【講演レポート 】「第23回日本感性工学会大会」にてアドビが基調講演

日本感性工学会は、従来の工学、人文科学、社会科学、自然科学の枠にとらわれない「感性工学」という学術コミュニティを運営しており、年次大会では多様な分野から研究者や実務家を招く特別講演を企画されています。2021年9月3日(金)に行われたアドビの井上による特別講演「Creativity for All -すべての人に『つくる力』を」の様子をご紹介します。

2021年9月2日(木)~4日(土)にわたり開催された「第23回日本感性工学会大会」において、アドビのデジタルメディア事業統括本部エデュケーションエバンジェリスト井上リサが特別講演に招かれました。日本感性工学会は、人文科学、社会科学、自然科学の枠にとらわれずに融合し「感性工学」という科学技術を創成し活動しています。本大会では「感性マネジメント」をテーマに多様な視点の研究交流が行われました。2021年9月3日(金)に行われた井上による特別講演「Creativity for All -すべての人に『つくる力』を」の様子をご紹介します。

表現力を強力にサポートするアドビの先端技術

講演では、まずアドビの事業のうち特に、あらゆる人のクリエイティブ活動を支えるAdobe Creative Cloudについて紹介。特に近年技術の進歩が著しい分野を取り上げました。

アドビ エデュケーションエバンジェリスト 井上リサと進行の東京電機大学 未来科学部 井ノ上寛人助教

アドビ エデュケーションエバンジェリスト 井上リサ(左)。進行の東京電機大学 未来科学部 井ノ上寛人助教(右)

例えば「Adobe Sensei」と呼ばれる人工知能(AI)とマシンラーニング(機械学習)を活用した技術によって、高度で自然な画像処理を非常に簡単なステップで実現することができるようになりました。髪の毛の細部までを簡単に切り抜いたり、空の部分だけを自動判定して別の空に差し替えたり、人の表情や年齢を変化させたりすることができます。

また、3D技術では、「Adobe Substance 3Dコレクション」として複数のアプリを展開し、直感的に操作できるインターフェースで高度な3Dのグラフィックスを作成することができます。ゲームの世界で使われる3Dグラフィックス、広告のための商品イメージ、2Dのデザインを手軽に立体的なオブジェクトに取り込んで見せるなど、その用途はさまざまです。

Adobe Substance 3Dコレクションの概要

Adobe Substance 3Dコレクションの概要(左)。実際に3Dグラフィックスを制作をしているシーン(右)

他にも、自分で作成したグラフィックスでAR(拡張現実)コンテンツを作成できる「Adobe Aero」や、アナログ感覚の描画再現性でイラスト制作などに強い「Adobe Fresco」などを紹介し、最新の技術が多様な表現の可能性を広げることを示しました。

教育分野でのアドビの取り組み

アドビでは、「Creativity for All(すべての人に『つくる力』を)」を掲げ、こうした先端技術を提供することに加え、小学校から大学まで幅広い層の教育現場でのクリエイティブツール活用促進にも力を入れています。

例えば小中学校では、GIGAスクール構想で導入された1人1台のデバイスでも無理なく使える「Adobe Spark」の活用が始まっています。「Adobe Spark」はグラフィックス、ウェブページ、動画を直感的な操作で作成できるツールで、小学生がウェブページに発表をまとめるなどの使い方がされています。中学校、高等学校になると活用するアプリケーションも広がり、「Adobe XD」を使った高等学校における「情報 I」必修化にむけた授業案の提供などを行っています。

アドビのツールの教育分野での活用例

Adobe Sparkを使ったSDGsをテーマにした小中高生対象のコンテスト(左)。Adobe XDを使って防災アプリのプロトタイプを作る高等学校向け授業案(右)

大学生には、単にツールを習得するのではなく、卒業後のキャリアを見据えて「クリエイティビティ」を養うという視点でアプローチ。企業も重視する様々なデジタルリテラシーのスキルを身につけ、自分のクリエイティビティに自信を持てるようなイベントやコンテンツを多数提供していることを紹介しました。

大学生を対象にしたコンテンツやイベントの例

サークルや個人の活動でクリエイティブツールを使うヒントを提供(左)。現実の社会課題を解決するモバイルソリューションのアイデアコンテスト(右)

幅広い専門領域の皆さんにアドビを知ってもらう機会に

講演にはさまざまな領域にわたる同学会の会員が参加。「画像処理に関するAI技術がこんなに簡単に使えてしまうのかと驚いた」「デジタルが定量的な数字の世界というイメージに変わった」などの感想が上がりました。

質問には、オンラインの授業でどのようなことに気を付けたら良いかというコロナ禍ならでは内容も。井上は、「一方的に喋るのではなく、学生に投票してもらうなど、学生の反応が見られるような仕掛けが必要だと思います」とインタラクティブな要素を組み込むことを提案しました。また、先生が各種クリエイティブツールの使い方をオンラインで教えるのは大変なことなので、アドビが用意している動画を積極的に活用し、学生が自分で使い方を学ぶスタイルに転換することを勧めました。

日本感性工学会での講演は、日頃ユーザーとしてアドビに接点のある皆さんだけでなく、より広い専門領域の皆さんにアドビのデジタル技術や教育分野での取り組みについて紹介する貴重な機会となりました。