アドビは2021年11月3日の文化の日から1ヵ月間、“不朽の名作をもし映画化したら?”をテーマにポスターを作るデザインコンテスト「勝手に映画化プロジェクト」を開催しました。制作条件は提示された書籍のリストから映画ポスターにする作品を選ぶこと、アドビのクリエイティブツール Adobe Creative Cloudを使うこと、そしてAdobe Stockの素材を使うことの3つ。デザインにハッシュタグをつけてTwitterに投稿するだけで応募が完了します。
このコンテストには250を超える作品が寄せられ、特別審査員・田島光二さんの審査のもと、金賞1名、銀賞3名、入選30名の受賞者が決定しました。
写真、イラスト、テクスチャなど、2億8千万点を超えるAdobe Stockの素材を使って生み出された作品たちはいずれも力作ばかり。ビジュアルだけで“この映画を見てみたい!”と思わせる、創意工夫に満ちています。
この記事では架空のポスターとは思えないほど力のこもったビジュアルを作り上げ、見事に金賞に輝いたMah HARAKI(マー ハラキ)さんに、ふだんのお仕事から、受賞作品の制作プロセス、Adobe Stockから目的の素材を見つけ出すコツについて伺いました。
「グラフィックデザインをメインに、広告やwebのビジュアル制作を行なっています。あとはPCスクールでAdobe Photoshop、Adobe Illustratorを教えることもあれば、写真撮影をすることもあります。基本的に“クリエイティブに関わることならなんでもやる”というスタンスですね。
アプリはPhotoshop、Illustratorのほか、Adobe Photoshop Lightroom、Adobe XDも使いますし、アニメーションを作るためにAdobe After Effectsも活用しています」
「2017年のAdobe MAXのときに初めてMAX Challengeに応募したのですが、そのときファイナリストまで残ることができたんです。それからはコンテストには極力出ようと決めていて。今回のコンテストも知った瞬間に“もちろんやるぜ!”という気持ちでした。
コンテストは金賞を目指す、1位を目指すということも目標ではあるのですが、コンテストに向けた作品作りそのものが、いろいろなアイデアを考えたり、ふだんとは違うアプローチを試すきっかけにもなります。ほかの方の作品から刺激を受けることもありますし、自分自身のスキルアップ、モチベーションアップにもつながっていると思います」
「リストにあった作品のうち2/3くらいは読んだことがあったので、そのなかから内容が記憶に残っているものを絞り込んでいきました。結果、いちばん鮮明に覚えていたのが、“目が覚めると虫だった”という衝撃的なストーリーの『変身』でした」
「まず作品のコンセプトやストーリーからイメージラフを起こします。今回の『変身』では基本的にストーリーに沿ったかたちで作ろうと決めていたので、部屋とわかるようにドアを置き、外からそれを覗き見るような構図、そして作品独特の不思議さ、不気味さをビジュアルで表現しようと考えました。
ラフが決まったら、必要な素材をAdobe Stockから探していきます。登場人物として必要な両親、バイオリンを弾く妹、3人の男、お手伝いさんの人物写真を選び、物語にも登場するリンゴなどを探していきました。宇宙を感じさせるような丸いオブジェクトは、もともと僕が取り組んでいるテーマ、宇宙観を織り交ぜようと選んだものです」
「僕の場合、まずは2つ、3つのキーワードを入れて検索をしてから、色で絞り込む、構図で絞り込むといった作業を繰り返しています。このとき、日本語だけでは希望の写真が出ないことがあるので、英語でも検索するようにしていますね。Adobe Stockは検索方法をかなり細かく指定できるので、フィルタをかけながら探していくと、すばやく目的の写真を探し当てられます。
ほかにも、“イメージは近いが絵としては違う”という場合には同じ作者のほかの作品をチェックしています」
「基本的に十分なピクセル数があり、全面にピントが合っているものを選ぶようにしています。
組み合わせる写真の撮影条件が近ければうまく合成できますが、色合いが違う写真しかないような場合には、Photoshopで調整をして合わせていくこともあります」
「自分のなかではどの写真からどの部分を使うというイメージはできているので、それに則って組み合わせていく感じです。素材を切り抜いてそのまま使うこともありますが、編集を加えているものもあります。たとえば老夫婦の写真は夫人だけを使い、さらに顔をニューラルフィルターやゆがみフィルターで変えていますし、回転、反転させて組み込んでいるものもあります」
「まず最初にセレクトした写真から要素を切り出していくのですが、そのときにクイック選択ツールやオブジェクト選択ツールを使うとかなり高い精度で切り抜いてくれます。以前のバージョンなら難しかった髪の毛やふわっとしたあいまいな輪郭も、最近のPhotoshopではきれいに選択できるようになったと思います。ここでざっくりと切り抜いた画像を使って全体の位置を決めてから、ブラシできれいに仕上げていきます」
「コラージュ作品を作るときは、ただ切って貼るのではなく、常に“画面の中で全体的にすべてが同じ空間にあるように見えること”を意識しています。
たとえば、重なる部分に影を描き足すとビジュアルに立体感が生まれますよね。こうした素材ごとの関係性を見極めて光と影を調整していくことで、統一感のある自然な空間を作り上げるようにしています」
「今回はクライアントワークと違って、あとで修正が入る心配はなかったので、統合したレイヤーを作ったあとで、Camera Rawフィルターを使って仕上げました。Camera Rawフィルターなら、色の調整だけでなくノイズを使って質感を加えることもできますから。本来の使いかたではないかもしれませんが、写真の現像にPhotoshop Lightroomを使っているので、自分にとってはこれが慣れたやりかたなんです(笑)」
「結果発表のBlog画面をスクロールしたら、金賞のところに自分の名前が出てきて……思わずソファにのけぞってガッツポーズしていました。本当にうれしかったです。審査員の田島さんは本を持っていくるくらい好きだったので、当然意識もしていましたし、いつも以上に熱を込めて作品を作りました。『本当にかっこいい。完璧だと思います』というコメントがうれしくてうれしくて、何回も読み返しました」
「もっと腕を磨いて、いまよりもっといいものを作っていきたいですね。今回はネット上のコンテストでしたが、リアルな展示の場でも多くの人に作品を見ていただけたらと思っています。
2022年3月に静岡・伊勢丹で開催される展示販売イベントでは、キャンパス地にプリントした作品にアナログで描き加えた作品を展示する予定です。デジタルデータをただプリントするのではなく、絵画として仕上げた作品と言えると思います。
2021年には、36FUJIというNFTプロジェクトにも参加させていただいたのですが、最近ではみなさん、NFTに続々参入されていますし、今年は個人でもNFTに取り組もうと作品制作をしています」
「シンプルに、“ものづくりが好き”という気持ちが一番大きいと思います。プライベートな作品を作るときにも生みの苦しみはありますが、それでも作っているときの高揚感や楽しさ、完成に近づいたときのドキドキ、ワクワクする気持ちは変わることがありませんから。
僕にとってPhotoshopやAdobe Stockを使ったコラージュ作品制作はライフワークであり、もはや生活の一部なんです」
ストーリーに点在するモチーフ素材から、圧倒的な幻想世界を見事に描き出したMah HARAKIさん。その発想力、センスはすぐに真似できるものではないでしょう。しかし、Adobe StockとPhotoshopがあれば誰でも、無限の可能性が広がるコラージュの世界に足を踏み入れることができます。
デザイン素材としてだけではなく、コラージュ制作のアイデアソースとして、そしてクリエイティブのトレーニングとして。高品質な写真、イラストが揃うAdobe Stockを活用してみましょう。
Mah HARAKIさん、この度は金賞の受賞おめでとうございます。
今後のクリエイティブ活動のご活躍を楽しみにしています。
Adobe Stock
https://stock.adobe.com/jp/
2022/2/24(木)20:00
CC道場にMah HARAKIさんが登場!
驚異のコラージュの手法に迫る!
https://youtu.be/14ooIqScKWA
Mah HARAKI
Twitter|
Instagram|https://www.instagram.com/mah.haraki/
Behance|https://www.behance.net/mah_haraki
[展示予定]
A.I.S Art&illustration shizuoka アートとイラストの祭典
場所:静岡伊勢丹6Fリビング=プロモーション
日程:第1弾 2022/3/23〜3/26・第2弾 2022/3/27〜3/29(第2弾の3日間に参加)