注目機能が続々登場！アドビビデオ製品の最新情報《Inter BEE 「Adobe Day 2024」レポート》
アドビは国際放送機器展 Inter BEE 2024において、アドビの革新的な製品や最新技術を体感できる一日「Adobe Day 2024」を開催しました。
この記事で紹介するセッションでは、昨年10月のAdobe MAXで紹介したアドビビデオ製品の最新情報を多数紹介。Adobe MAXやそのほかのエキシビションで発表されたビデオ製品の新機能を網羅しつつ、ビデオに対応した注目の生成AI機能など最新情報をご紹介しています。生成AIに関してはユーザーから寄せられる「よくある質問」にお答えするなど、実践にも近い内容になっていますので、今後の利用の参考にしていただければと思います。
Adobe MAX
毎年アドビが開催しているイベント「Adobe MAX」が2024年10月14日に米・マイアミで行われました。アドビはこのAdobe MAXのタイミングで製品アップデートを発表しており、今回もCreative Cloud全体のアップデートを披露しました。
Inter BEEにお越しの皆さまにもお馴染みのPremiere ProやAfter Effects、Photoshopなど、全部で100以上の画期的なイノベーションをリリースしています。
Adobe MAXではアドビが提供している生成AI「Firefly」のビデオ生成AIモデル「Firefly Video モデル（ベータ）」を発表いたしました。。
Adobe Fireflyの機能をご紹介いたします。
・膨大な学習データセット
アドビが提供しているAdobe Stockの素材から学習をしています。Adobe Stockは商用利用ができることを前提に設計されているため、Firefly Video Modelももちろん商用利用に安全な設計です。
・アドビワークフローへの統合
生成AIを使っていることを意識せずに利用することができます。Photoshopの中に「生成拡張」や「生成塗りつぶし」があるのと同じように、今回はPremiere Proの中に「生成拡張」という機能が搭載されているなど、自分がいつも使っているワークフローの中で使うことができます。
・豊富なカメラコントロール
Fireflyをブラウザで使用する場合、プロンプトでカメラのアングルやヨリヒキなどの指定をしなくても、どういうショットを撮りたいのかカメラを操作するイメージで設定することができます。プロンプトの書き方を考え過ぎずに済むので、とても使いやすくなっています。
・コンテンツ認証
詳しくは他のセッションでも取り上げていますが、「CAI（Content Authenticity Initiative=コンテンツ認証イニシアチブ）」に準拠するコンテンツクレデンシャル機能（データに権利所在や編集履歴などの情報を埋め込むことができる機能）に、Premiere Proも対応しています。この認証によってフェイクニュースなどへの対応もきちんと考慮されています。
Firefly Video Model（ベータ版）
Fireflyの既存のモデルにはテキストから生成するモデルがありました。例えばPhotoshopやIllustratorに搭載されているプロンプトに入力することでイメージを生成したり、ベクターデータやデザイン、3Dモデルなどを生成できます。
これらと同じようにFirefly Video Modelにおいても、テキストプロンプトとカメラコントロールから動画を生成する「テキストから動画を生成」が発表されました。
プロンプトを書くと動画を生成してくれるサービスで、2024年11月現在、英語のみに対応しています。プライベートベータでの公開となっており、ウェイティングリストにご登録いただくと順次ご利用いただけます。
＜Firefly Video Model（ベータ版）ウェイティングリスト＞
https://www.adobe.com/products/firefly/features/ai-video-generator.html
そしてもう１つ発表されたのが「画像から動画を生成」です。文字通り画像から動画を生成するもので、カメラのヨリヒキやパンなどのカメラコントロールを加えて動画を作ることができます。
Premiere Proアップデート
＜生成拡張機能がベータ版で利用可能＞
Premiere Proはすでに生成拡張の機能がベータ版で利用可能になっており、ダウンロードしてご使用いただけます。いつも使っているPremiere Proのワークフローの中で生成拡張機能を利用して、少し尺が足りないような時にクリップを伸ばすことができます。
カットの終わりを少しだけ変えてみたい場合は、最後の部分を削除したあとに「生成拡張」を行って違う結果を出すことも可能。クライアントに「何か違うものを見たい」とリクエストされたときに、別のテイクを撮ってない場合などに有効な機能です。
このユースケースについては、USメンバーによる他のセッションで詳しく紹介しています。そちらの記事もぜひご覧ください。
本セッションではユーザーから寄せられた「よくある質問」について紹介しました（2024年11月14日現在）。
＜状況に応じて必要な項目が表示されるプロパティパネル＞
Premiere Proユーザー待望の機能として、プロパティパネルが搭載されました。
プロパティパネルは動画やテキスト、オーディオなどそれぞれに合わせた「よく使う項目」を表示します。いままでエフェクトパネルでしか調整できなかったことがプロパティパネルにまとまっているので効率的に作業することが可能。エッセンシャルグラフィックスパネルはテキストのプロパティパネルに統合されています。
エフェクトのコントロールパネルを開かずにスケールやクロップのキーフレームをこのプロパティパネル内でコントロールできます。縦型などサイズの異なる素材が混在している場合のトリミングも、この画面上の「クロップ変形」で変えることができるので、変形やクロップトリミングをパネルを跨がずに行うことができるようになっています。細かい変化かもしれませんが、効率化という面では大きなアップデートではないかと思います。
また、クロップが内蔵エフェクトになり、今まで１クリップずつ適用しなければならなかった数値調整は、複数クリップを同時に調整することが可能になりました。
セッションでは５つのクリップを選択してスケールやクロップの値を適用できるところをお見せしました。このアップデートによって、数値をコピーアンドペーストして作業していた時間を大幅に省略することができます。
＜刷新されたカラーマネージメントシステム（ベータ）＞
Premiere Proにインプットする素材は、Rec.709のものもあればHDRやSDRなど多種多様で、使用するカメラによってガンマやガマットも異なるものを扱うことが多いと思います。アウトプットも同様にさまざまな仕様で出力しなければならず、煩雑になってしまうこともあるでしょう。これまではカメラの機種に合わせてLUTを当てていたと思いますが、今回刷新されたカラーマネージメントシステムでは、どんなカラーのものも高色域のACEScctの広色域作業色空間に含む設計になっており、その色空間の中でグレーディングしてからHDRやSDR、Rec.709などに出力する考え方に刷新されました。
まず自動でカラーを統一させてからその中で作業するという概念なので、例えばエディターに様々な素材が届いてしまったときでも、このカラーマネージメントシステムを使って一元的に管理することが可能になります。
今回は新たにWide Gamutの3つのトーンマッピングが搭載されました。
これは素材に対してLUTを使わずにトーンマッピングを自動でセットアップしてくれる便利な機能です。どんなカラーサイエンスの素材が含まれていても高色域のACEScctに合わせて統一するので、基本的には同じ色域、同じガンマで編集およびグレーディングができます。また、このWide Gamutに入れてトーンマッピングをしないという選択もできます。例えばRec.709はRec.709のカラーサイエンスのままで扱うということも可能ということです。自分でLUT管理をしたい場合はトーンマッピングを使わない選択も可能なため、カラーマネジメントの選択肢がより広がったといえるでしょう。
LUTについては管理が煩雑になることも多く、「3D LUTか1D LUTか？」など細かな精度で悩むこともありますが、この新しいカラーマネジメントシステムはそれらの問題を解決し、より忠実なカラーマネジメントができるのが大きな特徴です。
RAWビデオやLogフォーマットのサポートも増えており、それらを取り込む際にはメタデータを読んで、Premiere Pro側がガマットやガンマの種類を自動認識してくれるのでストレスなく調整に臨むことができます。
Frame.ioアップデート
Frame.ioもたくさんの方に使っていただいてますが、Ver.4になって複雑なコラボレーションをよりシンプルにできるようになりました。
タグで管理してアセットマネジメント的に使えるようになりました。例えば「承認済み」というタグを作っておいて、素材のほうに「承認済み」というデータを埋め込んでおけば、そのデータだけをソートできるのでとても使いやすくなっています。
そして「Camera to Cloud」のパートナーがかなり増えています。すでに対応していたRED、富士フイルム、パナソニックに加えて、Adobe MAXでキヤノン、ニコン、LeicaがこのFrame.ioのCamera to Cloudのエコシステムに参加を表明しました。
また、Adobe内の連携としては、LightroomとFrame.ioが統合により、Camera to Cloudに対応したカメラで撮るとそのままLightroomでアクセスが可能になりました。遠隔で撮影しているフォトグラファーの写真を、遠く離れた場所からLightroomですぐ見て編集することができます。もちろんすでに対応しているPremiere ProやAfter Effectsも同じようなことができるので、ネットワークさえあれば海外や日本各地で撮っているフォトグラファーやビデオグラファーの素材をエディターがリアルタイムに見るということが可能です。
今回のInter BEEの会場では、キヤノンさんのブースにおいてCinema EOS C400で「Camera to Cloud」を運用して、実際にPremiere Proで編集するまでのフローをデモしていただきました。
Adobe After Effectsアップデート
After Effectsにおいては、9月のIBCをはじめとした2024年の夏のタイミングでアップデートした情報をお知らせしました。
After Effectsはここ1年ほどで本格的な3Dワークスペースに対応しています。glbなどの3Dモデルを取り込むことができるので、例えば3Dのモデリングを読み込んで背景に2Dを使って完パケするということも可能になりました。この3Dに関する情報は「Adobe Substance 3D」を特集した他のセッションでも紹介しましたので、ぜひそちらの記事もご覧ください。
他のソフトで作成したglbのサポートが増えたほか、これまでも環境光に対応していましたが、今回は新たに3Dモデルから落ちる影をシュミレートする「シャドウキャッチャー」にも対応し、よりリアルな影のキャスティングを実現しました。
また、3D空間のエフェクトとしてデプスマッピングにも対応しています。XYZ軸のZ軸を見ることができるので、グレーアウトしてデプスを可視化することも可能です。
もう１つ大きなアップデートとして、33個のアニメーションプリセットが追加されています。とくに近年はAfter Effectsを使ってインフォグラフィックスアニメーションを作成していただく機会が増えていますが、今回はインフォグラフィックスにも有効なグラフをアニメーションするプリセットなどが増えています。これまでモーショングラフィックステンプレートにも入っていた要素ですが、この新しいプリセットは、より効率的にとてもシンプルに使えるようになっていて重宝する機能です。
デモでは3Dのモデリングとpsdの2D背景が使用されました。これらがglbの3Dオブジェクトとして混在して見ることができますが、さらに今回追加された「アニメーションオプション」を適用すると、After Effectsの中でアニメーションを再現できるようになっています。アニメーションが複数ある場合はプルダウンから選ぶこともできます。
「シャドウキャッチャー」のデモでは、オブジェクトの下にシャドウを受けたい平面を作って新しいライトで環境光を追加しました。「シャドウを落とす」という項目をオンにすると影が付加されます。
この影は細かいところを調整をすることが可能です。例えばシャドウを「効果のみ」にすることによって影だけが適用されたり、影の色を変えることもできるので、夕焼けっぽくしたり、テーブルの色を反射させた影なども演出することができます。After Effectsの中で3Dオブジェクトに対してよりリアルな影を作ることができるようになっています。
この「シャドウキャッチャー」を使ってみたいという方はぜひチュートリアルをお試しください。glbの素材を持っていない方も多いと思いますが、練習用の素材をダウンロードしていただけます。実際に試しながら覚えることができるので、ぜひ体感していただけたらと思います。
本セッションは生成AIをはじめ、アドビのビデオ関連製品の中でも注目の新機能を包括したセッションとなりました。