サイキックウェーブ:ウェルネスにかかわる表現を広げる - Adobe Stock ビジュアルトレンド2023
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ファンタジーの世界観を持つビデオゲームやVRなどを想起させる、ピンクやブルー、パープル(特にデジタルラベンダー)といったサイケデリックなパステルカラーと宝石のようなきらめき―このトレンドの魅力は、大胆でパンチの効いたビジュアルの魅力と精神性の探求の両方を表現している点にあります。
疲れ果て、神経がすり減り、先が見えない時代を生きる私たちの多くは「波動」だけを頼りに未来に向かっています。実際、Pinterestによると、「higher vibration(波動を高める)」の検索数は2019年末から2022年にかけて145%増加したといいます。「Psychic Waves(サイキックウェーブ)」のトレンドには、ウェルネスやスピリチュアルな刺激、そして新たな可能性を切り開くような試みを求める人々の心理が凝縮されています。
クリエイティブトレンドの進化
2022年のトレンド予測では「Otherworldly Visions(別世界のビジョン)」と「The Centered Self(自分自身を中心に)」を取り上げました。そして今、これらが融合し、活力に満ちたオーラでヒーリングとウェルネスを高めるというハイブリッドな美学へと進化しました。ウェルネスやスピリチュアリティに関わるビジュアルのトレンドは、ミニマルでナチュラルな印象になりがちです。一方で「サイキックウェーブ」は、「今ここ」にある個人のパワーと、拡張しさまざまな要素を取り込んだ未来の可能性を統合しています。そのため、進化した美的感覚を持つ身近なコンテンツに最適なモチーフとなっています。例えば、『アバター2』の続編や、マイクロドージング(幻覚剤の超微量摂取)やサイケデリックウォーターのように心を開きウェルネスを追求するアプローチ、thatgamecompanyの『Flower』のようなシンプルで気分が明るくなるようなイメージ主体のビデオゲームなどがあります。
このトレンドにマッチするコンテンツは、メンタルヘルスやヒーリング、息をのむような自然の力、自分を癒す方法、心を落ち着かせる空間や場所の構築といったコンセプトに合うものではありますが、そうした概念を、何にも縛られず、視覚に訴えかける見事なビジュアルで表現します。例えば、オーロラは単なる自然現象かもしれませんが、実際に目の当たりにすると完全に超越したものに感じられます。そして星々の写真は、デジタル処理によってさらに別世界のものになります。「サイキックウェーブ」はこうしたエネルギーをとらえ、自然の治癒力や自己発見について、現実と想像のビジョンを示そうとするものです。
クレジット:(左)Adobe Stock / Cavan Images、(右)Adobe Stock / Eliot Wyatt
カードに相談する
「サイキックウェーブ」の世界観にはさまざまな宗教的慣行が存在しますが、精神の導き役として、タロットカードの人気が高まっています。タロットカードは、このトレンドの美学にぴったりのモチーフです。特に人気なものとしては、Kim Krausの「The Wild Unknown」シリーズや、Biddy Tarotがリアルな場やオンラインで提供する占いツールやワークショップ、昔からの定番であるRider Waiteのタロットデッキなどがあります。また、タロットカードには美術作品としての面もあり、例えばシュルレアリスムの申し子であるSalvador Dalíがデザインした1984年のデッキや、イラストレーターのMike Willcoxによるアールデコに着想を得た見事なエディションがあります。また、セルフケアをテーマに活動する漫画家のAdam JKが、光沢のある明るいピンク色のシンプルなタロットデッキを発売する予定です。
クレジット:Adobe Stock / micaela
実践的なガイダンス、直感的な解釈、多層的な象徴的意味をあわせ持つタロットカードは、「サイキックウェーブ」に自然にフィットするものであり、カードを使ったほかの自己啓発商品に興味を持つきっかけとして、よい出発点となります。宗教や宗教色のない慣行に対する伝統的な信仰は縮小の一途をたどっており、その余白で、占星術やタロット占いのような代替的なスピリチュアル伝統が盛り上がりを見せています。占星術は世界全体で22億ドル規模の産業であり、アメリカ人の4人に1人、30歳以下では37%もの人々が占星術を信じているとされています。「サイキックウェーブ」は、秘められた世界における意味の探求に、魅力的なビジュアルを添えます。
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リアルな感情とシュールな仕上がり
トレンドとしてのサイキックウェーブに沿ったイメージはまさに無限の広がりを見せていますが、主に心の安定や現実逃避の感覚を呼び起こすものが中心です。現在のトレンド調査によると、Pinterestにおいて、感情と向き合うための「エスケープ・ルーム」に関する検索数が10代の間で伸びており、Z世代が心を解きほぐすための安全で刺激的な空間を求めていることがうかがえます。
「デジタルラベンダー」は、国際的なデザイントレンド予測会社のWGSNによって「今年の色」に選ばれ、ラベンダーからウェルネスが連想されることをもとに、デジタルエスケープ、穏やかな癒し、安定感を表す色として使われています。ラベンダーは、高級スイーツから環境に優しい掃除用品、セルフケアグッズに至るまで、あらゆるものの素材として人気を博しています。健康やウェルネスに強く結びついたデジタルラベンダーを使うことで、平穏や安らぎの感覚を呼び起こすことができます。
クレジット:(左)Adobe Stock / artem、(右)Adobe Stock / Eightonesix
デジタルラベンダーのほか、ディズニープリンセスのドレスを彩る宝石の色やネオンカラー、パステルカラーは、心地よいグラデーション、形を変えるフォルム、色を変える表面、想像上の夢の風景の中に展開されます。例えば、監視システムを騙して着る人をキリンやシマウマに見せかけるサイケデリックなニットウェアのように、シュルレアリスム的なタッチは、無限に可能性の広がるこの分野にしっくりとマッチします。Surreal というブランドは、古くから朝食として親しまれてきたシリアルのパッケージに、宝石のようにシリアルを散りばめるという面白いひねりを加えています。Behanceには、「Surreal」というブランド名から連想して描かれたロゴやビジュアルの案をまとめた投稿があり、そこでは、色数を抑えたパレットと明るい色彩を組み合わせることで全体のトーンを引き締めつつも、何でもありの自由なスタイルが示されています。
クレジット:(上)Adobe Stock / Oscar Carrascosa Martinez/Westend61、(左下)Adobe Stock / Mhandy/Creative Flame、(右下)Adobe Stock / Beaunitta V W/peopleimages.com
波動を高める
瞑想、占星術、スパ療法、サウンドバス、遠赤外線サウナなど、精神の奥深くに入り込んだり、メンタルヘルスの健康法にのめりこんだり、あるいは単に現実から離れてバーチャルゲームや現実逃避アプリに没頭したりと、誰もが日常から逃れて気分を上げるための休息を求めているようです。
基本的に「サイキックウェーブ」は、メンタルヘルスや安らかな環境と結びついていますが、その境地に至るためには、時には試練に立ち向かい、自分の弱さを克服して強くなるというプロセスが必要だということからも目を背けていません。自分を癒したいという必要性は、疲労感や不安、燃え尽きといった感情が大きくなることで生まれるということは、周知のとおりです。
「サイキックウェーブ」は、明るく幸福な未来の展望へつながる安らぎのスペースを提供し、今この瞬間を乗り切る道筋を示します。
クレジット:Adobe Stock / Ivan Kmit
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