大判プリンターの可能性を解き放つアドビのプリントエンジン
建築図面、技術プロジェクト図面などは、現在ではAdobe Embedded Print Engineを搭載する大判印刷プリンター(LFP)で 印刷されます。画像著作権:Adobe Stock/torsakarin
デジタル化が進んだ今日、大判プリンター(LFP)はビジネス、アーティスト、専門家にとって不可欠なツールとなり、印象的なビジュアル作成の手法を変革してきました。大判プリンターによって大きなサイズでも高品質のプリントが実現し、プロフェッショナルは創造性を表現し、メッセージを効果的に伝えられるようになりました。
LFPは、看板、広告、建築、地図、美術、室内装飾など、さまざまな分野で活用されています。LEP市場は大判印刷の需要増加によって大きく成長し、インクジェット技術の進歩によって新たなビジネスチャンスが生まれています。レポートによると、世界のLFP市場規模は2022年に約90億ドルであり、2022年から年間成長率3.5%で成長し2031年には126億ドルに達すると予測されています。
通常のA4サイズの用紙を扱う従来の家庭用プリンターまたはオフィス用プリンターと比較して、LFPを用いた印刷はより複雑です。LFPは、A0のようなはるかに大きな用紙サイズに印刷することができ、印刷面積は約16倍になります。LFPや特大サイズプリンターには、シングルパス、マルチパス、フラットベッド、ロールフィードなどの構成があります。これらのプリンターは、地図、CAD(コンピューター支援設計)図面、建築図面など非常に精細でグラフィックを多数含むファイルを取り扱うことが得意であり、精緻なディテールを正確にレンダリングするために高性能なプロセッサー(CPU)が必要となります。
LFPの重要なソフトウエアコンポーネントはラスターイメージプロセッサー(RIP)であり、RIPは、グラフィックをラスターピクセルに変換し、各インクジェットノズルにインクの液滴を付着させる位置を指示します。RIPはプリンターの頭脳として機能し、元のコンテンツの基材上で忠実な再現を確実に行います。Adobe PDF Print EngineはLFPデバイス印刷において市場をリードするRIP技術であり、レンダリングはホストシステムで専用のソフトウェアワークフローソリューションの一部として行われます。しかし、自己完結型のLFPプリンターでは、レンダリングはデバイス内で行われる必要があるので、よりアジャイルな技術が必要となります。
Adobe Embedded Print Engine(AEPE)は、RIPを製品に組み込むためのアドビのプリンター用技術で、現在さまざまなタイプの数多くのプリンターに使用されている技術です。最近の機能強化によって、複雑な開発を行うことなく、組み込み型LFPプリンターの機能のメリットを最大限活用することができるようになりました。
LFPでは、カラーを指定されたものに正確に一致させること、色域の拡大、特別なエフェクトや仕上げの追加など、多種の基材を使って色の一貫性の確保を行います。ここで使われるのがスポットカラーと呼ばれる、予め混合されて(CMYKを組み合わせて混合させるのではなく)使用される特定のインクです。多くの場合において、調合済みのスポットカラーインクはLFPデバイスでは提供されていません。AEPEによってLFPデバイスはスポットカラーを利用できるようになりますが、電子文書で使用するスポットカラーがプリンターで提供されていない場合があります。こうした場合、AEPEは、利用可能なインクを正確に組み合わせることでスポットカラーをエミュレートし、意図するカラーに近づけることができます。
ICC(International Color Consortium)プロファイルは、カラーマッピングや、カメラ、モニター、プリンターなどのデバイス間での色変換を標準化します。これらのプロファイルは、正確なカラー再現、デバイス特性の評価、カラー管理ワークフロー、色域マッピング、ソフトプルーフ、複数デバイス間での一貫性を確実なものにします。AEPEは、オブジェクトレベルのICCプロファイル変換機能を提供し、LFPデバイスが固有のICCプロファイルを使用して、テキスト、グラフィック、画像などのさまざまなオブジェクトに対して正確に色を変換できるようにします。こうした高レベルの制御により、ユーザーが望む出力を行うことができます。
精細な線を精緻に再現することは、建築、エンジニアリング、デザインで不可欠であり、これらの分野では、精緻なディテール、判読可能なテキストを正確に伝える必要があります。AEPEを使うことで、これらのディテールを正確さと明晰さを持って忠実に再現できるようになります。さらに、AEPEは、一貫して卓越したカラー出力を実現するカラーエンハンス機能を提供します。
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パートナー企業は、Adobe Embedded Print Engineを搭載した大判プリンターを既に導入しています。例えばエプソンは、SureColor TシリーズとPシリーズのプリンターを2022年に発売し、最近新たに3機種のLFP(SC-P8500DM、SC-T7700DM、SC-T5700DM)をSureColorシリーズに追加しました。これらのデバイスはCAD/GISアプリケーションに対応し、高品質の画像を提供し、要求の厳しいユースケースにおけるAEPEの汎用性とパフォーマンスを実証しています。
エプソン執行役員の五十嵐 人志氏は、「Adobe Embedded Print Engineによって、弊社の大判プリンターSureColorシリーズの画質と生産性を確実に向上されました。エプソンとアドビは、ビジュアルコミュニケーションの新たな可能性を解き放ち、CAD/GISアプリケーションの分野で卓越した結果をもたらしています」と述べています。
結論として、大判プリンターによって、多くの業界にわたって素晴らしいビジュアルを生み出す変革がもたらされてきました。今後も技術の進歩と、大判印刷の需要が増すことで、LFPの市場は大幅に拡大することが予想されています。AEPEがプリンターの機能を拡張し、ビジュアルコミュニケーションの分野で多くの可能性を実現する方法については、貴社のアドビ担当者にお問い合わせください。
※この記事は2023年6月21日(米国時間)に公開されたブログの抄訳です。