Ayane「もうアイデアを取りこぼさない!イメージをその場でかたちにできるPhotoshop iPad版」
Photoshopの使い勝手をそのままに、タブレットに最適化した機能と操作感を提供するPhotoshop iPad版の活用法をアーティスト・フォトグラファー Ayaneさんに話を伺いました。
色調補正から合成、アートワーク作りまで、写真・画像のあらゆる編集が可能なAdobe Photoshopは、写真家からデザイナー、アーティストまで多くのクリエイターに支持されるプロフェッショナルツールです。
2019年11月に登場したAdobe Photoshop iPad版は、従来のPhotoshopの使い勝手をそのままに、タブレットに最適化した機能と操作感によって、デスクトップ版アプリとは異なるレタッチ体験を提供しています。
このAdobe Photoshop iPad版をアーティストはどのように使いこなすのか。
アーティストとして、フォトグラファーとして活躍するAyaneさんに話を伺いました。
写真のきっかけは旅行の記録
目にした瞬間、つい、「いいね!」「♡」したくなる、見るものを惹きつけてやまないフォトアートが魅力のフォトグラファー・Ayaneさん。
その写真はSNSでたびたびバズを引き起こし、フォロワー数は実に、TikTok 84.4万、Instagram 6.4万、Twitter 1.8万と100万人に迫る勢いで伸び続けています。
完成された構図と計算された色彩で作られるその写真は、どのように生み出されているのか。そのプロセスの中で、Photoshop iPad版はどのように活用されているのか。その秘密を解き明かす前に、Ayaneさんが写真を、Photoshopを始めたきっかけから紹介しましょう。
「大学院の卒業旅行でウユニ塩湖に行くことになったとき、せっかく景色がきれいなところに行くなら、ちゃんとしたカメラで撮りたいなと思って、デジタル一眼レフカメラ・Nikon D5500を買いました。それが写真を始めたきっかけです。
それからすっかりカメラにはまってしまって、製薬メーカーに勤めながら週末フォトグラファーとして写真を撮っていたのですが、SNSにアップした写真が少しずつバズるようになったんです。
なかでも、金沢の21世紀美術館にある『スイミング・プール』で撮った写真は、Instagramで126.1万いいね!をいただいて。Instagramの公式アカウントにもフィーチャーされて、フォロワーが1週間で6,000人増えました」
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シンガポールに留学していたこともあり、“いつかは海外で働きたい”と思っていたAyaneさんにひとつの転機が訪れます。
「勤めていた製薬会社では30歳以上にならないと海外勤務できないことがわかり、キリのいいところで退職して、ワーキングホリデーを使ってオーストラリアに行くことにしたんです。
勤めたのはケアンズにあるフォトスタジオで、ウェディングの撮影がメインだったのですが、ここで出会ったのがPhotoshopです。
カメラと同じようにPhotoshopにもすっかりはまってしまって、働いている時間と旅行に行っているとき以外は、家でひたすらPhotoshopの英語チュートリアルを見ていて……せっかくワーキングホリデーに行ったのに、英語は日常会話すら話せないまま。それなのにPhotoshopの英語での説明だけは2倍速でも聞き取れるという変な特殊能力だけを身につけて帰ってくることになりました(笑)
Photoshopを学んで、写真の撮りかたも変わった
Photoshopと出会い、使いかたを学ぶなかで、SNSにアップされている写真の見かたに変化が現れるようになりました。
「Instagramを見ているとき、“この写真、いいな”“こういう写真撮りたいな”というものを保存していくのですが、あとで自分のお気に入りを見返してみると合成写真が多かったんです。
チェックしたときは合成されていると思っていなかった写真も、自分がPhotoshopを使うようになったら、どう処理されているのかもわかるようになってきました。
写真そのものにも表現の幅はありますが、リアルな世界で勝負する以上、どうしても限界があります。非現実の世界、普段は見られないものを作り上げたいと思うと、どうしてもPhotoshopに頼らざるを得ませんよね。
写真を使って自分が描きたい世界を作る、Photoshopはそのために必要なツールなんだと、あらためて実感しました」
Photoshopを使うようになったことで、写真の撮りかたも変わったとAyaneさんは話します。
「特に意識するようになったのがライティングです。
合成ありきで写真を撮る場合、合成後のイメージを頭に入れたうえで、どこからどう光が当たっていないといけないか、そうしたことを考えて撮るようになりました。
ほかにも、撮影する時点で、そのあとの処理工程を考えて、合成しやすい、処理しやすい写真を撮るようにしています。
先日、国営ひたち海浜公園で撮ったネモフィラの写真から、人を消すプロセスを動画でアップしたのですが、この写真も一見、ふつうに撮った写真から人を消しているように見えるかもしれません。でも、“ここだけはレタッチで作れないから人が重ならないようにしよう”というポイントがあり、それを抑えているからこそスムーズに消すことができるんです」
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計画的な素材撮影、Photoshopを駆使した合成によって、フォトアートを生み出し続けるAyaneさんですが、これはアーティストとしてのひとつの姿。
大手コンビニのSNS向け商品写真や化粧品の撮影、アーティストのジャケット写真、MVの撮影等、商業フォトグラファーとしても、数々の仕事をこなしています。
「SNSでアップするのが旅や風景、ポートレートが多いので、それが専門だと思われがちなのですが、それはあくまで趣味で、仕事としてそうした写真を撮ることはめったにありません」
Ayaneさんのもとに企業からも写真の依頼が届く背景には、Ayaneさんならでのバズる写真を作るセンス、バズる写真を見極める目への期待が込められているのでしょう。
「写真とSNSはすごく相性がいいんですよね。企業もそうしたところに注目をしているのか、フォロワーの多いフォトグラファーに依頼するケースが目に見えて増えているように思います。
担当している大手コンビニの商品撮影も、店頭用写真を撮る方は別にいて、私はSNS用の写真担当。SNSに特化した写真が求められるんです。それぞれのプラットフォームに適したサイズや組み合わせを考えて、小物を組み合わせながら撮るようにしています」
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Photoshopで世の中にないビジュアルを作り出す
Ayaneさんがフォトアートを作る場合、合成を前提に素材を撮影していく方法、目に見える風景を加工を前提に撮影する方法、“こういう合成がしたい”という目的に合う写真を探す方法等、そのアプローチはさまざまです。
「顔を覆った手にピエロを合成したものは、あらかじめイメージを固めたうえで撮影をしています。手で顔を隠して、そこに別な顔を合成する手法は、当時海外で流行っていたもので、同じアプローチでやってみたいなと思って作ったものです。
Photoshop上達の最短ルートは、“うまいな”と思う写真をオマージュすることだと思っていて、Instagramでいいなと思ったものを自分でも作ってみることもあります」
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「チェンマイ・コムローイ祭の写真は、目に見える風景をもっと幻想的な風景にしたいと思って作ったものです。実際のテーブルはコの字型なのですが、人の少ないタイミングを狙って撮影した写真をもとに、ロウソクや木を増やして、テーブルを完全に囲むように加工しています」
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Ayaneさんの写真は、合成と言われるまで合成と気づかないほどに自然。それはスキルに加えて、合成時に破綻が生じない状況を見極め、素材を撮影する技術があるからです。
「慣れちゃっているんですよね。合成して、うまくいかなかった経験を積み重ねるうちに、どう撮ればいいか、どういうカットも押さえておけばいいかがわかるようになってきました。
Photoshopのスキルがあれば変形や合成はどうとでもなるのですが、その“どうとでもなる作業”をいかに減らせるかをいつも考えて撮影しています」
こうした作品を生み出すために必要なのは、Photoshopのスキルだけではありません。Photoshopはあくまでツールであり、いかに高機能でも、実現したいイメージがなければ、作品は生まれません。
Ayaneさんはそのアイデアを膨大なインプットから練り上げています。
「世の中にないビジュアルを作り出すには、ツールやスキル以前にイメージが必要です。
わたしの場合、SNSだけでなく、街中でも極力写真に目を留めるようにはしていて、気になる写真、目標とする写真を集めては、“これ、どういうふうに作っているんだろう?”と考えるようにしています。そうしたインプットを続けるなかで、“このアイデアを組み合わせてみたらどうか”と考えることもあれば、寝る前にパッとアイデアが浮かぶこともあります。
文字の記憶力はさっぱりなんですけど、ビジュアルの記憶力はいいと思っていて、一度見たものは忘れることはありません。そうした記憶の蓄積が、撮影現場でも無意識のうちに働いているじゃないかなと思います」
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Photoshop iPad版でトラックパッドから劇的に効率化
AyaneさんはPhotoshopをどのように使っているのでしょうか。
いわゆるレタッチャーのようなPhotoshopユーザーと比べるとAyaneさんの制作環境は少々特殊です。
「学生のころからマウスすら使っていないんです。キーボードに置いた手をマウスに持っていくのがとにかく面倒で……基本的にキーボードに手を置いたまま操作できるトラックパッドで作業をしています。
ペンタブレットを勧められたこともありましたが、やっぱり面倒で(笑)。
そのせいか、ペンやブラシを使うのが苦手で、選択範囲を作るときはクイック選択ツールばかり使っています」
そんなAyaneさんにとって、Photoshop iPad版は救世主とも言える存在でした。
「トラックパッドだとどうしても限界があって、細かいブラシ作業がうまくいかなかったんです。Photoshop iPad版を使ってみたら、ブラシで選択範囲を作る作業も格段にやりやすくなって、本当に感動しました。
液晶タブレットのようなものは、ペン先と実際の描く位置にズレがあるイメージを持っていたのですが、Photoshop iPad版ならズレることなく、自分が塗りたい部分だけをしっかり塗れる。“なんでもっと早く使わなかったんだろう……”と思いながら作業をしています」
iPad版を導入したことで、Ayaneさんの制作スタイルはどのように変化したのか。そして、デスクトップ版との使い分けはどのようにしているのでしょうか。
「最近はiPadで作業をすることが多くなりましたね。
ゆがみツールのようにデスクトップ版にしかない機能を使うときだけ、パソコンで作業をしています。iPadとパソコンのファイル動機も、クラウド経由で同期できるのでかんたんです。
Photoshop iPad版は、たしかにデスクトップ版に比べて機能が絞られていますが、自分自身、Photoshopのツールの1割、2割しか使っていませんし、たとえ、実装されていない機能を使う必要が出てきても、別のツールで代用する方法を考えるので、わたしの場合、iPad版の機能で十分、事足りるんです」
デスクトップ版ではshiftキー、option(Alt)キーに相当する操作ができる「タッチショートカット」によって、iPadだけで作業が完結できるところも、Ayaneさんのお気に入りのポイントになっています。
そしてもうひとつ、持ち運びやすいiPadでPhotoshopが使えることは、アイデアを練るうえでも、大きなメリットがあるそうです。
「出先でパッとアイデアが浮かんだときに、iPadでPhotoshopが使えればその場で作業ができますよね。その場でざっくり作業をしてから、家でじっくり編集をできるようになったことで、アイデアの取りこぼしを減らすことができるようになりました。
以前は思いついたアイデアをメモアプリに書いていましたが、1時間も経つとその意味を忘れてしまうこともあって(笑)。
ビジュアルのアイデアをビジュアルのまま残せれば、そんな心配もありません」
SNSで得た膨大なインスピレーションを紡ぎあげ、独自の解釈を加えて作品を生み出し続けるAyaneさん。Photoshop iPad版は、そのアイデアを瞬時に描き留め、スピーディに仕上げる、最良のパートナーなのです。
AyaneさんがPhotoshop iPad版を使って作品を制作する手法を解説した動画を公開中
【アーティストに学ぶ】#16 Adobe Photoshop iPad 版 x Ayane:桜のリフレクションを作り出す
https://youtu.be/TEVgpsPbK9U
【アーティストに学ぶ】#17 Adobe Photoshop iPad 版x Ayane:和傘の色を変えてカラフルな写真に
https://youtu.be/T12ofQ_w-00
Ayane
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