未来のデザインが変わる!生成AIで解き明かす3つの可能性
2024 年 10 月にマイアミで開催された Adobe MAX 2024 では、さまざまな業界や国のクリエイターやマーケターと会って、生成 AI と、それがコンテンツの未来にとって意味することについて話をすることができました。彼らによると、効率や生産性の向上、そしてイノベーションは、現在 AI に投資している組織が期待している代表的なメリットです。
ブランドやコンテンツチームは、より少ない労力でより多くのことをこなすという、日々増し続けるプレッシャーにさらされています。その立場から見れば、生成 AI を、単なる便利な手段、あるいは時間節約の手段に過ぎないと考える人もいるかもしれません。一方でそれは、生成 AI が、創造性の妨げになったり、クリエイティブに働く意欲を削ぐという認識が生まれる原因にもなっています。
実際には、マイアミの Adobe MAX 2024 で収集した洞察、そして何よりクライアントとの仕事を通して発見したように、生成 AI が持つ多様でユニークな機能のおかげで、マーケティング組織の創造性は向上しています。
コンテンツの未来に向き合う
過去にテクノロジーによる改革を試みて、達成されることのないまま行き詰まったマーケティングチームは少なくありません。調査によると、購入されたマーケティング用の技術的なツールのうち、実際に運用に活用されているのは 56.5% に留まります。
この数字を見て、生成 AI はこうした傾向を加速させるのではないかと心配する人もいるかもしれません。もしくは、品質を顧みることなく、業務の効率化、制作量の増加、際限のない最適化のみを目的とするプロセスに組み込まれるのではないかと恐れを抱くかもしれません。ですが、これらの仮定には、根拠が欠けているように思われます。
将来を見据えている多くの企業において、生成 AI は、すでにブランドやマーケティングチームのクリエイティブな共同制作者となっています。調査した企業の半数近くは、現在コンテンツマーケティングに生成 AI を使用しており、その割合は今年末までに 71% に上昇すると予測されます。
こうした動きの原動力になっているのは、顧客、文化、創造性に対する、本質的な好奇心です。早期に生成 AI を採用した企業は、生成 AI が、人手による制作にありがちな「退屈なだけの作業」からチームを解放し、クリエイティビティを強化してくれることを理解しています。
生成 AI は、今日のマーケターに、主に 3 つの方法で幅広い利益をもたらします。これから、それらを一つずつ順番に紹介します。
1. 創造的なプロセスを強化し、イノベーションを促進する
生成 AI の卓越した利点は、大規模なデータセットを基盤に持つことと、そこから継続的に学習することです。ブランドやマーケティングチームが、顧客および市場全体に関する膨大な量の情報を統合的に扱おうと試みるとき、生成 AI ツールを利用することで、データセットからリアルタイムのトレンドを取得したり、新たに発生した話題を集約したりすることが容易になります。
そのため、意思決定者は、得られた洞察がブランドや顧客にとって持つ意味を理解することに、より集中できます。 また、手作業で計算する代わりに素早く要約を生成できると、必要な情報へのアクセスが従来よりも楽になって、マーケターはデモグラフィック、チャネル、トピック、美的な嗜好などをより簡単に絞り込めます。
最終的に個別の顧客に向けたキャンペーンを構成する要素を短時間で入手したマーケターは、これまで以上に革新的なアイデアに取り組むことができます。さらに、刻々と変化する状況に短時間で対応できるため、ブランドを機敏に保ち、未来に備えた施策を検討することができます。
2. プロセスを加速し、チームの能力を引き出す
本格的なキャンペーンの場合、クリエイティブブリーフの作成から市場への投入に至るまでの期間は長くなりがちです。その上、あらゆる段階において、並行して実行されるプロセスが多くなる傾向もみられます。最初のアイデアを承認してから、数十に及ぶタッチポイントを横断するキャンペーンを開始するまで、マーケティングチームが、エージェンシー、協力会社、経営チームの間を行き来して数週間を過ごすことは珍しくありません。今どきの顧客の期待と歩調を合わせるために、マーケティング活動には、創作と実行のサイクルを従来よりもはるかに迅速に回すことが求められています。
そこで生成 AI の出番です。社内で開発するにせよ、外部のベンダーのソリューションを採用するにせよ、生成 AI を適切に活用すると、企業はコンテンツの品質を犠牲にすることなく、市場投入までの時間を短縮できます。また、コンテンツサプライチェーンを柔軟かつ機敏に保つことができるため、トレンドや顧客の嗜好の素早い変化に対応できます。
生成 AI ソリューションの代表的な例は、Deloitte Digital が、自社のコンテンツ制作戦略に統合した Adobe Firefly です。2023 年にブランドのビジュアルアイデンティティを進化させようとしていたクリエイティブチームは、「説得力のあるブランドに準拠した画像」を迅速に作成できるツールを開発したいと考えました。そこで、Adobe Firefly の生成 AI 機能の力を借りて、 Deloitte Digital Orb Foundry をつくり上げました。このプラットフォームは、デザイナーでも非デザイナーでも使うことができて、クリエイティブなアイデア出しに誰もが参加することを可能にします。利用者が、簡単な単語、フレーズ、あるいはテーマを入力すると、それが数分でブランドアセットに変換されます。
Adobe Firefly は、ロゴ、カラーパレット、フォント、トーンなど、ブランドのスタイルガイドを学習できます。これにより、マーケターは、ブランディングを維持したまま、キャンペーンの作業に生成 AI を活用できるようになります。ベストプラクティスに基づいてコンテンツを異なるプラットフォーム(ソーシャルメディアと印刷広告など)向けに最適化したり、様々なフォーマットのコンテンツを異なる言語に翻訳したりする場合に、このプログラムはブランドに準拠した必要なコンテンツ一式を迅速に作成し、承認プロセスを短縮してくれます。
3. パーソナライゼーションでつながりを深め、インパクトを高める
調査対象となったブランドの 50% 以上が、パーソナライゼーションは顧客戦略を成功させるために不可欠だと考えており、今年末までに、パーソナライゼーションの予算を平均 29% 増やす予定です。データによると、パーソナライゼーションを重視し得意とするブランドは、カスタマーロイヤルティを向上する可能性が 71% 高まります。
消費者の側でも、この点についてはほぼ同じような傾向が見られます。今日の消費者の 78% は、節約するためのパーソナライズされた情報を求めています。また、84% は、特別割引や複数割引が、購入の意思決定に対して中または高レベルの影響力を持つと回答しています。
パーソナライゼーションを本格的に実行すると、組織的なデータの扱いに対する成熟度次第で、作業が複雑になってしまい大きなコストがかかることがあります。コンテンツ配信のプロセスに生成 AI を組み込むと、パーソナライズされた高品質なコンテンツを、大規模にかつタイムリーに市場へ提供することが容易になります。パーソナライズされたデジタルコンテンツの需要が高まる中、コンテンツ制作戦略の基盤として適切な生成 AI ツールを活用し、顧客とのつながりと信頼を大切にしたコンテンツ制作に取り組むことで、ブランドは求められている期待に対応できます。
将来を見据えて
生成 AI を導入する前に取るべき重要なステップがあります。それは、このテクノロジーの役割について、経営層、予算に関わる人々、そしてクリエイティブチームの間でオープンな対話を促すことです。生成 AI 導入の目的を評価して、AI を受け入れる状況ができているか確認することで、マーケティングチームは、発展し進化し続ける生成 AI を最大限に活用する準備ができます。
創造的なプロセスの強化、マーケティングプロセスの加速、パーソナライゼーションによるインパクトは、コンテンツ戦略に生成 AI ツールを採用することで、今日のマーケティング組織が享受できる潜在的なメリットのほんの一部に過ぎません。
この記事は How Generative AI is unlocking creativity(著者: Deloitte Digital)の抄訳です
- https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/11/15/cc-design-norman-teague-reimagines-momas-design-collection
- https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/09/03/cc-design-step-inside-jas-davis-wild-digital-universe
- https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/06/28/cc-design-julia-rich-on-creativity-identity-and-generative-ai-in-her-work