日本語書体の選びかた|文字とフォントのことはじめ08

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目的に合うフォントを探すには

文字・フォント・デザインの情報をお届けする連載「文字とフォントのことはじめ」、第8回は日本語書体を選ぶためのヒントを紹介します。
書体のデザインはよく「声色」にたとえられます。太みのあるしっかりとした書体ならメッセージも力強いものになり、丸みを帯びたやわらかい書体ならその口調はおだやかなものに感じられます。つまり、書体は、文字情報をどのように伝えるか、その伝わりかたをコントロールするものであり、多くのフォントが使えることは、それだけ多くの「声色」を使い分けることができる=表現の引き出しが増えることにもつながります。

Adobe Fontsには日本語だけでも、非常に多種多様なフォントがあります。一方、逐一眺めて探すには書体が多すぎる/なかなか求める書体に行きつかない……そうした経験を抱えている人もいるでしょう。ここでは書体選びに迷える人たちに向けて、用途やデザインイメージにあわせて、どのような視点で、手順でフォントを選べばいいのか、具体例を交えながら紹介します。
Adobe Fontsでどのような書体が使えるのかを知っておくことは、これからのクリエイティブにとって大きな味方になるはずです。

いま取り組んでいるデザインに最適な書体を探すにはどうすればいいのでしょうか。
それには、デザインの目的、文字に持たせたい役割に応じた、書体の向き/不向きを知ることが大切です。
訪れる場所にふさわしい装いをするのと同じように、文字・書体もまた、TPOに合わせて選択することが重要で、いくら美しい書体、ユニークな書体でも、時、場所、シチュエーションがふさわしくなければ、その機能は十全に機能しません。
たとえば、ユニークなデザインの書体は、チラシやバナーで人の目を惹きつけたい文字には効果を発揮しますが、しっかり読んでほしい、長い文章に使うと目を疲れさせてしまうかもしれません。また、繊細な明朝体は小説のようにスムーズに読み進めてほしい文章には最適でも、ポスターのタイトルに使うには力強さが足りない、ということもあるでしょう。
書体の個性を見極め、その特徴を活かすことで、文字にふさわしい装いを与えていきましょう。

じっくり読ませたい文章に最適な書体

本や冊子、文章量のあるwebの記事や電子書籍など、じっくりと読んでほしい長い文章には、ベーシックな明朝体、ゴシック体が最適です。
Adobe Fontsには、モリサワ、フォントワークス、SCREENグラフィックソリューションズ(ヒラギノフォント)、字游工房、TOPPAN、大日本印刷といった日本を代表するフォントメーカーの明朝体、ゴシック体が揃っています。これらの書体は、いま流通している出版物でも数多く採用されており、その品質は折り紙つき。あらゆる読みものに安心して使うことができます。
太さ(ウェイト)のバリエーションがほしい場合には、7ウェイトある「源ノ明朝」「源ノ角ゴシック」を選ぶとよいでしょう。

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[長文に最適な明朝体の書体例]

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[長文に最適なゴシック体・丸ゴシック体の書体例]

書体を選ぶ際、デザインとは別に注目しておきたいのが、フォント名についている「Std」「Pr6N」「ProN」といった文字セット表記です。これは収録している文字種の規格を示すもので、「Std/StdN」<「Pro/ProN」<「Pr6/Pr6N」の順で、収録文字数は多くなっています。
Nの有無は「辻/鯖/噂/葛」等一部の文字で標準的に表示される文字のかたち(例示字形)が、JIS90とJIS2004、どちらに準拠しているかを示すものです。Nがついていない「Std」「Pro」「Pro6」はJIS90、「StdN」「ProN」「Pr6N」はJIS2004に準拠しており、NつきのフォントからNなしのフォントへの変更、またはその逆を行なった場合、該当する文字のかたちが変わることがあります。
現在は、新しい規格であるJIS2004=Nつきフォントを使うほうが望ましいと言えます(多くのフォントはJIS90・JIS2004双方の字形を持っているので、Adobe Illustrator、Adobe InDesignなどの対応アプリケーション側で切り替えることは可能です)。

参照:日本語書体をもっと使いこなすヒント|文字とフォントのことはじめ07

これからデザインするものが、多くの人名を含むものだったり、現在では使う機会の少ない漢字を含む場合には、収録されている文字が多い「Pr6N」「ProN」がついているフォントを選ぶとよいでしょう。チラシやバナーのように全体の文字数が少ないものや、標準的な漢字しか使わない原稿をデザインする場合には「Std」相当でも十分に必要な文字を扱うことができるはずです。

目立たせたい!チラシ・バナー・ポスターに使えるキャッチーな書体

見た目のインパクトを重視したい、目立たせたい、ユニークなデザインで人目を引きたいという場合には、Adobe Fontsのフィルターにある「分類」で「デザイン」を選んでみましょう。
書体を選ぶ段階で、どのようなテキストに割り当てるかわかっている場合は、「サンプルテキスト」の欄にテキストを入力すれば、よりデザインに使用した際のイメージが把握しやすくなります。

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ここではデザインがユニークな9つの書体を紹介します。
デザイン書体はフォントによって収録している文字数(おもに漢字)に違いがあります。
使用にあたっては、目的の文字が含まれているかどうか、確認してから使うとよいでしょう。

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[書体例]

Adobe Fonts|デザイン見本

使用フォント:AB-アンダンテ・AB ToriB・FOT-キアロ・Rampart One・Train One

子ども向けデザインに最適なポップでかわいい書体

Adobe Fontsの「デザイン」カテゴリには、ほかにもたくさんの書体があります。
そこから目的の書体を見つけるためには、どのような印象にしたいのか、仕上がりのイメージを思い浮かべながら検索結果を見ていくとよいでしょう。
ここでは、子ども向けのイベント告知に最適な、6つの書体ピックアップ。カラフルな色、フチ文字などの表現を加えることでさらにポップでかわいい印象に仕上がります。

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[書体例]

Adobe Fonts|デザイン見本

使用フォント:VDL ロゴ丸Jr・AB-ウォーク・ABJグー・Stick・どんぐり かな

キラキラ・ゴージャス・かわいい!を作る書体

Adobe Fontsには、キラキラとしたゴージャスなデザインや、かわいらしい印象に仕上がる手書き系書体もたくさんあります。「黒明朝」のように、文字そのものに星型のアクセント加えられているものは、その書体を使うだけでデザインに大きな変化を与えることができます。

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[書体例]

Adobe Fonts|デザイン見本

使用フォント:VDL 黒明朝・赤薔薇シンデレラ

読みやすいテロップ作りに最適!動画向け書体

動画にふさわしい書体とはどのような書体でしょうか。
見てもらいたい、目を引きたいという想いから、変わった文字のかたちを持つものを選びたくなるかもしれませんね。しかし、テロップのようなテキストには、できる限り読みやすい、はっきりした文字のデザインの書体を選びましょう。ときに秒にも満ちない瞬間しか表示されない文字でも、伝えたいことがしっかりと伝わるようになります。
さらに可読性、可視性を追求するなら、UD書体の使用も検討してみましょう。より読みやすいテロップに仕上がるはずです。

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[書体例]

Adobe Fonts|デザイン見本

使用フォント:ニタラゴルイカ・M Plus Rounded 1c・VDL V7ゴシック

老若男女、どんな人にも伝わりやすい書体

建物のサインや広報紙のような公共物のデザインでは、どんな人にとっても見やすく、読みやすいフォントの選択が求められます。そうしたときに活用したいのが「UD書体」です。
UD=Universal Designとは、年齢、性別等、属性の違いによらず、等しく使いやすい環境を実現しようという考えかたです。見間違い、読み間違いを抑える配慮がされた文字のデザインは、印刷物のみならず、webや動画等でも効果を発揮。幅広く利用することができるでしょう。

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[書体例]

Adobe Fonts|デザイン見本

使用フォント:UD新ゴ・UD新丸ゴ

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ことはじめ8|AdobeFonts

文字の表現力を広げるフォントが揃うAdobe Fonts

アドビでは、クリエイティブには欠かせない道具のひとつであるフォントをより自由に、柔軟に使えるクラウドフォントサービス「Adobe Fonts」を展開しています。2023年10月現在、その数は日本語フォント650超、Adobe Fonts全体では25,000以上。膨大なフォントをメディアを問わず、商用/非商用問わず、自由に使うことができます。
書体名がわからなくても「明朝」「ゴシック」「丸ゴシック」「筆書体」「デザイン書体」といった書体の分類から探すことができ、イメージしたフォントにすばやく辿り着けるようになっています。

“もっといろいろなフォントを見てみたい、使ってみたい!”
そう思えたらまずは一度、Adobe Fontsを開いてみましょう。
そこには高品質でユニークなデザインの書体が待っているはずです。

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