Firefly をアイデア出しのパートナーに MoMA デザインコレクションを再創造した Norman Teague
出典: Norman Teague デザインスタジオ(NTDS)
デザイナーで教育者の Norman Teague は、シカゴを拠点に活動する真の変革のエージェントです。彼は、芸術形式に関する歴史的な通説を疑い、黒人や褐色のクリエイター達に、より多様な未来を築く自信を与える基盤としてデザインを活用します。世界的に尊敬されるデザイナーである Teague の作品は、シカゴ美術館やロサンゼルス現代美術館を始め、アメリカ各地で常設展示されています。2023 年に開催された第 18 回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展には、Norman Teague デザインスタジオ(NTDS)が米国代表として参加しました。
今年の初めに、Teague はエルムハースト美術館で個展とグループ展を開催しました。これは、John Coltrane の傑作『至上の愛』を題材に、長年にわたる即興ジャズおよび黒人の美学の大胆さと、有色人種のクリエイティブコミュニティを刺激するその役割を賞賛するものでした。共同キュレーターである Rose Camara と協力して、Teague は Mies van der Rohe のマコーミック・ハウスを再創造し、その著名な空間を 35 人の素晴らしい有色のアーティストの作品で埋め尽くしました。
「学生やデザイナーとして触れることになる作品の大半は、ヨーロッパや現代的なスカンジナビアのスタイルです。コンテンポラリーデザインの基準で不変の地位を得たアフリカにルーツを持つ作品を、私はまだ見たことがありません」と Teague は言います。
ニューヨーク近代美術館(MoMA)では、Teague の最新の展覧会 Designer's Choice: Norman Teague - Jam Sessions が開催中です。そこでは、インクルーシブなデザインコミュニティについての彼のビジョンが、さらに大きなステージに展開されています。アドビの生成 AI モデルファミリー Adobe Firefly の助けを借りて、Teague と彼のスタジオチームは、MoMA のデザインコレクションの代表的なオブジェが、より多様な声の重なりによって創造された世界を想像するよう人々を誘います。アドビは、あらゆる立場の人々が生まれながらの創造性を探求し拡大できるように支援するという Firefly のビジョンに従って、Teague の任務の一端を担えることを誇りに思います。
MoMA のデザインアイコンの歴史を書き換える Norman Teague(左)と Daniel Overbey(右) 出典: アドビ
AI が加速するポジティブな変化
Jam Sessions の展示は、黒人及び褐色のアーティストやデザイナーの支援者である Teague の使命を具現化したものです。また、ポジティブな変化を促進するための、想像力とテクノロジーの力を示すショーケースでもあります。Teague と NTDS のアシスタントデザイナー Daniel Overbey は、展覧会に命を吹き込むために Adobe Firefly の生成 AI 機能を使い、黒人の歴史と創造性の観点から MoMA コレクション 15 点を再構築しました。
「バウハウスの椅子が中央アフリカのデザイナーによって再考されたらどうなるだろうか?」「ブラック・アーツ・ムーブメントの美学と、現在のデザインプロセス/素材/操作/パターンを組み合わせたらどうなるだろうか?」のような問いを通して、 Teague と Overbey は、今日の多様な社会の価値観をデザインプロセスそのものに反映させようと、デザイン界で最も認知されているいくつかのオブジェの成り立ちをつくり替えました。
Jam Sessions のテーマに忠実に、彼らのプロセスは緩やかで即興的でした。Teague が最初のコンセプトをスケッチすると、それを渡された Overbey は CAD ソフトでモデルを作成しました。デジタル化が終わると、 Overbey は、再構築した MoMA の作品を解釈し、さまざまな想像力に富んだプロンプトを駆使して、それぞれのオブジェの新しい軌跡を提案するよう Firefly に依頼しました。
たとえば、Teague が、ラグタイムの特徴を持つバルセロナチェアを再考した際に生成されたコンセプトの一つには、椅子の裏側の非対称な 3 本目の脚が含まれます。Overbey と Teague は、この新しいディテールの風変りな魅力をとても気に入って、MoMA のための最終デザインに残しました。
「チャールズイームズのラウンジチェアのような家具や、JVC のラジカセのようなオブジェのデザインを黒人が任されていたら、どうなっただろうかという問いを、人々に自問して欲しかったのです。生成 AI は、そうした問いを投げかけて、その答えを具体的な形で表現するのに完璧な、『仮定の世界』を見せてくれるマシンです」
-Norman Teague デザインスタジオ(NTDS) スタジオマネージャー兼アシスタントデザイナー Daniel Overbey
Adobe Firefly を使用して、デザインの古典に新しい主題を作成 出典: Norman Teague Design Studios(NTDS)
Firefly の使いやすさに関して、新しいデジタルデザインのモデルを迅速にレンダリングできるよう支援してくれるアドビの生成 AI 機能に Overbey は感銘を受けました。以前であれば、デジタル表現を構築して、求めている外観、質感、照明を仕上げるのに 1 時間は費やしていました。Firefly を使うと、それがわずか数秒に短縮されます。何より、生成されたコンセプトは、見た目が良い上に、道具や家具として機能するものでした。
とはいえ、Overbey は、最良の結果への意図を明確に持って生成 AI を使用することを、デザイナー達に推奨します。すなわち、リサーチを行い、記述するプロンプト一つひとつに明確なビジョンを構築すべきだということです。たとえば、Overbey が、ハーレムルネッサンスやブラックパンサーのスタイルで MoMA のデザイン作品を再構築するよう Firefly に注文する際には、それらのムーブメントに関する文脈を確実に伝えられるように、十分な知識を学ぶ必要がありました。
「AI テクノロジーは、特に最終的なコンセプトに落とし込む前の、リサーチしたりアイデアを実験したりする場面において、私達がめったに発現させることのない創造性の一部を解放します。デザインをより黒人らしく、よりファンキーに、あるいはより鮮やかにしたいとき、アルゴリズムとコミュニケーションするための適切な言語を構築して必要なことを理解させるのは、アーティストである私達の役割です」
-Norman Teague デザインスタジオ(NTDS) スタジオマネージャー兼アシスタントデザイナー Daniel Overbey
最後に、Teague と Overbey は二人とも、自分の作品はもちろん、他のアーティストの作品に誠実であることを強く意識しています。AI を利用する画像生成機能を比較したところ、彼らが求める著作権保護と透明性を提供していたのは Adobe Firefly だけでした。アドビは著作権を尊重しています。そのため NTDS は、MoMA に展示するデザインを触発した他の人々の作品への参照を保持した上で、可能な限りオリジナリティのある作品を制作することができました。
Gerrit Rietveld のジグザグチェアが Adobe Firefly でデザインされていたら? 出典: Norman Teague デザインスタジオ(NTDS)
これまでの生成 AI との経験から、Teague が信じていることがあります。それは、Adobe Firefly のようなテクノロジーが、時代遅れのナラティブを今日のデザイナー達が再考することを可能にすること。そして、デザインの世界を、あらゆる経歴の次代の若いクリエイターにとってより魅力的にすることです。
「私の仕事を始めた頃は、幸せそうな白人だらけのデザインオフィスを見渡して、なぜここは幸せそうな黒人でいっぱいの部屋ではないのだろうかと考えたものです。もしすべての過去の偏見や人種差別を一掃したら何が起こるでしょうか?」と彼は言います。Jam Sessions のために AI を使ってこの疑問に答える作業は、Teague と彼のチームにとても豊かな瞬間をもたらしました。アドビは、よりインクルーシブな未来を育むという使命を遂行する、世界中のアーティストやデザイナーの助けになれることを誇りに思います。
Norman Teague 自信と、彼のデザインに対するユニークなアプローチについて、より詳しくは Norman Teague Design Studio のサイトをご覧ください。
Adobe Firefly は、クリエイターのニーズ、ユースケース、ワークフローに特化して設計されたユニークな一連の生成 AI ツールを提供します。Firefly がすべての人の創造性を促進する方法と、業界で最もクリエイターに相応しい生成 AI のアプローチを提供する理由については、ここをクリックしてご確認ください。
この記事は Norman Teague reimagines MoMA’s design collection(著者: Brooke Hopper)の抄訳です
- https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/09/11/cc-enterprise-ad-council-creative-agency-fcb-work-together-spread-mental-health-awareness-adobe-express
- https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/09/03/cc-design-step-inside-jas-davis-wild-digital-universe
- https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/06/28/cc-design-julia-rich-on-creativity-identity-and-generative-ai-in-her-work