社会とつながる学びをAdobe Sparkでクリエイティブに表現〜SDGsクリエイティブアイデアコンテスト2021セミナー

GIGAスクール端末の活用促進をめざし開催するSDGsクリエイティブアイデアコンテスト。作品応募を検討中の学校や教員に対し、SDGs学習のポイントやAdobe Spark活用事例など作品制作に役立つ情報をお届けするオンラインセミナーをレポートします。

朝日新聞 SDGs ACTION!とアドビは「SDGsクリエイティブアイデア コンテスト2021」を開催し、SDGsの達成に向けた解決のアイディアを全国の小、中、高等学校より広く募集します。2021年7月1日(木)よりいよいよ応募受付がスタート。教育機関向けに無料で提供されるAdobe Sparkで動画を含むウェブページにまとめることが応募条件です。GIGAスクール構想による1人1台のPC環境を活用して、SDGsの学びを進めるヒントとなるセミナー「社会とつながるクリエイティブな学びづくり」が、2021年6月21日(月)に開催されました。

SDGsの学習活動とアウトプットの可能性を考える

本セミナーには、奈良市立の小学校でSDGsに関する学習活動に取り組んでいる先生3人が登壇。各校の実践事例の共有し、Adobe Sparkを活用するアウトプットの可能性について意見を交わしました。

<スピーカー>

奈良市立辰市小学校 教頭 岸下哲史 先生(昨年度まで奈良市立都祁小学校)

奈良市立椿井小学校 大形憲治 先生

奈良市立平城小学校 新宮済 先生

登壇者の先生方 辰市小学校教頭 岸下哲史先生、椿井小学校 大形憲治先生、平城小学校 新宮済先生

右上:辰市小学校教頭 岸下哲史先生、左上:椿井小学校 大形憲治先生、中央下:平城小学校 新宮済先生

学校外と連携して社会とのリアルなつながりを

岸下先生は、前任の都祁小学校で行ったふるさと学習について紹介しました。6年間を系統立て、学校内に学びを閉じ込めないよう学校外のさまざまな企業や団体などとつながり学びを設計し、子ども達が発信することを重視してきました。

「地域ふるさと学習推進」のためのコンソーシアムを作り学びを設計(発表スライドより)

「地域ふるさと学習推進」のためのコンソーシアムを作り学びを設計(発表スライドより)

例えば、スウェーデン発家具販売のIKEAに学びのプロセスを教わりながら、地域の知名度を上げる活動を行いました。子ども達が今まで気づかなかった都祁の良さに目を向け、ターゲットを絞って紹介する手段としてAdobe Sparkを活用。ウェブページにまとめて発信しました。

IKEAとの連携で行った活動の紹介

上:IKEAから学んだ考え方のプロセス/下:都祁のすばらしいところを紹介するためにサイクリングコースを提案したウェブページ「サイクリング~都祁の神社を回ろう」(発表スライドより合成)

「自分ごと」として捉える学びの設計

平城小学校の新宮先生は、2019年度の4年生の総合的な学習の時間に行った ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)の実践を紹介しました。地域の秋篠川におけるプラスチック汚染を起点に海洋汚染との関連に気付いた子ども達が、SDGsを身近に捉えアクションを起こしたのです。

まずは遠足で秋篠川を訪れたり調べ学習を行ったりして自然の中で川のもつ役割を知り自分ごととして捉えることからスタート。その過程でプラスチックごみの多さに気付きます。実際に秋篠川のゴミを数えたり、ゴミ拾いを行ってゴミを分類調査したりして現状を把握しました。

川の問題と海洋汚染との関係に気付き始めたところで環境省からゲストを招いて話を聞きSDGsのテーマとの関連を知ります。プラスチックごみを出さないライフスタイルというゴミ拾いとは異なる新たな視点を知り、子ども達自身もライフスタイル変革に挑戦し始めました。

ところが、大人の出すゴミで再び川が汚れている現実に直面し、「子どもが大人に言っても無駄ではないか……」と立ち止まってしまいます。そこで新宮先生は環境活動家のグレタさんの行動を紹介。子ども達は自らアクションを起こし「大人に伝える」ための情報発信を始めます。地域の大人との交流会や、壁新聞の作成を経て、2020年2月の「第10回世界遺産学習全国サミット in なら」では大人に強く呼びかける秋篠川宣言を行いました。

子ども達が大人を巻き込むアクションを起こした様子

子ども達が大人を巻き込むアクションを起こす(発表スライドより)

地域の大人もそれに応える動きを見せ、大人を巻き込む活動が立ち上がりました。その後コロナ禍の休校で活動が縮小してしまいますが、実践は続いているということです。

ESDにより子ども達が問題解決につながる行動をするようになった

地域を舞台にしたESDを通して、子ども達全員が問題解決につながる行動をするようになった(発表スライドより)

今後は、リアルな交流をしづらいコロナ禍においても効果的な参画方法を生み出すことが課題。新宮先生は今年度担任している4年生でAdobe Sparkを使い始めていることを紹介し、ホームページでの発信が新たな手段になると期待を寄せています。「Adobe Sparkがもしかすると大人を巻き込む新たな方法になるのではないかとワクワクしています」と話しました。

思考ツールで考えを整理し可視化する

椿井小学校の大形先生は、日頃から様々な学級活動や教科学習に思考ツールを活用しています。イメージマップやレーダーチャートだけでなく思考ツールには様々なものがあり、フィッシュボーン、クラゲチャート、ピラミッド、キャンディー、バタフライチャートなどを使った例が次々に紹介されました。

さまざまな思考ツールを使った学習、活動例

さまざまな思考ツールを使った学習、活動例(セミナースライドより合成)

2020年度に担任をした6年生では、3学期に社会科で世界の国々を学ぶ単元で、クラゲチャートを利用して調べ学習をしました。キャッチフレーズを中心にしたチャートをもとに、1人1台のタブレット端末を使い、自分が選んで国についてAdobe Sparkでポスターにまとめます。

調べた国についてクラゲチャートでまとめAdobe Sparkでポスターを作成

調べた国についてクラゲチャートでまとめ、Adobe Sparkでポスターを作成。個性あふれるポスターが完成(セミナースライドより合成)

各国の言語に関心をもてるよう、調べた国の言葉での表記も取り入れました。外国語科(英語)との連携で、英語と調べた国の言葉で将来の夢をポスターに記載し、さらに、6年生の終わりには、ポスターをもとに各国の言葉で自分の夢を語る発表会を行いました。コロナ禍前の活動で、町に出て該当の国出身の人を見つけて話しかけるなどの交流を通して、楽しさを感じながら自発的な学びが生まれる姿が見られたということです。

Adobe Sparkによるデジタル制作のメリット

現在Sparkを実際に活用しながら、先生方はどんな点にメリットを感じているのでしょうか。新宮先生によると、紙の新聞作りに比べると修正がしやすいことを子ども達がとても喜んでいたそうです。より伝わる言葉を考えて変更したいと思ったときに、紙では多くのやり直しが発生してしまいますが、デジタルならば簡単に変更できます。また、写真を簡単に入れられるなど自由度が高く子ども達の表現に変化を感じています。

子ども達のツールの習熟や作業スピードは先生の予想を圧倒的に上回り、ヘチマの観察日記を作成した際は1時間で複数の記録写真とコメントをまとめ、文字の色を変えるなど自分なりの工夫を加えることもできました。「子どもたちの力はすごいですね」と新宮先生。

大形先生は「私自身はAdobe Sparkの使い方を指導していなくて、子ども達が自分でどんどん使って、作って、得意な子ども同士で教えあっていく中でスキルが上がっています」と話します。Sparkで制作するとできあがりの見栄えがよく、子どもたちの満足感と達成感が高まり喜んで活動に取り組んでいるそうです。

アドビからは、Sparkの機能紹介として、「ブランド」機能について紹介をしました。例えば学校のロゴや学校のイメージにあった色づかい、書体などをあらかじめブランドとして設定しておくと、Sparkで作成するウェブページやグラフィック、動画に共通のデザインルールを反映することができます。簡単に統一感と独自性のあるデザインに仕上げることができるのが魅力です。

Adobe Sparkのブランド機能

ブランドを設定する(左)と、Sparkの制作物のデザインに簡単に反映できる(右)

いよいよ「SDGsクリエイティブアイデア コンテスト2021」の応募期間がスタートしました。期間は2021年7月1日(木)~9月30日(木)で、夏休み明けの2学期もあり、学校の先生による取りまとめのもと応募を受け付けます。皆さんのアイディアをお待ちしています。