クリエイターのキャリア別もやもや資料室【第 2 回】はじめの一歩の激ムズ問題。未経験クリエイターの悩みを真正面から受け止めるの巻の続き

本連載は、人材サービス会社のコンサルタントの筆者が、クリエイターのキャリア別の「もやもや」に向き合いながら全力で応援するという趣旨になっています。第 1 回は未経験の人が抱える「はじめの一歩の悩み」に焦点を当てて、ちょっと先を照らすような、応援のメッセージを綴りました。ところが、長すぎて 2 つの記事にまたがってしまいました。ということで、今回は、その続きです。

「ねぇ、みんな凄すぎない…?」比べてばかりのあなたに自信をもって「気にすんな!」。

日々インプットをしていると、いろんなところから、いろんな情報が容赦なく流れ込んできます。その代表格が SNS。X や Instagram などのタイムラインは、いわばキラキラとギラギラの大洪水。

初心者とは思えないデザイン、「いつの間にそんなにつくったの?」と思わされる物量、自分より明らかに若い人の鮮やかな転職エピソード、「案件受注しました!」といったキラキラ報告。

未経験であれば、なおさら「私なんて・・」と落ち込んでしまうかもしれません。それでも、そんな皆さんには「気にすんな!」と伝えたい。

自分のキャリアに直接関係している人なら、無視するわけにはいかないでしょう。でも、どこかの誰かのキラキラやギラギラは気にするだけ無駄です。気になっちゃうのが人の性… というのはわからんでもないです。だとしても辛くなるほど気になっているのなら、そのインプットソースはあなたにとって健全ではない可能性が高いのです。思い切って距離を取るのは立派な選択です。

あなたにはあなただけの「過去」と「現在」と「未来」があります。これまで数千人のキャリアを見てきましたが、同じキャリアを歩んだ人は、一人もいませんでした。そして、目標を達成する人たちは、「他人」ではなく「自分」と向き合っていました。クリエイターとして活動していくためには、「自分」を見つけなくちゃいけません。あなたの大切な時間を、他人に奪わせちゃいけないんです。

だから私は、自信を持って言います。

「気にすんな!」

「相談できる相手がいない…」と悲観的になる人たち。それって「行動する自分がいない」だけなのかも。

クリエイターを目指す道は、本当に人それぞれです。いろんな場所で、いろんな人と出会い、仲間や先輩、時には師匠のような存在ができて、学びの相乗効果が生まれて、驚くほど成長していく人がいます。

一方、金銭的・地理的・時間的な理由で独学を選ばざるを得なかった人、あるいは、あえて「独りでやる」と決めた人もいます。今は YouTube をはじめ、動画や記事など学習リソースが豊富にあります。実際に独学で、みるみる成長する人もいます。けれど、そうした人からよく聞くのが「相談できる相手がいない」という悩み。迷った時に頼れる相手がいないと不安が生まれがちです。他者との接点が少ない独学の未経験者には切実な悩みです。

ただ、これは頑張って乗り越えなければなりません。というのは、クリエイターにとって「デザインをコミュニケーションする力」が重要スキルだからです。制作現場では、あらゆる関係者との関係を構築して、立場の異なる人と、デザインの意図や意味を言語化しながら理解し合うというプロセスが求められます。この能力ばかりは、独学では身につきません。

活用しやすいのは、やはり、オンラインでできるコミュニケーションです。たとえば、以下のような行為は(上手くいかなかったとしても)、比較的始めやすいと思います。

知らない人に声をかけづらい気持ちは、もちろんわかります。が、それでも、共通の悩みを分かち合える人がいるかもしれないじゃないですか。ダメで元々です。

現実世界にもチャンスが転がっているはずです。書店でデザイン本を手に取った人、美術館でたまたま前に並んだ人、カフェで席が隣になったそれらしい人に「あの、もしかして、デザイン関係のお仕事をされている方ですか…?」と声をかけてみるとか。ちょっとドキドキしますが、大事なアクションだと私は思っています。(もちろん、礼儀と配慮は忘れずに!)。

仲間や相談相手は「自然に現れる」ものではなく、「自分から探し、出会いにいくもの」です。ほんの少しの勇気を出して動いたその先に、クリエイティブな出会いが待っているかもしれませんよ。

「で、結局どこに応募すればいいの…?」という応募のジレンマ。構造化してはじめて行き先が見えてくる。

たくさん勉強した。実績もたくさんつくったし、仲間と切磋琢磨してきた。自分なりに満足のいくポートフォリオだって完成させられた(と思う)。さあ、いよいよ転職活動だ!

というタイミングで、「あれ?何を、どうすればいいんだっけ…??」という状態に陥る人が、冗談抜きに多くいます。

その原因はたいてい、自分のスキルを磨くことにばかりに目が行って、自分が働くことになる環境、クリエイティブ業界の全体像や企業の違いなどに関心が向いていないことです。具体的には、以下のような項目です。

こうした情報も、技術を学び始めた段階から、並行して触れておくべきです。四季報や業界地図なんかを見てみるのもよし、「●● な会社特集」や「2025 年のデザイントレンド」みたいなまとめ記事を読んでもいい。とにかく、業界や企業に関する情報を、ざっくりでいいから集めましょう。その上で、情報を整理して、自分なりに分類していくことが大切です。

まとまった情報が得られず「よくわからないよ・・」となってしまう人は、目で見て、耳で聞いて終わりにしていませんか?つまり、自分なりの整理をしていない。

学生時代を思い出してみてください。新しいことを学び始めるとき、ノートを取ったり図解をつくったりしませんでしたか。あれと一緒です。情報を得たら、自分なりの業界地図を描いてみる。例えば、

未経験者にできるわけがないと思うかもしれません。でも、自分で考えることが大事なんです。実際に手を動かして集めた情報の構造化を試みる。それだけで解像度は一気に上がっていきます。実際、応募判断の質が高かったり、面接での質問の精度が高かった人たちは、例外なくこういった整理作業をしていました。就職活動は、本当に行きたい会社に集中できるようになればこそです。

知って、悩んで、でも、進み続けた人にしかたどり着けない景色がある。

というわけで、未経験者の皆さんが「はじめの一歩」ぶつかる激ムズ問題について、いろいろ書き連ねてきました。最後は自分で思考して欲しいという意図もあり、やや抽象的なところで留めたつもりですが、いかがでしたでしょうか。

いろいろ書いてきましたが、一番伝えたかったのは「この業界を目指してくれて、ありがとうございます!!」ということです。

残念ながら、ここに書ききれなかった悩みはまだまだたくさんあります。そして皆さんにはこれから多くの壁や迷いが訪れることでしょう。時には「もう無理かも」「辞めようかな」と思う日もあるかもしれません。

それでも、へこたれず、前を向き、考え、動き、変え続けた人たちだけが辿り着ける景色がきっとあります。今、この文章をここまで読んでくださったあなたは、もうその一歩を踏み出している人です。もし、万が一、どうしようもなく詰まってしまった時があれば、気軽に声をかけてください。話くらいは、ちゃんと聞けると思いますので。

次回予告:

さて次回は、「未経験」から「ちょっとだけ経験を積んだ人」向け。つまり、今回の読者の少し先にいる人たちに記事を書く予定です。現場に出たからこそ見えてくる「理想と現実」、そこで生まれる悩みやもやもや。そんなリアルに改めて向き合っていこうと思います。

それではまた次回。