ページ記述言語としてのPDF:デバイスを問わず高品質な印刷を保証するテクノロジー
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世界中には何兆ものPDFファイルが存在しており、最も広く使用されているファイル形式の1つとなっています。インターネットの爆発的な成長も手伝って、PDFは電子文書交換のデファクトスタンダードになっています。PDFは文書の表示形式であることに加えて、PDL(ページ記述言語)としても機能しています。PDLとは、画面への表示方法やプリンターが認識して表示・印刷できるページの外観を記述する言語です。
中小企業や個人は、リソースに制約のある(ローエンドの)A4プリンターを使って仕事を行っていますが、印刷方法について中小企業や個人が期待するものは、以下のいくつかの点で変わりつつあります。
- 品質に対する期待値の高まり:ユーザーの品質に対する期待は以前よりも高まっており、プリンターメーカーはそれに応える必要があります。アドビが実施した最近の調査によると、ユーザーの約68%が、 プリンター購入時の選択基準として印刷品質が必須事項であると考えています。
- 複数デバイスでの印刷:ユーザーが印刷に利用できるデバイスの種類や数は増加しています。最近ではユーザーがデスクトップPCだけでなく、印刷する機能を備えた複数のモバイル端末やタブレットを所有しており、これらの デバイスから印刷するケースが増加しています。
- ドライバーレス印刷:私たちはプリンタードライバーのない世界に徐々に移行しており、従来のドライバー印刷の経路に加えて、さまざまな印刷の経路が利用可能になっています。
これらの技術の発展が意味するのは、出力物の一貫性を維持し、顧客に受け入れられる品質基準を達成しながら、文書印刷方法の種類の増加に対応する必要があるということです。このようなシナリオでは、印刷するファイルの文書形式が重要な役割を果たします。PDFは、ホームオフィスから大企業まで、これらの新しい要件に対応する理想的なファイル形式です。
ドライバーレス印刷の出現
過去10年間の技術の進歩によって、デジタルコンテンツと印刷コンテンツの制作ブームが起こりました。より多くのユーザーが自らコンテンツを作成できるアプリケーションに慣れ親しむようになり、コンテンツは複雑さを増しています。ファイルが印刷される際には、PDLに変換されます。
したがって、このような複雑なコンテンツは、最高の出力品質のために正確に維持され、プリンターに送信される必要があります。PDFはこの要件に適した機能を備えた唯一のPDLであり、その理由は、PDFが入力コンテンツのファイル形式であると同時にPDLでもあり、すべてのレンダリング情報をPDFの中に埋め込むことができるためです。PDFをPDLとして使用することで、プリンターデバイスは忠実度の高い最高の出力品質を実現できます。
従来、印刷ジョブは主にデスクトップPCで作成され、ユーザーはプリンターデバイス専用のプリンタードライバーをインストールする必要がありました。処理能力が向上したモバイルデバイスの急速な普及、インターネット速度の高速化、クラウドストレージに保存されるドキュメントの増加、ハイブリッド型オフィス環境の出現によって、今日、新たな印刷の経路が多く出現するとともに、「ドライバーレス印刷」(特定のドライバーをインストールすることなく、指定したプリンターで印刷できる機能)が要件となることが増えています。PDFは今日では、ドライバーレス印刷の経路で用いられるPDLの主要選択肢となっています。Mopria、AirPrint、IPP規格などを含む、すべてのドライバーレス印刷の方式はPDFをサポートしています。プリンターがPDFをサポートしている限り、お使いのデバイスで任意の印刷経路がサポートされます。
PDFにより印刷の一貫性と信頼性を向上
印刷用に文書を作成する場合、ユーザーは印刷プロセスがWYSIWYG(What-You-See-Is-What-You-Get:表示されているものが印刷されるもの)であること、つまり、印刷方法や印刷に使用するデバイスに関係なく、印刷出力が画面上と同じ見た目になることを期待します。現在、この期待には応えられない場合がしばしばあります。その理由は、プリンターによってサポートされているPDLが異なり、それぞれの変換プロセスも異なるためです。このような現状ではレンダリングに一貫性がなく、結果として、形式の不一致、配置の不一致、カラー再現における不一致、あるいはコンテンツがまったく印刷されないといった不都合が生じる場合があります。このような一貫性のなさが原因で、あるプリンターで印刷したファイルを別のプリンターで印刷すると、出力された印刷物の見た目が異なっている場合があります。ユーザーが自宅とオフィスで印刷を行う今日のハイブリッド環境では、印刷出力に一貫性が求められます。PDFは、デバイスを問わず、ユーザーに一貫性ある出力を確実なものとする唯一の方法です。
PDFは、手間をかけずにデバイス間で簡単に送受信を行えるため、印刷に理想的な形式です。PDFを用いた印刷フローは、PDFがラスターファイルと比べてサイズが大幅に小さいため、ネットワークで転送するのにより効率的です。PDFを用いた印刷フローはコンテンツの品質向上とセキュリティ確保のためにもよりメリットがあります。例えば、印刷前に文書内のぼやけた画像の解像度を向上させることができる場合があります。さらに、PDFはDigital Rights Management(DRM)機能をサポートしており、保護されたPDFがプリンターに受信された場合、権限を読み取り、権限に従ってプリンター内で適切なアクションをとらせます。
将来にわたって使い続けることができる印刷ジョブ
PDFはISO規格であり、将来にわたって使い続けることができるPDLです。そのため、継続的な開発とサポートが保証されており、印刷関連の新機能がPDFに追加されても、
それらの新機能を活用することができます。アドビでは印刷利用法における変化を受け入れ、A4セグメントにおける印刷の品質と一貫性に関する期待値の高まりに対応するので、今後開発されるプリンターではPDLとしてPDFをサポートすることを推奨しています。アドビは、Adobe Embedded Print Engine(AEPE)を含む市場をリードするPDF解釈技術でプリンターメーカーを世界中で支援し、将来の要件に対応するために技術革新を続けます。PDF技術が印刷分野において重要性を高めていることについては、こちらのIDC Analyst Connectionのホワイトペーパーをダウンロードしてご覧ください。
※この記事は2023年2月22日(米国時間)に公開されたブログの抄訳です。