GIGAスクールデバイスの創造的活用を加速する~授業・課外活動に役立つAdobe Creative Cloud Express入門
小中高校向けにアドビが無料提供するクリエイティブツール、Adobe Creative Cloud Express。GIGAスクールデバイスを「授業・課外活動でより効果的に活用したい」とお考えの教育関係者を対象に、Adobe Creative Cloud Expressの概要や活用事例をご紹介したオンラインセミナーのレポートをお届けします。
GIGAスクール構想の本格始動2年目スタートを控えた2022年3月29日(火)、学校教育関係者を対象に「GIGAスクールデバイス活用 オンラインセミナー <Creative Cloud Expressって何ができる?>」が開催されました。多くの学校で管理・運用体制の確立やオンライン授業での活用が中心となった昨年度よりも、「もっとGIGAスクールデバイスを授業・課外活動の充実に役立てたい」という声に応えるべく企画された本セミナー。アドビが小中高校向けに無料提供するAdobe Creative Cloud Expressの特長や初歩的な操作方法、活用事例を通して、創造的なGIGAスクールデバイス活用のヒントを得る機会となりました。
学校での利用に適したクリエイティブツール
1時間のセミナーは前半・後半に分かれ、前半はAdobe Creative Cloud Expressの概要と制作できるものの紹介からスタート。後半は具体的な使い方のガイドとともに、実際の活用事例を展開する流れです。Adobe Creative Cloud Express教員向け研修のインストラクターも務める足立美穂氏がセミナーを進行します。すでに複数回にわたり教育委員会・学校の要望を受けてAdobe Creative Cloud Express研修を開催している経験から、学校現場の先生がたが知りたいこと、初めて使うときの迷いどころなど、限られた時間の中でポイントを押さえて説明していきます。
まずAdobe Creative Cloud Expressの大きな特長として挙げたのは、ブラウザベースであること。使用機材を問わず、ネット回線さえあればすぐに使えるという運用負荷の低さは、学校現場での使用に適した利点といえます。(iPadやタブレットはアプリのインストールが必要)
今回は、初めてAdobe Creative Cloud Expressを知るというかたにも向けた入門セミナーとして、ブラウザのどこからAdobe Creative Cloud Expressを立ち上げるか、初歩から丁寧に説明が進みます。
小中高向けAdobe Creative Cloud Expressの無料アカウントを持つ場合「学校のアカウントでログイン」からログイン
ログインした先に現れるAdobe Creative Cloud Expressホーム画面には、豊富なデザインテンプレートがずらり。ここで簡単なデモ制作を披露しながら、ゼロから全て作るのではなく、気になるテンプレートを選んで作り始められる気軽さを体感的に伝えます。
またその途中、作業内容がクラウド上に自動保存されることや、制作中に迷っても1クリックでホーム画面に戻れることにふれ、幅広い学齢で安心して使用できる使い勝手の良さを示しました。
作品はリンク共有でき、発信がもっと手軽に
制作物(Adobe Creative Cloud Expressでは「プロジェクト」と呼ぶ)は自動生成されるリンクを共有することで、いつでもどこでも見ることが可能。表現と発信を一つのツールで完結でき、先生から児童生徒、保護者への連絡がスピーディかつ簡単に行えると伝えます。
また特徴的なのが、1つの制作物を複数名で共有し、共同編集できること。アカウントであるメールアドレスの入力・送信だけで招待できる手軽さにふれ、先生同士で有効活用したい探究学習などの教材をAdobe Creative Cloud Express上で作成、共有することを提案します。
招待したいアカウントのメールアドレスを入力すると、プロジェクトの共同編集権が付与され、招待通知メールが届く
初心者のつまずきポイントもフォロー
続いて足立氏は、「最も重要なポイント」として、ホーム画面のAdobe Creative Cloud Expressアイコン下にある「+」ボタンにフォーカス。クリックするとAdobe Creative Cloud Expressで制作できるメニュー一覧が表示されます。
Adobe Creative Cloud Expressアイコン下にある「+」ボタンをクリックすると制作メニューが一覧で見られる
テンプレートの数々が並ぶホーム画面は、何気なく訪れた人も制作意欲やアイデアが刺激される一方で、「動画を子どもたちと作りたい、探究活動でWebページを作りたいなど明確な目的を持って訪れた人ほど迷いやすい」と指摘。学校内で想定される具体的な用途例をいくつか挙げながら、すでに目当てのフォーマットやアウトプットのイメージがある場合は、メニュー一覧から始めることを勧めます。
学校の幅広い表現制作に対応する3つの制作 フォーマット
Adobe Creative Cloud Expressで制作できるのは、グラフィック、ビデオ、Webページという主に3種類。Adobe Creative Cloud Express として生まれ変わる前のAdobe Sparkから変わらないものの、より使いやすく、より高度な作品づくりに対応できる機能が追加されました。
<グラフィック>
クラスのスローガン、手洗い場のポスターなど、新年度にすぐ活用できそうな作品例を紹介しながら、追加機能の一つである画像の「背景の削除」を使った作品をピックアップ。追加ソフトを必要とせず、オールインワンで簡易的な画像加工や動画編集もでき、クオリティの高い制作活動がより身近になったことがうかがえます。
人物画像の背景をワンクリックで削除。別途画像加工ソフトを用意することなく、高度な編集も簡単に行える
掲示物として印刷したり、学校のSNS用の画像を用意したり、用途に合わせてサイズを自由自在に変更できることにもふれました。
<ビデオ>
スライドを作成する感覚で、写真や動画を自由に組み合わせて1本のストーリーに仕上げていくスタイル。順序の入れ替えやナレーションの録音も簡単にできるので、調べ学習のまとめなどにも活用できそうです。
Adobe Creative Cloud Expressは内蔵のBGMのほか、Adobe Stockなど無料素材も豊富に用意されており、自由に使えることが大きなメリット。課題やテーマに合わせて動画、画像、楽曲などすべての素材をオリジナルで揃えることは時間も手間もかかります。
「温泉に入るサル」など題材によっては個人では用意しづらい素材も、検索してすぐ利用できる
使用した素材の撮影者名などクレジットリストが自動で挿入されることにもふれられ、子どもたちは気軽に制作が始められると同時に、著作権への配慮について学ぶこともできそうです。
使用した素材のクレジットリストが自動生成される。自前の素材を使う場合は削除可能
<Webページ>
コーディング不要で作れるWebページは、作業画面と実際の本番画面の表示がほぼ同じ。テキストや画像、ボタンの配置など仕上がりを確認しながら構成できます。また、レスポンシブ対応で端末の画面サイズに合わせて表示が最適化されるので、レイアウト崩れに気を取られずWebページの内容そのものに集中して制作を進められます。
仕上がりを確認しながらテキストや写真を組み立てていくだけ。作成したビデオや別のWebページへのリンクも簡単に挿入できる
活用イメージが広がる基本操作デモ
セミナー後半では、3つの制作形式それぞれの基本的な操作方法をデモンストレーション。初めてAdobe Creative Cloud Expressを知る人も授業での活用イメージがもてるように、実際の作業画面で一つ一つ手順を追ってガイドします。クラスのスローガン、運動会の案内ページなど、学校で欠かせない表現制作と発信のヒントになるような題材を取り扱ったことで、各参加者の中で様々な活用がイメージできた様子です。
運動会の案内など、子どもたちや保護者への連絡にすぐ使えそうなアイデアが満載
セミナー中も終始チャットを通して質問が寄せられ、参加者の関心の高さがうかがえました。終了後アンケートでも、Adobe Creative Cloud Expressを活用できそうなシーンとして「プレゼン指導」「自己紹介ビデオ作成」といった具体的なアイデアが多数寄せられたほか、「児童生徒に自由にさわらせてあげたい」と創造性の発揮に期待を寄せる声も。
Adobe Creative Cloud Expressが先生や子どもたちのクリエイティブ活動のハードルを下げるツールとしてGIGAスクールデバイス活用の後押しとなるとともに、豊かな表現制作の体験や伝える力が育まれることが楽しみです。
セミナーアーカイブ動画はこちら(どなたも無料でご視聴いただけます)