3D 表現を使ってローラースケート文化を語る(サンプル付き)シンシア・エリヴォとの共同プロジェクト
ローラースケートの歴史は黒人の歴史
ベルリンのインスタグラマーから米国の TikTok クリエイターまで、ローラースケートはソーシャルメディアで脚光を浴びています。魅惑的な振り付けと音楽が、スケーターも観客も虜にするその秘密です。この状況をローラースケートの復活と呼びたがる人もいるかもしれませんが、黒人スケーターにとってローラースケートはずっと身近にありました。今日のスケート文化を形成しているストーリーは豊かな黒人の歴史から生まれたものです。そして、今日のローラースケートの盛り上がりは、世界中の黒人スケートコミュニティのおかげです。
そこで私たちは、この歴史を形あるものにしようと考えました。パートナーは、俳優であり、アーティストであり、活動家であり、ストーリーテラーでもあるシンシア・エリヴォです。この「Stories on Skates」プロジェクトは、ローラースケートにまつわるストーリーや歴史を 3D のスケートのデザインへと変換し、広く共有しようという試みです。
こうしたストーリーを鮮明かつ具体的な形にするための最適な手段として、Substance 3D のテクスチャツールが選択されました。世界中の文化に影響を与えたスタイルやコミュニティの歴史を語る 3D スケートのデザインを Substance 3D のツール群を使って作成するのです。
アドビの 3D & イマーシブ担当バイスプレジデントを務めるセバスチャン・ドゥギはこのコラボレーションについて次のように述べています。「『Stories on Skates』でシンシアと共に働き、彼女の大胆かつ明るいエネルギーを得られたことは実に楽しい体験でした。このプロジェクトは、アドビの 3D に対する取り組みが単にツールを提供するもの以上であることを示し、クリエイティブなビジョンやカルチャーを新しい没入型メディアで実現しようとする取り組みです。シンシアの助けにより、『Stories on Skates』が黒人コミュニティのスケート文化の喜びと影響力に光を当てる存在になることを期待しています」
ストーリーに形を与えるスケートデザイン
The Skate with Soul (音楽)
ヒップホップやラップミュージックが MTV のようなテレビ番組やラジオ局から敬遠されていた頃、ローラースケートリンクがヒップホップやラップの大スター達の舞台となりました。カリフォルニア州コンプトンにある Skateland のようなリンクは、時代とコミュニティを代表する最先端の音楽の聖地とされるようになりました。
上の画像「The Skate With Soul」のデザインは、ファンク、ソウル、ラップ、ヒップホップなど、スケートリンクに登場するさまざまなジャンルの音楽からインスピレーションを得ており、テクスチャには透明なアクリル、ビンテージレコード、オーディオケーブルなどの、音楽がスケートと密接に結びついていた時代を想起させるものが使用されています。
The Rattle & Roll Skate (振り付け)
地域色が強い音楽に触発されたスケートの振り付けも同様に地域性が高く、地元の誇りにあふれています。ケンタッキーのスロー、ニューヨークのトレイン、ボルチモアのスナッピング、シカゴのナットクラッカーなどの動きは、黒人のスケートカルチャーの象徴となりました。
上の画像「The Rattle & Roll」スケートは、そうした振り付けの自然な繰り返しと有機的な流れを表現したもので、レザー、スエード、キルティング生地など有機的な質感のパターンがその影響を表しています。
The Self-Expression Skate (スタイル)
80 年代、ロサンゼルスでは、自己表現の手段としてカスタムメイドのスケートが流行し始めました。ダンスシューズからエアジョーダンまで、どんな靴もオリジナルのスケート靴の素材として使われました。当時のエネルギーは今も変わらず存在し、鮮やかなスタイルと情熱を身にまとった人々が、アメリカ国内だけでなく世界各地でスケートカルチャーを支え、ローラースケート不足の一因となっています。
過激な装飾が特徴の「The Self-Expression」スケートは、ユニークかつ大胆、そして悪びれない様子の表現により、コミュニティの情熱に迫っています。ディスコボール、ネオン、ファー、クロームなど、意外性のあるユニークなテクスチャが採用されています。
The Power Skate (エンパワーメント)
ローラースケート場での差別的なルールや慣習にもかかわらず、黒人のローラースケートコミュニティは常に前進する方法を見つけてきました。それらのルールの多くは今でも存在します。「ヘッドフォン着用禁止」「腰パン禁止」「ガラス繊維のホイール使用禁止」といった看板は、地元のリンクを訪れる黒人スケーターを抑制するために掲げらたものです。しかし、閉鎖されるローラースケートリンクがある一方で、黒人コミュニティを受け入れているリンクは繁栄しています。
上の画像の「The Power Skate」のデザインは、黒人のスケート文化を形作っている要素を讃えるものです。社会が禁止しようと試みたニュアンスを取り込んで自分自身を表現しようとするスケーターを後押しするため、デニム、グラスファイバー、ペイズリー柄のバンダナ、真鍮などのテクスチャが使われています。
The Fam Jam Skate (コミュニティ)
1950 年代のローラースケートリンクは黒人コミュニティが集う場所でした。この独特の情熱を共有する人は誰でも歓迎されました。スケーターたちは、木製のリンク上では表現する自由を、スケートを調節するカウンターでは友情を見つけていました。そして、それらの友情は、何世代にもわたって続くコミュニティになりました。
ローラースケートリンクはコミュニティの象徴です。上の画像の「The Fam Jam」スケートのデザインは、リンクの物理的な空間を再現するために、木のパネル、金属製のロッカーの鍵、ファンキーなカーペットといったテクスチャを用いています。
The Rink Rat Skate (伝統)
“Rink Rats(リンクのネズミたち)“は、ローラースケートリンクに通って成長した人や、そうした伝統を持つ家族に対する愛情を込めた呼び名です。黒人スケーターにとってローラースケートは、共通の歴史、文化、都市へとつながるものであり、彼らが継承したいと願う伝統の大切な一部です。
上の画像の「The Rink Rats」のデザインは、誇らしい過去と来るべき未来を表現する個性的なスタイルです。時の流れを表現するテクスチャとして、レザー、モノクロ写真、刺繍などが使われています。
リンクを離れななかった人々
この記事で紹介してきたように、黒人とローラースケートの密接な関係から生まれた音楽、振り付け、そして文化は、時間をかけて今日の復活を準備してきました。この娯楽への興奮は世界中の人々に伝わり、スケートを始めたいという人々を増やしています。しかし、何代にもわたり一家がリンクで育ってきた生まれつきの黒人スケーターから見れば、ローラースケートは復活などしていません。それはこれまでずっと傍にあったものだからです。
ローラースケートをデザインしよう
自分だけのスケート靴をカスタマイズしたいデザイナーのために、「Stories on Skates」ツールキットを公開します。Photoshop、Illustrator、Fresco、Substance 3D Painter & Sampler を使って 2D や 3D のスケート靴のデザインに使用できる素材です。Twitter や Instagram で @Substance3DDesign と #StoriesOnSkates タグをつけてデザインを公開してください。アドビの 3D チームが気になったデザインを見つけたらシェアします。
ツールキットをダウンロード
Substance 3D Painter、Sampler、Designer についてより深く知りたい方は、この記事で紹介したスケート靴を制作した 3D アーティスト CHARLX のインタビュー(英語)が掲載されているSubstance Magazineをご覧ください。
シンシア・エリヴォに興味を持った人はいますか?先月リリースされたばかりの彼女の新曲 Alive をチェックしてみてください。
この記事は Stories on Skates, a 3D Storytelling Project with Cynthia Erivo(著者: The Adobe 3D Team)の抄訳です