デザインを学んだ先に、そのスキルを実際に使う機会があったら。しかも、自分とはまったく違う世界で活動する人たちと出会い、その思いに触れながら商品デザインに挑戦できたら。そんな「学びのその先」を体験する取り組みが生まれました。
今回つながったのは、アサヒ農園が運営する「野菜遺産PROJECT」のコミュニティと、デザインや動画制作を学ぶ「アドビことはじめ クリエイティブカレッジ」の受講生・卒業生が集うコミュニティ「クリエイティブカレッジ キャンパス(受講者限定)」。
「野菜・種・家庭菜園」と「デザイン・クリエイティブ」。一見すると接点のなさそうな2つのコミュニティが出会い、「野菜と出会うパッケージコンペ」が生まれました。受講生が挑んだのは、学習のため課題ではありません。アサヒ農園が実際に販売する種子のパッケージデザイン。その作品は、実際の商品として店頭やオンラインで販売されることになりました。
新しい野菜との出会いを促すパッケージ
今回のプロジェクトを語るうえで欠かせないのが、アサヒ農園が展開する「野菜遺産PROJECT」です。
私たちが普段スーパーで目にする野菜は、数ある品種のほんの一部。市場から姿を消しつつある伝統野菜や、色や形、味わいに個性を持つ品種も数多く存在します。
アサヒ農園では、そうした未来へ残していきたい野菜を「野菜遺産」として捉え、その魅力を広げる活動を行っています。単に種を守るのではなく、育てる人、食べる人、語る人を増やしながら品種を未来につなげていくファン参加型のプロジェクトです。
今回、受講生に託されたのは、そんな野菜との新しい出会いを生み出すパッケージデザインでした。
店頭やECサイトでパッケージを見た人が、「こんな野菜があるんだ」「育ててみたい」と感じる。そのきっかけをつくることが、このコンペのテーマです。学習用の架空課題ではなく、実際の商品を通して人と野菜をつなぐ、実社会のデザイン課題に受講生たちは挑戦しました。
誰かの思いをデザインする
今回の制作で、受講生たちはまず野菜遺産コミュニティの投稿に触れることから始めました。
そこに並んでいたのは、野菜そのものの写真だけではありません。種をまいた日の記録、芽が出た時の喜び、収穫した野菜を食卓で楽しむ様子など、一つひとつの野菜に向き合う人たちの日常がありました。
受講生が向き合ったのは、商品のスペックではなく、その野菜を育てる人たちの思いや体験です。
「どんなデザインなら、この野菜の魅力が伝わるだろう」
「どんなパッケージなら、思わず育ててみたくなるだろう」
デザインの学びでは、レイアウトや配色、文字組み、Adobe PhotoshopやAdobe Illustratorの操作など、さまざまな知識や技術を身につけます。けれども、実際の仕事では「きれいにつくる」ことだけが目的ではありません。
受講生一人ひとりが、学んできたスキルを活かしながら、誰かの思いを受け取り、誰かに届けるためにつくる。今回のコンペは、受講生にとってデザインが社会とつながる瞬間を体験する機会になりました。
コミュニティ同士の共創から生まれたデザイン
今回のコンペの特徴は、農業とクリエイティブという異なる分野のコミュニティがつながったことでした。
野菜遺産コミュニティに集まっているのは、野菜を育てること、食べること、珍しい品種との出会いを楽しむ人たち。一方、クリエイティブカレッジ キャンパスには、デザインや写真、動画制作など、「つくること」を楽しむ人たちが集まっています。
普段であれば、「農業」と「クリエイティブ」という異なる領域が交わる機会は、それほど多くないかもしれません。ところが、コミュニティ同士がつながることで、野菜を育てた人の写真がデザインの材料になり、デザインを学んだ人の作品が今度は野菜との新しい出会いを生み出します。
それぞれのコミュニティが持つ知識や経験、視点が交わったことで、どちらか一方だけでは生まれなかったアイデアや表現が生まれる。そこに、異業種のコミュニティがつながる面白さがあります。
学んだデザインが、実際の商品に
今回のコンペには、多くの受講生・卒業生が参加。それぞれが野菜遺産コミュニティの投稿や想いに触れながら、野菜との新しい出会いを生み出すパッケージデザインに挑戦しました。
応募作品の中から選ばれたのが、以下のファイナリスト10作品です。
その中から最優秀賞に選ばれたのが、gumiさんによる「Grow with Love」です。
パッケージには野菜そのものだけではなく、収穫後の料理や食卓も想像できるビジュアルが取り入れられています。
この作品は、野菜そのものだけでなく、収穫後の料理や食卓までを想起させるデザインが特徴です。野菜遺産コミュニティの投稿から伝わってきた「育てる楽しさ」に着目し、種をまき、育て、収穫し、味わうまでの体験を一つのパッケージに表現しました。