武庫川女子大学における業務と教育のDX推進~文学部・建築学部の活用

アパートのビル 中程度の精度で自動的に生成された説明

武庫川女子大学では、全学でAdobe Creative Cloudを導入し、先生方の業務や学生さんの制作活動などのさまざまなシーンで活用されています。今回は、代表として文学部と建築学部がどのようにAdobe Creative Cloudを利用されているのか、お話を聞きました。

教育DXを実践する武庫川女子大学

2024 年に創立85 周年を迎える武庫川学院は、100 周年に向けたプロジェクト「MUKOJO ACTION」を2018年に始動しました。

MUKOJO ACTION

「ACTION BOOK [DIGITAL PAMPHLET]」より

現在、同学は学内PCには共有デバイスライセンスを導入し、常に最新バージョンのツールを利用して課題や業務に取り組める環境が整っています。特にICT活用が進む学部の学生には、学生オプションを割り当て、学生個人のPCで自宅でも学内同様に課題に取り組める環境を実現しました。

Adobe Creative Cloud で映像表現の質を高める - 文学部 日本語日本文学科

文学部におけるアドビ製品の活用を教えてくれたのは、文学部 日本語日本文学科 専任講師の工藤 彰先生です。同学科では文学と言語学の専門科目以外にも、情報領域の専門科目が多数開講されています。2019年から工藤ゼミでは在学中に操作方法を習ったAdobe Premiere ProAfter Effectsを利用して、文学作品を現代的かつ創造的に再解釈して映像作品を完成させる「アダプテーション」の演習を行っています。

文学部 日本語日本文学科 専任講師 工藤 彰氏

文学部 日本語日本文学科 専任講師 工藤 彰先生

「近年アダプテーションの研究は、リンダ・ハッチオンの『アダプテーションの理論』を軸に、比較文学や文学理論などの分野で盛況を博しています。ハッチオンは、アダプテーションを『先行する作品を意図的、名言的、拡張的にとらえ直すこと』『原作テクストを絶えず意識させられる作品として考えること』と定義していますが、当ゼミの演習で扱うアダプテーションは、ハッチオンの理論に依拠しつつも創造的再解釈とメディア変換に注目しているのが特長です。

『もし作中の登場人物らが自分たちと同じ現代の学生だったら』といった創造的再解釈を条件にすることで、文学作品の精緻な読解や今日にも通じる主題や問題の探究を行うこと、またメディア変換の過程から映像表現の特性の理解を深め、必要な撮影や編集のスキルを習得することを期待しています」と、ゼミの狙いについて工藤先生は話します。

ダイアグラム 自動的に生成された説明

小説を原作としたアダプテーション(工藤 彰「メディア表現演習によるアダプテーションの実践」より)

3年次は撮影まで複数人のグループで行い、編集は1人で最後まで対応して1本の作品を作り上げるという流れで制作が進められ、完成した作品はゼミのYouTubeにアップされています。同じ原作を基にしても作品によって演出はさまざまで、アドビ製品は各学生の多様な表現を可能にしているといいます。

たとえば、内田百閒の『サラサーテの盤』を原案とした『ムジカの約束』という作品群を見てみましょう。Premiere ProのエフェクトやAfter Effectsのモーション・グラフィックを用いることで、編集者が深めた解釈が映像の演出となり、作品内に散りばめられていることが分かります。

背後の幽霊を振り返るシーン。画面にノイズがかける(左:Edit.Nozaki)、画面を湾曲させる(右:Edit.Sato)など、さまざまな演出方法を試みている

屋内, 冷蔵庫, 座る, 建物 が含まれている画像 自動的に生成された説明

明度、幽霊を画面に入れるタイミングの違い(左:Edit.Yamaguchi、右:Edit.Nozaki)

建物, ベンチ, 座る, 椅子 が含まれている画像 自動的に生成された説明

色味の違い(左:Edit.Sato、右:Edit.Matsui)

建物, 写真, 食品, テーブル が含まれている画像 自動的に生成された説明

エンドロールの違い(左:Edit.Matsui、右:Edit.Sato)

工藤ゼミのYoutubeはこちら

「簡単な動画編集ならスマホのアプリでもできないことはありませんが、テンプレートに沿った編集しかできないという機能の制約があり、表現の幅が狭くなります。しかし、Premiere ProやAfter Effectsを用いることで多様な表現が無限に広がり、自分のアイデアの通りにクオリティの高い作品を作れるのがアドビ製品の強みです。1つの原作に対し5パターンの作品が生まれ、それぞれの演出の意図を考察するのはとても興味深いです」と工藤先生は評価します。

工藤ゼミからは卒業後にメディア・広告業界への就職を希望する学生が増加していて、情報領域の学習が直結するIT業界に就職する学生も少なくないそうです。「学生からは、当ゼミでアダプテーションに取り組んだことが業界によらず就職面接の時にアピールポイントとなった話をよく聞いています。アドビ製品を使用できるスキルはもちろんのこと、仲間と共同で作業を進める力、また脚本を書くための発想力などは実社会でも役立つと注目していただけているようです」と工藤先生は説明します。

図面設計の補助として効果的に活用 - 建築学部 建築学科

6年制の欧米型建築教育を実践している建築学部の学生さんは、卒業するまで非常に多くの場面でアドビ製品を使用しています。建築学部の活用シーンを教えてくれたのは、建築学部 建築学科 准教授の天畠 秀秋先生です。

建築学部 建築学科 准教授 天畠 秀秋氏

建築学部 建築学科 准教授 天畠 秀秋先生

「建築学部の1年次はPhotoshopによる模型写真の歪みの補正、明度や解像度の調整、Adobe Illustratorによる模型写真のレイアウト作成と印刷といった基本の操作を学びます。2年次以降は設計演習が本格化するので、課題をこなす中で必要な際にデジタルツールを活用しながら習熟していきます。4年次の卒業設計ではIllustratorによるA1図面の制作が出来るようになり、さらに大学院修士1年次には、採用試験で必要になるポートフォリオ(作品集)をIllustratorで制作する学生も多数います。After Effectsなども使って動画の中に自分が設計した建物の3Dモデルを合成するといった場面も出てきます」と、天畠先生は説明します。

国の登録有形文化財に登録された甲子園会館(旧甲子園ホテル)の中にある建築学科1年生のスタジオ。1人1台専用の製図机とパソコンを配備しているテーブルに置いている様々な家具 低い精度で

国の登録有形文化財に登録された甲子園会館(旧甲子園ホテル)の中にある建築学科1年生のスタジオ。1人1台専用の製図机とパソコンを配備している

専門的な設計や構造の知識を習得し、人・社会・まちづくりを視野にいれた設計に取り組む学部3年生の課題の一つに、「歴史的都市に建つ宿泊施設」の設計があります。この課題は、城壁に囲まれ、市内にはイスラム寺院などの歴史的建造物が多数残っているウズベキスタン共和国の旧市街を想定し、この街に観光や調査で訪れる人々が利用する宿泊施設を設計するという内容です。

課題の講評会では、考案する宿泊施設の図面などの資料をパネルに貼り付けて発表します。この時使用されるダイアグラム、模型写真、CGパースの制作にアドビ製品を活用している学生さんは多いそうです。

建築学科3年生の課題「歴史的都市に建つ宿泊施設」の発表風景

建築学科3年生の課題「歴史的都市に建つ宿泊施設」の発表風景

学生の皆さんは、アドビ製品を使いながら日々どんな思いで課題に取り組んでいるのでしょうか。実際に建築学科の学生さんにお話を聞きました。 3年の牛田 響子さんと、西田 奈生さんです。

建築学部 建築学科 3年 牛田 響子さん(左) 西田 奈生さん(右)

建築学部 建築学科 3年 牛田 響子さん(左) 西田 奈生さん(右)

牛田さんは「最近、Illustratorによる影の入れ方を学びましたが、設計者がイメージする暮らし方を分かりやすく伝える上でも有効な表現ですね」とIllustratorがもたらす効果を実感しています。

ダイアグラムの作成にPhotoshopやIllustratorを利用しているという西田さんは、「大学院の先輩がAdobe Creative Cloudを活用して動画をプレゼンに取り入れているのを見て、感動したことがあります。将来的には私も動画ツールなどの様々な表現手法を身に付けたいと思います」と語り、学習に意欲的な姿勢を見せています。

試行錯誤を続けて新たな制作・研究を続けていく

既にAdobe Creative Cloudを制作・業務のさまざまな場面で利用している武庫川女子大学ですが、今後もさらに活用の幅を広げようと模索しているそうです。

文学部の工藤先生は、「今後、アダプテーション作品の制作過程で、学生同士によるAdobe Creative Cloudを通した共同編集を実現していきたいです。デジタル時代のコミュニケーション能力の醸成にも大きな役割を果たすと考えています」と話します。

また建築学部の天畠先生は、アナログ感のある表現ができるAdobe Frescoをアイデアスケッチやプレゼンテーションに生かせないか検討しています。

武庫川女子大学の学生さんによるクリエイティブな制作活動、また社会へ貢献していく力に、今後も期待が高まります。