Adobe MAX 2021:スミソニアン学術協会、The Hydrous、Adobe Aeroのパートナーシップにより実現する 社会的意義のある直感的なARエクスペリエンス
アドビとスミソニアン学術協会、海洋保全に取り組む非営利団体The Hydrousのパートナーシップにより、遠隔学習を体験できる世界でも類を見ないARプロジェクトが発表されました。Adobe MAX 2021で実施されるAR関連セッションについてもご紹介します。
何百万もの人々が日々、拡張現実(AR)機能を使用して、顔面加工フィルター、ビジュアライゼーション、ゲームなどを楽しんでいます。しかし、ARはまだ始まったばかりの技術であり、スマートフォンとの組み合わせがもたらす可能性のほんの一部に過ぎないのだということを忘れてはなりません。世界中で40億台ものカメラ付きスマートフォンが使われているのですから、その可能性は計り知れません。
アドビでは、物理的な世界とデジタルを結びつけてくれるこの新しいメディアの可能性を探ることに注力しています。これは、クリエイターがより直感的な方法を使って、美しく豊かで社会的意義のある作品を作れるようにできる技術でもあります。実際に私たちを取り巻く世界と体験する人々の心を変えていく力を持った、素晴らしく本質的な体験ができるものが登場し始めています。
本日、アドビとスミソニアン学術協会(英語)、海洋保全に取り組む非営利団体The Hydrous(英語)のパートナーシップにより、遠隔学習を体験できる世界でも類を見ないARプロジェクトを発表いたします。
スミソニアン学術協会、The Hydrous、Adobe Aeroがいざなう海中のイマーシブな体験
このコラボレーションは、サンゴ礁などの海洋生態系が今まさに晒されている脅威についての認識を高めるイマーシブなインタラクティブ体験を作成するために始まったものです。その内容は、海洋生態系がいかに複雑で、その保全が地球と私たち自身の健康にとっていかに重要かを訴求し、同時に生きとし生けるものすべてと地球環境を結びつけて美しいストーリーを語るものでなければなりません。この取り組みは、The Hydrousが主導する「The Decade of Ocean Empathy」と呼ばれるプログラムの一環であり、国連の「持続可能な開発のための海洋科学の10年」の下で支持されています。
このプロジェクトを実現するために、私たちは真のドリームチームを結成しました。
- スミソニアン学術協会は、その素晴らしいオープンアクセス(CC0:いかなる権利も保有しない)の3Dコレクション(英語)の中から、サンゴの標本をスキャンしたオリジナルサンプルを提供しました。
- The Hydrousのチーフサイエンティストであるエリカ ウールジー(Erika Woolsey)博士は、科学顧問のセリーヌ デ ヨング(Celine de Jong)氏を含むチームと協力し、科学的根拠に基づいた魅力的なストーリーを構築しました。
- アドビの制作チームは、クリエイティブなARツールキットであるAdobe Aeroを使って、そのすべてに命を吹き込みました。
- 加えて、海洋保護活動家であり、市民サイエンティストでもあるダニー ワシントン(Danni Washington)氏がナレーションを担当しました。
このプロジェクトでは、事実に基づいて海洋生物の理解を深められるように、数々のインタラクティブな3Dアニメーションをフィーチャーしています。そしてビジュアル面では、実物から複製されたフォトリアリスティックなレンダリングやデジタルコピーが全面的に使われています。重要なのは、単にAR空間で3Dモデルが表示されるだけでなく、学習プロセスの鍵となる豊かなインタラクティブ性を備えたストーリーを実際に体験できるということです。対応するモバイルデバイスさえあれば、誰もがこの貴重で特別な環境に没入しながら重要な環境問題について学ぶことができます。
快適な自宅にいながらにしてサンゴ礁の世界に
Aeroアプリをダウンロードして以下のQRコードをスキャンするだけで、誰もがこの体験に没入できます。体験は8S以上のiOSで実行することをお勧めします。Androidのサポートデバイスのリストは、こちらのHelpX(英語)でご覧いただけます。この体験はより洗練されたARプロジェクトであるため、ロードに少し時間がかかることがあります。
AR Reef Alive (英語)
AR Reef Bleached (英語)
この体験に登場する3Dシーンには、さまざまなサンゴの標本をスキャンして得られたスミソニアン学術協会所蔵のオリジナルデータが含まれています。これらのモデルは最適化され、サンゴ礁やアニメーション化された海洋生物などの他の3D要素と共にリアルで没入感のある環境を作り出しています。また、Substance Painterで作成されたテクスチャや、ナレーション、音楽などのサウンドもシーンの演出に役立っています。
加えて、これらのシーンでは、Aeroのビヘイビアシステムを活用したさまざまなインタラクティブな場面も用意されています。体験者とシーンとのインタラクションをトリガーにして、インフォグラフィックス、アニメーション、ボタン、オーディオなどの要素が再生され、教育的効果がさらに高まっています。
また、この体験で使用されたデータはすべて、The Hydrousチームの海洋生物学者によって科学的に事実確認されたものです。
教育における体験を一新するインタラクティブAR
進化し続けるARのパワーを、歴史や自然界の理解や科学の学習に活用する方法を私たちは探っています。博物館は、物理的なコンテンツの展示が見られる美しい聖域ですが、それを実物に忠実なデジタルコンテンツで拡張し、限られた人々以外にも開放できるとしたら?それは、コレクション全体の一部しか展示室に置くことができない博物館にとっても物理的な制約からの解放を意味します。
イマーシブでインタラクティブな学習体験は、学習者の臨場感、主体性、共感性に影響を与えることが研究で明らかになっています。そのため、スミソニアン学術協会をはじめとする公的機関でも、AR技術の導入により、当事者の視点で学習体験ができるようになり始めています。
教育現場では、メッセージを1つのストーリーに統合して伝えることが重要です。トピックへの心理的共感を促すイマーシブな体験により、メッセージを最良の形で受け取ることができるようになるのです。
ARを使えば、例えば海底のサンゴ礁を間近で見るなど通常では体験できない環境を身近に感じさせることができます。さらに、静止した化石の展示では不可能な、サンゴが自己修復する様子など時系列による変化を見せることもできます。
ARは、教育を民主化し、イマーシブな体験を世界中の誰もが共有できるようにする自然な次のステップであり、ポジティブなインパクトをもたらす可能性を秘めています。
製品への直接のフィードバックに基づくAeroの新機能と強化点
スミソニアン学術協会とAeroチームとのパートナーシップは、プロジェクトの制作中に得られた機能に関する助言を含め、さまざまな点で充実したものでした。この実りある経験は、Aeroチームがリリースに向けて開発中だった新機能の検証に役立っています。その結果、今回のアップデートでは、編集コントロールを直接操作できる機能や、シーンを組み立てる際の視覚フィードバックの応答性向上により、ARクリエイターが複雑なアクションシーケンスをより直感的に作成できるようになりました。
- 動作の順序をドラッグ&ドロップ: 設定を削除したり再入力したりすることなく、アクションの順序の変更をドラッグ&ドロップでおこなえます。
- パラレルアクショングループ:複数のアクションを1つのグループにまとめ、すべてのアクションの再生の完了を待って次の再生が始まるようにできます。
- 動作の全体像を把握:動作のシーケンスの表示をシーンレベルとオブジェクトレベルで切り替えられるようになったため、複雑なシーンの全体像を見渡しながら、特定のアセットに関連するアクションの設定に集中できます。
- アセットの置換:場所決めのための仮置きコンテンツを、その配置や動作の設定を維持しながら、最終的なアセットですばやく置き換えられるようになりました。
- iOS版のコンテンツ表示フローがスムーズに:AeroアプリにログインしなくてもARエクスペリエンスの表示が可能になり、ARコンテンツへのアクセスがよりダイレクトになりました。
これらコンテンツ制作と表示のワークフロー改善で無駄な手順が減ることにより、より効率的な反復改善が可能になり、完成度の高いインタラクションを作成することができます。
Adobe MAX 2021のAero関連セッション
10月27~28日にかけて、無料でオンライン開催されるAdobe MAX 2021で実施されるAR関連セッションをご紹介します。
- 『S479 -拡張現実:ARがどのように世界を変えているか』
登壇者:Adobe Aeroのコミュニティマネージャー、キャリー ゴッチ(Carrie Gotch) - 『S475 -インタラクティブなARによる教育エクスペリエンスの再考』
登壇者:The Hydrousの創設者エリカ ウールジー博士(特別ゲスト)と、Aeroチームのウラジミール ペトコヴィッチ(Vladimir Petkovic) - 『L487 -インタラクティブな拡張現実の美術展の制作』
登壇者:ジェームズ ザッカリー(James Zachary)氏 - 『S478 - ARデザインの原則:イマーシブなエクスペリエンスを作成する方法』
登壇者:ヘザー ダナウェイ スミス(Heather Dunaway Smith)氏 - 『S480 -拡張現実に対応した3Dアセットパイプライン』
登壇者:ドン アレン スティーヴンソン3世(Don Allen Stevenson III)氏
Adobe AeroのInstagramチャンネルでは、MAXの開催期間中はもちろん、それ以降もフレッシュなARプロジェクトやアーティストを取り上げたライブセッションをお楽しみいただけます。他にもAeroのTwitterアカウントで最新情報を提供していますし、Behanceで他のユーザーの作品に触れ、インスピレーションを得ることもできます。AR作品を公開する際は「#AdobeAero」のタグ付けをお願いします。
スミソニアン学術協会とThe Hydrousのチーム、パートナーシップ担当のキンバリー ポットヴィン(Kimberly Potvin)、ARエクスペリエンス担当クリエイティブディレクターのウラジミール ペトコヴィック(Vladimir Petkovic)を含むアドビチーム、そしてコンテンツ制作を担当したBonfire Labsのチームに感謝いたします。
この記事は2021年10月26日(米国時間)に公開されたBuilding intuitive AR experiences that matter with the Smithsonian, The Hydrous, and Adobe Aeroの抄訳です。