技術家庭科でアドビツールを導入して、生徒のクリエイティビティが開花~同志社中学校~
生徒の表現力や創造性を高めるため、Adobe Creative Cloudを学校活動に取り入れている同志社中学校。Adobe SparkやPhotoshopを使い、デジタル、アナログといった垣根を超えた、自由に表現を楽しんでいる様子をレポートします。
社会で通用するツールだからこそ、アドビのソフトに触れさせたい
京都の自然に囲まれた地に校舎を構える同志社中学校。建学以来、「自由・自治・自立」の精神に基づく自由な校風のもと、生徒ひとりひとりの感じる力・考える力・表現する力を伸ばす教育を実践しています。
ICT(情報通信技術)教育にも先進的に力を入れ、2014年から、生徒1人に1台iPadの環境をスタートし、授業で活用している同校。「ICTの活動をもっと広げ、生徒の表現の可能性を伸ばしたいと考えました」と語るのは、技術家庭科の外村拓也教諭。そのためのツールとして、アドビが適していると考え、2020年度からAdobe Creative Cloudを導入しました。「アドビを選んだ理由は、社会でプロが使っているツールだからです。これからは、あらゆる職種において、デザインの教養が必要になってくると思います。」デザインを専門的に扱う職種ではなくても、自分の想いをビジュアル化して伝える力は、求められるようになるでしょう。そのために、中学時代に教養のひとつとして、アドビのツールに触れ、自己表現する豊かな経験の場を提供できたら、と考えたのでした。
アナログとデジタルの融合で、子どもたちの学びが飛躍的に深まった
折しも2020年度はコロナ禍の影響で、技術実習室は使えなくなり通常の教室での授業に。実習室のパソコンも使えず、各自のiPadのみでの活動に制限されました。その中でアドビのツールを導入し、いかに生徒のクリエイティビティを引き出すか?外村先生は様々な試みにチャレンジしました。その結果、「ほとんどすべての課題で、アドビツールを使うようになっています。」とのこと。Photoshopで撮影した写真を合成して、遊び心のある「びっくり写真」を作ったり、Sparkで各自が好きな曲のポスターを制作するなど、デジタルツールならではの楽しい創作活動を授業に取り入れました。生徒からは、「直感的に、自分のイメージを形にできる」、「基本フォーマットから選べたり、マッチする色合いを提案してくれたりするので面白い。」など、活動を楽しむ声が上がっています。
写真を撮影し、Photoshopなどで画像加工を楽しむ生徒たち
Sparkを使った授業風景
興味深いのは、アドビツールを取り入れたことによって、木工作品や金属加工作品など、従来のアナログな課題への取り組みも大きく変化したことです。例えば、木彫りのスプーン制作では、今まではスプーンを作って終わりだったのですが、今回はあらたに「作ったスプーンをiPadで撮影し、Photoshopで加工してコラージュやコピーを入れるなど、見せ方を工夫する」という活動を最後に加えました。生徒は思い思いに、自分のスプーンのこだわりのポイントや、どんな点をアピールしたいかを考えて、画像にまとめました。そして、Portfolioを使ってオンライン展示会を行ったのです。「例年であれば、優秀な作品を校内に展示するのですが、コロナ禍のため、オンラインで作品紹介をする形が適していました。」と、外村先生は振り返ります。ひとりひとりの想いのこもったスプーンのプレゼンテーションを、オンラインで各家庭でじっくり鑑賞してもらえる結果となりました。
手作りスプーンの魅力がより伝わるようにPhotoshopで加工した写真
3学期に実施した寄木細工。生徒の表現力の成長がうかがえる
また、金属を加工するアクセサリー作りの課題では、作品を作った後、Sparkで仮想販売ホームページを作り、各自がデザイナーになったつもりで売り込む疑似体験をしました。「課題制作の最後にアドビのツールを使った『表現』を加えることで、生徒の意識に変化が起こりました。」と、外村先生は手ごたえを感じています。作品を作るだけでなく、発表する場があることで、「人に見てもらうために」というモチベーションが生徒に生まれたのです。いかにわかりやすく発信するか、魅力的に見せるか、と「受け手」の目線を客観的に意識できるようになりました。「性能だけでなくデザインのよさも、ものづくりには必要とされる時代。アドビのツールで“伝える”センスを培い、ひとつの教養として身につけてほしい。」と、外村先生は語ります。
Sparkで作成した「仮想販売サイト」
「表現したい想い」はとどまらず、様々なシーンに波及
このような、同校での取り組みの背景には、外村先生の「創作活動を通して、もっと生徒にハッピーになってもらえたら」という想いがありました。従来どおりの手を使ったアナログな表現のよさもありますが、一方でデジタルツールならば、「レイヤーがたくさんあって表現の幅が広がる」、「失敗してしまっても簡単にやり直せる」などのよさがあります。実際に、生徒からは「小学校までは絵を描いたりするのは苦手だったけれど、このアプリを使ったらいい作品が作れた!」という声も。表現のツールの選択肢が広がり、思い通りの作品が作れたことで、自己肯定感が上がった様子が見られます。さらに、「もっとこうしたい、ああしたい」という意欲が湧き上がり、今では、授業と関係なく、自主的に作った作品を「先生、見てください」と持ってきてくれる生徒もいるそうです。また、技術家庭科で習得したSparkなどのスキルを使って、生徒会活動のポスターを作ったり、他の教科での課題のプレゼンテーションでも、効果的なスライドや動画を作成したりする様子が日常的に見られるようになりました。
生徒会活動や授業外のポスターセッションの作品
「そのような活き活きした生徒の姿を見ると、技術家庭科でアドビツールを使った活動をやってよかった、と嬉しくなります。」と、外村先生は生徒の成長を実感しています。
同志社中学 外村拓也教諭(Adobe Education Leader)
中学時代は、色々なことに触れ、チャレンジして、好きなものを見つけていく時期。自分らしい表現や得意なことを見つけて実践する経験は、のちの豊かな人生のすそ野を広げることになります。「みんな、ひとりひとりがクリエイター。自由につくって遊ぼう。」という外村先生の生徒にかける想いが、これからも様々な表現活動を通じて開花していくことでしょう。
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