副業の動画編集スキルが本業での強みに
転職、フレックスタイム、リモートワーク。企業や労働者それぞれが自分たちに合った新しい働き方を模索している時代の中、旧来からの画一的な雇用形態をはじめ、「当たり前の働き方」の形はいま塗り替えられようとしています。
「副業」も近年広がる新しい働き方の一つ。しかし、言葉としては知っていても、副業を実際に経験したことがない、具体的にどのような働き方をするのか知らないという方も実はまだまだ少なくないのではないでしょうか。
本記事では、副業の一つとして人気の「動画編集」という仕事にスポットを当てて副業ワーカーの働き方をご紹介。コロナ禍を受けて動画視聴時間が増えたことで、動画編集スキルを持つワーカーが各分野で求められるようになってきています。
今回、470万人のワーカーと76万社のクライアントをつなぐオンライン人材マッチングプラットフォームを開発・運営するクラウドワークス(CrowdWorks)の協力を得て、動画編集スキルで新たな働き方を見つけたクラウドワーカーを取材しました。副業と本業とのバランスの取り方や、副業が本業にもたらした好影響など、実際の副業ワーカー視点からお話しいただきました。
興味のあった動画制作。育児休暇を機に動画編集での副業に挑戦
お話をうかがったのは電機メーカーでの営業職を本業とするTWORKS061834さん(登録名/以降 TWORKSさん)。2020年、社内初となる男性の育児休暇中に動画編集の副業を開始。数ある副業の中から動画編集を選択した理由をお尋ねしました。
「動画編集を始めたのは2020年の9月ごろです。翌月から半年間の育休に入ることになっていたので、その期間に何かスキルを身につけられないかと考えたことがきっかけでした。
具体的に何をしようかと考えていたタイミングで、会社を経営している友人から“今後会社で、動画を活用してSNSマーケティングに力を入れていきたいので動画編集をやってくれないか”という相談がありました。“そういうことなら勉強してやってみたい”と手を挙げたのが動画編集を始めたきっかけです」
ご友人の会社「ドリームアシスタント」が運営し、TWORKSさんが現在動画制作を手がける映像はこちら(ドクリッチチャンネル)
「動画編集には以前から興味がありました。高校生の時には卒業記念のムービー制作役を買って出たり、結婚式のオープニングムービーを自分で作ってみたり。せっかくのこの機会に、本格的に勉強して挑戦してみたいと思いました。また、本格的に仕事にするためにはまずいろんなジャンルに触れて知識を吸収していくことが大事だと思ったので、すぐにクラウドソーシングサービス・クラウドワークスにも登録し自身での案件獲得にも挑戦しました」
そうして本格的に動画編集の仕事に取り組みはじめたTWORKSさん。手応えはどうだったのでしょう。
正直なところ、“想像していたより結構しんどい”というのが率直な思いでしたね(笑)見て想像するのと実際に自分が作るのではやはり違っていたし、登録者が何万人もいるYouTubeチャンネルっていうのはやっぱりすごいんだなということを痛感しました。
1年以上副業を続けてきた今であれば、いただいた素材から大体の完成イメージが思い浮かびますし、発注者の言い回しから意図を汲み取る“勘所”が身についていますが、はじめたばかりの当時は作業時間の見積もりができませんでした。その点は、ある程度場数を経験して今は慣れてきました。
ただ、“知識や経験を身につけていかないと難しいんだな”ということをはじめのうちに身をもって学んだことが今のスキルにつながっていると思うので、いずれにしても思い切って飛び込んでよかったです」
Premiere Proの作業画面。ご友人の経営する会社「ドリームアシスタント」の動画を編集中
副業を始めるに際して初期投資や時間のハードルを工夫
初めての分野、働き方へ挑戦する上で、金銭面や本業・家庭とのバランスについてハードルをどう乗り越えたのでしょう。
「動画編集に挑戦しようというときに、PC購入やPremiere Proを契約したり、初期投資はそれなりにかかりました。私自身はじめのうちは赤字覚悟でした。
金銭面のハードルについて、私の場合は“将来的に回収できるか”を判断基準に考えました。“1案件○円で受けたとして、何件受けたら回収できるか”ということを勘定したときに、ある程度回収できる見込みがあると思ったので、それなりの初期投資を思い切ることにしました」
本業や家庭・子育てもある中、時間のやり繰りについて工夫していることについても教えてもらいました。
「もうすぐ2歳になる子どもがいますが、子どもがいる隣で仕事に集中するというのはやはりなかなか難しいですね。なので、子どもや妻が起きてくる前や昼寝のあいだを副業の時間にあてています。具体的には、平日は朝5時からの1〜2時間、土日は3〜4時間というような感じですね。
ただ、本業もあるので、あまり無理して詰め込むことはしていません。朝早く起きる代わりに夜は子どもを寝かしつけながら夜9,10時には寝ていますし、朝起きて“今日はしんどいな”というときは“明日やろう”と後回しにすることもあります。あまり無理に気張りすぎないように、本業や子育てと両立できる範囲の中でゆとりを残すようには心がけています」
家族との時間も大切にしたい。限られた時間の中でどう働くか
Premiere Proは初心者でもわからないことを検索すれば解決できるソフト
副業をきっかけに使い始めたPremiere Pro。今日に至るまでどのようにスキルを磨いてきたかをおうかがいしました。
「友人から“動画編集なら王道はPremiere Proだよ”と聞いてPremiere Proを使い始めました。操作方法については、その友人が勉強会を開いて一通りの基礎を教えてくれて、その後は、疑問に思ったりつまずいたりするごとにネットで調べて一つずつ、知識を付け足してきたような感じです。
初心者向けにYouTubeやnoteなどで丁寧にいろいろとまとめられているのでよく参考にさせてもらいました。体感として、初心者の方でもほとんどの情報はネット検索で十分何とかなるんじゃないかなと思います」
TWORKSさんの作業スペース
実際にPremiere Proを1年以上使用してみて、難しいと感じるところと優れているところについても率直に教えていただきました。
「動画編集に関して“できないことはない”と思えるほど機能が充実しているところがPremiere Proの大きな特徴の一つだと思っているのですが、何でもできすぎるが故に、何を使えばいいかわからず迷ってしまうという点が難しさでもあり、使いこなせれば強力な相棒になってくれるという点が同時に優れたところだと言えると思います。
特に初心者にとっては、“これだけある機能の中からどれを使えば良いんだろう”という迷ってしまうでしょうが、機能を一つひとつ使いこなせるようになってくれば、自分のスキルに応じて得意分野を広げたり高単価の依頼にもステップアップしていきやすいツールかと思います。
動画編集のスキルを磨くには、「デザイン」の観点で多くの映像作品を見直すこと
動画編集は一般的に「クリエイティブ」と呼ばれる仕事ですが、デザインの知識やセンスは必ずしも必要ではないとTWORKSさんは言います。
「見た目のデザインスキルやセンスに関して、私もそんなに自信があったわけではありません。デザインスキルは、“パターンに慣れること”によって身につくところが大きいと思います。
動画編集のポイントというのはテレビをはじめほかの映像にも実は共通していて、『デザイン』という観点で見てみると、日常の中で目にするさまざまなものからデザインのパターンを学び取ることができます。
いろいろな映像作品を“どういう意図でデザインしたんだろう?”という視点で見ていくと、優れたデザインのパターンが自分の中に蓄積されていくんじゃないかと思います」
「副業に挑戦したからこそ本業での活躍の場が増えた」
副業のメリットとして、新たなスキルの習得や収入アップなどが一般的に挙げられますが、副業が本業に与える好影響にはどのようなものがあるのでしょう。
「本業では営業パーソンをしていますが、副業でデザインスキルを身につけてきたことで、営業資料の配置構成などが非常に得意になったなと感じます。
また、展示会などで動画が必要になったときには、自ら映像まで引き受けられるようになりました。簡単な動画であればいまやスマホアプリで作成できますが、本格的な動画が作成できる営業パーソンは多くありません。これは副業に挑戦したからこそ持つことができた私独自の強みだなと感じます」
さらに一歩。新たな領域にも挑戦
今後さらに挑戦したいことも教えてもらいました。
「Premiere Proの次は、ロゴやカタログといった動きのないものも制作できるようにIllustratorを使えるようになりたいなと思っています。アドビ公式チュートリアルを参考にしながら挑戦しているところです。
動画からイラスト、イラストから画像加工、とできることや関心が広がったときに、十分な量と質の教材動画がそろっている点、ツール同士を連動しやすい点がアドビ製品を使うメリットの一つだなと感じます。
また、いずれ自分自身でもYouTubeチャンネルから収益化してみたいなという目標もあります。副業という柱を作ることで、自分が楽しく生きるための選択肢を広げていけたら嬉しいですね」
「副業の動画編集を続けるコツは仲間を作って刺激を受けながら楽しむこと
最後に、今から副業や動画編集を始められる方に向けたメッセージをお話しいただきました。
動画編集は、仲間がいればいるほど楽しい仕事です。
動画編集をしている人はなかなか実生活の中では周りに少ないかもしれませんが、TwitterやInstagramなどSNSを覗いてみれば、活躍されてる方とも気軽につながることができます。私自身、編集スキルを参考にしたり刺激を受けたりすることもあれば、内輪ノリで楽しく盛り上がることも。仲間意識を持てると、スキルの習得も仕事も一層楽しめると思うので、ぜひ楽しいつながりの中で、どんどんと挑戦してほしいなと思います。
(記事協力:クラウドカレッジ)
(ライター: 泉翔悟 )