かなの豊富なバリエーションで気持ちの伝わる文字を届ける砧書体制作所|Adobe Fontsパートナー紹介02

フォントパートナー紹介|砧書体制作所

文字に豊かな表現力を与えるフォントは、クリエイティブには欠かせない道具のひとつです。アドビが展開する「Adobe Fonts」は、グラフィックデザインやweb、動画といったさまざまなフィールドでフォントをより自由に使えるようにするクラウドサービスで、2022年3月現在、500を超える日本語フォント、Adobe Fonts全体で2万以上のフォントを利用することができます。
この記事では、Adobe Fontsに参加する170を超えるフォントメーカーのなかから、一社をピックアップし、歴史や特徴、オススメのフォントを紹介していきます。

声に気持ちを乗せるのが声優なら、言葉に表情を乗せる“字優”がいてもいい

今回、紹介するフォントメーカーは砧書体制作所です。
「丸明(まるみん)」シリーズを筆頭に、「iroha gothic(いろはゴシック)」「丸丸ゴシック」等、表情豊かな書体を多く手がけており、なかでも特徴的なのは、1種類の漢字に対して多くのかなバリエーションを展開していることです。
たとえば「丸明」シリーズでは、「丸明オールド」に加えて6つのかな違いの書体があり、「いろはゴシック」に至っては12もの書体が用意されています。
なぜ、こうしたかな違い書体を多く制作するのか。それは砧書体制作所では「日本語において、意味を伝える漢字は主役、かなとアルファベットはその主役を立たせながら、言葉の気持ち、感情を伝えるもの」と考えているからです。
一般的に日本語の文章では漢字よりかなのほうが多く使われます。つまり、多くの割合を占めるかなにさまざまな表情、気持ちを乗せることができたら、文字によるコミュニケーションはより豊かなものになるはず。砧書体制作所の書体作りにはそうした想いが込められています。
2022年3月現在、Adobe Fontsでは、砧書体制作所が手がけた42のフォントを利用することができます。

砧書体制作所

https://fonts.adobe.com/foundries/kinuta-font-factory

伝わりかたから考える文字のかたち

砧書体制作所のユニークな書体ラインナップを紹介しましょう。
まず最初に取り上げるのは、砧書体制作所の代名詞とも言える「丸明」シリーズです。「丸明オールド」を中心に、かなを変えた「丸明Fuji」「丸明Katura」「丸明Kiso」「丸明Shinano」「丸明Tikuma」「丸明Yoshino」計7つのフォントで構成されています。
「丸明オールド」は2001年、砧書体制作所が最初にリリースしたフォントです(当時はカタオカデザインワークス)。文字の先端や明朝体の特徴とも言える漢字のウロコに丸みを持たせ、やさしい表情に仕上げたこの書体は、日本を代表する広告デザイナー・副田高行さんがサントリー「モルツ」の新聞、ポスターをはじめとするキャンペーンに使用したことをきっかけに、瞬く間に人気書体になりました。
明朝体の優雅な佇まいはそのままに、丸みのあるやわらかいトーンで伝える文字……いままでに類を見ない表情を持つ「丸明オールド」は、この書体の生みの親・片岡朗さんが広告業界で培ってきたレタリング技術に加え、“文字を通してメッセージをどう伝えるか”、“どうしたらより伝わるのか”に真摯に向き合い続けてきたからこそ生まれた、歴史に残る名書体と言っても過言ではありません。
また、この書体が生まれるきっかけとなったものがもうひとつあります。それが実はAdobe Illustratorなのです。
まだDTPが一般的でなかった1990年代前半、ベジェ曲線を使えばきれいな線や円がかんたんに描けることに衝撃を受けた片岡さんは、いち早くMacとIllustratorを導入。「丸明オールド」の特徴的な正円は、Illustratorがあったからこそ生まれたのです。もしこのとき、片岡さんがIllustratorと出会っていなかったら……「丸明オールド」は誕生しなかったかもしれません。

丸明シリーズ

砧 丸明オールド https://fonts.adobe.com/fonts/marumin-old-stdn *かなバリエーションあり

「丸丸ゴシック」は、一般的な丸ゴシック体よりもさらに丸みを持たせた書体です。
見るだけでやさしい気持ちになるような、やわらかい表情をたたえる文字は、丸明シリーズとはまた違ったコミュニケーションを生み出すことができます。
かなは、やさしく素直で元気な「丸丸ゴシックA」、癖のないしっかりとしたデザインの「丸丸ゴシックB」、落ち着きと伝統を感じさせる「丸丸ゴシックC」の3種類が用意されているほか、漢字にも丸みによって「Sr」「Lr」の2種類があります。

丸丸ゴシック

砧 丸丸ゴシックA https://fonts.adobe.com/fonts/maru-maru-gothic-a*かなバリエーションあり

「どんぐり」「きりこ」は片岡朗さんと木龍歩美さん、それぞれが切った紙のかたちを組み合わせて文字に仕上げるというユニークなアプローチで作られた書体です。その文字だと認識できるギリギリを見極め、文字を造形的に組み上げることで生まれたこのフォントは、圧倒的な親しみやすさとやさしさを感じさせながらも、そのインパクトは抜群。Adobe Fontsで利用できるのは、かなフォント「どんぐり かな」「きりこ かな」、英字フォント「Donguri」の3つですが、漢字がほしいときは砧書体制作所にオーダーできるようになっています。
また、「きりこ かな」には通常のフォントのほか、カラーフォント2種も用意されています。こうした新しいフォントテクノロジーに対して、積極的にチャレンジしているのも砧書体制作所の特徴で、文字が別の文字に変わる、文字が絵に変わるといった、ユニークなバリアブルフォントのオーダーメイドも受け付けています。

どんぐり・きりこ

どんぐり かな https://fonts.adobe.com/fonts/donguri-kana 砧 きりこ かな https://fonts.adobe.com/fonts/kiriko-kana

技術への挑戦という点では「芯」もデジタルフォントの限界に挑んだ意欲作です。
「芯」は明朝体を作る過程で描いた骨格そのものを、肉付けせずに極細フォントとして仕上げたもので、使用サイズごとに5つのウェイトが設定されています。たとえば「6K」というウェイトなら6ptのときに約0.07mmの線幅、「48K」なら48ptのときに約0.1mmの線幅になります。
指定以外のサイズで使う場合は少し注意が必要です。指定以上のサイズ(6Kを20ptで使用など)で使うと文字は太く見え、逆に指定以下のサイズ(48Kを20ptで使用など)で使うと、細すぎて文字が正しく印刷されない可能性があります。印刷の場合には、ベタ(100%)以外の濃度ではかすれることがある点にも留意しましょう。

芯

砧 芯 https://fonts.adobe.com/fonts/shin-stdn

「砧明朝体」は、“やさしさ”と“間”をコンセプトに作られた書体で、エレメントに直線を持たせず、すべての画線が曲線で作られています。アルファベットに、漢字のトメ、ハライなどの要素を取り入れているのも「砧明朝体」ならではの特徴で、文字の成り立ちの違いからなじませることが難しい、漢字、かな、英数字にも一体感が生まれています。

砧明朝体

砧 砧明朝体 https://fonts.adobe.com/fonts/kinuta-mincho-stdn

かなの違いがキャラクターになる!“字優”を体験できるフォントパック

最後に紹介するのは砧書体制作所のなかでもっともかなのバリエーションが豊富な「iroha gothic」です。ニュートラルな漢字に対して、12種類のかなが用意されており、かなによってさまざまな表情を出すことができるようになっています。

iroha gothic

Adobe Fontsのサイトでは、この12書体をまとめたフォントパック「仮名が変わるirohaパック」を公開しています。砧書体制作所が掲げる、声優ならぬ“字優”のコンセプトをぜひ体験してみてください。

Adobe Fontsでフォントパック「仮名が変わるirohaパック」を見る
https://fonts.adobe.com/collections/iroha-pack

ここで紹介したフォント以外にも、Adobe Fontsでは砧書体制作所の「令和 かな」「山本庵」「山本庵クラシック」も利用することができます。グラフィックデザイン、web、動画の文字表現をより豊かにするために、Adobe Fontsをぜひともご活用ください。

Adobe Fontsを無料で試してみる
https://fonts.adobe.com/

Adobe Fontsで砧書体制作所のフォントを見る
https://fonts.adobe.com/foundries/kinuta-font-factory

砧書体制作所
web|https://www.moji-sekkei.jp/
Twitter|https://twitter.com/kdw_moji