さまざまな業界に広がりつつある 3Dの革新的な利用事例

3D 技術といえば、映画、テレビ番組、あるいはビデオゲームの息をのむような視覚効果を思い浮かべるかもしれません。しかし、今ではマーケティングキャンペーン、あるいは没入感のあるオンラインショッピング体験にも 3D が採用されるようになっています。かつては多くのクリエイターが、3D デザインは複雑で費用がかかり、手を出せない領域だと認識していました。しかし、その見方は急速に変わりつつあります。世界中の企業が、3D は柔軟な利用が可能で、効率的で、費用対効果が高く、拡張性があることを理解し始めており、その結果としてさまざまな業界で変革が始まっています。

アドビは、3D がクリエイティビティの未来において大きな力になると確信しています。Adobe MAX 2021 では、3D とイマーシブテクノロジーが主要な話題のひとつとなり、基調講演では Adobe Substance 3D Collection の公開により、アドビが如何に 3D デザインを身近なものにしたかが紹介されました。Adobe Substance 3D Collection は、相互連携が可能な強力なツール群と数千のアセットのライブラリから構成される包括的な製品スイートで、あらゆるプロジェクトにおいて最先端の 3D デザインを作成するために、クリエイターが必要とするすべてのものを提供します。

https://video.tv.adobe.com/v/337300?t=4396&quality=6&hidetitle=true&learn=on&poststate=true

MAX 基調講演の 3D 関連製品の紹介パート。Substance 3D Collection の革新的な事例を紹介する動画に続いて、ジャネット・マテューによる Substance 3D Stager を使ったバーチャルフォトの撮影と、ウェス・マクダーモットによる Substance 3D Painter を使ったシーンの作成がデモされた

さまざまな業界を Substance 3D が革新

Adobe MAX の主要なセッションはオンデマンド視聴が可能で、いろいろな企業が実際に Substance 3D Collection を活用して、魅力的なコンテンツを作成している様子を見ることができます。これらのセッションは、さまざまな業界、ユースケース、対象にわたって、ビジネスを変革するために 3D デザインを全面的に採用している企業が存在することを明確に示すものです。

コカ・コーラ社は最近、最新の 3D 技術とデジタルワークフローを使用して、新しいアルコール炭酸飲料ブランドのための統一されたデザイン体験を実現しました。その際に、マーケティング予算は使われていません。コカ・コーラ社のデジタルデザイン部門のグローバルマネージャーを務めるベニー・リーは、Adobe MAX の講演で、どのように飲料業界の巨人が、社内の作業だけでビジュアルアイデンティティをデザインしたかを説明しました。

「Adobe Substance 3D Stager は、この取り組みの基盤となるツールでした」とリーは話します。「このツールは本質的に、デスクトップで操作できるバーチャルなフォトスタジオです。つまり、複数のコンセプトの展開と、実際の写真撮影に匹敵するような高品質のアセット作成を、とても素早く実行できたのです」。最終的に、コカ・コーラ社内の小さなチームは、まったく新しいカテゴリーの主要ブランドの開発を、100%デジタルのワークフローで完了しました。

https://www.adobe.com/max/2021/sessions/na-lets-get-phygital-a-unified-design-experience-a-s250.html

Adobe MAX のセッションで、新しいグローバルなブランド製品の発売にあたり、従来の写真撮影を Substance 3D に置き換えたことを説明するベニー・リー

プロジェクトでは Adobe Stock も重要な役割を果たしました。コンセプトを検討する段階では、Adobe Stock の膨大な 3D モデルのライブラリの中から、リアルなシーンを設定するために必要なアセットを数時間で揃えることができました。Substance 3D Stager を初めて使用したデザイナーは、本物のような高忠実度の 3D レンダリングを 1 日で作成することができました。全員が同じツールを使用し、すでに Creative Cloud での作業に慣れていたため、コンセプトの共有はとても容易で、短時間のうちに新しいアイデアを繰り返し検討できたそうです。

「始めるときの障壁を取り除き、新しい知識の学習を容易にすれば、デザイナーは自分が最も得意なことに集中し、頭の中にあるビジョンを画面に表現して目に見える形にできるようになります」とリーは指摘します。

INDG: 製品のデジタル化から、顧客体験の 3D 化まで

製品の視覚化を得意とするエージェンシーの INDG は、プーマ、イヴ・サンローラン、ヤマハなどのブランドの 3D への移行およびデジタルプロセスへの適応を支援しています。Adobe MAX 2021 のセッションで、INDG のデジタルファッション部門を率いるバスティアン・ゲルクは、CGI スペシャリストの実際の作業プロセスと、消費者に訴求するための Adobe Substance 3D を含む 3D テクノロジーの利用方法を公開しました。

「3D は写真と同じクオリティにはならないという神話は、もう過去のものと言ってよいでしょう」とゲルクは指摘します。「3D モデルは本当にリアルになったため、消費者にとって、製品の写真を見ているのか 3D ビジュアライゼーションを見ているのかを判別することはもはや不可能です」

https://www.adobe.com/max/2021/sessions/emea-every-product-playable-how-cgi-enables-consum-s481.html

Adobe MAX のセッションで、INDG の製品ビジュアライゼーションのプロセスを紹介するバスティアン・ゲルク

INDG の 3D 制作プロセスは 3 つの主要なステップに分けられます。始まりは、クライアントの製品ポートフォリオのデジタル化です。制作されたバーチャルなサンプルは、デザイン部門やマーケティング部門が自ら制作作業をする際に使う 3D スケッチとしても役立ちます。次の段階では、INDG チームは 3D アセットを写真のようにリアルな品質に仕上げます。これらは e コマースやマーケティングなど、消費者向けのビジュアルコンテンツとして使われます。最後の段階では、没入感のあるリッチなインタラクティブ体験を提供できるように、コンテクストに合わせて 3D モデルを拡張します。その用途は、製品コンフィギュレーター、バーチャルストア、AR 試着などです。

Skeeva: 3D ツールでユニークなアパレルデザインを作成

デジタルファッションの専門家でフリーランスの 3D アーティスト Skeeva は、アディダス、Apple、SpaceX などのクライアントのために高品質な 3D のアパレルデザインを制作しています。彼の Adobe MAX 2021 のセッションでは、服の初期コンセプトから始まり、布地を使ったプロトタイプを経て、最終的な色のバリエーション展開に至るワークフロー全体が紹介されました。

Skeeva のプロジェクトは、Marvelous Designer を使った素早い 3D コンセプトの作成から始まります。次にそれを Substance 3D Painter にインポートして、Substance 3D Assets も使いながら、より詳細な生地の組み合わせやテクスチャの作成を行います。その後は、Substance 3D Stager にデザインを取り込み、基本的なカメラと照明を設定して衣装が魅力的に見えるようにします。最後は、Photoshop で色調補正やちょっとした調整を行いレンダリングを仕上げます。

https://www.adobe.com/max/2021/sessions/na-creating-unique-apparel-designs-with-3d-tools-s476.html

Adobe MAX のセッションで、ワークフローを通じて 3D デザイン作成のために複数のアプリケーションを動かす様子を説明する Skeeva

このセッションが示しているのは、これらのアプリが最先端の 3D デザイン作成の強力な手段であるということだけでなく、アプリ同士が互いに連携できることで生まれるメリットです。緊密な連携が可能な一群のツールは、クリエイターが妥協のない細部と本物らしさを持つ 3D コンテンツを作成するために欠かせません。

Adobe MAX の 3D 関連セッション

Adobe MAX 2021 で配信された数多くの 3D セッションはオンデマンドで視聴が可能です。3D スキルを向上させるための実践的なトレーニング&チュートリアルから、一流のアーティストやブランドが 3D 技術を使った革新の裏側を紹介することでインスピレーションを与えてくれるプレゼンテーションまで、さまざまなセッションが公開されています。以下の 2 つは日本語のセッションです。

英語のセッションも、初心者向けからインスピレーション系まで数多くのセッションがあります。いくつかおすすめをご紹介します。

他にも、新しい気づきを与えてくれるアイデア、有益なデモ、最新のヒントやトレンドを紹介する動画などが公開されています。 Adobe MAX 2021 の 3D セクションをぜひご覧ください。

この記事は How innovative uses of 3D are transforming entire industries(著者: Sebastian Shaw)の抄訳です