Adobe Expressの共同編集とAdobe Fireflyでイベントのフライヤーをデザイン〜女子栄養大学
女子栄養大学では以前よりアドビとの包括契約により、全学でAdobe Creative Cloudを利用できる環境にありましたが、2024年4月からは全学生にAdobe Expressのライセンスを配布しています。Expressはオンラインで利用できるクリエイティブツールなので、学生が自分のライセンスで学内のPCからでも個人のPCからでもアクセスすることができる便利な環境が整っています。女子栄養大学 食文化栄養学科 准教授の平野覚堂先生は授業やゼミでアドビ製品を幅広く活用していますが、2年生の選択科目「グラフィックデザイン実習」では、 Expressの共同編集機能と画像生成AIのAdobe Fireflyを活かした授業を行いました。
女子栄養大学
架空の店舗を企画してデザイン
平野先生の「グラフィックデザイン実習」を履修する学生の皆さんは、これまでの授業で、自分が思い描く架空の店舗を企画してさまざまなデザインワークに取り組んできました。ターゲット層を明確にするためにペルソナを作り、コンセプトを考え、それに沿ってロゴや店舗イメージ、メニュー表、ロゴ入りの店内アイテム、名刺、フライヤーなどのデザインをAdobe Illustratorや Photoshop、 Expressを使用して制作してきたのです。この日の授業では、まずその成果を発表し合いました。
学生のポートフォリオより。ロゴはIllustratorで作成。使用している画像には Fireflyで生成したものもある
全体として業態はカフェ、ターゲットは女性が多いものの、想定したペルソナやコンセプトはさまざまで、それぞれの思いが込められています。料理や店舗の内観などお店の特徴が出る画像には、 Fireflyで出力したものが積極的に使用されていました。
共同イベントの企画とフライヤーデザイン
それぞれの店舗アイデアを共有したあとは、新たな課題に取り組みます。この日の課題は、それぞれが考えた店舗が参加する架空のイベントを企画し、そのフライヤーをデザインするというもの。2〜3名のグループに分かれ、デザインにはExpressの共同編集機能を利用します。
グループで相談してイベントのコンセプトが次々に決まっていきます。例えば「ふたつの店舗のコラボメニューを展開するための試食会」や「相互に新規顧客開拓をするためのポップアップイベント」、「両店舗の特徴を生かした期間限定のクリスマスコラボイベント」など、具体的に想定し、早速フライヤーのデザインに取りかかりました。
共同編集はお互いの編集している箇所がリアルタイムにわかる
学生の皆さんはExpressで共同編集をするのはこの日が初めて。共同編集時は、同時にデザイン編集画面を開いた状態で作業できるのが特徴で、誰がどこを触っているのかリアルタイムで編集状況がわかります。グループで並んで座っているので、お互いに声をかけあい相談したり分担したりしながらスムーズに作業が進んでいきます。
コミュニケーションを取りながら共同編集機能で作業
声をかけあって分担し、一方がFireflyで画像を生成し、もう一方ではフライヤーデザインに取りかかる
Fireflyもツールのひとつとして使用されています。限定メニューやコラボメニューなどの画像を生成したり、もともとFireflyで出力していた店舗の内観画像を、イベントの趣旨に合わせて再度Fireflyでアレンジしたりする姿がありました。「頭の中にあるイメージ通りの画像がなかなか出てこない!」とプロンプトに苦労しながら繰り返し生成している姿が印象的です。
生成AIも素材作りに使用。プロンプトは「クリスマスデザートを1品。雪だるまがモチーフのふわふわパンケーキ」
もともと各自の店舗のコンセプトもデザインの方向性も全く違うので、それぞれのカラーを出しつつひとつのイベントとして見せるのは難易度が高そうですが、どのグループも共通点を見つけて特徴を出したり、バランスの取れるデザインに各店のロゴを入れたりして解決策を見つけていきました。
授業で制作したフライヤーより。店舗の内観画像はイベントの趣旨に合わせて再度Fireflyでアレンジされている
70分ほどの作業時間でどのグループもフライヤーが無事完成。平野先生は全グループの発表を聞きながら、それぞれの作品について良いところを評価し、どのようにしたらさらに良くなるかアドバイスをしていきました。
作業中の学生の皆さんと講評する平野覚堂先生
Adobe Expressはイメージ通りのデザインを実現できる!
お話を聞いた女子栄養大学 食文化栄養学科2年生の学生の皆さん。左より星野ひなたさん、平田志帆さん、奈良輪美里さん、柳咲妃さん
授業終了後に学生の皆さんに感想を聞いてみると、「ひとりでずっと作業していると結構思考が凝り固まってしまうんですが、ふたりだと『こういうのはどう?』とやりとりして、新たな視点が持てて視野が広がる感じがありました」(奈良輪さん)と、Expressでの共同編集が新たな発見につながった様子です。
また、Expressについては、「ほかのプレゼンソフトなどに比べると格段に素材が豊富でかなり細かい調整ができて、自分好みのデザインを実現できるのでExpressが好きになりました。自分にアイデアがないときでも、テンプレートを元に自分好みに変えていけるところがとても好きです」(平田さん)と、好評です。Illustratorと比べて Expressは使いやすかったという声も相次ぎ、制作のハードルも大幅に下がったようです。
デザインを学んだことによる変化も生まれています。「YouTubeなどを見ていても、今まではただ『きれいだなぁ』と思うだけだったのですが、デザインの基礎を知ってからは、『こういう配置をしているからきれいに見えるんだ』と気づいて、動画を楽しむのとは別の面白さが増えました」(柳さん)。他の皆さんも、日常で目にするロゴのモチーフや、チラシのレイアウトなどに目が向くようになったそうです。
また、将来につながる可能性として、「商品開発に関する仕事に興味があるので、授業で学んだデザインの知識や経験が生かせるのではないかと思っています」(星野さん)という声もありました。皆さんはデザイン自体に興味があるのはもちろんですが、それに加えて、調理やテーブルコーディネート、パッケージ、店舗企画など、同科で学ぶ他の領域との関連性も見出していました。
デザインのハードルを低く、新しい技術は積極的に
平野先生は、授業で PhotoshopやIllustratorに加えてExpressを扱ったことで、ツールの選択肢の幅が広がったことを歓迎しています。「Expressで物足りなくなったらIllustratorを使ったり、難しすぎると感じたらExpressに戻るというように、行ったり来たりするのが理想ですね」。また、 Expressは共同編集が可能なので、デザイン作業にグループワークも組み込むことができました。
女子栄養大学 食文化栄養学科 准教授 平野覚堂先生
同大ではデザインの専門家を育てるわけではありませんが、授業でデザインを経験することで「デザイン的な共通言語」を持てるのではないかと平野先生は見込んでいます。「例えば将来食品メーカーに就職したとして、商品開発に関わった際にプロダクトに関してだけでなく、パッケージデザイナーに対しても自分なりの考え方を伝えることができるようになると思います」。
平野先生が受け持つ「メディア編集論実習」では、Adobe InDesignで冊子を企画、制作する課題もある。写真も文章も自分で用意する
生成AIの利用について尋ねると、平野先生は、グラフィックデザインやカメラの世界でもアナログからデジタルに次々と手段が変化してきた変遷を振り返り、「AIにしかできないこともありますから、新しい技術が出てきたら、使えるものはどんどん使っていけばいいと考えています」と、とても前向きです。「自分のイメージを越えたイメージを作ってくれるようなプロンプトを書いて生成して、そこで終わりではなく、それを足がかりにまたもう一歩先に進めるということができますから、イメージを刺激してくれる存在だと言えます」。
生成AIは授業で利用するメリットもあります。限られた授業時間で目的に合った画像を生成できるので表現の幅が広がるのに加えて、Fireflyの生成画像は商用利用が可能なので、生成画像を使用した学生の作品を公開しても問題がありません。学生の皆さんは、他のアプリケーションと同様の感覚ですでにツールのひとつとして受け止めていて、「みんな結構使いこなしていて、可能性があると感じています」と平野先生は振り返りました。
Adobe Expressがデザインのハードルを下げ、グループワークで協働的な学びを実現する手段として活躍し、Adobe Fireflyがさらに実習の可能性を広げていることが感じられる授業でした。デザインを学んだ学生の皆さんのこれからの活躍が楽しみです。