Adobe Stockのモーショントレンド:Transformative Transitions − 斬新なトランジション

イメージ提供:Adobe Stock/Digital Juice

動画で画面が切り替わる際にあからさまな「観音開き」のトランジッションが使われていたのははるか昔のこと。現在では、トランジションの技術が進歩して、動く要素や流れるテキスト、色の遷移などが使われるようになっています。アニメーションのトランジションやオーバーレイは目新しい手法ではありませんが、クリエイターたちは新しいアプローチを駆使し、トランジションの要素に新風を吹かせています。「トランスフォーム型トランジション」は、注目度の高い今年のAdobe Stockクリエイティブのモーショントレンドのひとつ。もちろんトレンド入りには理由があります。トランジションはあっと驚く楽しい効果で人目を引くだけでなく、ブランドのビジュアルアイデンティティと、特定の色やロゴとを結び付ける極めて有効な手段でもあるからです。

様々な場面に活用できるモーションの技法

モーションデザインの分野では、従来のトランジションではなく、人目を引きやすいモーションの技法を活用して、ビデオや動きのあるグラフィックにブランドの個性を取り入れる新しい手法が模索されています。例えば、分割したロゴをマトリックストランジションでマージする手法や、ブランドカラーが旋回して渦を巻き、シーンの切り替えに合わせて渦がほぐれていくような手法がその一例です。

最近のAT&Tの広告には「トランスフォーム型トランジション」のトレンドがはっきりと表れており、広告ではAT&Tを思わせるテキストオーバーレイとブランドカラーを使った横方向に動くトランジションが採用されています。この2021年のコマーシャルでは、終盤でAT&Tのロゴが持つ特徴的な色とフォントをあしらい、画面上をすばやく真横に横断するトランジションを使用しており、最後にブランド名と製品情報が表示されます。また、紫と青のグラデーションにより、ブランドカラーがモーションに自然に馴染んでいます。

トランスフォーム型トランジションで重要なのは、ブランディングとビジュアルコンセプトにある種の統一性を持たせることです。Audacy(旧Entercom)は、近年、大型の企業買収によりブランドのペルソナを一新しました。新しいビジュアルの一部には、音楽関係の会社らしく、縦型の音量バーを連想させる要素が使われています。Audacyのバイスプレジデント兼エグゼクティブクリエイティブディレクターであるAnna McMichael-Kane氏は、最近のインタビューで次のように説明しています。「優れたモーションブランディングを展開するには、まず、自社のビジュアル戦略を十分に理解している必要があります。『このビジュアルシステムの場合はこのようなモーションにし、モーション同士はこのようにつなげる』ということを理解する必要があるのです」

Audacyの最新のモーショングラフィックとビデオではトランスフォーム型トランジションが多用されており、どのトランジションにも音量バーのコンセプトが使われています。この短いブランドビデオでも、Audacyのアニメーションロゴに音量バーのコンセプトが取り入れられています。

「このような面白いトランジションを使ってシーンを切り替えられるので、シーンが次々と自然に切り替わっていくように見えます」と、McMichael-Kane氏は語ります。「画面切り替えにトランジションを使うと、(視聴者は)次のシーンに入っていきやすくなります。文字通り、話された言葉を文字にして、視覚的に表現できますので。このようなトランジションは一見単純ですが、シーンが切り替わる瞬間さえも効果的に活用することができるのです」

動く要素が人目を引く理由

人間の脳は「動き」に注意が向く仕組みになっており、特にトランジションのモーションのような動きの初動には注意が引き付けられます。2003年に実施されたある研究(英語)では、「動作が起きた瞬間に注意が向けられる」とし、人間がこのような動作の初動に対して敏感であることを明らかにしました。

それからさらに後に『Journal of Vision』(英語)に掲載された研究でもこの概念は証明され、動き始めに目が向くことが確認されています。この研究によれば、派手な動きだけでなく、「ごく自然な動きであっても始まった瞬間に注意を引く」ということです。

クリエイターはこのような脳の特性を利用し、トランジションのテクニックを使用することで、特定の瞬間に注意を向けさせたり、特定のポイントを目立たせることができます。すばやく活発な動きだけでなく、ゆっくりとした滑らかな動きにも効果があるため、狙ったインパクトに合わせ、あえてゆったりとしたトランジションを採用して注意を引きつけることもあるのです。例えば、このeHarmony Australiaのコマーシャルでは、まずメインキャストの顔の部分にフォーカスし、その後、周囲に他のキャストの顔写真をマトリックスで並べることにより、マッチングアプリで出会いを待っている会員のコミュニティを表現しています。このような地味なトランジションでも、特定のポイントに注意を誘導して関心を高められることがわかります。また、各トランジションにeHarmonyのハートのロゴをあしらい、モーション部分を最大限に活用しています。

他のデザイントレンドとの組み合わせ

トランジションを活用する方法が多数あるのと同様、閲覧者の注意を引きながらブランドの特徴を表現する方法も様々です。人気のスタイルを組み合わせれば、ビジュアルストーリーに一貫性を持たせ、楽しい、おしゃれなモーションであらゆる瞬間を最大限に活用するのも造作ありません。

ヴィンテージ・ヴェイパーウエイブ手持ち撮影モーションなど、今年のクリエイティブトレンドの要素を組み合わせれば、トランスフォーム型トランジションを作り出すことができます。実際の活用例を挙げると、例えばStarbucksの冬の広告「Do You」では、ソフトなグラデーションと気分を上げる色をオープニングに配し、トランジションを使って滑らかにシーンを切り替えており、Optimumのテレビ広告では、タイトルのトランジションや緑と青のグラデーションにロゴとブランドカラーを取り入れています。

モーションツールはますます高度になり、クリエイターは、まったく新しい角度から、トランジションの新しいデザインを考えられるようになりました。McMichael-Kane氏も次のように語っています。「まったく新しい方法で色の組み合わせやモーションを考えられるこの未曾有の機会は、テクノロジーによってもたらされたのだと思います。より力強く、より存在感があり、より直接的な表現を模索できるようになったのです」

Adobe Stockのキュレーションギャラリーで、「斬新なトランジション」のモーショングラフィックステンプレートをご覧になり、創作のヒントにしてください。

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この記事は2021年9月14日にDanyelle C. Overboにより作成&公開されたAdobe Stock motion trend: Eye-catching transformative transitions抄訳です。