効果的なポートフォリオを構築して洗練させるステップ | アドビ UX 道場 #UXDojo

Bettina Reinemann によるイラストレーション

デザイナーにとって、ポートフォリオが履歴書よりも重要なのは確かです。キャリアアップの大きな機会を掴むのに、ポートフォリオは欠かせないツールです。ポートフォリオは単に最高の作品を紹介するものではなく、何がどのように際立っていて、どのような考え方をするデザイナーであるかを、雇用主やクライアントが理解する助けとしても必要です。

そこで、この記事では、一流デザイナーやポートフォリオの専門家に、ポートフォリオサイトのデザインについて聞きました。彼らの洞察と実践的なアドバイスは、『力強くて印象に残り、特徴を伝え、インタビューを成功させる』ポートフォリオの作成に役立つでしょう。

なぜポートフォリオをつくるのか

「最初のステップは、ポートフォリオを構築しようとしている理由を理解することです」と Adobe Portfolio のシニアプロダクトマネージャーの Juhie Tamboli は指摘します。「フリーランスとして新しい仕事の依頼を受けたいのか?新しいキャリアに踏み出そうとしているのか?この点を明確にすれば、あとがずっと楽になるはずです」

そして Tamboli は、その理由を念頭に、最高の作品の紹介を考えるよう勧めます。「ポートフォリオの中にすべてを紹介する必要はありません。念頭にある機会を得るための作品に集中するべきです。そしてポートフォリオを通じて自分らしさを強調する必要があります。自己紹介文から選択した作品まで、ポートフォリオ全体が個性を伝えるものであるべきです」

最後に、プロセスも忘れずに共有するよう Tamboli は忠告します。「最終的な作品だけでなく、その背景にあるプロセスは、ポートフォリオをデザイナー固有のものにする要因のひとつです」

ユタ大学のデザインプログラムを卒業したばかりの Tamara Oniani によるデジタルプロダクトデザインのポートフォリオ

シンプルに始めて、完璧に拘らない

複数分野で活躍するデザイナー兼クリエイティブディレクターの Tobias Van Schneider は、自分のポートフォリオを先延ばしにするのは、よくあることだと認識しています。特に仕事を見つけなければならないなど、プレッシャーを感じているときはなおさらです。Van Schneider は、その理由について、私たちが他のことを先延ばしにしてしまうときと同様に、物事を過度に複雑にしているためだと言います。

「シンプルに始めましょう」と彼は助言します。「2 つ、そう 2 つだけ、今後さらに取り組みたいと思える種類のプロジェクトを選びましょう。そして、それらのプロジェクトをフェーズごとに考えます。例えば、フェーズ 1 はアイデア出し、フェーズ 2 はコンセプトづくりのように。それから、各々のフェーズについて数行の文章を書いて画像を添えます。これで完了です」

あとはホームページをデザインし、About ページを作り、ポートフォリオサイトを公開するだけだと Van Schneider は言います。

「その際に忘れてならないのは、ポートフォリオが最高傑作を集めたものである必要はないということです」と彼は指摘します。「集中すべきは、すでに完了した仕事の最高の見せ方です」

UX デザインスクール Center Centre の教員で UX デザイナーの Jessica Ivins も拘りすぎないようと助言しています。彼女の記事 How to Get Great Feedback on Your UX Portfoli には、「たとえシニアデザイナーであっても、自分の作品を紹介するポートフォリオだからこそ、完璧なものにしたいという気持ちになるものです。しかし、どんなプロジェクトであれ、非の打ちどころがないデザインは存在しません。ソフトウェア開発の世界には『完璧なものが公開されることは決してない』という言葉があります」と書かれています。

Tobias Van Schneider は、Mary Catherine Pflug のポートフォリオの導入部には隙がないと言う。シンプルで明解であれば十分

調査とデザインのスキルを活用する

Designing a UX Portfolio の著者である Ian Fenn が発見したのは、ポートフォリオを作成する行為に、多くの人が実際に恐怖を感じるということです。この問題には実践的な解決策があります。デザイナーとしての調査とデザインのスキルの活用です。

「想定している読者のニーズを調査しましょう」と Fenn は提案します。「そして、自分自身を表現し、かつ、相手の心に響くコンテンツをデザインします。ポートフォリオもいつものプロジェクトのひとつだと考えれば、制作プロセスはずっと簡単になるでしょう」

Ivins も同様のアプローチを好み、ポートフォリオを優先順位の高いデザインプロジェクトとして扱えば、必要な配慮と注意を払えると指摘します。

ポートフォリオで個性を表現する

Lynn Fisher は、デザイナー、開発者、そしてアーティストでもあります。彼女は ポートフォリオを毎年更新しています(2019 年のデザイン変更のケーススタディ)。そして、ポートフォリオは、完全に自分が所有する数少ない場所のひとつであるとして、自分の個性の表現に努めるよう勧めます。

「もし自分が少し風変りなら、ポートフォリオも変わったものすることです」と彼女は促します。「応募するポジションは誰かに決められたものかもしれませんが、その役割の果たし方は人それぞれで、各自の経験や考え方次第で異なるはずです。ポートフォリオで自分固有の強みを伝えることができるほど、より印象に残りやすいものになるでしょう」

彼女はまた、掲載できる作品が少ない場合は、自分の経験、視点、解決しなければならなかった課題などについて書くことを提案します。

「ポートフォリオを見直すタイミングで、デザインプロセスや意思決定についてのドキュメントを作成し、ケーススタディとしてまとめましょう。もし、仕事以外のプロジェクトやちょっとした遊びのプロジェクトがあるなら、それらについて書くのもよいでしょう。自分の作品について語ることは、しばしばスクリーンショットを並べるよりも説得力を持つことがありまし、デザイナーを探しているチームに、一緒に働いたらどのようにプロジェクトに取り組むデザイナーになりそうかを伝えられます」

Van Schneider は、コピーをシンプルでわかりやすいものにすることを勧めています。ポートフォリオに関しては、頭を使ったつもりのことがしばしば混乱の元になるからです。また、ケーススタディを流し読みでも把握できるようにすること(2 分以上読む人はいないと思うべき)、個々のケーススタディを雑誌の特集のように考えてカスタマイズすること(それぞれが固有の物語を最適な方法で伝えられるように)も推奨しています。

ブラウザのウィンドウサイズを変更すると、Lynn Fisher の 2019 年のポートフォリオデザインのイラストが割れ、中から多くのものが現れます。

フィードバックしてくれる良き助言者を探す

ポートフォリオに対する意見が必要な場合に、オンラインに投稿してフィードバックを求めることはしないようにと Fenn は警告します。

「いくつかの矛盾する答えを受け取って、あなたを混乱させるだけでしょう」と彼は説明します。「それよりも信頼できる相談相手を見つけて、批評の形式でフィードバックを求めるべきです。その相手に、どのような対象を想定したポートフォリオなのか、何を伝えようとしたのかを説明し、どうすれば改善できるかを聞いてみましょう」

「フィードバックは早めに求めるべきです」と Ivins は付け加えます。「フィードバックを処理し、ポートフォリオ変更し、さらにフィードバックを得ます。ポートフォリオの制作では、このプロセスをできる限り反復しましょう」

ポートフォリオの最適化を繰り返す

今回話を聞いたすべてのデザイナーが同意したのは、ポートフォリオの成功に反復が欠かせないという点です。

The UX Portfolio Formula の創設者である UX デザイナーの Sarah Doody は、UX ポートフォリオが決して「完成」することはないと指摘します。それは常に進行中であり、製品開発と同じように、評価と修正を繰り返すものです。

「たとえ、積極的に新しい仕事を探していなくても、務めてポートフォリオを最新の状態にしておけば、素晴らしい機会が目の前に登場したときに、慌てて完成を急ぐ必要がなくなります」

急いで準備したポートフォリオは不十分なものになる可能性が高まると Doody は警告します。例えば、ポートフォリオを見る可能性がある 3 種のユーザーを考慮しなかったり、成果物を見せるだけでなくプロセスをきちんと伝える効果的なケーススタディが書けていなかったりするかもしれません。このようにポートフォリオに取り組む際にはポートフォリオの UX を考慮する必要があるため、自身の UX スキルを磨くことになると Doody は強調します。

また、「ポートフォリオの良い所は、好きなだけ見直しと最適化を続けられる点です」と Van Schneider は付け加えます。「基礎さえできてしまえば、その後の改善は容易になります。ウェブサイトの更新は、自分をアピールする機会になります。ポートフォリオを成功させるた最初の一歩は、単純にサイトを公開することです」

ポートフォリオ関連の記事だけを読まない

ポートフォリオを改善するヒントが詰め込まれた記事は(この記事もそのひとつです!)たくさんあります。しかし Fenn は、中には大きく偏ったものもあると警告し(この記事は違います!)、注意を払うよう勧めます。

「オンラインで読むポートフォリオについての記事の多くに対して、懐疑的であるべきです」と彼は言います。「多くの記事がテクニックに偏っています。それは、『こうすれば上手くいく』というある個人の見解を反映したものです。そのようなアプローチから、自分が対象にしたい相手に何が効果的なのかを知ることはできません。たとえそれが採用担当者によって書かれたものであったとしても、書かれているニーズと、実際のニーズは大きく異なることがあります。つまり、自分自身で調査することが重要なのです」

耳にするアドバイスを鵜吞みにせず、本質を正しく理解するよう努めましょう。なぜポートフォリオをつくりたいのかを確認し、サイトをシンプルに保ちつつ、最適な作品に焦点を当て、自分らしさを際立たせるものを確実に含め、作品の背後にあるプロセスを記述します。デザイナーとしての調査とデザインのスキルを活かし、ポートフォリオを製品のように扱い、フィードバックを与えてくれる相談相手を見つけ、評価と修正を繰り返します。そうすれば努力は報われるでしょう。

この記事は Essential Steps to Building and Refining an Effective UX Portfolio(著者: Oliver Lindberg)の抄訳です