実用的なカスタマージャーニーマップ作成のための 10 のステップ | アドビ UX 道場 #UXDojo
Illustration by Avalon Hu
「人々は実際にどのように使用しているのか?」これは、サイトやサービスの開発に関わるすべてのクリエイターが答えなければならない、本質的な質問です。その答えを見つける適切な方法のひとつは、ジャーニーマップを使用して、ユーザー視点から人々の体験を再検討することです。
カスタマージャーニーマップは、人々が製品とどのように関わっているかを正確に理解するために役立つ、優れたツールです。この記事では、カスタマージャーニーマップのコンセプト、マップを構成する主要な要素、そして実際に役立つマップを作成するための 10 のステップについて説明します。
カスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーマップ(または、ユーザージャーニーマップ)とは、サイト、製品、あるいはサービスを利用するユーザーが、目的を達成するために通過するプロセスを可視化したものです。カスタマージャーニーマップは、体験全体をユーザーの立場から描き出すために利用することができ、ユーザー体験をニーズに合わせて最適化するための貴重な洞察を開発チームに提供します。
カスタマージャーニーマップは、リサーチの主要な対象領域を反映するべき 出典: NNGroup
カスタマージャーニーマップの主要な構成要素
カスタマージャーニーマップにはさまざまな形式のものがありますが、一般的に、どのマップにも以下のような要素が含まれています。
- ユーザーペルソナ: ジャーニーを体験するユーザー
- シナリオ: ユーザーペルソナが実際に体験する具体的なジャーニー
- ゴール: ユーザーペルソナがジャーニーの終わりに達成したいこと
- ジャーニーステップ: ユーザーの実際の体験をステップに分けて記述したもので、各ステップでは、ユーザーペルソナが特定の行動をとり、特定の考えを持ち、特定の感情を抱く(リアルなユーザーの発言や、製品と関わるユーザーの動画で補足することができる)
- オポチュニティ: マップの作成から得られた洞察で、ユーザー体験を最適化する施策を理解する参考になるもの(オポチュニティが特定されないジャーニーマップは実用的ではない)
- チーム内オーナーシップ: 特定されたオポチュニティに基づき、製品に変更を加える責任者(オーナーシップが明記されていない場合、変更に対する責任は存在しない)
ジャーニーマップを、ユーザー体験を視覚化するデザイン成果物から、良いユーザー体験のための変更を導入するアクションプランへと変えるという観点において、オポチュニティとオーナーシップは特に重要な要素です。
カスタマージャーニーマップ作成の 10 ステップ
デザインの他の作業と同様に、カスタマージャーニーマップ作成にも堅実なデザインプロセスが必要です。ここでは、推奨される 10 ステップの構築手順を紹介します。
1. ビジネスゴールを明確にする
そもそもカスタマージャーニーマップを作成するのは、既知のビジネスゴールをサポートすることが目的です。しかし、価値ある洞察を得ようとしても、ビジネスゴールを考慮していないマップは役に立ちません。そこで、マップ作成プロセスを開始する前に、まずビジネスゴールを明確にしておきます。その際、コンバージョン率や長期的な顧客維持など、ビジネス指標に大きな影響を与えるシナリオに焦点を当てるよう試みましょう。
2. マップの対象範囲を定義する
マップのスコープを定義して、マップに記述する内容を確定します。マップのスコープは、概要レベル(例:ユーザーの獲得から最初のコンバージョンまでのようなエンドツーエンドの体験)や、ずっと詳細なレベル(例:e コマースサイトで商品を見つけるなどの特定のインタラクション)などさまざまです。スコープの選択は、最初のステップで定義した目標を基準に判断します。
3. ユーザーと製品の関係を理解するための情報を入手する
ユーザーが製品に接する状況をマップに確実に反映するには、定性的および定量的なデータの収集が必要です。また、堅牢なカスタマージャーニーマップの作成には、製品デザイン、営業、マーケティングなど、異なる分野からの情報が欠かせません。異なる分野や部門を横断した協力が、ユーザージャーニーの全体像を描き出すには重要です。
4. ユーザーペルソナを作成する
カスタマージャーニーマップは、対象ユーザーを代表する人、すなわちユーザーペルソナの体験に焦点を当てたものです。ユーザーに関する確かな情報からユーザーペルソナを定義すれば、ユーザーの振る舞いについて誤った仮定をするリスクを最小限に抑えられます。そのため、ユーザーインタビューやフィールド調査を実施して、ユーザープロファイルをできる限り完全なものにすることが推奨されます。
5. インタラクションのシナリオを定義する
ユーザーが何故、何時、どのように製品と関わるかを記述したシナリオを作成します。作成するシナリオは、デザインプロセスの進み具合次第で、現実のシナリオ(一般公開済みの場合)、または予測されるシナリオ(コンセプトとしてのみ存在する場合)のように変わるでしょう。一連のイベントとして構成されるシナリオは視覚化しやすく、ジャーニーマップに最適です。
シナリオを書く際に重要な点は、ユーザーペルソナの動機(ユーザーが製品をなぜ使いたいと思うのか)とインタラクションに対する期待(ユーザーの視点からインタラクションがどう見えるのか)を明確にすることです。
6. タッチポイントとチャネルの一覧を作成する
タッチポイントは、製品やビジネスに対するユーザーのアクションやインタラクションが起きる機会です。また、チャネルは、それらのインタラクションが行われる場所です。すべての主要なタッチポイントとチャネルを特定し、一覧を作成します。例えば、「ギフトを購入する」というタッチポイントに対して、オンラインや実店舗などギフトを購入できる場所はいずれもチャネルの候補です。
ここで覚えておくべきことが 2 つあります。
- 複数のチャネルに跨る体験を提供する場合、ユーザーがすべてのチャネルで一貫した体験を得られるよう考慮する
- ユーザーのペインポイント(ユーザーがジャーニーの途中で直面し、そのジャーニーを断念する一般的な理由となる課題)を明らかにする
7. ストーリーをつくり、ジャーニーをスケッチする
視覚化とストーリーテリングを利用すれば、カスタマージャーニーの作成はより簡単になります。まず、ユーザーと製品の関りを物語化します。しっかりとしたストーリーには、ジャーニーの断片化を避ける効果があります。
作成するストーリーは、ユーザー調査から得た定性的なデータに基づいている必要があります。おとぎ話になってしまわないよう、ダイアリー・スタディ、コンテクスチュアル・インクワイアリ、ユーザーインタビューなどから得られたデータを使ってストーリーを構成します。もし、ユーザーのジャーニーにギャップがあることに気づいても、そのギャップを思い込みで埋めてはなりません。必要なデータを見つけるために、追加調査を行うべきです。
すべての情報をまとめたら、インタラクションのステップごとに分けて、ジャーニーをスケッチします。各ステップは、サービス、製品、または人と関わることで発生するペルソナの体験を明示します。ストーリーボードを使うと、ストーリーに基づいた体験の視覚化作業が容易になります。
ストーリーボードは、カスタマージャーニーを可視化する 出典: Storyboardthat
8. 各ステップにおけるユーザーの感情を考慮する
ユーザーがジャーニーの各ステップで何をするかに加えて、製品と関わることで何を感じるかを追跡することも重要です。ユーザーの感情を考慮すると、ユーザーに対し人間としてつながりを感じられるようになり、よりユーザーに配慮した製品をデザインできるようになります。
また、感情の「アップ」と「ダウン」を可視化すると、改良の余地がある体験の一部を見つけられることがあります。共感マップは、ユーザーの感情を構造化し、感情が振れる瞬間を発見するのに役に立つツールです。
共感マップは、ユーザーの感情の変化を構造化するのに役立つ 。この形式を提唱したのは Dave Gray 出典: Gamestorming
9. カスタマージャーニーを検証し、改良する
ジャーニーマップは、実際のユーザーと製品との関わりを反映したものでなければなりません。ですから、しっかりとしたユーザー調査に基づいて作成されたユーザージャーニーであっても、それを検証することは必須です。ジャーニーと実際のユースケースが類似していることを確認するには、ユーザビリティテストや分析ツールから収集した情報が利用できます。
すべてのユーザー調査について言えることですが、ユーザーのジャーニーも常に最新の状態に保つことが必要です。特に、デザインに変更を積極的に導入するつもりであれば、定期的に、ユーザーに関する情報の収集と分析を行うべきです。主要なデザインの決断についてのフィードバックをユーザーから収集するツールとしては、アンケートが便利です。
10. ジャーニーマップからの発見を周知する
カスタマージャーニーマップを作成しただけでは、まだその価値の半分しか引き出せていません。ユーザージャーニーをデザインプロセスの中で機能させるには、チームの他のメンバーやステークホルダーにそれを売り込む必要があります。チームメンバーやステークホルダーが、ジャーニーマップの提供する価値について納得すれば、マップを主要なツールとして使うことがずっと容易になります。そのためにも、チームやステークホルダーとのミーティングや会話の中で、ジャーニーマップを参考資料として使用して、積極的なプロモーションを行うべきです。
おわりに
カスタマージャーニーマップ作成の最終的な目的は、チーム内で共有されるべきビジョンの作成です。ビジョンの共有なくして、ユーザー体験を向上させる方法について合意を得ることは困難です。ですから、カスタマージャーニーマップを作成したら、それをプロジェクトの仲間と共有し、頻繁に参照することが不可欠なのです。そうすれば、ユーザーの立場に立って体験全体を見渡し、得られた情報を制作に活用するための力を、チーム全員に与えることができるでしょう。
この記事は How to Create a Customer Journey Map(著者: Nick Babich)の抄訳です