日本語書体をもっと使いこなすヒント|文字とフォントのことはじめ07
フォントを知り、さらに使いこなそう
文字・フォント・デザインの情報をお届けする連載「文字とフォントのことはじめ」、第7回は日本語書体をさらに使いこなすためのヒントを紹介します。
Adobe Fontsには、しっかり読ませる文章に最適なものから、情報量の多いバナーやチラシでも際立つインパクトのある書体まで、多種多様な日本語書体が揃います。
さらに掘り下げて各フォントの仕様を見ていくと、フォントによって収録文字数や持っている字種に細かな違いがあることがわかります。デザインをするうえでは、こうした差異を把握しておくと、より効果的にAdobe Fontsのフォントを活用できるでしょう。
今回はそうしたフォントの違いを踏まえ、それぞれの特徴を活かす機能や、文字の表情を変えるアレンジ法について紹介します。
漢字や記号が豊富なフォントを探すには
Adobe Fontsでは多くの日本語フォントが提供されていますが、フォントに含まれる文字の種類(字種/グリフ)や漢字の数は書体によって少しずつ異なります。
ほとんどの書体が一般的な日本語文章を表示するには十分な文字を備えていますが、崎/﨑、高/髙のようなかたちの異なる文字(異体字)や、JIS第3・4水準の漢字、特殊な記号類はフォントによって表示できないことがあるほか、教育漢字のみ対応しているフォントもあります。
Adobe Fontsで提供されている日本語フォントで、できるだけ文字数が多いものを使いたいという場合には、「Pro/ProN」や「Pr6/Pr6N」という表記があるものを探してみましょう。
この表記は、“フォントにどの文字を収録するか”を定義する枠組みのひとつ・Adobe-Japan1(A-J1)に準拠したフォントにつけられているもので、「Pr6/Pr6N」フォントの場合、23,058(A-J1-6)または23,060(A-J1-7)の文字(グリフ)が収録されていることを示しています。
A-J1に準拠する日本語フォントにはこのほか、Std/StdN・Pro/ProN・Pr5/Pr5N等の種類があり、Std<Pro<Pr5<Pr6の順に収録文字数は多くなります。
人名や複雑な漢字を多く扱う可能性が高い場合には「Pro/ProN」や「Pr6/Pr6N」を選んでおけば安心でしょう。逆に、一般的な文章やキャッチコピーであれば、「Std/StdN」もしくはそうした表記のない書体を選んでも、十分に役割を果たすことができるはずです。
左:目的の文字が表示できるかはあらかじめサンプルテキストで確認が可能(図中のピンクの■はそのフォントに該当文字がないことを示す)/右:フォントによっては書体ごとの解説ページに収録文字についての記述があります
祇・鯖・噂など一部の文字は、フォントによっては表示される文字のかたち(字形)が異なることがあります。これは標準的に表示される文字(例示字形)がJIS90/JIS2004どちらに準拠しているかの違いによるものです。A-J準拠のフォントの場合、StdN・ProN・Pr6N等「N」がついたフォントはJIS2004、ついていないフォントはJIS90に準拠しています。これ以外のフォントの場合は、書体ごとの解説ページにある「デフォルトグリフスタイル」で仕様を確認できます
かな書体は「合成フォント」で使いやすく!
Adobe Fontsで提供されている日本語書体のなかには、漢字を含まない「かな書体」もあります。
かな書体にはひらがな・カタカナが含まれていますが、英数字や記号類を持っているかどうかはフォントにより異なるので、使用する際にはあらかじめどのような文字が含まれているかを確認するとよいでしょう。
かな書体を探すには「書体の属性」フィルターで「かな」を選びます
かな書体に含まれる文字を確認するには、「サンプルテキスト」に英数字や記号を入力してみるとよいでしょう
ひらがな・カタカナだけの文章をデザインするのであれば、使う書体がかな書体でも問題はありませんが、漢字を含む文章に使いたい場合はどうすればいいでしょうか。文字ごとに書体を割り当てることでも解決はできますが、テキスト量が多いときは現実的な選択肢とは言えませんね。
こうしたケースでは、Adobe Illustrator、Adobe InDesignのようなクリエイティブツールに搭載されている機能、「合成フォント」を使ってみましょう。
「合成フォント」は、漢字に「秀英初号明朝」、それ以外の文字は「ヒグミン」というように、復習のフォントを組み合わせて、ひとつのフォントのように扱える機能です。
参考:ヒグミンフォントパック https://fonts.adobe.com/collections/higumin-font-pack
Illustratorの「合成フォント」ダイアログ。同様の機能はInDesignにも搭載されています
かな書体の合成フォント適用例
「合成フォント」はこのほか、漢字にゴシック体、かなに明朝体を組み合わせて、マンガではおなじみの「アンチック」(ゴチアンチ)にする/英数字だけ欧文フォントを割り当てて、日本語書体の表情を変えるなど、その活用方法はさまざま。組み合わせ次第で無数の表現が可能になります。
英数字に欧文書体を割り当てた合成フォントの例。こうした日本語書体と欧文書体の組み合わせを「和欧混植」と呼びます
フォントの設計上、日本語書体と欧文書体を並べると、欧文がやや小さく見えるため、合成フォントを作る際は、欧文書体のみ10%程度拡大して大きさを合わせます
アレンジ次第で大きく変わる文字の表情
書体サンプルは、文字のかたち、表情がはっきりと現れる「白地に黒い文字」という組み合わせが定番です。一方、その書体をデザインに使うときは色をつけたり、フチをつけたり、いろいろなアレンジを加えることもあるでしょう。
文字の印象は色や加工次第で大きく変わるので、IllustratorやPhotoshop、InDesign等でさまざまな効果を加えてみましょう。いつも使っていた書体から、思わぬ表情が発見できるかもしれません。
VDL ロゴJrブラックをもとにIllustratorでさまざまな加工、アレンジを加えたもの
文字の表現力を広げるフォントが揃うAdobe Fonts
アドビでは、クリエイティブには欠かせない道具のひとつであるフォントをより自由に、柔軟に使えるクラウドフォントサービス「Adobe Fonts」を展開しています。2023年9月現在、その数は日本語フォント650超、Adobe Fonts全体では25,000以上。膨大なフォントをメディアを問わず、商用/非商用問わず、自由に使うことができます。
書体名がわからなくても「明朝」「ゴシック」「丸ゴシック」「筆書体」「デザイン書体」といった書体の分類から探すことができ、イメージしたフォントにすばやく辿り着けるようになっています。
“もっといろいろなフォントを見てみたい、使ってみたい!”
そう思えたらまずは一度、Adobe Fontsを開いてみましょう。
そこには高品質でユニークなデザインの書体が待っているはずです。
Adobe Fontsを無料で試してみる