【事例】テキサス大学サンアントニオ校、Adobe Creative Cloudを活用してコミュニティをつくり、学生のキャリアを支援
社会で活躍するためにデジタルリテラシーのスキルは、あらゆる学問分野に不可欠と考えるテキサス大学サンアントニオ校の取り組みをご紹介。
テキサス大学サンアントニオ校(UTSA)は、テキサス大学群の中では比較的新しい大学ですが、設立から50年の間にテキサス州および地域社会に多大な影響をもたらしてきました。UTSAは、サンアントニオの住民の多くを占める文化的に豊かなメキシコ系アメリカ人の学生を受け入れるために設立されました。同大学は、ヒスパニック系教育機関(HSI)に認定されており、最近、ヒスパニック系学生に授与する学士号数で全米第9位となりました。
UTSAがこのように高い評価を得ることになった要因として、就職に向けての取り組みが挙げられます。学生が知識だけではなく、社会で活躍するために必要なスキルも習得できるように努めているのです。学生の進学や就職を支援するUTSAのそうした取り組みの多くを指揮しているのは、アカデミックイノベーション担当副学長のMelissa Vito氏です。現在の働き方について検討した結果、どのようなキャリアを歩むにしても学生にとって最も重要なスキルはデジタルリテラシーであるという結論に至りました。
「デジタルリテラシーのスキルは、あらゆる学問分野に不可欠です。学生は、考えを伝える方法を学び、社会に出てからも役に立つスキルを習得する必要があります」とVito氏は言います。「また、UTSAの教員側でも、オンライン授業、対面授業を問わず、学習の質を上げるための方法を見い出さなければなりません」
Adobe Creative Campusとして、UTSAでは全教職員および学生がすべてのAdobe Creative Cloud アプリを利用できます。Adobe Creative Cloudアプリは、芸術系やデザイン系の多くの学校で標準採用されていますが、UTSAではAdobe Creative Cloudの使い方を学ぶことがすべての学生のメリットになると考えています。
同大学は、各学部の教員代表と協力して、ニーズの特定、リソースの共有、活発なユーザーのコミュニティ構築をおこなっています。現在Adobe Creative Cloudは、50以上の授業で数百人の学生に使用されています。アプリについて学ぶ150のトレーニングセッションに700人の教職員が参加し、Creative Cloudの使用率は前年比で50%向上しました。
「学生たちが社会に出て活躍するには、デジタルテクノロジーを使いこなすことが必須です。データの意味を理解し、それを他者に伝えるためのツールを持つことが欠かせません」とUTSA学長のTaylor Eighmy氏は言います。「UTSAでは、Adobe Creative Campusプログラムを通じて、学生にストーリー制作の方法を教える環境を整えました。アドビとのパートナーシップは、単なる取引ではなく、変革なのです」
ひらめきと探求が新たな扉を開く
UTSAのキャリア教育は、Academic Inquiry and Scholarship(AIS)プログラムによってレベルアップが図られています。AISのクラスでは、1年生が関心のある職業について詳しく調べ、目標達成に役立つキャリアについて学びます。Elena Camargo氏は、AISの講師の一員として、生命健康科学に取り組んでいます。
「AISコースの趣旨は、学生が夢中になることを見つけるための支援をすることです」とCamargo氏。「私は、すべての課題に熱心に取り組むよう学生を指導したいと考えています。Adobe Creative Cloudアプリは、学生エンゲージメントを高めるのに理想的です。より自由に創造的に課題に取り組ませれば、どんなことにも、それまで以上の力を注ぐようになりますから」
このコースの重要な課題のひとつに、学生が自分の好きな分野で働いている人にインタビューするというものがあります。外科で働くことを考えている学生は、整形外科医にインタビューして、日常の様子やこれまでのキャリアで直面した困難などを聞き出します。そしてインタビュー後に、学んだことについて考察する動画を制作します。Camargo氏はAdobe Creative Cloudなら幅広く様々なアプリで考えを形にすることができる点が良いと考えています。
例えば、ビデオ編集なら、知識レベルと制作するビデオの種類に応じて、Adobe Spark、 Adobe Premiere Pro、 Adobe Premiere Rush から選択できます。
Camargo氏は、Adobe Illustrator を使用して、健康科学の倫理に関連するテーマを伝えるポスターを制作することを学生に勧めています。Illustratorを使用して説得力のある情報を視覚的に表現する方法を習得すれば、将来のキャリアで活かせる重要なスキルとなるからです。
シグネチャーエクスペリエスプロジェクトでは、Camargo氏は生命科学または健康科学に関するソリューションのアイデアを学生から募りました。ソリューションは製品やサービスはもちろん、アプリでも構いません。学生は、Adobe Sparkでプレゼンテーションを作成して、授業でソリューションを発表します。中には、Adobe XD を使用して、アイデアをカタチにするプロトタイプアプリを短時間で作成する学生もいました。
「現在の世界では、デジタルリテラシー教育が非常に重要です」とCamargo氏は述べます。「リモートでの仕事や学習や医療が当たり前になりつつある今は、なおさらです。人との分かち合いやつながりを大切にする気持ちを保つには、できる限り双方向のコミュニケーションを心がける必要があります」
学部間をつないでコミュニティを築く
UTSAの最近の学部横断型プロジェクト では、コミュニティの強化に焦点が置かれています。歴史学教授のJodi Peterson氏は、学習においてコミュニティとコラボレーションが果たす役割の重要性を踏まえ、学生のために試験的に学習の機会を開発するTactical Teamの一環として、様々な分野の仲間と連携しています。
パンデミック、政変、社会正義運動、経済不安、オンラインライブの増加など、この数年間に経験した多くの変化を考え、学生たちがどのように対処しているのか不思議に思ったPeterson氏は、歴史学者として、自分の気持ちと向き合う学生をサポートしながら、UTSA学生の声を集めて、こうした前例のない時代を記録するのも面白いかもしれないと考えました。
そこでTactical Teamを通して、UTSA全学部の講師、デザイナー、ビデオグラファー、図書館員に働きかけ、新しいタイプの学際的プロジェクトを立ち上げたところ、最終的に次の6つの分野から500人の学生が参加しました。
- 歴史:最近自分たちの身に起きた象徴的な出来事を書き出し、次に過去に起きた歴史的な出来事が祖先に及ぼした影響を推測にもとづいて書き出して、両者の体験を比較しました。
- 文芸:書き出した内容、歴史、感情をベースに詩を書きました。
- 芸術:書き出した項目と詩をベースにビジュアルアート作品を制作しました。
- 音楽:詩からインスピレーションを得て、新しい楽曲を作りました。
- ダンス:楽曲をダンス化し、体験を再び視覚的に表現しました。
- 建築:各一連の体験を集めて見せる舞台と展示をデザインしました。
このプロジェクトでは、開始から終了まで一貫してAdobe Creative Cloudアプリを使用しました。すべての学生が同じアプリにアクセスできる環境を作ることで、学生は自身の体験を手軽に共有しながら効率的に共同作業を進めることができます。多くの学生は、生活が一変した困難な時期においても、このプロジェクトでは人とつながり、話を聞いてもらえたことをありがたく感じたそうです。
「自分の話や痛みをわかってもらえたように感じました」とUTSAのある学生は言います。「死が統計的にとらえられ、いまだに出歩く人がいるのは、自分の行動が及ぼす影響を理解していないということでしょう。今なら意見を言える気がします」
Peterson氏は、このプロジェクトによって、多分野が連携してコミュニティを作り、UTSAで学生が自分のアイデンティティを探るための基盤が形成されると考えています。
学習の成果をたどる
数学は創造性や表現力を伸ばすのに適した科目には思えないかもしれませんが、非常勤講師のJonathan Brucks氏とCarolyn Luna氏は、担当するビジネス数学クラスで数学が重要な役割を果たすと考えています。
「多くの学生は、生活や仕事における数学の重要性を疑問視しています」Brucks氏は言います。「学んだことを活かし、UTSAでの成長の過程を追う方法を与えれば、学生に非常に大きな効果をもたらすことがあります」
Brucks氏とLuna氏は、Adobe Portfolio を使用して授業のeポートフォリオを作成するという課題を学生に出します。学生は経歴ページを作成し、課題をアップロードして、様々なメディアにコンテンツを組み込みます。学習が進むにつれ、履修する課程ごとに新しいページを作成できます。数学期を経ることで、このeポートフォリオは、学生が何を学び、すべての授業がどのようにつながりあって将来のキャリアに役立つかということを示すインパクトのある視覚的な記録になるのです。
Nicholas Crouseという学生は、各問題に対する答えをカラフルなインフォグラフィックで示し、その下に応答のテキストを添える形でeポートフォリオを作成しました。一方、 Shaune Grossという学生は、鉛筆と紙ですべての課題を完成させ、作品をデジタルで共有するために、自らが手書きしたページのスキャンを作品に添えました。どちらの学生も、複雑な問題に対する解答を導くまでの流れを追えるよう、2つのビデオプレゼンテーションも併せて提出しています。課題をeポートフォリオにまとめると、学生と講師がすべての応答を1ヶ所で簡単に確認できます。
「多くの学生から、Adobe Creative Cloudアプリを利用してeポートフォリオを作成できてありがたいという声が上がっています」とLuna氏。「学生の声に耳を傾けて、彼らが何に関心を持っているかを聞くことは、重要な機会です。学生は、自己を表現して創造性を発揮する自由を与えてやると、前向きに数学に取り組みます」
すべての授業でAdobe Creative Cloudの新しい利用方法を模索し続けることで、UTSAは学生のつながりを保ちながら強いコミュニティを作ることを目指しています。「Adobe Creative Cloudアプリへのアクセスを提供することで、学生のクリエイティブなデジタルストーリー制作を支援し、社会で役立つスキルの育成を促しています」とVito氏は述べています。