デザインと技術で時代に合うフォント環境を作り出すフォントワークス|Adobe Fontsパートナー紹介12

AdobeFonts/Fontwoksメインビジュアル

文字に豊かな表現力を与えるフォントは、クリエイティブには欠かせない道具のひとつです。アドビが展開する「Adobe Fonts」は、グラフィックデザインやweb、映像といったさまざまなフィールドでフォントをより自由に使えるようにするクラウドサービスで、2023年1月現在、600を超える日本語フォント、Adobe Fonts全体で2万以上のフォントを利用することができます。

この記事では、Adobe Fontsに参加する170を超えるフォントメーカーのなかから、一社をピックアップし、歴史や特徴、Adobe Fontsで利用可能なフォントを紹介していきます。

デザインとテクノロジーで日本語フォント界をリードする

今回紹介するのは、「もじと もっと じゆうに」をコンセプトに、時代と環境に適した日本語フォントやサービスを提供するフォントワークスです。
フォントワークスは1993年にフォントワークスジャパンとして設立されました。現在の大手フォントメーカーの多くが金属活字、写植時代から続いていることを考えると、その歴史は長いとは言えません。しかし、オリジナリティあふれる文字のデザイン、時代の流れをいち早くつかむ対応力、積極的なサービス展開により、デジタル時代のフォントを常にリードしつづけ、いまや日本のDTPに欠かせない存在になっています。

1990年頃、日本のデザイン・組版は写植が中心であり、DTPはまだ先進的なユーザーが限られたソフトウェアとフォントで取り組むだけの限定的なものでした。そうした日本語DTP環境に対し、フォントワークスは「ロダン」「マティス」「スーラ」「セザンヌ」といった高品質なデジタルフォントをいち早く提供し、フォントメーカーとしての存在感を少しずつ高めていきました。
そしてDTPが普及期に入った2002年、フォントワークスは日本語DTP環境を一変させる革新的なフォントサービスをスタートします。それが日本語フォントメーカーでは初となるフォントサブスクリプションサービス「LETS」です。
現在でこそ当たり前になっているフォントのサブスクリプションですが、当時はパッケージ販売が主流の時代。安価な年間契約ですべてのフォントが使えるLETSの登場は、業界の常識を覆す、画期的なものでした。

LETSロゴ

日本語フォント初のサブスクリプションサービス「LETS」歴代ロゴ
(上段左:2002〜、中:2013〜、右:2017〜、下段:2021〜現在)

LETSの登場により、デザイナーはより多くのフォントをリーズナブルに利用できるようになり、文字表現の幅が大きく広がりましたが、LETSが果たした役割はそれだけではありません。
パッケージ販売されているフォントを使ったネイティブデータ入稿の場合、デザイン、制作、出力そのすべてが同一のフォントを揃えていることが求められました。データの受け渡しの際には双方でフォントの有無を確認する作業が欠かせませんでしたが、LETS登場以降、LETSの有無さえ確認すれば全工程のフォント環境を統一できるようになりました。LETSは言わば、フォントのインフラとして機能したのです。
その取り組みはフォント業界全体に広がり、LETSのラインナップもまた「イワタLETS」「方正LETS」「モトヤLETS」「Monotype LETS」と年を追うごとに拡充していきました。

使用事例

フォントワークス書体はいまや印刷、web、映像だけでなく、ゲームや端末などさまざまな場所で使われている
左:スマホアプリ「ポケピア -POKECOLO UTOPIA-」使用フォント:UD丸ゴ_ラージ ©cocone corporation.
右:飲食業界向けタッチパネル券売機「DeliousLio」使用フォント:筑紫Aオールド明朝 M/セザンヌ M/DB  Teraoka Seiko Co., Ltd.

挑戦に次ぐ挑戦。デザイン、サービスに革新をもたらす

デザインの現場でLETSが広がった背景には、“定額で全フォントが使える”その契約内容に加え、次々に登場する魅力的なフォントの力がありました。
そのひとつがいまやフォントワークスを代表する書体となったフラッグシップフォント・筑紫(つくし)シリーズです。同社のタイプデザイナー・藤田重信さんが手がける筑紫シリーズは、それまでの書体とはひと味もふた味も異なる優雅さ、大胆さを備え、その唯一無二の文字のかたちはデザイナーたちを次々と魅了。いまなお進化を続けています。

筑紫シリーズ

フォントワークスのフラッグシップフォント・筑紫シリーズ(一部)

2011年には「FONTPLUS」*を通じて、webフォントにも対応し、2020年には筑紫書体にMonotype社の欧文フォントを合わせた「混植フォント」の提供を開始するなど、デザインの課題をテクノロジーで解決する、さまざまな取り組みを行なっています。
*Webフォント・サービス「FONTPLUS」は、SBテクノロジー㈱のサービスです。

FONTPLUS

webフォントサービス「FONTPLUS」。混植フォントはあらかじめ欧文のサイズ、ベースラインが和文に合うよう調整されている https://fontplus.jp/

文字、フォントとの接点を増やす取り組みはさらに続き、2018年にはあらたなフォントサブスクリプションとして「mojimo」をスタート。「ちょうどいい文字を ちょうどいい価格で」をコンセプトに、テーマごとにフォントをセレクトすることで低価格に抑えたライトユーザー向けのサービスで、2023年1月現在、mojimo-manga/mojimo-kirei/mojimo-kawaii/mojimo-oishii/mojimo-game/mojimo-VR/mojimo-retro future/mojimo-EVA等、13のプランを揃えています。
多様なフォントが使われるマンガやアニメ、ゲームなどのコンテンツを通して、フォントに興味を持つユーザーが増えるなかで、高品質なフォントを気軽に使えるサービスとして、幅広い層に利用されています。

mojimo

ライトユーザー向けフォントサブスクリプション「mojimo」 https://mojimo.jp/

2022年に公開をスタートしたwebコンテンツ「MOJICITY」では、仮想の街を舞台に先進的なフォントテクノロジーに触れる機会を提供。手書き文字をもとにAIが自動でフォントを作る「AI JIMOJI」、イラストなどその画像の印象に適したフォントをセレクトしてくれる「人工知能6号」、フォントが実際の空間においてどのように見えるかを再現する「Font Simulator(β)」、文字を使ったクイズやゲーム等が用意されており、フォントワークスが目指す未来の文字のありかたを垣間見ることができるでしょう。
このほかにも、大学(東京大学含め2校)と共同で行なった「AR環境下での文字情報提示手法の研究」の結果をもとに、組み込み用フォント「ARフォント」を作り上げるなど、従来のフォントメーカーの枠組みを超えて、文字が持つ力を拡張しつづけています。

MOJI CITY

上・左下:自分らしいフォントを自由に楽しめる世界「MOJICITY」 https://mojicity.jp/
右下:「Font Simulator(β)」 https://font-simulator.fontworks.co.jp/

ARフォント

AR環境に適切な組込み製品専用フォント「ARフォント」*LETS・mojimoでは提供なし

現在、Adobe Fontsで提供されているフォントワークスのフォントは、フラッグシップシリーズの筑紫書体 4ファミリー・6書体、基本書体 6ファミリー・7書体、UD書体 8ファミリー・18書体、デザイン書体を中心としたオープンソースフォント 7ファミリー・8書体の合計39書体。日本語フォントメーカーのなかでもトップクラスの提供数になっています。
基本書体から筑紫書体、デザイン書体まで揃う幅の広さに加え、UD書体はバリエーション・ウェイトともに非常に充実しているため、グラフィックデザイン、web、映像だけでなく、ユニバーサルデザインが求められるシチュエーションでは確実に効果を発揮します。さらに多くの書体が必要な場合には、フォントワークスのサブスクリプションサービス「LETS」の活用を検討しましょう。

AdobeFonts/Fontwoks

https://fonts.adobe.com/foundries/fontworks

「LETS」は2021年にサービスをリニューアルし、デバイスライセンスからユーザーライセンスへと移行しました。契約1ユーザーあたりインストールは何台でも、同時利用は2台までできるようになり、Adobe Creative Cloud同様、メイン+サブの制作環境にも対応可能に。筑紫書体シリーズや豊富なデザイン書体を含む、700以上のフォントワークス書体を自由に使うことができます。
「LETS」にはフォントワークス書体を利用できる「フォントワークス LETS」のほか、フォントベンダーごとに各種LETSがラインナップしているので、取り組むデザイン、必要なフォントに合わせてセレクトするとよいでしょう。

LETS

フォントワークスのフォントサブスクリプションサービス「LETS」 https://lets.fontworks.co.jp/

Adobe Fontsで使えるフォントワークスのフォント

Adobe Fontsで使えるフォントワークスのフォントを見ていきましょう。
フラッグシップシリーズの筑紫書体では4ファミリー・6書体を利用することができます。
*Adobe Fontsで提供されているフォントがファミリーの一部の場合、全体のウェイト数を( )で表記しています。

「筑紫明朝」「筑紫Aオールド明朝」はいずれもPr6Nフォントなので、あらゆるシチュエーションで活用することができます。「筑紫A丸ゴシック」「筑紫B丸ゴシック」は一般的な丸ゴシック体に比べて、ふところを絞ったオールドスタイル風のデザインで、よりやわらかい雰囲気を出したいときに最適です。

AdobeFonts/Fontwoks書体サンプル

基本書体は6ファミリー・7書体が利用可能です。

明朝体「マティス」、モダン角ゴシック体「ロダン」、オールドスタイルゴシック「セザンヌ」、丸ゴシック体「スーラ」、硬筆体「クレー」、デザイン書体「キアロ」と、フォントワークスのベーシックな書体デザインに一通り触れることができるラインナップとなっています。

AdobeFonts/Fontwoks書体サンプル

UD書体は以下の8ファミリー・18書体が提供されています。

ゴシック体、丸ゴシック体、明朝体に加え、ラージ・スモールという字面そのもののサイズを変えたバリエーションや、文字の横幅が狭いコンデンス書体「UD角ゴC80」「UD角ゴC70」「UD角ゴC60」も用意されています。
特筆すべきは、UD書体でも使用頻度が高い角ゴシックタイプの「UD角ゴ ラージ」が5ウェイト、丸ゴシックタイプの「UD丸ゴ ラージ」が4ウェイト揃っていることです。細いものから太いものまでしっかり網羅されているため、デザインに幅を持たせることができるでしょう。

AdobeFonts/Fontwoks書体サンプル

すでにオープンソース化されている7ファミリー・8書体もAdobe Fontsを通じて利用することができます。これらのフォントは、フォントワークスの理念「もじと もっと じゆうに」を体現する取り組みとも言え、フォントの利用自由度の高いSIL OPEN FONT LICENSE Version 1.1に基づいて提供されています。

「クレー One」は、同じくAdobe Fontsで提供されている「クレー」と同じ書体名ですが、互換性はありません。また、フォント名が「FOT-」で始まるLETS・Adobe Fonts提供書体とこの8書体では、フォント名、ウェイト表記が異なることにも注意しましょう。

AdobeFonts/Fontwoks書体サンプル

著作権とライセンスの詳細情報(クレー One Regularの場合) https://fonts.adobe.com/variations/46259/eula

公共性の高いデザインに最適。ウェイトが揃った基本書体セット

Adobe Fontsで使用可能な多くのフォントのなかから、イメージや目的にあわせて厳選して提供する「フォントパック」に、見間違え、読み間違えにくい文字のかたちを採用したUD書体をまとめた「ウェイトが豊富なUD基本フォントパック」が追加されました。明朝体・2ウェイト、ゴシック体・5ウェイト、丸ゴシック体・4ウェイトの合計11書体、すべてが収録文字数の多いPr6Nフォントで利用できます。
公共性の高いデザインや文字によるコミュニケーションに配慮が求められるシチュエーションで活躍できるセットになっています。

Adobe Fontsでフォントパック「ウェイトが豊富なUD基本フォントパック」を見る
https://fonts.adobe.com/collections/fwud-pack

フォントパック

Adobe Fontsを無料で試してみる
https://fonts.adobe.com/

Adobe Fontsでフォントワークスのフォントを見るhttps://fonts.adobe.com/foundries/fontworks

フォントワークス
web|https://fontworks.co.jp/
LETS|https://lets.fontworks.co.jp/