楽観と挑戦: Adobe Stock 2022年クリエイティブトレンド
クレジット : Adobe Stock / Roman Bratschi/AvantForm.
世界的なパンデミックの影響のもと2年近くを過ごし、私たちの生活は大きく変化しました。そして、新しい年を迎えても、まだ多くのことが不確かなままです。
1~2年前、ブランドはパンデミックとそれに伴うソーシャルディスタンス、マスクの必要性、その他の行動の変化に対し、慎重で控えめなメッセージで対応しましたが、状況は変化しつつあります。グローバルな課題が山積する中、快適さ、つながり、セルフケアといったテーマが引き続き取り上げられています。しかし、ほぼすべての産業分野においてリモートワークやハイブリッドワークが採用され、季節が変わるごとに加速するデジタル変革に対応しながら、私達の多くは、新しい現実を受け入れ、前に進んでいこうという気持ちが高まっているのではないでしょうか。
ビデオ会議、デジタル化により遠隔からも行えるなった業務、ソーシャルメディア、大規模なオンラインゲームコミュニティ、そして今や台頭するメタバースなど、私たちの生活の多くがオンラインで行われるようになった今、2つの大きなテーマが際立っています。ひとつは、多くの人々が、楽観的な感覚を強く求めているということ。楽しみ、気まぐれ、遊びへの抑えがたい欲求は、年齢、業界、ブランド、カテゴリーを問わず明白ではないでしょうか。そしてもうひとつは、自分自身や大切な人の健康を守るために、本当に意味あるつながりを必要としているということです。
これらの原動力は、深く人間的なものであり、そこから生まれ出るアイディアとそれを表現するのに必要なビジュアルは、互いに補完し合うものです。私たちは、Adobe Stockでの調査、業界の主要なキャンペーンにおいて、これらのテーマを様々な形で目にしてきました。今年の予測では、ストック業界、お客様の声、アドビ独自の調査から学んだことを統合し、写真、イラスト、ベクターグラフィック、デザインテンプレート、モーショングラフィック、3D、没入型体験など、知るべき最も重要なトレンドをお届けします。
Adobe Stockによる2022年のクリエイティブトレンドへようこそ。
■ビジュアルトレンド
クレジット:左 - Adobe Stock / MiriamDraws, 右 - Adobe Stock / Gerardo.
Powerfully Playful (パワフルでプレイフル)
楽観的で遊び心のあるテーマを提供するブランドやコマーシャルキャンペーンは、圧倒的に多くなったと感じます。Powerfully Playful(パワフルでプレイフル)は、明るく大胆な色使い、ゲームやダンス、アニメーションの要素、そしてノスタルジーを感じさせる楽しさに溢れたビジュアルを意味しています。ファッション、美容、食品、飲料など、様々な分野において、心が疲れた消費者に向けて、笑い、熱意、希望といった感覚に焦点を当てたビジュアルを使うのがトレンドになるのではないでしょうか。この根底にあるのは、どんなに困難な状況でも笑顔で前進し続けるという「気概」です。
クレジット:Adobe Stock / Hayden Williams/Stocksy.
The Centered Self (自分自身を中心に)
コロナウイルスの大流行の影響がまだ世界中に残っており、多くの人が公の場に復帰することに新たなストレスを感じる中、私たちは皆、ある程度の燃え尽き症候群や自信喪失といった、心折れる感覚と闘っています。不確実で困難な状況において、心の健康を優先させ、維持することの価値に多くの人が目を向けています。大坂なおみ選手やシモーン・バイルズ選手のような世界的に有名なトップアスリートでさえ、注目を集めるスポーツイベントから身を引いているように、私たち全員が持つ権利(つまり、心の健康のために強い境界線を行使すること)を認める動きが主流になってきているようです。
クレジット: 左 - Adobe Stock / IKON Images 右 - Adobe Stock / Jen Grantham Photography/Stocksy.
Prioritize Our Planet (この地球を最優先に)
環境と気候変動に対する社会の関心は、かつてないほど高まっています。2021年は洪水や火災などの自然災害が相次ぎ、気候変動の現実が常にクローズアップされる時代となりました。私たちが「Prioritize Our Planet(この地球を最優先に)」と名付けたこのビジュアルトレンドは、単にサステナビリティへの動きを継続させるだけでなく、環境破壊への道を逆行させるための大きな変化や、リーダーの世代交代に対しての強い願いを表現しています。消費者の環境に対する意識が高まり、洗練されるにつれて、主要なブランドはその価値観との調和を強調し続けることになります。
ギャラリーを見る: Prioritize Our Planet
クレジット 上から時計回りに Adobe Stock / Rennie Solis, Adobe Stock / master1305, Adobe Stock / Sergey Filimonov/Stocksy.
In the Groove (イン・ザ・グルーブ)
ダイナミックな動きを表現したビジュアルを、多くのキャンペーンで見かけるようになりました。静止画の広告でも、服や髪のうねり、踊るように動く体の優雅なラインを表現したビジュアルは、見る人を一瞬たりとも飽きさせません。ブランドキャンペーンの中心的な題材となる「動き」は、美しく視覚的な感動を与えるだけでなく、私たちが触れることなく身体性を体感できる方法の一つとして機能します。たとえ一人でいても、遠隔で仕事をしていても、社会的に離れていても、これらのビジュアルによって、少なくとも心の中では誰かと官能的につながることができるのです。
■デザイントレンド
クレジット 左 - Adobe Stock / 3DJustincase, 右 - Adobe Stock / Aleksey.
Soft Pop (ソフトポップ)
ソフトポップは、楽しくてしなやかなフォルムを特徴とするスタイルです。3Dで表現されたカートゥーンや、そのキャラクター設定から感じ取れるストーリー性、柔らかい質感の外見などが主な特徴です。ソフトポップは、遊び心にあふれた楽観主義と甘い色彩がにじみ出る、デザイン重視のビジュアルトレンドです。ここで繰り返し登場する要素には、絵文字、カートゥーン、個性的なシンボル、ソフトで丸みを帯びた、カーブした、または誇張された形状やフォームがあります。広告、レタリング、アイデンティティ、キャラクターデザインなどでは、立体的であったり、丸みを帯びたりといった特徴的でインパクトのある書体が登場し、このトレンドの大きな部分を占めています。
クレジット: Adobe Stock / rawpixel.
New Naturalism (ニュー ナチュラリズム)
このスタイルの特徴は、そのクリーンなモダニズムと、オーガニック感を臨床的と言っていいほど昇華させたスタイルによって定義されている点です。これらのビジュアルは、プロセスアート、ポストミニマリズム、クリーンライフにインスパイアされています。特に、ファッション、ビューティー、インテリアデザインなど、多くの業界でこのスタイルを採用し始めています。黒、白、テラコッタのカラーパレットに、苔むした深いグリーンのようなアースカラーをミックスさせることで、このスタイルは、自然への原点回帰を示唆しています。
クレジット 左 - Adobe Stock / Happy Dragon, 右 - Adobe Stock / Wiji Lacsamana.
Heritage Craft(受け継がれる手仕事)
ハンドメイドのイラストやデザイン要素で、創造的なクラフトと受け継がれてきた伝統への感謝を示す「Heritage Craft(受け継がれる手仕事)」。各地方の民芸品、パターン、イラスト、デザインを検証し、世界中から集め、組み合わせることでその良さを最大限に引き出すスタイルです。このスタイルは、カラフルなもの、手描きのもの、複雑で混沌としたもの、有機的や、幾何学的なものを混ぜ合わせながら、さまざまな地域のアートとデザインの要素を提示します。幾何学的な形状以外にも、人物や自然をテーマにしたものや、装飾的なセリフや手書きの活字が多く見られます。この傾向は、テキスタイルやパターンデザイン、パッケージやアイデンティティデザイン、イラストレーション、季節のステーショナリーやレイアウトなどで特に強く見られます。
クレジット 上から - Adobe Stock / Pixelbuddha, Adobe Stock/ orangeberry.
Otherworldly Visions(別世界のビジョン)
これは、少しシニカルでありながら想像力豊かで進歩的な代替現実を描くトレンドです。アフロフューチャー、ソラーパンク、ヴェイパーウェーブの美学からの影響と要素を融合させたこれらのデザインは、柔らかな色のグラデーション、幽玄なイラスト、目の錯覚、夢のようなコントラストを探求するワイルドなデザインの組み合わせも含まれます。高度に洗練され、知性を感じさせるこのトレンドは、サイバーパンクやSFの美学からハイテク要素を受け継ぎながらも、青々としたシュールなグラデーション、3Dの表面や質感、この世のものとは思えないファッションやセットデザインによって、スクリーン内外のまったく新しい場所に見る人を誘います。
ギャラリーを見る: Otherworldly Visions
■モーショントレンド
Metaverse Mix(メタバース ミックス)
メタバースとは、筆舌に尽くしがたいものを要約すると、ユーザーがオンラインで交流し、つながり、探索できる、仮想空間の世界。ますます多くのブランドが参画し、キャンペーンを盛り上げるためにデジタル効果、グリッド、グラフィックスを取り入れたビジュアルが氾濫し、インターネットから私たちの物理的現実にまで浸透しつつあります。メタバースが主流となるにつれ、その基礎となる美学は進化し、デジタルによる非現実と現実の世界の架け橋となりつつあります。
Get Moving (ゲット ムービング)
これは、ビジュアルトレンド「イン・ザ・グルーヴ」に続くモーショントレンドで、あらゆるメインストリーム分野でムーブメント、ダンス、リズムが大きな人気を集めていることを踏襲しています。Apple、Adidas、Toyota、Bud Lightなどのブランドは、誰もが「動きたい」だけでなく、「動く必要がある」と考えているようです。
Dimensional Delights(ディメンショナル ディライト)
甘美なセンス、そして気まぐれ感を、ハイパーリアリズムと融合したようなスタイルで、最先端の先端技術を駆使し、シュールな楽しさを演出したものです。スケール感、目の錯覚、カートゥーン効果などを駆使して奥行き感を表現されているものキャンペーンビジュアルでは今後ますます増えていくと思われます。ビジュアルエフェクトやアニメーションのソフトウェアがより安価で一般的になるにつれ、新しいアニメーションスタイルが生み出されることになります。実際、Adobe Stockでも背景、3D、モーショングラフィックステンプレートのコレクションでこういったスタイルを確認いただけます。
ギャラリーを見る: Dimensional Delights
Copy and Captions(コピーとキャプション)
テキスト、キャプション、サブタイトル、どのような形であれ、2022年のソーシャルコンテンツにテキストは、世界的に絶対に必要な要素になるでしょう。ソーシャルビデオの大半は音声なしで視聴されているため(視聴者の選択によるか、ソーシャルフィードのビデオがデフォルトでミュートで再生されるため)、テキストオーバーレイの追加は、Instagram、TikTok、Facebookなどのチャンネルで成功するビデオキャンペーンの作成に不可欠な要素となってきています。さらに、社会の多様性や寛容性を配慮したコンテンツの重要性を多くのブランドや一般の人々も理解し、制作方法も理解を深めつつあるため、聴覚障害者のアクセシビリティは主流の優先事項になっています。これらのキャプションは、特に芸術的であったり、「デザイン的」であったりするわけではなく、明確に、即座に伝えることを目的としています。
このトレンドレポートのフルバージョン(PDF)はこちらからダウンロードいただけます。こちらも是非ご活用ください。
いかがでしたでしょうか? 2022年のクリエイティブトレンドレポートが、皆様の効果的なビジュアルコミュニケーションのお役に立てれば幸いです。Adobe Stockをまだご利用でない方は、10点無料でお試しいただけます。日々のクリエイティブ制作にご活用ください。
また、Adobe Stockでは皆様からの作品も広く募集しております。作品販売に興味のある方はこちらからご参加ください。今年もどうぞよろしくお願いします。
この記事は2022年1月12日(米国時間)にBrenda Milisにより作成&公開されたOptimism and defiance: Adobe Stock 2022 Creative Trends forecastの抄訳です。