Adobe Expressによるデザインでリアルな課題解決に挑む〜世界の医療団と専門学校HAL、アドビの産学連携プロジェクト

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アドビは専門学校HAL(東京・大阪・名古屋)、特定非営利活動法人Médecins du Monde Japan(世界の医療団)と協力し、産学連携のプロジェクト型学習を実施しました。本プロジェクトは、世界の医療団が抱える広報の課題を解決するため、学生がアドビのクリエイティブツールを使用してデザインを提案するものです。プロジェクトのまとめとして、9月に行われた表彰式の様子と入賞作品を紹介します。

Z世代に世界の医療団の活動を伝えたい

世界の医療団は「誰もが治療を受けられる未来」を目指して世界で活動するNPOです。NPOにとってその理念や活動実態を世間に広く知らせ、寄付やボランティアなどの行動につなげるのは重要なこと。世界の医療団では「Z世代に自分達の活動を伝える」「広報手段のデジタル化」という課題を抱えていたため、学生チームにはこれらを解決する4種のデザインの提案を求めました。デザインは世界の医療団で運用することを見越して、誰もが直感的に画像や動画が作成できるデザインアプリ「Adobe Express」を主に使用して制作します。

  1. 世界の医療団のダイレクトメールをAdobe Express でwebページ化
  2. Instagramでメッセージを発信するためのAdobe Expressテンプレート
  3. 若年層が世界の医療団の活動に興味を持つような動画コンテンツ
  4. 途上国の識字率が低い層に健康衛生情報を伝えるフリップチャート(内容は、健康的な妊娠について。字を使わずイラストのみで表現する。ラオス人民民主共和国で使用する)

この実践的なプロジェクト型学習に挑むのは、HAL東京、HAL大阪、HAL名古屋のグラフィックデザイン学科とイラスト学科の4年生 20チームです。世界の医療団からは2023年5月に依頼内容と制作物に必要な条件、ターゲット層、ブランドガイドライン、提供素材等が示されました。チームごとに調査や制作に取り組み、6月の中間発表とフィードバック、7月のプレゼンテーションを経て9月の審査結果発表を迎えました。

論理的な理解と調査、デザイン力が試される

表彰式は、HAL東京を拠点にHAL大阪とHAL名古屋をオンラインでつないで実施されました。審査員の世界の医療団 日本事務局長 米良彰子氏、世界の医療団でコミュニティーデザイナーとしてデザインリードを担う蛭子彩華氏、アドビ シニア エクスペリエンスデザイナー 井上リサが講評し、HAL東京の吉田広信先生と村上諭先生が進行しました。

ノートパソコンを使っている男性 低い精度で自動的に生成された説明

進行と審査員の皆さん

冒頭で挨拶をした米良氏は、プロジェクトに取り組んできた学生たちに向けて2つのメッセージを伝えました。1つ目は、「これまで気づいていなかった世界の動きに目を向け、気になる社会課題を見つけて欲しい」ということ。2つ目は、「自分の得意分野であるデザインの力で社会を変えられるということを知るきっかけにして欲しい」ということです。また、デザインのテクニック以前に、課題の意図を理解して社会的背景を捉えることや、ターゲットの分析の裏付けとして適切なデータを見つけることの重要性も指摘しました。論理的な理解力とデザイン力の両方が試された今回のプロジェクト、入賞チームの作品を紹介します。

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世界の医療団 日本事務局長 米良彰子氏

1位:ていねいな調査とデザイン性、運用のしやすさで総合的に高評価

1位はHAL大阪Team1によるInstagram投稿用のテンプレートとダイレクトメールのweb化です。調査をもとにエビデンスを提示した上で「寄付を自分ごとに」をコンセプトに据えたことや、世界の医療団職員が「運用しやすく明日から使えそう」と感じられるAdobe Expressテンプレートの設計、また、若者をターゲットにした統一感のあるグラフィック表現などが、総合的に高く評価されました。

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Instagramの投稿用テンプレート

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HAL大阪Team1のメンバー

チームからのコメント
「リサーチに時間をかけて制作したものだったので評価をいただけてとてもうれしいです。今回は最初から最後まで『なぜ寄付が少ないのか』をテーマに楽しみながらチームでワイワイ取り組めました。新しい発見などもありとても楽しかったです」

2位、3位:デザインのまとまりと運用性を評価

2位はHAL大阪Team3によるInstagram用テンプレートと動画コンテンツです。現場の様子がわかる写真を豊富に使用して、リアルに伝えるデザイン性の高さが評価されました。クライアントの意向を理解し、チームが意図した「記憶に残る」というコンセプトが実現できていました。

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HAL大阪Team3の作品とメンバー

チームからのコメント

「プロジェクトメンバーの個々のパワーに頼る場面が多く、その指示に応えてくれたメンバーには感謝しかありません。プロジェクトを通し、世界に対してより深い視点を持てるようになれたことが、何よりの良い経験になったと思っています」

3位はHAL東京Team1によるInstagram用テンプレートです。具体的なペルソナをもとに組み立てられていることや、スタイルガイドが用意されていて運用・展開しやすいことが評価されました。気軽に寄付したくなる印象を与えるストーリーズ用のテンプレートも好評でした。

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HAL東京Team1の作品とメンバー

チームからのコメント

「いつもは一から自分たちで企画してデザインするのですが、今回のプロジェクトは土台や規定があり、リサーチをして進めるのが難しかったです。みんなで積極的に意見を出し合って分担し、楽しく進められました。仕事をする上での体験にもなりました」

ラオス賞:実際に現地で使用することが決定

特別賞として、健康衛生情報のフリップデザインに取り組んだチームの中からHAL大阪Team5がラオス賞に選ばれました。この賞の選出には世界の医療団 ラオス事務所の皆さんも関わっていて、受賞作品は実際に現地で使用されます。

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HAL大阪Team5の作品とメンバー

チームからのコメント

「今回制作するにあたって『どんな絵柄だと親しみやすいかな』『ここはこういう表現の方が伝わりやすいかな』など繰り返し検討してきたので、大変光栄です。現地の人々に少しでも楽しい学びを提供することができればと願っています。より『見られるものをつくる』意識が深まる貴重な経験になりました」

ラオス賞のチームには、オンラインでラオス事務所 総務・経理・広報担当 ブントム・タマチャーン氏からコメントがありました。「皆さんのクリエイティビティに驚きました。ラオスの文化をきちんと反映したデザインがすばらしかったです」とトム氏は賞賛した上で、「日本にいる皆さんにとっては想像しづらいことかもしれませんが、ラオスでは妊産婦死亡率が高く、女性にとっては妊娠することが生死に関わります」と厳しい現実も伝えました。受賞イラストを使ったフリップは、ラオスで住民がより安全で健康な母と子の命を守る知識をつけるために使われ、妊産婦の危険を減らすことにつながります。学生にとっては、デザインの力で世界の課題に寄与できることを知るとても貴重な機会となりました。

A person in front of a screen Description automatically generated

世界の医療団 ラオス事務所のブントム・タマチャーン氏(左)と実際に採用された作品(右)

リアルなプロジェクト学習で学生に生きた学びを

他にも4つの特別賞が選出され、表彰が行われました。

群衆の前に立っている男性 中程度の精度で自動的に生成された説明

各賞受賞作品とチームメンバー(左よりアドビ マーケティング賞/HAL大阪Team2、世界の医療団賞/HAL名古屋Team6、イラスト賞/HAL名古屋Team3、Diversity and Inclusion賞/HAL東京Team3)

プロジェクト学習に参加した学生からは、「実際に調べてみると、想定していたよりも深いことがわかり勉強になりました。調べることで、裏付けのあるデザインをすることが大事だと思えました」という声があり、調査の過程で多くの学びを得たようです。また、「普段の授業では想定でやりますが、今回はクライアントがいるおかげで『誰かのためにデザインする』ということを感じられ、より身が入りました」、「実際にクライアントがいる状況下で、どのようなスケジュールでやればいいのかを身をもって経験できました。就職をする前にいい経験ができました」などの声があり、世界の医療団からの依頼という産学連携ならではの緊張感がよい経験になったことが伝わってきました。

病室にいる人たち 中程度の精度で自動的に生成された説明

(後列左より)HAL東京 吉田先生、世界の医療団 米良事務局長、HAL東京 村上先生、(前列左より)世界の医療団 蛭子氏、アドビ 井上

HAL東京の吉田先生は、「4年生で就職前に実践的なプロジェクトに挑戦させていますが、今回はスケールが大きく、海外を相手にするというのは学びが大きかったのではないかと思います」と話します。また、HAL東京の村上先生はAdobe Expressを使用したことに注目し、「一般ユーザー向けのAdobe Expressをデザイナーが使用してテンプレートを整え、NPOが運用するという新しいワークフローを作れたのではないかと思います」と振り返りました。実際に受賞デザインを運用する予定の世界の医療団の蛭子氏は、「学生の皆さんから課題解決のバトンをもらったと思っているので、この作品を活用して広げていきたいと思います」と、学生のがんばりをしっかりと受け止めました。

学生にとっての学びの質、NPOにとってのデザイン運用の可能性、どちらもモデルとなる取り組みでした。学生の皆さんがこの経験を糧に社会に出て活躍する日が楽しみです。

(文:狩野さやか)