【映像制作基礎:第2回】サイズ・アングル・構図を意識して撮影しよう
クレジット:: NATHAPHAT NAMPIX/Adobe Stock
Adobe Stockでは様々な作品のニーズがありますが、その中でも特に人気の高いコンテンツの一つとして、人物モデルを起用したライフスタイル作品があります。単に人物を撮ると言っても、アングルや構図などの撮り方によって全く異なる印象の作品になります。
今回は、映像の印象を変える効果的なサイズ、アングル、構図について、映像ディレクターでVookCCOでもある曽根隼人さんに詳しく解説していただきます。
皆さんこんにちは、Vook CCOの曽根です。
何か被写体を撮ろうとした時にどのような場所から、どのような距離感で撮るか、そしてどのようにフレームに納めるかなど、色々と悩んだ経験はありませんか?こうした構図やアングル、被写体のサイズは映像のクオリティを大きく左右します。今回は、これらの決め方についてそれぞれ解説していきます。
- カメラに映る被写体のサイズ
- 画角の決め方
- アングルで変わる演出とは?
- 2人の会話を取るときの注意点
- まとめ
1.カメラに映る被写体のサイズ
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カメラに映る被写体のサイズには様々な種類があります。基本的には、背景を見せたいのか、それとも人物の細かい表情の変化を見せたいのかなど、「見せたいもの」にあわせてサイズを変えていく必要があります。
被写体サイズは主に以下の7種類あります。
①ロングショット 被写体からかなり離れた位置で撮影し、人物の全身も周りの情景もフレームに収めるショットです。情報量が多く状況を説明するショットとして用いられます。
②フルフィギュア(FF) 被写体のつま先から頭の上まで全身をすっぽりフレームに収めるショットで、人物の動きを全て撮影したい時に用いられます。
③ニーショット FFよりも被写体に少し寄って、膝から上をフレームに収めるショットです。
④ウェストショット 更に被写体に寄って、腰から上をフレームに収めるショットです。顔の表情が認識できるようになる反面、被写体やカメラの動く範囲が限られてきます。
⑤バストショット 被写体の胸から上をフレームに収めるショットです。顔の表情と手の動きが重要なシーンに適しています。
⑥ショルダーショット 被写体の肩から上のみを収めるショットです。顔の表情にフォーカスしたい時に用いられます。
⑦クローズアップ 被写体の顔をフレームいっぱいに収めるショットです。微妙な表情の変化までを捉えるのに適しています。
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2.画角の決め方
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画角とは画面に写る範囲の広さを示すものです。この画角が広いか狭いかでも、見る人に与える印象は大きく変わります。画角を決めるためには、構図(仕上がり時の画面構成)を意識すると良いでしょう。
下の例は、人物の目線の先の空間をカットし、逆に背後の空間を広く画角に入れて撮影しているパターンです。
この撮影の仕方だと、かなり息苦しい印象を与えるショットになる可能性があります。
一方、被写体の前をあけることによって、息苦しくない見やすいショットになります。
このように、画角によって印象も変わってくるので、どのような印象を与えたいかによって画角を工夫してみましょう。
3.アングルひとつで演出が変わる?
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次にどういうアングルで撮るかを見ていきましょう。アングルとはカメラでものを写す角度のことをいいます。
あまり撮影に慣れていない人は、上からのアングルで撮ってしまいがちです。標準的な撮影をする場合は、カメラの位置を被写体の目線に対して水平の状態である「アイレベル」にするのがベターでしょう。
バストアップのアングルの場合は、もう少しカメラ位置を下げて撮影しましょう。
あえて、上から(ハイアングル)または下から(ローアングル)撮影する場合もあるので、それらがどのような意味を持つか見ていきましょう。
ローアングルとハイアングルの映像を比較してみます。
ローアングルで撮った方が力強く、前向きな印象を与えるかと思います。成長や飛躍といった希望を想起させる映像を撮る場合に効果的です。
一方、ハイアングルで撮ったキャラクターはどこか弱々しそうに見えます。そのため、悲しみや敗北感を表現する時によく用いられたりしますが、子供の成長を優しく見守る親の目線を表現するといった時にも効果的な撮り方です。
このように、与えたい印象によってアングルを効果的に選択していく必要があります。
4.2人の会話を撮るときに気をつけたいポイントとは?
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マスターショットを撮っておこう
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ここからは2人の人物の会話劇を撮ってみたいと思います。シナリオがある会話劇などを撮る場合は、少し引いた画で2人の位置関係が分かるショットを最初に撮っておくと、編集の時にとても便利です。このような基本ショットを「マスターショット」といいます。
カメラポジションを探っていこう
次はいくつかカメラポジションを探っていきましょう。
下の画像の左側の女性のように、被写体の手前に別の被写体を入れて奥行きのある構図をつくることを「なめ」といいます。なめることで2人の位置関係が分かりやすくなります。
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次は1人のショットです。
ショルダーショットまたはクローズアップで、女性がどのような表情で会話をしているかを分かるようにします。
次に真横からのショットです。画角は人物の前をあけるようにして、広がりをもたせます。
このようにアングルを変えることで人物のさまざまな表情を撮影することができ、見る人を飽きさせない映像構成をつくりだせます。
素材を販売する上でも、同一のシチュエーションを様々なアングルで抑えたショットを用意することで、使う側にとっても素材として重宝すると思います。
位置関係に紐づいた編集とは?
今回撮った一連のショットをつないで編集していきます。
例えば、表情を見せたい場合やセリフがある場合はアップのショットを使ったり、2人の関係性を伝えたい場合はツーショットやなめのショットを使って、編集で組み合わせていきます。
では、先程撮影したショットに1つだけ間違ったものがあることに気付いたでしょうか?
それは、カメラ位置を眼鏡の女性の正面から撮ったショットです。
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マスターショットでは眼鏡の女性は画面の左側にいて、もう一方の女性は右側にいました。
この画像だけ眼鏡の女性が右側、もう一方の女性が左側にいるため、左右の関係が逆転しています。立ち位置は非常に重要で、見る人に違和感を与えてしまうこともあります。
イマジナリーラインとは?
登場人物の位置の違和感を防ぐために考慮しておきたいことが、「イマジナリーライン」です。
では、わかりやすくするため、マスターショットに対して赤いラインを人物の奥側に引いてみましょう。
この赤いラインを「イマジナリーライン」と呼び、このラインの内側と外側から撮った画像を比較してみます。
まず、線の内側で撮影した場合、マスターショットと同じポジションに眼鏡をかけた女性がいることになります。
一方、イマジナリーラインの外側で撮影すると、眼鏡の女性が右にいるように見えます。
ここからわかるように、常にイマジナリーラインの内側で撮影しておかないと、急に被写体の左右が入れ替わって見える恐れがあります。
そのため、左右が入れ替わるような違和感を生み出したくない場合は、必ずイマジナリーラインの内側で撮ることを意識する必要があります。
もちろん、カメラが被写体の周りを回るような演出をする時など、イマジナリーラインを越えるケースも発生すると思います。そのため、イマジナリーラインを絶対に超えてはいけないものでもなく、見る人に無駄な違和感を与えさせないために考慮すべきポイントと考えてください。
イマジナリーラインを意識して撮影するとぐっと編集しやすくなるので、これを念頭に置いて撮影することをお勧めします。
まとめ
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被写体のサイズやアングルなど撮影手法は無限にあるように感じますが、セオリーに則っていくと限られた選択肢に絞られることがわかります。ただ、セオリーは必ず守る必要があるものではありません。
情報を正しく分かりやすく伝えようと思う時は、セオリーに則ったほうがよいですが、あえてそれを破ることで他の作品とは違った映像を演出することもできます。
ただし、不用意にやりすぎてしまうと見る人に違和感を与えかねないので、色々なアングルを探っていく必要があります。時と場合に応じて、最適な手法を選べるようにしておきましょう。
また、AdobeStockで作品を掲載する際は、たくさんのアングルから同一のシチュエーションを抑えたバリエーションを用意してあげると、使う方が作品を選びやすくなリます。今回の撮影手法やセオリーを参考に、様々な角度からの作品を投稿してみてください。
以上、映像制作において欠かせない「サイズ・アングル・構図の基礎」についての解説でした。記事では伝わりきらない、より具体的な内容を知りたい方は、<u>Vookのチュートリアル</u>をご覧ください。
Adobe Stockでは人物の映像を中心に、皆様からの作品をお待ちしています。
サイズ・アングル・構図を効果的に活用した映像を是非Adobe Stockでご紹介ください。