卓越した造形美でメディアを問わず“映える”文字を生む視覚デザイン研究所|Adobe Fontsパートナー紹介03

Adobe Fontsパートナー紹介03 VDL

文字に豊かな表現力を与えるフォントは、クリエイティブには欠かせない道具のひとつです。アドビが展開する「Adobe Fonts」は、グラフィックデザインやweb、動画といったさまざまなフィールドでフォントをより自由に使えるようにするクラウドサービスで、2022年4月現在、 600を超える日本語フォント、Adobe Fonts全体で2万以上のフォントを利用することができます。
この記事では、Adobe Fontsに参加する170を超えるフォントメーカーのなかから、一社をピックアップし、歴史や特徴、オススメのフォントを紹介していきます。

デザイナーの視点から時代にない文字を作り出す

今回、紹介するフォントメーカーは視覚デザイン研究所(VDL)です。
「ロゴG」「ロゴJr」「ギガG」「ギガJr」「ラインG」「メガG」シリーズなど、デザイン性と視認性を両立した質の高い書体を提供しており、印刷、web、映像と表現するメディアが変化するなかでも、常に目的にフィットする、魅力あるフォントを生み出しています。
フォントの文字を並べるだけでロゴのような力強さを生み出せる、書体制作の秘密はどこにあるのでしょうか。その答えは視覚デザイン研究所の足跡から読み解くことができます。

視覚デザイン研究所は1988年、葛本京子さん、葛本茂さんによって設立された会社です。
もともとシャープ株式会社の宣伝部に勤めていた葛本茂さんは、1977年、葛本京子さんとともに広告会社・株式会社ジャパン・アド・クリエイターズ(JAC)として独立。シャープの広告、カタログ等のデザインを手がけるなかで、シャープのワープロ「書院」シリーズに搭載するフォントをデジタル化してほしいという仕事が舞い込みます。
この依頼をきっかけに、葛本さんはデジタルフォント制作を始め、その後、これを事業化。こうして設立されたのが、現在の視覚デザイン研究所です。

シャープ・日本語ワープロ「書院」WD-A341・WD-A321カタログより(1990年12月)

シャープ・日本語ワープロ「書院」WD-A341・WD-A321カタログより(1990年12月)

ワープロの時代から来たるべきパソコン時代を見据え、時代が求めるフォントをデザイナー目線で作り出す……視覚デザイン研究所のフォント作りがスタートしました。
明朝体、ゴシック体、丸ゴシック体といった標準書体を抑えつつ、ロゴやキャッチコピーに最適なデザイン書体を多く発表してきたのは、葛本さんがフォント制作と並行して広告デザインの現場に立ち、その時代のデジタルフォントに欠けている文字表現を追求してきたからに他なりません。そしてその姿勢はいまなお、受け継がれています。
使う側の視点で書体のアイデアを着想し、これをかたちにしてフォントとして仕上げるというユニークなアプローチを採っているからこそ、視覚デザイン研究所の書体はメディアを問わず、時代を問わず、強い輝きを放っているのです。

デザイナー目線を持っているからこそ発想、実現できたのが、フォントの多ウェイト展開です。
通常、デザイン性が高いフォントはコンセプトを体現できる範囲のウェイトでしか作られず、単一のウェイトしか持たない書体も多くあります。しかし、使い手としては複数のウェイトがあるほうがデザインに柔軟性が生まれ、デザインの統一もしやすくなります。こうした理由から、視覚デザイン研究所の書体はほぼすべてが5〜8つのウェイトを備えています。

VDL ウェイト展開例

視覚デザイン研究所のwebサイトではすべてのウェイトを閲覧可能 https://www.vdl.co.jp/

Adobe Fontsで利用できる視覚デザイン研究所の書体は、27ファミリー・39フォント。標準書体を除き、各1ウェイトのみですが、すべての書体に豊富なウェイトバリエーションがあることを覚えておくと、より多様な表現ができるようになるでしょう。

Adobe Fonts / VDL

https://fonts.adobe.com/foundries/visual-design-laboratory

とにかくキャッチー&読みやすい!視覚デザイン研究所の文字

視覚デザイン研究所の書体ラインナップを紹介しましょう。
最初に紹介する「ロゴナ」は、文字の正方形いっぱいにデザインされた現代的なゴシック体で、紙媒体だけでなく、webやスクリーンメディアにおいても高い可読性、視認性を確保した書体です。
親しみやすさ、かわいらしさを感じさせる文字の表情は、あらゆるデザインにマッチし、ゲームのUIにも採用されています(ゲームでの使用には別途、視覚デザイン研究所とのライセンス契約が必要です)。

ロゴナの採用事例:Nintendo Switch『マリオゴルフ スーパーラッシュ』(c) Nintendo/CAMELOT

ロゴナの採用事例:Nintendo Switch『マリオゴルフ スーパーラッシュ』(c) Nintendo/CAMELOT

「ロゴG」は“文字組するだけで、ロゴタイプ”をコンセプトに作られたフォントです。漢字・かなともにボディいっぱいにバランスよくデザインされているので、細かい字間調整をしなくても、まとまりのある文字を組み上げることができます。8ウェイトに加え、さらに太い「ロゴGブラック」があります。
「ロゴJr」は「ロゴG」の漢字はそのままに、かなによりやわらかい表情を加えたもので、文字を並べるだけでグラフィカルなロゴ、キャッチコピーに仕上がります。「ロゴG」同様、8ウェイトに加えて、さらに太い「ロゴJrブラック」があります。
このほか「ロゴG」「ロゴJr」の角を丸めた「ロゴ丸」「ロゴ丸Jr」もあり、Adobe Fontsでは各書体1ウェイトを使うことができます(「ロゴGブラック」を除く)。

VDL 書体見本

VDL ロゴG https://fonts.adobe.com/fonts/vdl-logog

「メガG」は心地よいアンバランスさを持った不思議なデザインのフォントです。途中で止めたかと思えば、伸ばしすぎたようにも見える文字は、一文字ずつでは不揃いなようでも、並べてみるとリズミカルで楽しい印象に仕上がります。
丸ゴシック版「メガ丸」も用意されており、各8ウェイトのうち、1ウェイトがAdobe Fontsで利用できます。

VDL 書体見本

VDL メガG https://fonts.adobe.com/fonts/vdl-megag

「ラインG」はすべての画線が直線で構成されたフォントです。直線で構成すると味気ない、無機的な印象になりがちですが、「ラインG」では、文字ひとつひとつに人の手の動きを感じさせる有機的な造形に仕上げています。角を丸く仕上げた「ラインG アール」もあり、直線的ながらもやわらかい印象を生み出すことができます(8ウェイトのうち1ウェイトが利用可能)。

VDL 書体見本

VDL ラインG https://fonts.adobe.com/fonts/vdl-lineg

「ラインG」と同じく直線で構成されている「ギガG」は、「ラインG」より角を増やすことで文字のかたちをはっきりと際立たせ、読みやすさと誘目性を両立させたフォントです。角に丸みをつけた「ギガ丸」、かなに遊び心を加えた「ギガJr」「ギガ丸Jr」も用意されています(5ウェイトのうち1ウェイトが利用可能)。
「ラインG」「ギガ」シリーズをはじめ、“丸”がついている書体は同一骨格の処理違いと思われがちですが、視覚デザイン研究所の書体では、かなが個別にデザインされているのも注目したいポイントです。

VDL 書体見本

VDL ギガG https://fonts.adobe.com/fonts/vdl-gigag

視覚デザイン研究所の最新書体は、2021年に発売された「黒明朝」「G明朝」です。
「黒明朝」は明朝体特有の気品のある佇まいに、星やリボンのような要素を加えたフォントで、文章に優雅な印象を与えることができます。ファンタジー、浪漫、夢物語……そうしたイメージの演出に最適な書体と言えるでしょう。
「G明朝」はハライ・ウロコといった日本語書体特有の要素に、カリグラフィーペンによる欧文書体の要素を取り入れることで、和欧の調和を試みた意欲的なフォントです。日本語としての読みやすさを持ちながらも、ゴシックな世界観を感じさせる文字は、ほかの書体にはない唯一無二の魅力になっています。
「黒明朝」5ウェイト、「G明朝」8ウェイトのうち、Adobe Fontsでは各1ウェイトを使うことができます。

VDL 書体見本

VDL 黒明朝 https://fonts.adobe.com/fonts/vdl-kuromincho

こうした“映える”書体ばかりではなく、標準書体も充実しています。
「V7明朝」「V7ゴシック」「V7丸ゴシック」の3ファミリーは、製品版とまったく同じ5ウェイトすべてをAdobe Fontsで利用することができます。“その時代にないものを作る”という視覚デザイン研究所のフォント制作のポリシーはここでも発揮されており、従来の活字由来の文字や写植の流れを汲むデザインとは一線を画す文字に仕上がっています。

このほかにも、筆・ペン書シリーズ「京千社」「ペンジェントル」「ペンレディ」「ペンレター」、モダンシリーズの「アドミーン」「ペタG」「テラG」「ヨタG」等の各1ウェイトがAdobe Fontsで利用できます。どこで使っても“映える”視覚デザイン研究所の書体を、ぜひ体験してみましょう。

VDL 書体見本

優雅でキャッチー、かわいいフォントパック

多種多様なバリエーションを持つ視覚デザイン研究所の文字。
今回は、このうち優雅でキャッチーな印象に仕上がる7の書体をフォントパックとしてまとめました。
目を止めずにはいられないインパクトのある文字をグラフィック、web、映像で使ってみましょう。ロゴやタイトル、インパクトを出したいデザインには最適な書体が揃っています。

Adobe Fontsでフォントパック「優雅でキャッチーなパック」を見る
https://fonts.adobe.com/collections/elegantly-distinctive

VDL フォントパック

Adobe Fontsを無料で試してみる
https://fonts.adobe.com/

Adobe Fontsで視覚デザイン研究所のフォントを見る
https://fonts.adobe.com/foundries/visual-design-laboratory

視覚デザイン研究所
web|https://www.vdl.co.jp/