最新のフォント表現・技術を結集した書体を提供するAdobe Originals|Adobe Fontsパートナー紹介01

文字に豊かな表現力を与えるフォントは、クリエイティブには欠かせない道具のひとつです。アドビが展開する「Adobe Fonts」は、グラフィックデザインやweb、動画といったさまざまなフィールドでフォントをより自由に使えるようにするクラウドサービスで、2022年2月現在、500を超える日本語フォント、Adobe Fonts全体で2万以上のフォントを利用することができます。
この記事では、Adobe Fontsに参加する170を超えるフォントメーカーのなかから、一社をピックアップし、歴史や特徴、オススメのフォントを紹介していきます。

アプリだけじゃない? 実はフォントメーカーでもあるアドビ

今回、紹介するフォントメーカーはアドビです。
アドビといえば、Adobe PhotoshopやAdobe Illustrator、Adobe Premiere Proといったクリエイティブツールが注目されがちですが、アプリやサービスと同じようにフォントの開発にも力を入れてきました。
その歴史は古く、社内にフォントチームが発足したのは1989年。Illustratorも出始めたばかりで、バージョンがまだ88(Mac)や2.0(Windows)だった時代です。
なぜ、アドビがこれほど前からフォントに取り組んでいたのか、それはIllustratorのようなレイアウトアプリケーション上で美しいタイポグラフィを実現するためには、高品質なフォントが必要不可欠だったからです。また当時、成熟しているとは言えなかったデジタルツール上で、文字を正確にコントロールするためにはアプリケーションだけでなく、フォントの技術仕様そのものを開発する必要もありました。
こうした背景から、アプリケーションとフォントをいわばデザインにおける両輪として、ともに歩みを進めてきたのです。Adobe Fontsでは、アドビのフォントは「Adobe Originals」としてリリースされており、現在、150を超えるフォントファミリーを利用することができます。

Adobe Fonts | Adobe Originals

https://fonts.adobe.com/foundries/adobe

フォント表現・技術の可能性に挑む

いまや世界中で使われているAdobe Creative Cloudですが、多くの国と地域で、ユーザーが母国語で操作できるのは、アドビが自社内にフォントチームを持ち、あらゆる言語のフォント開発を行なっているからに他なりません。
それなら世界中にフォントチームがあるのでは? そう思うかもしれません。実はアドビでフォントのデザイン、開発に関わるセクションがあるのは本国・USと日本、この2か所だけです。
日本語には、縦組みと横組みがある/漢字、かな、英数字が混在する等、ほかの言語にはあまり見られない特徴があります。日本のフォントチームでは、こうした言語の特徴を生かし、フォントの技術とアプリケーションの機能をかけあわせによって、さまざまな表現にチャレンジしています。

たとえば、2010年にリリースされた「かづらき」では、金属活字以降、日本語のデザインでは標準になっていた正方形ベースのデザインから抜け出すことで、まるで筆で描いたような文字表現を可能にしました。文字それぞれで字幅が異なること、そして文字のかたちが前後の並びによって切り替わる連綿体(続け書き)を実装したことは、日本語フォントが持つ可能性を大きく広げるきっかけになったと言えます。

かづらき

かづらき https://fonts.adobe.com/fonts/kazuraki-sp2n

2017年に発表された「貂明朝」は、翌2018年にはカラーフォント化するとともに「貂明朝テキスト」をリリースしました。「貂明朝テキスト」は、「貂明朝」をベースに長い文章でも読みやすいように、かなのうねりを抑えた書体です。
こうしたフォントのデザインでは、日本語部分は日本のタイプデザイナーが、英語部分はUSのタイプデザイナーが担当しているのもアドビならでは特徴です。それぞれの専門家がデザインを行なうことでクオリティの高いフォントを作り上げているのです。

貂明朝 https://fonts.adobe.com/fonts/ten-mincho 貂明朝テキスト https://fonts.adobe.com/fonts/ten-mincho-text

2021年にリリースされた画家・ヒグチユウコさんの絵と文字をフォント化した「ヒグミン」では、文字のバリエーションに加え、文字そのものに色をつけたカラーフォント機能も実装。かわいいイラストやリボンもグリフとして搭載することで、デザインまでできるようになっています。まさに、“作家の世界観そのものを凝縮したフォント”と言うことができるでしょう。

ヒグミン https://fonts.adobe.com/fonts/higumin

日本語に加えて、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語を網羅した「源ノ明朝(Source Han Serif)」「源ノ角ゴシック(Source Han Sans)」もアドビフォントチームの大きな成果のひとつです。Googleとの共同開発によって誕生したこのフォントは、7ウェイトに各65,535ものグリフを持ち、誰もが自由に使い、アレンジできるオープンソースとして提供されています。
Adobe Fontsでは「源ノ明朝」「源ノ角ゴシック」のほか、「源ノ明朝」の派生フォント「源界明朝」も利用することができます。

源ノシリーズ

源ノ明朝 https://fonts.adobe.com/fonts/source-han-serif-japanese 源ノ角ゴシック https://fonts.adobe.com/fonts/source-han-sans-japanese 源界明朝 https://fonts.adobe.com/fonts/genkaimincho

もうひとつ、Adobe Fontsを有効活用するうえで覚えておきたいキーワードが「オプティカルスケーリング」です。

フォントの文字はどんなサイズでも自由に使うことができますが、書体のデザインによっては、小さく使用したときには端正に見えていた文字が大きくすると野暮ったく見えるというケースや、大きな文字でははっきり見える文字が小さくすると細すぎる、またはつぶれて読みにくいといったケースが起こります。
こうした視覚的な問題を解消するために、欧文フォントには使用サイズごとにデザインを調整する「オプティカルスケーリング」という設計方法を採用しているものがあります。
たとえば、Adobe Orignalsの「Arno」では、通常の設計に加え、見出しサイズでの使用を想定した「Arno Display」、小見出し想定の「Subhead」、本文想定の「Small Text」、キャプション等の小サイズを想定した「Arno Caption」が用意されており、それぞれ使用サイズに応じてデザインを調整しています。多岐にわたる使用が想定される欧文フォントを探しているときは、オプティカルスケーリングを採用したフォントを選ぶと、デザインクオリティをより上げることができるでしょう。
日本語フォントでは、同じデザインのまま小サイズから大サイズまで使用する「リニアスケーリング」が主流ですが、アドビでは2003年にリリースされた「りょうText」「りょうDisplay」から、日本語フォントでもオプティカルスケーリングの考えに基づいた書体設計に取り組んでいます。

オプティカルスケーリング解説

左:Arno Regularだけで大きさを変えたもの(リニアスケーリング)/右:大きさに合わせて、Arno Display、Arno Subhead、Arno Small Text、Arno Captionに変更したもの(オプティカルスケーリング)

豊富なバリエーションを備える欧文フォント

Adobe Fontsで提供されているAdobe Originalsの書体は、その多くが欧文フォントです。
“多すぎてどれをアクティベートしたらいいのかわからない”という場合には、まず、ロバート・スリムバック(Robert Slimbach)さんが手がけた書体をチェックしてみましょう。
ロバート・スリムバックさんは、1987年からアドビに在籍するタイプデザイナーです。活字時代の書体の復刻だけでなく、オリジナルフォントのデザインにも取り組み、これまでに「Adobe Garamond」「Utopia」「Minion」「Myriad」「Adobe Jenson」「Warnock」「Arno」「Adobe Text」「Trajan Pro 3」「Trajan Sans」等の欧文フォント、そして貂明朝の英数字など、実に多種多様な書体デザインを手がけており、その品質はタイプデザイン、タイポグラフィの分野でも高い評価を得ています。
ここでは、ロバートさんがデザインした書体のなかから、特にバリエーションの多い2つのフォントを紹介しましょう。

Robert Slimbachさん

Adobe Fontsではメーカー別、タイプデザイナー別にフォントを探すこともできる https://fonts.adobe.com/designers/robert-slimbach

「Acumin」はクセのない、透明感のあるサンセリフ書体です。
特筆すべきはそのファミリー構成で、ThinからUltra Blackまで9つのウェイトを持ち、さらに標準の字幅に加えて、Extra Condensed、Condensed、Semi Condensed、Wideの字幅バリエーションを備えています。そのすべてにRomanとItalicが用意されているため、ファミリー全体で、9ウェイト×5つの字幅×2つのスタイル=90フォントが揃います。

Acumin

Acumin  https://fonts.adobe.com/fonts/acumin

「Kepler」はAdobe Fontsのなかでも特に多くのバリエーションを持つセリフ書体のファミリーです。
6つのウェイト、2つのスタイル、Caption、Display、Subheadを含む4つの用途、Condensed、Semi Condensed、Extendedを含む4つの字幅(CondensedはDisplay、Subheadのみ)によって、168ものフォントを展開しています。

ベーシックなデザイン、豊富なバリエーションを備える「Acumin」「Kepler」。この2つをアクティベートしておけば、ほとんどの欧文の組版に対応することができるでしょう。

Kepler

Kepler  https://fonts.adobe.com/fonts/kepler

高い技術力、確かな品質、豊富なバリエーションを兼ね備えたAdobe Originalsの書体は、Adobe Fontsでいつでも利用することができます。グラフィックデザイン、web、動画の文字表現をより豊かにするために、Adobe Fontsをぜひともご利用ください。

Adobe Fontsを無料で試してみる
https://fonts.adobe.com/

Adobe FontsでAdobe Origianlsのフォントを見る
https://fonts.adobe.com/foundries/adobe