食を通じて伝える文化・歴史・価値観 | Adobe Stockで作品販売

イメージ:Adobe Stock/Arief Dharma Kurniawan/EyeEm

できる限り「時代や季節に左右されない」ものをテーマに選ぶことが、ストックコンテンツを制作する基本の一つです。料理や食材の画像は、いつも緑の葉を茂らせる常緑樹のように季節や時代を問わない不変的な利用価値を備えており、Adobe Stockにも常に欠かせない要素です。

ただし、不変の価値があるからといって「変化がない」わけではありません。Adobe Stock 支援プログラムの「伝統の味(Taste of Heritage)」クリエイティブブリーフを御覧いただくと、このテーマを題材にしたビジュアルは、私たちを取り巻く世界の状況に応じて変化していることがわかります。このブリーフの目的は、食を通して何かを深く考えさせる作品、個人的なストーリーが伝わる作品、今のオーディエンスやブランドに強い共感を呼び起こす作品をつくり、Adobe Stockで販売することを、皆さんに呼びかけるものです。

企業のブランドやクリエイティブ部門の情報発信対象が全世界のオーディエンスとなる機会が増えている昨今、食文化を描写する領域においても、世界の多様な文化が反映される重要性が高まっています。一方、消費者の側も、自分が選ぶ食べ物や飲み物、世界中の食料生産、環境、自分たちが暮らすコミュニティの間にある関係を強く意識するようになってきました。

食べ物を描いたビジュアルの中でも、ストーリーが伝わってくるものや、深遠な語りや回想のきっかけとなるもの、そして、食べ物との関係を見つめ直させるようなものは非常に良質な作品です。上で述べたような変化の核心にあるのは、この事実によるものです。

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イメージ:左:Adobe Stock/Oriana Koren、右:Adobe Stock/Oriana Koren

美味しいビジュアルと一人ひとりの物語

おじいさんのレシピ本を汚してしまったことがある人や、家族に代々伝わる料理を教わったことがある人ならご存知のとおり、食は、伝統、アイデンティティ、文化といった物事と密接に関わっています。私たちは食生活によって先祖とつながり、先祖や私たち自身を育んできた土地とつながっています。

食べ物関連では、「ある場所に特化した感覚を抱かせ、その場所に関するストーリーを伝えるビジュアルが最良である」ことを踏まえたものが優れたコンテンツといえます。

今の状況は、「単なるレシピや流行りの食材だけでなく、その先を見据えた内容を扱う」ということが、食に関連するメディアでの大きなトレンドの中心になることが見て取れます。例えば、Padma Lakshmi氏の人気ドキュメンタリーシリーズ「Taste the Nation」では、各回で異なる移民コミュニティを中心に据えた内容にしています。例えばポケ、ドーサ、チャプスイのような料理と、それらの成り立ちと歴史にゆかりのあるコミュニティを結びつけて紹介しています。また、料理界の有力な賞であるJames Beard Awardを獲得した作家Mayukh Sen氏は、これまでの活動テーマを引き続き追求する新しい著書(近日刊行)において、料理の世界に変革をもたらした移民女性たちのストーリーを伝えています。

今、メッセージの対象となるオーディエンスにリーチする手段として重要になっているのは特殊性、伝統、そして家族です。このことは大小様々なブランドの共通認識にもなっているようです。例えばCoca-Colaは、最近展開したキャンペーンにおいて、8か国、13の家族をそれぞれ取り上げ、家族の面々が集まる様子を紹介しました。新型コロナウイルス感染症が全世界に蔓延する状況下、それぞれの独特なスタイルで身内の飲食を楽しむ世界各地の家族と、Coca-Colaというグローバルな巨大ブランドとを結びつけて描いたキャンペーンです。

このような状況のため、食べ物関連のストック作品においても、人の食生活とアイデンティティを関連付けしたものが人気を集めています。Adobe Stock コントリビューターのLauren Allen氏は、自分の家族が守ってきた伝統を作品の題材にしています。このトルコ風折り返しミートパイも、彼女の家でよく作られている、幼い頃から自分が食べて育った料理です。写真に写っている手は彼女のおばあさんのもの。見る人の視線を釘づけにするカラフルな作品です。テーブルに敷かれたオイルクロスから、生地にフォークで開けられた空気抜きの穴まで、Allen氏の個人的な体験に根ざす要素で構成された作品からストーリーが伝わってきます。

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イメージ:Adobe Stock/Lauren Allen

Adobe Stockは、明日のトレンドを担う皆さんを応援します

アイデンティティや価値観に訴えかける食をテーマにした作品をつくるには、必要なものを揃える作業が困難なこともあり得ます。モデルへの報酬支払い、撮影現場まで機材を運ぶ手間、見るからに美味しそうな食材や料理の調達など、様々な面で金銭的な支出が発生します。

そうした問題をよく認識している Adobe Stock は、アーティスト支援プログラムの一環としてアーティスト開拓ファンドを立ち上げました。50万米ドルの資金を用意し、厳選したアーティストの皆さんにコミッションプロジェクトを依頼する形で、個性的で大胆なビジュアル素材を生み出す機会を提供することにしたのです。

2021年最初の選考でこのファンドの対象者となったアーティストのひとり、Oriana Koren氏は、フロリダ州生まれの第1世代ハイチ系アメリカ人。現在はカリフォルニア州ロサンゼルスを拠点として活動するフォトグラファー、著述家、リサーチャーです。「伝統の味」クリエイティブブリーフの趣旨に沿って、「ブラックフードのビジュアルバイブル(The Black Food Visual Bible)」と題したプロジェクトに取り組みます。内容は、アフリカ系とブラックの人々がアメリカの食文化にもたらしたものを集めたビジュアルなライブラリ。食材、食事、調理過程の写真を注意深く吟味してまとめ、アフリカ系とブラックの料理アートに関する従来の社会通念を大きく広げるプロジェクトです。

アーティスト支援プログラム自体がそうであるように、「伝統の味」においては、文化を正しく伝え、多様性を尊重し、世の中を動かす力になることが重視されます。食卓から買い出しの店先までを含めた私たちの食生活は、人のアイデンティティや問題意識と切っても切れないほど強く結びついています。このようなストーリーを発信することで、アーティストの皆さんは、ありとあらゆる「食べられるもの」の未来を示す次世代のビジョナリーになるのです。

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イメージ:左:Adobe Stock/Oriana Koren、右:Adobe Stock/Oriana Koren

食から実現する、より平等で持続可能な未来

もうひとつ、食生活と価値観という「食」の要素も、ビジュアル世界の様相に急激な変化をもたらしています。「畑から食卓へ」の運動などにより、世界の食糧サプライチェーンと環境の持続可能性に関する世の中の意識は高まりました。また、コミュニティガーデン、食品協同組合、コミュニティ冷蔵庫での食糧品無料提供などといった取り組みにより、産業的な食糧生産の陰で様々なコミュニティが置き去りにされている問題の認知度も高まっています。

消費者も食のトレンドセッターも、ある種の食糧品(例えばアーモンドミルク牛肉など)が環境に及ぼす影響についての認識をどんどん深めており、持続可能な食のあり方や代替食材を常に考えるようになりました。Eleven Madison Parkのような一流レストランがヴィーガンに対応したり、McDonald’sが植物由来の代替肉を提供し始めたりと、今では様々な企業が持続可能性に配慮する姿勢のアピール方法を考えています。さらに、食料安全保障の問題や、世界の経済・社会正義とのつながりについても、注目度の高い場で議論が交わされるようになりつつあります。

また、一流のシェフやトレンドセッターは、コミュニティや平等に関する意識と食を関連付けて考えるようになりました。Forbes誌「30人のアンダー30」飲食部門に選ばれたシェフのKia Damon氏は、ニューヨーク州ブルックリンで「食のアパルトヘイト」解消を目指す精力的な活動家であり、非営利共同フードスペースAuxiloの発起人のひとりでもあります。Auxiloは、ブラック、トランス、クイア、先住民族コミュニティを対象に、支援活動、リソース提供、栄養状態改善運動を展開しています。

Adobe Stock が提供する食べ物関連ビジュアル素材は、以上のような現実に向けてメッセージを発信するものでなくてはなりません。新たなフロンティアを探る素材、私たちを取り巻く多様性と価値観世界のあり方が正しく反映されている素材は、非常に良質なストックコンテンツです。食べ物と環境の結びつき(コープファームから最先端技術まで)をわかりやすく伝える素材は、持続可能性の高い世界を目指す取り組みにおいてビジュアルな意思疎通の手段になる可能性があります。また、キッチンを飛び出して街へ、家庭へ、コミュニティ空間へ出ていく発想を促すコンテンツは、飢え、健康、食の正義について問題意識を持っている企業や消費者の共感を呼ぶことができます。

この記事は2021年9月9日にSarah Casillasにより作成&公開されたSeeking the stories, histories, and values behind food in stock imageryの抄訳です。