COVID-19で難しい状況に置かれている現在ですが、世界各地の地方自治体や公共機関から、クリエイティブとデザインの力が円滑・安全な行政の維持にひと役買っているという嬉しい知らせも届いています。この記事では、Adobe Government Creativity Awards(AGCA)の候補として報告された事例の中からエピソードをご紹介します。
難しい状況に置かれている現在ではありますが、世界各地の地方自治体や公共機関から、クリエイティブとデザインの力が円滑・安全な行政の維持にひと役買っているという嬉しい知らせも多数届いています。今回の記事では、Adobe Government Creativity Awards(AGCA)の候補として報告されたすばらしい事例の中からエピソードをいくつかご紹介したいと思います。
このような状況では速やかな対応が求められるものですが、それと同時に、適切な形で情報を発信することもおろそかにできません。Hunter氏のチームは、急展開する状況に必死に立ち向かおうとしている住民に対して、権威を示し、堂々とした態度で応じる必要があると考えました。さらに、人々の不安感が増大していることを踏まえ、フレンドリーな発信方法であらゆる人に漏れなく情報が行き渡ることが大切だと判断。そのような認識のもとで策定されたキャンペーン「Spread Kindness Not Germs(ウイルスを広げず、思いやりを広げよう)」のビジュアルは、断固とした意志を感じさせるネイビーブルーに親しみやすい絵文字を組み合わせ、ひと目でわかる明快なデザインに仕上がりました。
さらにHunter氏は、このキャンペーンでの情報発信にはランドウィック市議会の人々を結束させる目的もあったといい、次のように語っています。「隣近所でお互い気楽に助け合いができるよう、近隣の家の郵便受けに投函するポストカードを作りました。また、キャンペーンの標語『Spread Kindness Not Germs』が入った青いTシャツも作りました。これは、図書館など公共施設の閉鎖によって職を失ってしまう方々に仕事を提供するために考案したものです。『青シャツのヘルパーさん』たちが公共スペースを巡回し、住民の皆様に安全性ガイドラインの遵守を呼びかけるようにしたのです」
効果的なキャンペーンはファンを生むものですが、「Spread Kindness Not Germs」の場合もその例に漏れません。「隣の自治体がこのアイデアをとても気に入ったというので、デザインを差し上げました。あちらでも青シャツをプリントして同様に使ってくださり、シドニーエリアの海に面した幅広い地域での一貫したメッセージ展開につながっています。ちょっとした注意で感染拡大が防げることの呼びかけ活動に広がりが生まれました」とHunter氏は語っています。
事業者ごとの具体的な状況に合ったガイダンスを提供するために、Huppert氏は「Can I open?(ウチは営業再開して大丈夫?)」というツールをDreamweaverで開発し、プレイサー郡のwebサイトに設置しました。このツールでは、事業の種類を選び、状況を知りたい活動内容を指定するだけで、営業の可否や適用される規制について明確な情報を知ることができます。
マーケティングチームとクリエイティブチームにとってはチャンスです。COVID-19パンデミック状況下の非常運行体制を告知する真っ黄色のサイネージ作りなどから脱却し、クリエイティブな仕事ができるからです。両チームはキャンペーンに「Wearing is Caring(マスクは愛情のしるし)」というキャッチフレーズをつけ、公共交通の利用について安心感を抱いてもらえるように、親しみやすい落ち着いたトーンのピンク、ブルー、グリーンを基調にしたデザインを採用しました。
何より肝心なのは、このキャンペーンが実際に効果を上げたことです。バンクーバー都市部ではTransLinkロゴ入りマスクの配布場所に行列ができ(もちろんソーシャルディスタンスは確保)、人々はマスクを着けて交通機関に乗るようになりました。6月から「Wearing is Caring」キャンペーンでマスク着用の習慣が広まったことは、少し後に市域で施行されたマスク着用義務化への地ならしにもなりました。TransLinkの調べでは、発令から2週間で92%もの利用者が実際に着用義務を守るようになっています。