Amazon が Substance 3D を使って実現した、オンラインの AR ショッピング体験
新しいソファを買うときに、何種類も家に持ち込んで、リビングルームでの見え方を比較するのはあまり現実的とは思えません。しかし拡張現実を使えば、そうしたショッピング体験が思っているより身近なものになるかもしれません。
Amazon は、オンライン小売業界のリーダーとして、顧客と商品の距離を縮めるテクノロジーの新しい活用方法を常に探求しています。
その一環として、Amazon は Amazon Development Center に 3D デジタルスタジオを設置し、Amazon 社内の増え続ける 3D アセットに対する需要に応えられるだけの信頼性と拡張性を持ったワークフローの確立に取り組みました。数年にわたる研究を経た現在では、アーティストが Maya を使ってモデリングを行い、Zbrush を使ってスカルプティングし、Adobe Substance 3D Painter と Adobe Substance 3D Designer を含む Adobe Substance 3D Collection を使用してテクスチャリングとシェーディング作業を行っています。
Amazon の 3D 担当シニアオペレーションマネージャー Durai Murugan Veerasamy は、「Adobe Substance 3D は、当社の 3D 制作ワークフローの欠かせない一部になっています」と話します。「画像や映像を受動的に見るだけだった従来型の体験を、顧客が自分のニーズに合わせて調整できる能動的な体験へと昇華するために必要な 3D アセットの制作作業において、Substance 3D が提供する非破壊的なワークフローには多くの利点があります」
3D アセットは購買意欲に働きかける
今日、世界中で Amazon のために 400 人以上のアーティストが、家具や建具を含む主要なカテゴリーの商品の、写真のようにリアルな 3D アセットを制作しています。今後は、家庭用の運動器具、家電、さらには衣服や財布などのソフトグッズにも対象が拡大される予定です。
Amazon は、3D アセットを様々な顧客体験の一部として活用しています。Amazon の顧客は、商品をあらゆる角度から確認できる「360 度ビュー」、自室に家具を置いたときのイメージを確認できる「AR ビュー」、オンラインで商品を組み合わせて仮想ショールームをつくれる「ショールーム」等を利用できます。
「数年前、より多くの画像を掲載することで顧客体験が向上し、それが売上の伸張や返品の削減につながることを発見しました」と Veerasamy は語ります。「より多くのビジュアル、特に 3D 画像を使ったインタラクティブな体験の提供は、より多くの情報に基づいた購入判断を可能にします。それが顧客の製品に対する信頼の構築を助けるのです」
また、3D アセットには、コンテンツ制作にかかる時間を短縮するという効果もあります。何百万もの商品のプロトタイプ制作や写真撮影が不要になるためです。アーティストたちは、容易に更新できるバーチャルスタジオ内に、要求に合わせた環境や商品の 3D アセットを準備して、写真のようにリアルなレンダリングを作成できます。
写真のようにリアルなテクスチャとシェーディングの作成
Amazon のアーティストたちは、木目のような複雑なパターンや、レンガの壁のように繰り返し並べるテクスチャを作成するために、Adobe Substance 3D Designer を利用しています。ノードを接続する形式のマテリアル作成ワークフローは、マテリアルの調整を容易にするため、新しいバリエーション作成のための色の変更は数分以内に完了します。
Substance 3D Designer で作成したマテリアルは、Adobe Substance 3D Painter に取り込んで利用できます。Substance 3D Painter は、Amazon のアーティストたちが本物のような生き生きとした表現をつくり出すためのメインツールで、3D アセットにテクスチャや陰影を追加するために使用されています。
Substance 3D Painter は、写真のようにリアルなアセットを作成するために必要なすべての機能を、直感的な UI と使いやすいワークフローを介して提供します。
レイヤー: 多くの Adobe Creative Cloud アプリケーションと同様に、Substance 3D Painter にも直感的なレイヤーパネルが用意されており、アーティストはペイント、フィル、マテリアル、マスク、エフェクトを容易に確認できます。マテリアルの粗さ、不透明度、その他の機能が別々のチャンネルにあるために、マテリアルの調整は簡単です。3D オブジェクトの表面にロゴを追加したければ、新しいレイヤーを作成して、そこにロゴをドロップするだけです。
マスク: Substance 3D Painter のマスキングは、高速で簡単です。アーティストは、メッシュ上に領域をすばやく設定し、そこにカラーやパターンを簡単に適用できます。光沢のあるメタリックファスナー、プラスチックの靴底、スニーカーを引き立たせるカラーの布地を、わずか数クリックで追加できます。
PBR シェーディング: PBR(物理ベースレンダリング)は、アセットをリアルに見せるための鍵となる技術で、テクスチャの粗さや反射率に応じてライティングやシェーディングを変更します。Substance 3D Painter は、現実世界におけるマテリアルの見た目の変化を高い精度で再現します。その仕上がりは圧倒的です。
非破壊的なペイント: Substance 3D Painter は、ブラシの全てのストローク、作業中のすべてのアクションを記録します。これにより、アーティストは、解像度の調整のような作業でさえいつでも行えるため、ワークフローが効率的で合理的になります。
顧客のため、常に時代の最先端を行く
Amazon にとって、3D はショッピングの未来につながる道です。3D アセットは VR や AR ベースの新しいショッピング体験への扉を開きます。その上、3D モデルは繰り返し再利用が可能であり、写真撮影の準備や商品の保管・配送を気にかける必要はありません。実際の商品を使う従来の写真撮影と比べ、ビジュアルの新規作成に必要なコストと時間は半減します。
「顧客のビジュアル体験への期待は、時代とともに変化しています」と Veerasamy は指摘します。「顧客満足度を向上させるために、顧客に驚きと喜びを与える体験を構築するには、現状のさらに先へと進まなければなりません。Adobe Substance 3D は、Amazon がより多くの 3D を作成し、顧客のための新しい体験を作り出す中で、これからも重要な役割を担っていくでしょう」
Adobe Substance 3D コレクションを使用した最先端の事例に興味のある方は、2021 年 MAX セッション『Substanceを手にしたシューズデザイナーの話(ミズノ株式会社)』をぜひご覧ください。ツールの使い方や制作ワークフローが丁寧に紹介されています。
この記事は Amazon creates immersive shopping experiences using Substance 3D(著者: Adobe Communications Team)の抄訳です