インターネット時代のダンスとリズムの表現 - Adobe Stockアーティスト支援プログラムのご紹介

Two young girls holding pink scarfs and dancing.

Image source: Adobe Stock/Partha Pal/Stocksy.

デバイスの画面上や私たちの身の回りでも大きな盛り上がりをみせている昨今のダンスブームは、ビデオや動きのある画像といったより大きなトレンドの一端を担っています。現在のAdobe Stockでの状況を言えば、静止画をしのぐ勢いでビデオやモーショングラフィックステンプレート、オーディオクリップが人気を呼んでおり、クリエーターやブランドの顧客層へのアピールにおいてますます重要な役割を果たすようになっています。それを裏付けするようコンテンツ数も拡大し先頃Adobe Stockでも収蔵するビデオ素材の点数が2000万点に到達しました。

ダンス画像は数多くありますが、それでもストック素材を活用するクリエイターからは、私たちを取り巻く日常に見られる多彩さや多様性、特殊性を反映したコンテンツへの要望を数多くいただきます。ありきたりの印象を与えたり、いわゆる「文化の盗用」にあたるようなダンスの画像やビデオは、視聴者の心に響かないばかりか、そのダンスや音楽を生んだ人々の文化を消し去ってしまう可能性があります。

飲酒とミドルエイジについて描き、高い評価を得たトマス・ヴィンターベア監督の映画『アナザーラウンド』のラストでマッツ・ミケルセン の躍ったダンスが、2021年に最も再生され、ミームになった動画のひとつになりましたが、それは何も不思議なことではありません。ここ何年かウェルネスや自己啓発、毒になるほどのポジティブ思考がもてはやされてきたせいか、55歳のデンマーク人の男性がビールの缶を蹴り上げ、テクノミュージックに合わせて活き活きと自由奔放かつ表現力豊かに何でもありのダンスを踊る姿を目にして、私たちの心の空洞が埋められたといってもいいでしょう。混乱、脆さ、回復力、そして悲しみの中に見出される喜び、こうしたものすべてを讃えているように感じられました。

Adobe Stock のJoyful Rhythmというクリエイティブ・ブリーフ(Adobe Stockアーティスト支援プログラムのコンテンツ募集における8つのテーマのうちの1つ)は、フォトグラファー、ビデオグラファー、アニメーター、イラストレーターに、今のメディア状況で大きな訴求力を持つ、ダンスという最も親密かつ自然な身体表現を取り入れた作品の制作を呼び掛けています。

現在のトレンドでは、ある一連のステップやあるダンスのジャンルではなく、身体表現そのものが脚光を浴びているようです。音楽とダンスには、私たちの体に潜む原始的なものを呼び覚ます何かがあり、それにより、今、自分たちが感じていることと、自分たちの過去の奥深いところにあるものとを同時に表現することができます。広告業界やストック業界では、世界各地の多種多様な「動きによる表現」がまだ十分に反映されているとはいえませんが、状況は変わりつつあり、例えば、動きによる喜びの表現を現代的な切り口で前面に打ち出したり、より多様性を意識し、黒人・先住民・有色人種(BIPOC)のクリエーターを起用したりするブランドが増えています。

イメージ: Adobe Stock/Pansfun Images/Stocksy, Adobe Stock/Anna Higgie.

オンライン上に溢れるダンスと音楽

これまで以上に目に見える身近な形で、私たちの「動き」や「音」は文化を牽引しています。スマートフォンやコンピューターの画面に限らず、ワークアウトの方法や祈りのスタイル、さらには抗議のやり方まで、それは至るところで見られます。大流行のTikTokも、音楽とダンスを抜きにして、あの驚くほどの成長と文化的意義、そしてZ世代における人気を説明することはできません。もちろん、他のプラットフォームでもダンスの録画と音楽再生はできますが、TikTokはこの2つを同時かつシームレスに可能にするプラットフォームを求めるニーズを上手く活用したのです。

当然ながら、2021年の今、世の中の気分に合致するのは何かを模索するブランドは、ここ最近私たちの生活にすっかり浸透したダンスを取り上げています。Vogueの最新の春のファッション特集では21カ国の36人のモデルたちが、思い思いにダンスや動きによる自己表現を行っています。一方、Coca ColaGrey Gooseが、ポップミュージックや視覚効果に目を引くようなダンスを組み合わせたコマーシャルをリリースした裏には、TikTokのチャレンジになってほしいというねらいがありそうです。

もちろん、常にこれほど音楽やダンスが溢れている状態は諸刃の剣にもなり得ます。TikTokでバイラルになることを期待する傾向が、現代文化の有害な側面と結びつくような場合には、消費者もクリエーターも批判的な姿勢を持つ必要があります。

「文化の盗用」は、ブラックカルチャーに影響を受けたダンスや音楽、スタイルのクールさを特に求める文化的な欲求の結果生じた問題のひとつです。Jason Parham 氏は、TikTok and the Evolution of Digital Blackfaceと題するWired誌の記事で、白人のクリエーターが「TikTokでヒットを生む最速のルートは、黒人特有の表現に満ち溢れたジャンルを選ぶことだと気づいた」と書いています。

イメージ: Adobe Stock/irum.

ルーツにあるリズムと敬意の表明

こうしたプラットフォームでよりインクルーシブなコンテンツ制作に携わる場合、アーティストにとって最善の方法は、必ず自分の知っていることを元に制作し、知らないものについてはきちんと調べ、起源や発祥元を明確に示し、制作に多様なメンバーを引き入れることです。これは、より多くの人を巻き込めるだけでなく、卓越した本物の作品のためにインスピレーションを刺激するベストな方法でもあるのです。

動きやリズムが最も力を発揮するのは、そこに自分たちのルーツとのつながりが感じられるときです。言いかえれば、一般的なものでなく固有のものに目を向け、自分の中にあるビートや身体を通じて、自分もその一部である豊かな伝統をたどるときです。ファインアートであれ、ストック素材であれ、個々人のストーリーを活かすことが最もクリエイティブなひらめきを与えてくれることに多くのアーティストが気づいています。

昨年は音楽やダンスを介してルーツや文化を探求する多彩な芸術作品が生まれました。ミュージシャンのソランジュは、最新のビジュアル・アルバム『 When I Get Home 』のために出身地のヒューストンへ戻り、「故郷とは何か?」をスピリチュアルな面や神話的な面から問いかけながら、ハリケーン「ハービー」の傷跡やテキサスの黒人社会のレジリエンスを自分の目で確かめたといいます。彼女は次のように語っています。「このフィルムは原点を探るものです。進化の過程で置き去りにしたものに対して、どれだけのものを私たちはいまだ持ち続けているのか?と問いかけています」。

広告ではどうかというと、最新のAppleのAirPods Proのコマーシャルは時代に共鳴しているように見えます。そこでは、ダブルダッチの世界チャンピオンである杉野賢悟さんが、時に躍り時に飛び跳ねながら、ロープやネオンワイヤー、ホースや影による演出で次第にシュールになる風景の中を通り抜けていきます。それだけでなく、この映像は、杉野さんとダブルダッチの起源を結びつけています。アメリカ各地の黒人社会で広まったダブルダッチは、アフリカとオランダのダンスが融合したもので、後にニューヨーク市で発展しました。広告の中にダンスのルーツを創造性豊かに取り入れ、敬意を示したことで、Appleは文化の盗用を回避し、文化を称賛することに成功しています。

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Image source: Adobe Stock/Hugh Sitton/Stocksy, Adobe Stock/VISTA by Westend61, Adobe Stock/Safrudin Wahid/EyeEm.

私たちと同様、多様性豊かなダンス

この1年、私たちが見てきた通り、真実性、誠実さ、そして特殊性において抜きんでているダンスや音楽こそが、最も人を引きつけ、感情を揺さぶります。アドビは、より真実に近い文化的な表現がなされた画像作品を支援し、共有する場を設けるため、Adobe Stockアーティスト支援プログラムを立ち上げました。

Joyful Rhythmのコンテンツ募集では、時代の精神を捉え、躍動感やジェスチャー、回転などの一瞬をどう切り取るか、更なるインスピレーションとなる画像を掲載していますので、ぜひリンク先をご参照ください。

Adobe Stock アーティスト支援プログラムの詳細も併せてご覧ください。

いかがでしたでしょうか?アーティスト支援プログラムへのご応募は英語のみとなります。世界中からの参加アーティストとの交流の場も設けられていますので、言語に自信がなくてもチャレンジしてみてください。多くの方からのご応募をおまちしております。

この記事は2021年6月17日にSarah Casillasより作成&公開されたDepicting dance and rhythm in the internet ageの抄訳です。