デザインフィードバックの前提になる「質」とは何?| Design Leaders Collective

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Design Leaders Collectiveは2022年4月からスタートしたエンタープライズで働くデザイナー向けのマンスリーイベントです。スタートアップ、制作会社、代理店など組織体制や規模によって抱える課題は様々。本イベントでは、エンタープライズで働くデザイナーが直面する課題の情報共有とディスカッションを目的としています。

5月のイベントでは参加者の意見を交えながら、良いフィードバックに必要な前提条件やマインドセットに関して情報交換をしました。フィードバックの仕方はケースバイケースではありますが、定型化で手法やプロセスが幾つか見つかりました。

もくじ

  • 良いフィードバックの基盤を整える
  • デザインチームに合うやり方を模索する
  • 自社に合う作り方を明文化

良いフィードバックの基盤を整える

デザイナーではなく、成果物にフォーカスしたフィードバックになるよう、ファシリテーションが必要です。「〇〇はなんとなく違う」「△△なんて使いにくい」といったリアクションに近い表現は、作った方への意見に聞こえてしまう場合があります。そうした意見を受け入れつつ、「なぜそう感じるのか?」「本プロジェクトで設定したゴールのどこに合わないのか?」といった一歩踏み込んだ質問が不可欠です。

成果物にフォーカスするためにも、何のために作っているのか明確にする必要があります。特に若手のデザイナーだと作り切る、完成させることを目的にしがちです。それだとデザインのプレゼンテーションの際も表層的な説明になりがちで、フィードバックの内容も表層的かつ細かなところへ集中していきます。

なぜ作っているのか。作ったことによってユーザー(又はクライアント)がどうなっていると望ましいのか明文化・視覚化が不可欠です。プロジェクトに関わる方全員がゴールを理解していることが望ましいですが、皆がきちんと理解しているとは限りませんし、時間が経てば忘れてしまうこともあります。視覚化した中間成果物やドキュメントなど立ち返る場所をつくることもブレないフィードバックには欠かせません。

イベントに参加されていた方のなかにはテーマ分類したコンセプトボードを作ったり、要件定義書を作っていました。たとえ感覚的なフィードバックだったとしても、判断基準になるものがあるとないとではフィードバック後に修正・改善がしやすくなります。また、フィードバックなど対話を通して方向修正や追加すべき情報が見つかる場合もあります。誰もが最新の情報へアクセスできるようにクラウドサービスで共有するのもエンタープライズ環境でも当たり前になりつつあります。

ダイアグラム 自動的に生成された説明

フィードバックの要素を分解し、テーマごとに参加者と意見を出し合いました。

デザインチームに合うやり方を模索する

フィードバックの仕方だけでなく、何を重要視してフィードバックしているか参加者と情報交換しました。デザインを評価する際「クオリティ(質)」といった言葉が使われることがありますが、プロジェクトの目的だけではなく体制や予算でも質の捉え方が変わることがあります。

イベントでは質の判断には「一貫性」が欠かせないと考える方が多くいらっしゃいました。同じ形状や言葉遣いの一貫性だけでなく、プロジェクトの目的からアウトプットまでの一貫性があるかといった意味も含まれています。

たとえパッと目の見た目が良かったとしても、前工程で定義したコンセプトからかけ離れているのであれば質が高いアウトプットができているとは言えません。こうしたズレを減らすためにもプロジェクトに関わる方との意見交換と、それに基づいた視覚化・明文化は不可欠です。アウトプットの仕方は参加者によって異なるものの、前提条件を合わせる活動は必須と考える方が多数いました。

一貫性だけでなく、「伝わりやすさ」「分かりやすさ」「使いやすさ」といったフレーズが出てきましたが、判断基準を合わせないと個々の視点で意見を発してしまう恐れがあります。論理的に話せば良いという意見もありましたが、それぞれが考える論理で意見を出してしまうといつまで経っても平行線です。私たちデザイナーが使う言葉には様々な意味とニュアンスが含まれているので、それらをどう解体・解釈して関わる方と共有するかが課題になります。

自社に合う作り方を明文化

共通項は幾つかありましたが、参加者の背景が異なっていたこともあり、重要視しているところが異なる場合もありました。ある方は「ブランドメッセージと合うか」を重要な質と捉えていましたが、別の方は「UIとしての使いやすさ」が重要としていました。どちらも正しいですが、下記の項目によってフィードバックで重要視するところや進め方が変わるのではないかと仮説しました。

デザインフィードバックが難しいのはデザインチームだけでなく個々のプロジェクトによって項目の条件が変わるからだと思います。定型化が難しいものの、ある人の頭の中にあるだけではチームがスケールしませんし、デザイナーも成長しません。今回のように様々な背景をもつ方が集まって情報交換するだけでも、より良いフィードバックの基盤が何か少し見えてきました。どの組織でもうまくいくフィードバックの仕方は存在しないかもしれませんが、チームが大事にしている「質」を明文化するだけでも少し前進するはずです。