TAO「Adobe Frescoのライブブラシはほかにはない描きごこち」 Adobe Fresco Creative Relay 18

Adobe Frescoを使うクリエイターインタビュー企画「Adobe Fresco Creative Relay」。第18回は緻密な背景とキュートな女の子が魅力のイラストレーター・TAOさんが登場です。

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アドビではいま、Twitter上でAdobe Frescoを使ったイラストを募集しています。応募はかんたん、月ごとに変わるテーマをもとに、Adobe Frescoで描いたイラストやアートをハッシュタグをつけて投稿するだけです。
8月のテーマは「空」。朝、昼、夜と時間によって表情を変える空をAdobe Frescoで描いて、 #AdobeFresco #空 をつけてTwitterに投稿しましょう。
そして、この企画に連動したAdobe Frescoクリエイターのインタビュー「Adobe Fresco Creative Relay」、第18回はレトロ感漂う背景を緻密に描き、あたたかみのある世界を描き出すイラストレーター・TAOさんにご登場いただきました。

入道雲が立ち上がる夏の空

「8月に公開する“空”の絵ということで、夏らしい大きな入道雲を描こうとまず思いました。テーマの“空”を大きく見せるために、場所は見晴らしのいい高台に設定し、影を濃くしたり、日向を暖色にすることで、照りつける太陽を表現しています。
今回はすべてペンタブレットを使って、Windows版Adobe Frescoで描きましたが、ふだん使っているペイントツールと同じように描くことができました。Adobe Frescoのライブブラシで描いた入道雲の独特の質感を見ていただきたいですね」

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屋外, 草, 座る, フロント が含まれている画像 自動的に生成された説明

小学4年生からデジタルで絵を描く

ていねいに、はっきりとしたラインで描かれた風景や背景は、TAOさんのイラストが持つ魅力のひとつ。その描写に込められたストーリーは、絵が持つ世界観に無限の広がりを与えています。
そんなTAOさんが絵を描き始めた、最初のきっかけは何だったのでしょうか。

「姉が絵を描くのが好きで、わたしも子どものころから、姉の真似をして、一緒に絵を描いていました。
小学校に入ったあとも毎日絵を描いていたのですが、小学4年生のとき、パソコン好きだった父がペンタブレットを買ってくれたんです。それからはデジタルでも絵を描くようになりました。
pixiaで描いたイラストはブログなどに投稿し、お絵描き掲示板では掲示板のペイントツールを使ってイラストを描き、それを投稿していましたね」

小学生のころにはすでに個人のイラストサイトやブログを立ち上げ、インターネットを通じて交流を深めていたTAOさん。ペンタブレットでイラストを描くうちに、ペイントツールも少しずつ進化していきます。

「父がAdobe Photoshopを持っていたこともあり、中学生のころからはPhotoshopやSAIにも触れるようになって。Photoshopは、イチから絵を描くのに使うこともあれば、ほかのペイントソフトで描いたイラストの色を調整に使うこともありました。SAIを使っていたころは色が混ざる感覚が楽しくて、厚塗りの絵をよく描いていました。
描きかたについては完全に独学で、絵の練習をするときは写真の模写をすることが多いですね。デジタルイラストの描き方や背景については、参考書やインターネット上のイラスト講座などで学びました」

グラフィカル ユーザー インターフェイス
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TAO「日課」2021

デジタルはやり直しが効くこと、色の調整や加工ができることがメリットと話す一方で、それゆえの弊害もあるとTAOさんは話します。

「イラストはすべてデジタルで制作していますが、練習はアナログで描いています。デジタルだとどうしてもやり直しをしてしまうため、練習のときだけはあえてやり直しが効かないボールペンで模写をするようにしています」

小学生のころからデジタルツールに触れていたTAOさんが、そのまま絵を描き続けて今に至るかというと、実はそうではありませんでした。

「小・中学生の頃は部活にも入らず、毎日、絵を描いていたのですが、高校に入ると周りに絵を描く人がいなくなってしまったんです。友だちに合わせて過ごすうちに、なんだか絵を描くことが恥ずかしく感じてきて……絵からは離れてしまいました」

テーブルの上にある数種類の植物
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TAO「おさんぽコース」2018

再びイラストの世界に

TAOさんが再びイラストの世界に足を踏み入れたのは2015年ごろ。趣味と呼べるものが見つからないなかで、もう一度、筆を取ろうと決めたことがきっかけでした。
線画や厚塗りのイラスト、絵本のような絵までいろいろとスタイルを模索するなかに、現在の作風につながるパースを活かした緻密なイラストがありました。

「複雑な背景は自分では描けないと思っていたので、このときは無料の3Dツールで作った建物等を参考に描いたのですが、姉に“すごくいいね!”と言ってもらって。これまでにないくらい、ほめてもらったんです。それがいまのようなイラストを描く、ひとつのきっかけになったと思っています」

それからは、自分が描きたいものをパースを意識して一枚一枚描き切るということを自らに課し、それを続けることで、少しずつ複雑なパースの絵も描けるようになったとTAOさんは言います。
そして、2018年からはpixivにも登録。描いたイラストを投稿するようになります。

「イラストの評価が目に見えるようになってからは、さらに人に認めてもらえる絵を目指すようになりました。『いつもと違う道』は、背景に力を入れるようになって1か月後に描いた絵なのですが、初めて自分の好きな雰囲気で描くことができた作品で、今までずっと難しく感じていた“背景の楽しさ”に気づくきっかけにもなりました」

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テーブル, 座る, 食品, 男 が含まれている画像 自動的に生成された説明

TAO「いつもと違う道」2018

これ以降の作品に見られる緻密な背景描写、そしてキュートな女の子や動物たちが混ざり合う世界観は、TAOさんならではの魅力的なポイントになっています。こうした作風はどのようにして生まれたのでしょうか。

「中学生くらいのころから、帝国少年さんやJH科学さんが描く細かい背景の絵を見るのが大好きだったんです。情報量が多いイラストは見ているだけで妄想が広がりますし、その世界に浸ることができますから。そうした理由から、自分の絵にもできるだけ細かく描くことで情報をたくさん詰め込むようにしています。
よく女の子を描く理由は、かわいい女の子が好きだからです(笑)。とにかく好きなものを描いています」

部屋に備え付けている様々なぬいぐるみ
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TAO「三毛郵便局」2018

どこかレトロ感が漂う街並み、背景に置かれた小物たちは、TAOさんのイラストから感じられる親しみ、あたたかみをさらに際立たせています。

「レトロな雰囲気の背景イラストを見るのが好きで、それをきっかけに、実際にあるレトロなものや街並みにもどんどん惹かれるようになりました。

昭和の小物や建築のデザインは奇抜で楽しいものばかりですし、イラストとして描くと、シンプルなデザインが多い現代のものよりも、イラスト内で映えやすいことにも気がつきました」

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テーブルの上にある店 低い精度で自動的に生成された説明

TAO「ラーメン」2018

SNSを通じてイラストを発表するなかで、TAOさんのもとに少しずつイラストの依頼が舞い込むようになります。

「はじめてのイラストのお仕事は、2018年にいただいたネットサービスのプロモーション用イラストでした。SNSでイラストを見ていただいたのがきっかけだと思います。SNSで“いいね!”をたくさんもらうのも、もちろんうれしいのですが、人に自分の絵が必要とされているということが何よりもうれしかったですね。
仕事を受け始めたばかりの頃は、細かな指定が多いとその指定を守りながら自分らしく描くのが難しいことがありましたが、最近はゲームのミッションを達成させるような感覚で取り組むようにしています。
そのほうが楽しく描けますし、なにより楽しく描いたほうが圧倒的に絵の完成度が高く感じますから」

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マップ 中程度の精度で自動的に生成された説明

TAO「イチョウ町1丁目」2020

それまでは、絵を仕事にすることは考えていなかったTAOさんですが、依頼が増えてきたことに加えて、『ILLUSTRATION 2020』(発行:翔泳社)への掲載をきっかけに2020年1月、イラストレーターとしての活動をスタートしました。

ほかのソフトでは味わえないAdobe Frescoのライブブラシ

小学生時代からさまざまなペイントソフトを使いこなしてきたTAOさんのいまの制作環境は、ペンタブレット+31.5インチディスプレイ。当初はゲーム目的に導入したという大型ディスプレイは、細かいイラストを描くきっかけのひとつにもなっているそうです。
そのTAOさんはAdobe Frescoをどのように評価しているのでしょうか。

「イラストレーターの堅貝さんが描かれた作品を見て、初めてAdobe Frescoを知ったのですが、デジタルには見えないリアルな質感に驚きました。
実際に使ってみると、いままで使ってきたソフトとまったく違って、文字が少ないシンプルなUIで直感的に操作ができるという印象を受けました。パソコン上での作業ではスクロールやボタン操作の際にマウスが必要でしたが、Adobe Frescoはすべてペンだけで操作することができます。慣れるまでは少し時間がかかりましたが、わかりやすいチュートリアルが用意されているので、使いかたはすぐに覚えることができました
画面左のブラシなどのメニューはコンパクトに収納されているので、イラストを描ける面積が大きい点もお気に入りです。小さなモニターやタブレットを使って絵を描いている方にオススメしたいです」

机の上のパソコン
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TAOさんはWindows+ペンタブレットでAdobe Frescoを使用

Adobe Frescoの特長ともいえる、水彩・油彩のライブブラシも、TAOさんが評価するポイントです。

「Adobe Frescoのライブブラシは本当にすごいです。
色のにじみかた、混ざりかたが本物の水彩、油絵のようで描いていて楽しい。ほかのソフトではなかなか味わえない感覚のブラシだと思います。
私はふだん、アニメ塗りをしているのですが、今回、ライブブラシを使って厚塗りで作った雲が、描いていてとても楽しかったので、また厚塗りにも挑戦してみたくなりました。木や水のような自然の風景をライブブラシで描いてみたいですね」

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション
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線画は「鉛筆」「マーカーチゼル」、塗りは「ペン」、雲は「油彩 丸筆」を使用

TAOさんは2020年からアニメーションにもチャレンジ。一枚のイラストに込められた世界観をより広げようと取り組みを続けています。

「絵の一部分を動かすだけでも、その場の雰囲気がより伝わりやすくなると感じています。今は好きなように動かしているだけですが、参考書を読んで、さらに本格的な動きを目指していきたいです。
イラストも今は現実的な風景のものが多いのですが、もっとファンタジー感が強い背景も描いてみたい。最近は少しずつ不思議な背景を描くようになったのですが、独創的な背景に憧れがあるんです。非現実的な背景の中に親しみのあるアイテムをたくさん散りばめられている……そんな絵を描いてみたいと思っています」

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店の前に立っている女性
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TAO
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2021年10月に土筆ギャラリー(名古屋)にて初の個展を開催予定