絵文字の未来をよりインクルーシブにするために
身体、文化的アイデンティティ、個人的な関心事が、現状の絵文字システムでどこまで表現されているか、また、絵文字にまつわる問題を解決するために絵文字システムをどのように進化させるべきかをグローバル調査しました。
私たちの多くにとってデジタルコミュニケーションに欠かせない絵文字は、この10年間でその重要度を増しました📈。絵文字は視覚的なコミュニケーションシステムであり、楽しさと親密さとともに自分を表現する手段ですが、同時に文化の違い、公平性やインクルージョンに関する議論の舞台でもあります。絵文字が持つ、より共感的で思いやりのある世界を作る力を信じる私たちは、今まであまり表に出ることがなかった人々の声を多くの人に届けることが大切だと考えています。この取り組みの一環として、私たちは5年前にUnicodeコンソーシアムの絵文字分科会(ESC)にアドビの代表として参加しました。当時はこれが、絵文字におけるジェンダー代表性の向上を提唱するという、非常にやりがいのあるプロセスの第一歩になるとは思ってもみませんでした。この取り組みは昨年、オペレーティングシステム上の人間を描写する絵文字すべてにジェンダー包括的な表現(英語)が導入されるという大きな節目を迎えました。
「メディアはメッセージである」という有名な言葉があります。私たちが使用する絵文字も含めた表現の中に、自分の価値観を主張したり、他者からどう見られているかを伝える要素があり、それぞれの視点からストーリーを語ることを手助けしてくれるということです。その結果として、互いの共感や思いやりが広まっていきます。このようなコミュニケーションをさらに良くしていきたいと考えるアドビは、絵文字ユーザーを対象としたグローバルな調査を委託し、自分の身体、文化的アイデンティティ、個人的な関心事が、現状の絵文字システムでどこまで正確に表現されているか、また、この問題を将来的に解決するために絵文字システムをどのように進化させるべきかを調査しました。この記事ではその調査結果をご紹介するとともに、よりインクルーシブで代表性に富んだ絵文字ライブラリの追加を支援し、より多くの人々が変化を起こせるように長年取り組んでいる団体Emojination(英語)とアドビの継続的なパートナーシップについてもお伝えします。
個人的には、今回の調査結果には驚かされました。個人的に重要な関心事を伝えるために、地域の文化的特徴、ジェンダーおよび性自認、多様な身体的制約など、表現の選択肢を増やすべきだと回答した絵文字ユーザーが、すべての年齢層にわたっていたからです。以下は調査結果の詳細ですが、あわせて皆さんの地域やコミュニティを絵文字により良く反映させるための参加方法についても触れています。ぜひお読みください。
適切な絵文字🖼さえあれば、それは千の言葉に値します☝🏽
絵文字は、言葉では表現できないことを表現するのに役立ちます。絵文字は、声のトーンやジェスチャーを表現するためにも使われます。これは、多くのデジタルコミュニケーションにおいて完全に欠落している重要な要素です。絵文字は、私たちがオンラインで自分自身を表現する際の感情的なギャップを埋めるために進化してきました。自分にしっくりくる絵文字が見つからず、自分自身を正確に表現できなければ、自分の人間性の重要な側面を相手と共有する機会を失うことになるからです。
今回の調査では、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本、オーストラリア、韓国の7か国、7,000人の絵文字をよく使うユーザーにインタビューを行いました。地域による違いはあるものの、はっきりと共通する傾向も多く見られます。大多数(83%)が、絵文字にはユーザーをよりインクルーシブに表現することが必要だと答えています。その他、特筆すべき調査結果は以下のとおりです。
異なる文化🧕、年齢👴🏾、民族🌍をより代表する絵文字が求められています
調査対象となった7つの国のすべての人々にとって、絵文字にもっと取り入れてほしいカテゴリーの第1位は文化で、次いで年齢、人種および民族となっています。これは特に、複数の言語を話す回答者が当てはまり、またZ世代でもその41%が絵文字の選択肢に文化をより反映させることを望んでいます。
全世界の絵文字ユーザーのうち、自分のアイデンティティが現在の絵文字の選択肢に適切に反映されていると感じているのは、ほぼ半数に過ぎません(54%)。異なる文化、年齢層、民族を含む代表的な絵文字を増やすことは、絵文字ユーザーが自分自身をよりよく表現するための鍵となります。絵文字には、単に帰属を示すだけにとどまらず、自分の気持ちを正確に表現するという深い役割りがあります。使用できる絵文字一覧に自己を投影できなければ、コミュニケーションツールとしての絵文字を使うことをためらってしまうかもしれません。
障がい者はかなり取り残されていると感じています♿
障がいを持つ絵文字ユーザーのうち、現在利用可能な絵文字の中で自分が表現されていると感じている回答者は半数にも達していません(37%)。障がいを持つ回答者の中には、車椅子👩🦼や杖 👨🏽🦯、補聴器🦻のような最近追加されたものに加えて、さらに多くの「サポート器具や機器」を示す絵文字の拡大を望む声があります。
一方で、障がいを持つ回答者の中には、自分の障がいが絵文字というオブジェクトに還元されてしまうことで、ありのままの自分を表現する能力が低下すると感じる人もいました。障がい者の皆さんがより活躍できると感じられるよう、絵文字が進化する必要があることは明らかです。
ヘアスタイル💇🏾 って実は結構重要なんです
肌の色などに合わせて絵文字をカスタマイズすることで、絵文字がよりインクルーシブになったことは間違いありません。この方面の進化は驚くほど成功しましたが、もっとパーソナライズしたいという要望もあります。髪型や髪の色、アクセサリー、体型、目の色は、絵文字ユーザーが自分の外見をよりよく反映させたいと思うカスタマイズオプションのリクエストのトップに入りました。
全世界の絵文字ユーザーの大多数は、自分の絵文字をカスタマイズしており(55%)、個人のアイデンティティをよりよく反映するために、絵文字のカスタマイズオプションがもっとあればよいと考えています(58%)。
さらに、LGBTQI2+コミュニティのメンバーであると自認しているグローバルユーザーの10人に7人近く(68%)が絵文字をカスタマイズする可能性があり、72%がより多くの選択肢があることを望んでいます。米国と英国では、黒人の絵文字ユーザーの85%、アジア人の絵文字ユーザーの72%、ラテン系の絵文字ユーザーの78%が、自分の絵文字をカスタマイズする可能性があると答えています。
世界の絵文字ユーザーの大多数は、絵文字のカスタマイズオプションを増やすことで、インクルージョンのギャップに対応できると感じています(78%)。
よりインクルーシブな絵文字ライブラリ👪は、よりインクルーシブな世界に貢献できます🕊️
絵文字をよりインクルーシブにするためには課題が残っていますが、大多数の人々、特に若い世代の人々は、絵文字には実際に私たちを取り巻く世界にポジティブな変化をもたらす力があると考えています。Z世代の77%、ミレニアル世代の75%が、インクルーシブな絵文字は社会的な問題についてのポジティブな会話の起点となりうると回答しています。米国と英国では、黒人(85%)、アジア人(85%)、ラテン系(77%)の絵文字ユーザーが、絵文字はこれらの問題に関する重要な議論に貢献すると考えています。
絵文字ユーザーの大多数は、絵文字が互いの結束、敬意、理解を生み出す重要なコミュニケーションツールであることに同意しています(76%)。
世界中の他のグループも、絵文字の力に対して同程度またはそれ以上の楽観的な見方を示しています。LGBTQI2+ユーザー(63%)、障がいのある絵文字ユーザー(61%)、多言語の絵文字ユーザー(61%)は、いずれも今後5年間で絵文字がさらに進歩することを確信していると答えています。
グローバルな絵文字ユーザーは、ジェンダーや文化に配慮した新しい絵文字に最も期待しています。赤ちゃんに授乳する人(1位)、タピオカミルクティー(2位)、タキシードを着た人(3位)などです。
絵文字が直面している課題:サイズ、ディテール、そしてスケール🔍
今回の調査結果は、私がこれまで絵文字に関わりながら感じてきた多くの傾向と一致しています。ジェンダー包括的な人物表現をユニコード規格に組み込む作業をしていたとき、他の表現方法の例に漏れず、絵文字にも制限があることに気づきました。特に、絵文字は非常に小さく、1つの絵文字に収めることのできるディテールは限られています。プロジェクトを進めていく中で、「絵文字というフォーマットの中で、真にジェンダー包括的な表現をするにはどうしたらよいか」という質問をよく受けました。最終的には、私たちはジェンダー表現の顕著な特徴として髪型に頼ることが多いことに気づきました。そのため、髪型や髪の色が回答者のアイデンティティに大きな影響を与えていることに驚きはありませんでした。しかし、さらに細かい、目の色のようなディテールは、わずか数ピクセルの違いでしかなく、意味のあるものにするのは難しいのです。
絵文字のインクルーシブな未来をかたち作るために🤲🏿
皆さんには、絵文字のシステムをより良くするためのアイデアはありますか🤔?もしご意見があれば、絵文字という一見小さなモノの変化をもって大きな影響を与えられることを声にし、ユニコードコンソーシアムを納得させることによって実現が可能です。絵文字をよりインクルーシブにするために新しい絵文字やパーソナライゼーションのオプションを追加したい場合は、幸いにもそれを助けてくれる仲間やリソースがあるので、一人で悩む必要はありません。Emojinationは、デジタルの世界をより代表性に富んだものとするために、絵文字の追加をしたい人々が説得力のある提案を作成できるように支援する組織で、これまでもタピオカミルクティー絵文字とギョウザ絵文字の作者、イーイン ルー(Yiying Lu)氏をサポート(英語)しました。アドビはEmojinationを支援していることを誇りに思っています。
Emojinationは5年前に設立された草の根団体で、「人々による、人々のための絵文字(Emoji By The People, For The People)」をモットーに、絵文字の追加を求める人々が複雑で困難なUnicodeの承認プロセスを乗り越える手助けをしています。
Emojinationの共同設立者であるジェニファー 8. リー(Jennifer 8. Lee)氏は、アドビとの継続的なパートナーシップを振り返りながら、次のように述べています。「アドビの支援は、よりインクルーシブで代表性に富んだ絵文字を求めるEmojinationの5年間の活動にとって非常に重要なものでした。彼らの支援により、自分自身や自分の文化が表現されていることを求めている情熱的な人々をサポートすることができ、その結果、サリー、ヒジャブ、ブーメラン、ピニャータ、マトリョーシカ人形、ロングドラム、アレパ、タピオカミルクティーなどの絵文字が誕生しました」
こうした活動はすべて、私たちが直面している大きな課題に帰結します。つまり、これまで十分な配慮を受けられず、十分な存在感を示せず、時には無視されてきた人々の声を増幅させ、よりインクルーシブな文化に変えるにはどうすればよいのか、ということです。どうすれば、語るべき重要なストーリーを持つ、あるいは私たちが耳を傾けなければならない人々のことを考え、彼らが自分の視点を共有できるようにすることができるでしょうか?
これはテクノロジーだけで解決する問題ではなく、私たちすべてがこの方向へと変化を起こす必要があります。私の願いは、絵文字が私たちの中に思いやりを生み出す手助けになることです。だからこそ、今回の調査結果に楽観的な意見が多く見られたことを嬉しく思います。これらの小さなマンガっぽい文字の数々に対する私個人の楽観的すぎる思いかもしれませんが、人と人をつなぐコミュニケーションのシステムがよりインクルーシブなものになることで、私たちはお互いをよりよく見て理解し、より共感し、多様な経験や意見の尊重から生まれる強さに価値を置く、より協力的な文化を作ることができるのではないかと期待しています。
この記事は2021年4月15日(米国時間)に公開された What will it take to create a more inclusive future for emoji?の抄訳です。