します。ユーザーは、失敗しやすい状況において、高い達成率を期待する傾向があります。

4: ユーザビリティに起因する問題

この指標は、操作中のどの段階でも発生する、ユーザビリティに起因する問題が対象です。具体的には、ユーザーの次のような行為です。

測定方法:それぞれのテストグループでユーザビリティに起因する問題が発生した数を把握します。また、最も多くの問題が発生したグループを特定します。インタビューを実施し、個々の問題が発生した理由を尋ねて、ユーザビリティの問題を明確に把握します。

ユーザビリティは、楽しい体験を生み出す鍵です。

ユーザビリティは楽しい体験を生み出すために重要 出典: Unsplash

考慮点:ユーザビリティに起因する問題はシナリオごとに異なります。デザイナーは、テスト中に発生するすべてのユーザビリティの問題を注意深く観察して、テスト後に、ユーザーを悩ませたポイントを追跡する必要があります。

5: タスク満足度

「タスク満足度」は、タスク達成の成否に関わらず、ユーザーがユーザビリティについてフィードバックすることを可能にする指標です。

測定方法:ユーザーが作業を終了したら、タスクの難易度に関連するいくつかの質問をします。ユーザーがそうした質問に慣れていることを事前に確認しておきましょう。

タスクの満足度がユーザーを維持する。

タスクの満足度はユーザーの維持につながる 出典: Dribbble

考慮点:対象が数百人の場合は一度にインタビューすることが困難ですが、その場合は、操作の最後にフィードバックを集める画面を作成するという方法があります。このアプローチは、消費者向けのアプリやサービスに最も効果的で、満足度を以下の候補から選択するよう依頼します。

ユーザーのアプリケーションの満足度を知ると、タスクの体験についてフォーカスグループが持つ感情についての洞察を得られます。

2 つのデザインを比較する

ユーザビリティテスト中に 2 つの異なるデザインを比較すると、アプリやサービスの定性的な特徴を特定し、全体的な体験を向上させるのに役立ちます。これを行うには、特定のアプリケーションを選択し、2 つ目のデザインを作成し、ユーザーが完了するいくつかのタスクを設定してそれぞれのデザインでテストを行い、両者の結果を比較します。

ただし、複数のデザインでテストしすぎないように注意しましょう。それぞれのデザインのパフォーマンスを比較するために、ユーザーがタスクを実行できる状態を再現するのは、とても手間のかかる行為です。

おわりに

体系的なプロセスを通じて、アプリケーションのユーザビリティを改善することは常に重要です。また、ユーザビリティを可能な限り高めるために、デザインには、常に段階的な改善が行われるべきです。

ユーザビリティを測定すると、追求するべき数多くの改善点を理解できるようになります。ユーザービリティテストを通じ、定性的なユーザビリティ指標をデザインプロセスに導入すれば、魅力的なアプリケーションを作成するために何が必要かをよりよく理解できます。

データは、私たちの周りで起こっているすべてを教えてくれたりはしません。それでも、デザイナーは、常にデザインを定性的および定量的に評価しユーザビリティを検証するための、データを収集する必要があります。デザイナーが常に問うべき最も重要な質問は、「どのように?」よりは「なぜ?」です。ユーザビリティフレームワークは、ユーザーの行為の背後にある理由を知るための素晴らしいアプローチです。

この記事は Usability Metrics: Measuring UX Design Success (著者: Muditha Batagoda)の抄訳です