ハイダイナミックレンジ(HDR)写真とは何かについてゼロから解説します

砂丘と青空 自動的に生成された説明

この投稿は、「From the ACR team(Adobe Camera Rawチームからのお便り)」と題し、Adobe LightroomとAdobe Camera Rawのイメージング機能を開発しているチームから直接インサイトをお届けするブログシリーズの記事です。

過去2年間、私はハイダイナミックレンジ写真の表示から編集、共有に関するプロジェクトに取り組んできました。今回、この機能がすべてのAdobe Lightroom製品(デスクトップ版、モバイル版、web版)とAdobe Camera Rawに搭載されたことをお知らせでき、嬉しく思います。この記事では、ハイダイナミックレンジとは何か、どのように機能するのか、そしてこの機能を最大限に活用する方法についてご説明します。

この記事の写真をハイダイナミックレンジで見るには、Google Chrome または Microsoft Edgeバージョン116以降 を搭載したmacOSまたはWindowsシステムと、1,000ニト以上の明るさに対応したハイダイナミックレンジディスプレイ を使用することをお勧めします。その他のブラウザやプラットフォームでは、このページの写真がHDRで表示されない場合があるのでご注意ください。推奨ディスプレイには、XDRディスプレイ(2021年以降)を搭載したMacBook ProなどのApple XDRディスプレイ、およびDisplayHDR 1000またはDisplayHDR 1400としてVESA認定されたディスプレイが含まれます。

ハイダイナミックレンジとは?

「ハイダイナミックレンジ」という言葉を聞いて、何を想像しますか??オーバーに現像されてハレーションになったり、色彩が派手になりすぎた画像を思い浮かべますか?ご安心を、この機能は そういうものでありません

滝と氷冠、スバールバル諸島。画像にカーソルを合わせるかタップすると、HDRバージョンが表示されます。

上の写真は、2014年の夏に氷冠が溶けて流れ落ちる滝を撮影したものです。これは、Adobe Lightroomの新しいハイダイナミックレンジ(HDR)機能を使って編集しました。デフォルトでは標準ダイナミックレンジ(SDR)バージョンが表示されていますが、画像にカーソルを合わせると(モバイル端末の場合は写真をタップすると)HDRバージョンが表示されます。両者の違いは歴然で、逆光の雲や滝がHDRで生き生きとしているのがわかると思います。これこそが、この機能の真骨頂なのです!

写真の世界では、ダイナミックレンジ という用語は、画像の最も明るいトーンと最も暗いトーンの間のコントラストを指し、F値で測定されます。経験則として、ダイナミックレンジが4ストップ以下の写真は低コントラストまたは ローダイナミックレンジ とみなされ、8ストップ以上の写真は高コントラストまたは ハイダイナミックレンジ(HDR)とみなされます。下の写真のような月夜の風景はダイナミックレンジが非常に高く、明るい月と暗い前景の差は15ストップ以上あります。

雪が降った山の景色 自動的に生成された説明

ネパールの明け方の空の月。画像にカーソルを合わせるかタップすると、HDRバージョンが表示されます。

Adobe LightroomはすでにHDRに対応しているのでは?と思う方もいるかと思います。たしかにそれは嘘ではありません。Adobe LightroomはHDR写真のキャプチャ、HDR写真の読み込み、複数フレームのHDRファイル作成をすでにサポートしています。しかしこれまでは、Adobe Lightroomの画面上で見るすべての写真は標準ダイナミックレンジ(SDR)レンディションでした。つまり、Adobe Lightroomは、HDR写真を含むすべての写真を、標準ディスプレイで見栄えが良くなるように処理してから表示していたのです。この処理をトーンマッピングといい、JPEGやPNGなどのフォーマットに写真を書き出す際にもSDRへのトーンマッピングが行われます。

まとめると、Adobe Lightroomは何年も前からHDRファイルの読み込み、結合、キャプチャが可能でしたが、これまではSDRとして表示や共有をしていました。しかし、HDRディスプレイの登場のおかげですべてが変わろうとしています。

HDRディスプレイについてもっと知りたい!

HDRディスプレイは現在、携帯電話、タブレット、ラップトップ、テレビなどでよく見かけるようになりましたが、HDRディスプレイとは一体何なのか?HDRディスプレイと通常のディスプレイの違いはなにか?「1,000ニトをサポート」するディスプレイとはどういう意味なのか?これらの疑問に答えるために、まず輝度についてご説明します。輝度という用語は、特定の方向に輝く光の量を指し、1平方メートルあたりのカンデラ(cd)で測定され、より一般的にはニト(nit)と呼ばれます。例を挙げましょう。

Image of a mountain in the sunlight

このシーンのさまざまな部分の光量を調べてみます。シャドウの部分の輝度は100ニトほどでしょう。そして中間調は1,000ニト、ハイライトは4,000ニトといった具合です。

ディスプレイもまた、その明るさを数値化するためにニトを使用します。かつては、一般的なディスプレイの最大輝度は250ニト程度でしたが、今日では一部の携帯電話やタブレットは、画面全体で1,000ニトをサポートし、ピーク輝度は1,600ニトに達します。これは標準的なディスプレイの数倍の明るさです。さらに、最近のディスプレイは、深い黒を保持し、コントラストを向上させるために様々な技術(ローカルディミングやOLEDなど)を使用しています。こういったディスプレイはピーク輝度が高く、黒が深く、以前よりもはるかに高い範囲のコントラストを実現できるため、HDRディスプレイと呼ばれています。

写真のメリットは?

従来のSDR写真についての1つの捉え方は、画面上の結果がユーザーインターフェイスの標準輝度範囲に制限されるということです。つまり、SDR写真はSDRホワイト(テキスト、アイコン、メニュー、その他のインターフェース要素によく使用される最大ホワイト)より明るくすることはできません。これは、紙に印刷された写真が紙そのものよりも明るくできないのと似ています。

HDRディスプレイでは、これはもはや当てはまりません。以下の例のように、SDRホワイトよりも明るい色調を使用できるようになっています(HDRバージョンを見るには画像にカーソルを合わせるか、モバイルデバイスを使用している場合は画像をタップしてください)。

草の上にいるキツネ 自動的に生成された説明

スバールバル諸島の北極ギツネ。画像にカーソルを合わせるかタップすると、HDRバージョンが表示されます。

暖かい夏の日を楽しむ北極ギツネの子。RAWファイルには、暗い鼻や目から明るい逆光の毛並みまで、広大なダイナミックレンジが含まれています。しかしこれまで、このファイルを編集して共有するには、常に画像をSDRにトーンマッピングする必要がありました。つまり、すべてのトーンが限られた範囲に収まるように、ハイライトを下げ、コントラストを調整する必要があったのです。それがようやくHDRで編集できるようになり、ハイライトが本来あるべき生き生きとした輝きを放つようになりました。HDR画質では、キツネの毛の間から日光が差し込んでいるような印象をより強く感じられます。

HDRディスプレイは通常のディスプレイに比べ、ハイライトのヘッドルーム(ピーク輝度の余裕)が2~4ストップ分広くなっており、より明るいハイライト、深いシャドウ、改善されたトーンセパレーション、鮮やかなカラーなど、色調と色彩の広がりに余裕が生まれます。その結果、HDRディスプレイ用に最適化された写真は、よりインパクトがあり、奥行きと臨場感が増します。

夜のタワー 自動的に生成された説明

東京の街明かり。画像にカーソルを合わせるかタップすると、HDRバージョンが表示されます。

2023年10月のリリースで、Adobe LightroomとAdobe Camera RawはHDRでの写真の表示、編集、共有をサポートするようになりました。HDRディスプレイが提供する、拡張されたハイライトのヘッドルームを最大限に活用できます。既存のHDR機能(読み込み、キャプチャ、結合)と組み合わせることで、Adobe LightroomとAdobe Camera Rawは、完全なエンドツーエンドのHDRワークフローを提供することになります。

(*)2023年10月リリース版で導入された新機能

これらの新機能の使い方をご説明します。

使い始めるには何が必要ですか?

デスクトップ版の新しいHDR機能を使用するには、HDRディスプレイとサポートされているグラフィックプロセッサー(GPU)が必要です。詳細は、Adobe LightroomAdobe Lightroom ClassicAdobe Camera RawのGPU FAQをご覧ください。macOSの場合は、MacBook Pro 14インチまたは16インチ(2021年11月以降)などのApple XDRディスプレイをお勧めします。Windowsの場合は、少なくとも1,000ニトのディスプレイを使用することをお勧めします。DisplayHDR 1000(英語)以上のVESA認定ディスプレイのリストについては、DisplayHDRサイト(英語)を参照してください。

Adobe Lightroom iOSのHDRは、iOS 16以降を搭載した、現在サポートされているすべてのiPhoneおよびiPadデバイスで動作します。ベストの環境で体験するには、iPhone 15(すべてのモデル)、iPhone 14 ProまたはPro Max、12.9インチiPad Pro(第5世代以降)など、Super Retina XDRディスプレイを搭載したデバイスを使用してください。

Adobe Lightroom AndroidのHDRは、現在Android 14のGoogle Pixel 7 Proでのみ利用可能です。近い将来、他のデバイスにもHDRサポートを拡大する予定です。

HDRの使い方は?

HDRは、ボタンを押すだけの簡単な操作で使い始められます。デスクトップ版とweb版(Adobe Lightroom、Adobe Lightroom Classic、Adobe Lightroom Web、Adobe Camera Raw)では、編集スタックの一番上、自動と白黒ボタンの隣に「HDR」という新しいボタンがあります。モバイル版(Adobe Lightroom AndroidとAdobe Lightroom iOS)では、HDRボタンはライトパネルの一番下にあります。

ゲーム画面のスクリーンショット 低い精度で自動的に生成された説明

HDRボタン(黄色の丸で囲んだ部分)を押すだけで開始できます。

このボタンをオンにすると、写真処理パイプライン全体がHDRに対応します。これは、最終的な画像の色調が通常のSDRの範囲に制限されなくなることを意味します。つまり、メニュー、ウィンドウ、テキスト、その他のUI要素でSDRホワイトが使われている箇所よりさらに明るいトーンを表現できるということです。この視覚効果を初めて体験する方は、かなり驚くかもしれません。

SDRモードで使い慣れているすべてのコントロールは、HDRでも同様に機能します。基本的なトーンコントロール(露出、コントラスト、ハイライト、シャドウなど)から、カーブ、ヒーリング、マスキングなどの高度なコントロール、さらにはポイントカラーやレンズぼかしなどの新機能も同じように機能します。

ほとんどのコントロールは、SDRでもHDRでも同じように見えますが、ポイントカーブは少し違います。

HDR in Lightroom

HDRモードでは、ポイントカーブはSDR(左下)とHDR(右上)の2つの部分に分かれています。HDRセクションでは、ハイライトを直接かつ非常に正確にコントロールすることができます。このセクションの使い方については、後でいくつかの例を見てみましょう。Adobe Lightroom ClassicとAdobe Camera Rawでは、カーブ上のポイントの座標値は通常0から255の範囲ですが、HDRモードでは500まで拡張されます。パネルの中心(2本の太いグレーの線が交差する…)は、SDRホワイトレベル、つまりSDR画像の最大の白さを表しています。500の値は、SDRの白より4ストップ高いF値を表しています。

HDR編集はどのような写真にも適用できますが、本質的に幅広い色調を保持する写真に最も効果的です。これには、RAW写真、「写真を結合/HDR…」機能で作成したDNG、Apple ProRAW DNGファイル、Google Pixel DNGファイルなどが含まれます。カメラによっては、HDR写真をHEIFフォーマットで直接記録するものもあります。これには、最近のApple iPhoneや、キヤノン、ニコン、ソニーの最近のカメラが含まれます。これらのファイルはすべてAdobe LightroomとAdobe Camera Rawでサポートされているので、HDR編集も問題なく行えます。

1つのRAWファイルでも、すでに多くのダイナミックレンジを保持していることがあるので、露出ブラケットや「写真を結合/HDR…」機能を使う必要は必ずしもないことを覚えておいてください。例えば、次の写真は2018年世代の携帯電話からDNG rawでキャプチャしたものです。

雪の中を流れる川 中程度の精度で自動的に生成された説明

冬のヨセミテ。画像にカーソルを合わせるかタップすると、HDRバージョンが表示されます。

それ以外のケースでは、1フレームでは十分ではありません。Adobe Lightroomの既存の「写真を結合/HDR…」機能と、新しいHDR編集・書き出し機能を組み合わせた例をご紹介します。

山の町 自動的に生成された説明

ネパールのマウンテンビレッジ。 画像にカーソルを合わせるかタップすると、HDRバージョンが表示されます。

このシーンには、非常に明るいハイライト(雪山)と深いシャドウ(陰影のある葉)があります。カメラの露出ブラケット機能を使って、3つの別々のフレーム(標準、2ストップ明るく、2ストップ暗く)をキャプチャしています。Adobe Lightroomの「写真を結合/HDR…」機能を使ってこれらのフレームを統合し、シーンのすべてのトーンを簡単に保持できるDNG rawファイルを作成しました。最後に、HDRボタンをオンにし、いくつかの編集を加えて、上のような画像に仕上げました。

HDRの実際の使い方は?

ライトパネル(Adobe Lightroom Classicでは基本パネル)、特に「露光量」、「ハイライト」、「白レベル」のスライダーから始めることをお勧めします。また、ポイントカーブは、HDRの色調を直接調整できる唯一のコントロール機能なので、微調整に使うことをお勧めします。まだカーブを試したことがない方は、この機会にぜひお試しください。このセクションの後半で、いくつかの例を見てみましょう。

カレンダー 自動的に生成された説明

グリーンランドの巨大な氷山。HDR編集には、「露光量」、「ハイライト」、「白レベル」から始めるのがおすすめです。

最初は、HDR編集を理解するのは難しいと感じるかもしれません。トーンをSDRの「白レベル」よりも明るくできるわけですから。でもちょっと考えてみてください。自分の写真が、メニューやボタン、ウィンドウなどのUI部分よりも明るくすることができてしまうとしたら。このHDR編集の新しい世界をナビゲートするために、Adobe LightroomとAdobe Camera Rawにいくつかのビジュアライゼーションを追加しました。

ヒストグラムは、HDR写真を編集するための重要な視覚的補助です。SDRよりも明るい色を識別し、ディスプレイのHDRヘッドルームを超える色を示します。HDRボタンがオンの場合、ヒストグラムは2つのセクションに分けられます: 左側がSDR、右側がHDRです。

HDR in Lightroom

両者を隔てるグレーの縦棒は、SDR(またはUI)の白レベルを示し、SDRで編集する場合、トーンがこのレベルより明るくなることはありません。ただし、HDRモードではトーンをより明るくすることができ、これはバーの右側にあるヒストグラムデータで示されます。

グレーの縦の破線は、SDRホワイト以上のゾーンをF値単位で示しています。最初の(一番左の)破線はSDRホワイトより1 ストップ上、2番目の(真ん中の)破線はSDRホワイトより2ストップ上、といった具合です。

ハイライトクリッピング警告は、ディスプレイの能力と限界を知るための良い方法です。有効にすると、HDRセクションの下に黄色の水平バーが表示され、ディスプレイが現在表示できるHDRトーンを示します。赤色の水平バーは、ディスプレイの現在のヘッドルームを超えているため、正確にプレビューできない範囲を示します。下の例では黄色から赤色への移行が2番目の破線のすぐ右側で起きており、ディスプレイのヘッドルームが2ストップ強あることがわかります。

HDR in Lightroom

ハイライトクリッピング警告が有効な場合、ヒストグラムと同じ黄色と赤色の配色を使用したカラーオーバーレイが画像上に表示されます。これは、画像のどの部分がSDR(カラーオーバーレイなし)、HDRでディスプレイのヘッドルーム内(黄色)、ディスプレイの正確なプレビュー能力を超えている(赤色)のかを見分ける便利な方法です。

HDR in Lightroom

もしラップトップやモバイルデバイスからの編集で、ディスプレイ輝度の自動調節を有効にしている場合、明るい環境や暗い環境に移動すると、ディスプレイの利用可能なヘッドルームが自動で変わることがあります。このような変化は、ヒストグラムと画像上のオーバーレイに動的に反映され、黄色と赤色のバランスが変わるのが確認いただけると思います。

写真のHDRコンテンツを理解するもう1つの方法は、「HDR範囲を表示」機能です。これは、ライト(または基本)パネルの下部にあるチェックボックスです。有効にすると、写真のHDRトーンがシアンからマゼンタまでの4色を使って表示されます。ヒストグラムにも同じ色のバーが表示されます。これらの色を使用すると、ディスプレイのヘッドルームが限られている場合でも、HDR編集を行うことができます。

下の例では、氷山と空の多くの部分がSDRホワイト(シアンとブルー)より1~2ストップ高いですが、SDRホワイト(パープルとマゼンタ)より3~4ストップ高い、さらに明るい部分もあります。

HDR in Lightroom

Adobe Lightroom ClassicとAdobe Camera Rawでは、カラー読み上げ(リードアウト)機能もHDR階調を知る良い方法です。画像の上にカーソルを置き、ヒストグラムに表示される数値を見てください。SDRの場合、Adobe Lightroom ClassicはRGB値を0~100のパーセンテージで表示し、Adobe Camera Rawは8ビット(0~255)スケールで表示します。HDRで編集する場合、これらのアプリケーションはSDRトーンを同じように表示し続けますが、SDRホワイトより上のF値を使用してHDRトーンも表示します。例えば、+0.5という値は、SDRホワイトより0.5ステップ高いことを意味します。Adobe Camera Rawでは、この規則がライブ読み上げとサンプル読み上げ(サンプラーツールを使用)の両方に適用されます。ハイライトクリッピングオーバーレイと同様に、黄色はディスプレイのヘッドルーム内のピクセルを示し、赤い値はディスプレイの限界を超えたピクセルを示します。

HDR in Lightroom

上の例は、カーソルを氷山の最も明るい部分に合わせた状態です。読み上げているピクセルの3つのカラーチャンネルはすべてSDRホワイトを超えています。赤チャンネルは3.3ストップ上、緑チャンネルは2.4ストップ上、青チャンネルは1.1ストップ上です。ディスプレイのヘッドルームは約2.6ストップで、緑と青のチャンネルを正確に表示するには十分ですが(数値が黄色)、赤のチャンネルを表示するには十分ではありません(数値が赤色)。これは、ディスプレイで赤チャンネルがクリッピングされないように、ハイライトかホワイトのスライダーを下げる必要があることを示すヒントです。

ヒントとベストプラクティス

HDRを最大限に活用するためのヒントをいくつか紹介しましょう。

キャプチャは慎重に。 まず、写真をキャプチャする際は、ハイライトがクリッピングされないようにします。これは一般的に注意すべき点ですが、HDRではさらに重要です。ハイライトが飛んだ写真をSDRで編集すると、そのハイライトは彩度が落ち、滑らかに白にフェードアウトする傾向があるため、仕上がりはそれほど悪くありません。しかし、HDRで処理すると、切り取られたハイライトが非常に目立ち(明るいが、ディテールが欠落し、カラーがおかしくなる)、仕上がりに影響がでることが多いです。高コントラストのシーンを撮影する場合は、ハイライトを保護するために露出をアンダーにする方がずっとましです。たとえシャドウがノイズっぽくなったとしてもです(これは「ノイズ除去」でクリーンアップできます)。迷ったときは、露出ブラケットを使って余分なフレームも記録しておきましょう。

夕日と雲 自動的に生成された説明

ポルトガルの海面に射す陽光

選択はなるべく早い段階で。 編集ワークフローの早い段階でHDRボタンを使う(または使わない)ことをお勧めします。SDRとHDRの編集コントロールはできる限り同一になるように設計していますが、編集の際の見え方はHDRとSDRでは写真まったく異なります。SDRかHDRかの選択は、特に「ハイライト」と「白レベル」スライダーの調整方法に大きく影響するため、早い段階で決めておくことをお勧めします。でもご心配なく。Adobe Lightroomを使った編集は、自由度が高く後でいつでも変更できます。

鮮やかなカラーも楽しみましょう。 ハイライトが明るくなることはHDRの明らかなメリットですが、ハイライトの色幅が広がることも重要です。SDRで編集する場合、白に近いカラーパレットが限られているため、非常に明るいハイライトは白飛びしてしまいがちです。しかしHDRで編集すると、SDRのホワイトポイント(ヒストグラムの中央の縦線)を中心に、使える色域が大きく広がります。つまり、低~中程度のコントラストの写真でも、HDRで編集することで視覚的に大きなメリットが得られる可能性があります。

例えば、下の写真には明るいハイライトはあまりありませんが、鮮やかな青色が表現されています。

鳥, キジ, 動物, グリーン が含まれている画像 自動的に生成された説明

下の拡大トリミングで、孔雀の頭と首の光沢をよく見てください。SDRバージョンではこれらの部分がわずかに平坦に見えるのに対し、HDRバージョンではディテールと色彩が増していることに注目してください(カーソルを画像に合わせると、HDRバージョンが表示されます)。

Cgで描かれたカラフルな鳥 低い精度で自動的に生成された説明

画像にカーソルを合わせるかタップすると、HDRバージョンが表示されます。

同じ原理を示す2つ目の例です。SDRバージョンではトーンや色彩がやや淡いですが、HDRバージョンでは窓や照明が明るくなっているのがはっきりと確認できます(カーソルを画像に合わせると、HDRバージョンが表示されます)。

屋内, 建物, いっぱい, 座る が含まれている画像 自動的に生成された説明

画像の上にカーソルを合わせるかタップすると、HDRバージョンが表示されます。

ヘッドルームは動的に変化します。 お使いのディスプレイで輝度の自動調節が有効になっている場合、ディスプレイのHDRヘッドルームは環境に依存することに注意してください。周囲が明るければ明るいほど、ディスプレイも明るくなり、ヘッドルームが狭くなります。暗い環境にいる場合は、ディスプレイ全体の輝度が下がり、ヘッドルームが広がります。以下のスクリーンショットに示すように、ヒストグラムとクリッピングインジケーターは、ディスプレイのヘッドルームをチェックするのに最適なツールです。

HDR in Lightroom

明るいディスプレイ、ヘッドルームが狭い(1.2ストップ)

HDR in Lightroom

暗いディスプレイ、ヘッドルームは広め(3.1ストップ)

クリッピングオーバーレイを有効にした状態で、黄色と赤のエリアの分布を確認してください。黄色の部分が多いほど、ヘッドルームが広いことを意味します。黄色と赤のバランスが変化した場合は、ディスプレイのヘッドルームが変化したことを意味します。ヘッドルームが変化し続けると、HDRで編集する際に混乱することがあるので、照明が安定している場所で編集するのがベストです。

サングラスが要るならやりすぎかも。 お使いのディスプレイのヘッドルームが広くても、そのすべてを使う必要はありません。ハイライトがまぶしいほど明るくなるまで「白レベル」のスライダーを上げることもできますが、それはあまり良いことではありません。あなたの写真を見るとき、友達にサングラスをかけてもらいたいですか?魅力的なHDR写真に仕上げたいのであって、人の目を眩ませたいわけではありません。

煙が出ている山と海 自動的に生成された説明

ポルトガルの打ち寄せる波

2ストップがベスト。 経験的に、2ストップまで ヘッドルームを使うのがスタートとしては良いと思っています。最も明るいトーン(金属部分のハイライト、鏡面反射、明るい雲など)をヒストグラムの+2マーカーに置いてみてください。上の写真は、砕け散る波が夕日からの暖かい光を受けています。まず「白レベル」コントロールから始め、次に「カーブ」を追加してハイライトの配置を調整しました。ヒストグラムの右端は、下のスクリーンショットで黄色に囲んだHDRエリアの+2垂直マークに合わせています。

HDR in Lightroom

しかし、写真全体でハイライト領域が少ない場合、2ストップを超えることが非常に効果的な場合もあります。これは数年前、アンナプルナ・ベースキャンプへのトレッキング中に撮影した写真です。

雪が降った山の景色 自動的に生成された説明

明け方の空の月、ネパール

月がアンナプルナ・サウスの背後に沈み、ちょうど稜線が日の出で明るくなり始めたときでした。この写真をHDRで編集する際、月をSDRホワイトより3.3ストップほど上がったところに調整しました。非常に明るいけれど、フレーム内では月が小さいため、視覚的な結果はバランスが取れていると思います。

2ストップを超えてうまくいった例をもう1つご紹介します。

スバールバル諸島の逆光の氷のディテール

この写真は、早春の北極圏旅行中にボートのデッキから手持ちで撮影しました。凍った湾には幻想的な氷のパターンがあり、太陽は水平線すれすれにありました。氷の縁には盛り上がりがあり、低い角度から太陽の光を受けています。この写真をHDRで編集する際、平坦な氷の面(暗くて寒色)と盛り上がったエッジ(明るくて暖色)の違いを強調してみました。エッジは写真全体に占める割合が小さいので、+2ストップを大幅に超えても問題ないと考えました。実際、いくつかの暖色ピクセルは+4ストップですが、数が少ないので写真を大きく変えてしまうような編集にはなっていないかと思います。ほんのわずかな超高輝度領域があることで、輝きとポップさが増すのです。

明るければ良いとは限らない。 明るい画像は見栄えが良くなる傾向があるので、HDRで編集するときは「露光量」スライダーを右にドラッグし続けたくなります。SDRで編集しているときは、誰もこんなことはしません。なぜなら、最終的にすべてが白っぽくなり、画像の見た目が明らかに悪くなるからです。しかしHDRでは、画像はSDRの白レベルの制約を受けないので、露光量を上げるほど明るくカラフルな画像になります。特にフルスクリーン表示で編集している場合、わかりやすい明るさの基準点がないために迷走し、明るすぎるHDR写真に仕上がってしまうことがよくあります。また、2枚のHDR写真を別々に見ると問題ないのに、webアルバムのように一緒に表示すると不自然なミスマッチ(一方が他方よりかなり明るく表示される)になることもあります。

HDR編集時にこのような問題を避けるには、Adobe LightroomとAdobe Camera Rawで、基準点とフィードバックを提供する様々なツールを使うことをお勧めします。

HDR in Lightroom

白で囲む。 上のスクリーンショットのように、画像の周囲のカンバスを(濃いグレーではなく)白にしてみてください。デスクトップ版では、写真の周囲の領域を右クリックし、コンテキストメニューから「白」を選択します。これはSDRの白レベルです。言い換えれば、メニュー、ボタン、ウィンドウなどのUI部分に使用される最大の白さです。HDR画像が明るくてこの白いカンバスがくすんだグレーに見える場合は、おそらくやりすぎです。

ヒストグラムはあなたの味方。 ヒストグラムから目を離さないでください。HDRモードでは、SDRセクションとHDRセクションに分かれています。以下のスクリーンショットのように、コンテンツの大部分が右側(HDR)にある場合は、画像が明るすぎる可能性があります。

HDR in Lightroom

ハイライトのクリッピングオーバーレイは、画像自体の視覚的なチェックとして使用します。画像のほとんどがSDRの範囲にある(クリッピングがない、つまりカラーオーバーレイがない)のが理想的です。黄色や赤色の部分はHDRトーンを示します。上の例のように、画像のほとんどが黄色と赤のオーバーレイで覆われているのは悪い兆候です。

「HDR範囲を表示」は、明るすぎる画像をチェックする良い方法でもあります。カラーオーバーレイになっている大きな領域がないか注意してください。

デスクトップ版では、「露光量」、「ハイライト」、「白レベル」のスライダー

を調整する際に、Optionキー(macOS)またはAltキー(Windows)を使って、クリッピングやオーバーレンジトーンをチェックします。Adobe Lightroom iOSとAndroidでは、同じスライダーを使用中に2桁目の数字を押し続けます。クリッピング警告インジケータと同じ黄色や赤色のビジュアライゼーションが使用されます。

下のスクリーンショットでは、Option/Altキーを押しながら「白レベル」スライダーをドラッグしています。ビジュアライゼーションは、空、山の頂、氷のエッジだけがSDRホワイトポイントより上にあることがわかります。どのエリアも赤く表示されていないので、画像のどの部分もディスプレイ上でクリッピングしていないことが確信できます。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, Web サイト 自動的に生成された説明

カーブを使いこなす。「ハイライト」と「白レベル」のスライダーはHDR編集を始めるには最適ですが、カーブを使いこなせばHDR写真を次のレベルに引き上げることができます。「ポイントカーブ」は、HDRのハイライトを微調整するのに最適な方法です。カーブ上段を「フラット」気味にすると、以下のように優しい表現になります。

草, 立つ, ウシ, フィールド が含まれている画像 自動的に生成された説明

逆にハイライトを目立たせるには、カーブ上段を以下のように「急角度」にします。

草, 立つ, ウシ, フィールド が含まれている画像 自動的に生成された説明

この写真の場合、雲が他のコンテンツとよりよく調和した、フラットなカーブを使った最初の(一番上の)レンディションの方が私の好みです。しかし、この記事の中でご紹介した他の写真、例えば明け方の月の画像では、カーブを急角度にするアプローチを使用しました。

HDRのデフォルト設定。 ご紹介する最後のヒントは、HDRボタンそのものについてです。デフォルトではオフの状態のHDR編集ですが、認識されたHDRファイル形式(「写真を結合/HDR…」で合成されたDNGなど)が読み込まれた際に、HDR編集を自動的に有効化するオプションがあります。デスクトップ版では「環境設定」ダイアログを開き、「HDR写真のHDR編集をデフォルトで有効にする」チェックボックスをオンにします。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, テキスト, アプリケーション 自動的に生成された説明

Adobe Lightroom iOSでは、同じオプションがアプリの「設定/読み込み/HDR編集設定」にあります。

Adobe Lightroom Androidの場合は、「環境設定/撮影設定/HDR編集設定」にあります。

SDRディスプレイのプレビュー

HDRで写真を表示して編集することは楽しいですが、SDRバージョンで共有したい理由もいくつかあります。対象オーディエンスがHDRディスプレイを持っていなかったり、HDRファイル形式をサポートしていないソフトウェアを使用していたりする場合がそれで、これはHDRハードウェアとソフトウェアの業界での普及率が拡大途中の今、避けられない現実です。

ライトパネル(Adobe Lightroom Classicではベーシック)の下部に、「SDR設定」という新しいセクションがあります。このパネル内のコントロールを使えば、HDR写真がSDRディスプレイでどのように表示されるかをプレビューして調整できます。HDRレンディションの外観にできるだけ近づけることを目的としています。

電子機器, コンピュータ が含まれている画像 自動的に生成された説明

SDRディスプレイのプレビュー」チェックボックスをオンにすると、華やかで明るいHDR写真がSDRの範囲に押し込まれます。ヒストグラムはSDRとHDRに分割されたままですが、画像データはすべて左側に移動します。その結果、くすんで平坦な印象になることが多く、初めてこれを経験すると落ち込むかもしれません。そんなときは数秒間画面から目を離し、まばたきを数回してから見直してみましょう。そうすることでHDRバージョンの素晴らしさをいったん忘れることができます。

チェックボックスの下にあるスライダー(「明るさ」から「ハイライトの彩度」まで)は、Adobe Lightroomがどのようにトーンマッピングを行うかに影響します。写真編集を初めて行うときに「デフォルト」は便利ですが、よりよい写真にするには、調整が必要な場合もあります。HDR写真をSDRにトーンマッピングするのは、クリエイティブな作業と同様、個人の好みの問題です。写真によってSDR設定の値が異なったとしてもおかしくはありません。

炎と氷のアイスランド。カラフルなハイライトを備えたHDRレンディション

上の例のように、HDR写真にカラフルなハイライトがある場合、「ハイライトの彩度」スライダーを使ってSDRレンディションでのカラーの見え方を調整します。スライダーを右に動かすと、ハイライトのカラーをできるだけ保持できますが、クリッピングや色のディテールに損失が出ることがあるので注意してください。スライダーを左に動かすと、クリッピングを最小限に抑え、彩度を下げることができます。好みに合わせて試してみてください。

説明のために、同じ写真の3つのSDRレンディションを示します。ハイライトの彩度を-100(左)、0(中央)、+100(右)に設定しました。暖かな雰囲気の山の頂上など、明るい部分では大きなカラーの違いがありますが、青い氷河など暗い部分での変化はわずかです。

雪が積もっている山 自動的に生成された説明

雪が降った山の景色 自動的に生成された説明

雪が降った山の景色 自動的に生成された説明

「SDRディスプレイのプレビュー」を有効にすると表示されるSDRレンディションは、Adobe Lightroomアプリ内で現在HDR表示をサポートしていない場所(スライドショーなど)にも使用されます。また、書き出しダイアログでHDR出力ボックスのチェックを外して書き出した場合の写真の表示にも影響します。

世界中に発表したい!

さて、HDR編集が終わったら写真を世界に共有しましょう!誰もがHDRの鮮やかさであなたの傑作を見ることができるはずです。しかし残念ながら、そう簡単にはいきません。

山々の黒い影 中程度の精度で自動的に生成された説明

マチュプチャレの日の出。ネパール。

Adobe Lightroomからの写真の書き出しと共有は、これまで簡単に行うことができました。JPEGファイル形式はどこでもサポートされており、JPEG写真を友人に送るとき、相手のデバイスやプラットフォームによって見られないかも、という心配はありません。

JPEGは古いフォーマットなので、多くの制限(チャンネルあたり8ビットなど)があり、高品質のHDR写真を保存するには不十分です。一方で、AVIFやJPEG XLのような新しいフォーマットはコンパクトなファイルサイズで高画質を提供するため、HDR写真に最適です。このため、Adobe LightroomとAdobe Camera RawはAVIFとJPEG XLの読み込みや書き出しに対応しています。

これらの新しいフォーマットの欠点は、まだ普遍的にはサポートされていないことです。業界では採用が進んでいますが、あなたのお気に入りのアプリやデバイスすべてがAVIFとJPEG XLの写真を読み込んでHDRとして表示(現在よくあるように、自動的にSDRにトーンマッピングするのではなく)できるようになるまでは、時間がかかります。現時点ではHDR写真を表示できるのは一部のアプリやプラットフォームに限られており、他のアプリやプラットフォームでは表示できません。この状況は今後数年で改善されると期待しています。

海と岩山 自動的に生成された説明

波打ち際のきらめき。フェロー諸島。

とはいえ、業界の動きは目覚ましく、この1年だけでも大きな進歩がありました。利用可能な最高のHDRサポートのためには、最新バージョンのアプリやOSを使うことをお勧めします。例えば、macOS 14とiOS 17は、以前のバージョンよりもApple PhotosのHDRサポートが向上しています。Android 14はAndroid 13よりもHDRサポートが向上しています。Google Chrome 116以降では、AVIFファイルをHDRで表示できます。これにより、高品質のHDR webギャラリーを構築し、共有することができます。

Adobe Lightroomのwebアルバムも、HDR写真をオンラインで共有する素晴らしい方法です。webアルバムは内部的にAVIFフォーマットを使用するため、オーディエンスはAVIFファイルのHDR表示をサポートしているブラウザを使用する必要があります。この記事を書いている時点では、Chrome、Brave、Operaが適しています。

お気に入りのブラウザがAVIF、JPEG XL、またはHDR表示をサポートしていない場合は、最新バージョンであることを確認し、アップデートがないか頻繁にチェックしてください。開発者に、これらの機能をぜひサポートしてほしいとメッセージを送るのもいいでしょう。

雪が積もっている山の風景 自動的に生成された説明

スヴァールバル諸島の氷のプレート。この写真のHDRバージョンを見るには、画像にカーソルを合わせるか、画像をタップしてください。HDRバージョンは氷のディテールを引き出していますが、HDR写真を直接プリントすることはできません。

プリントアウトはどうですか?

今でもプリントアウトしている人はいますか?私も大好きでよくしています。よくできたプリントは美しいものです。

ただ、誤解のないようにお伝えしますが、紙のプリントは、このページで紹介しているHDR写真のようにはなりません。なぜなら、紙のプリントは本質的に標準ダイナミックレンジだからです。そのため、プリントアウトが目的であれば、HDRモードで編集することはお勧めしません。HDRボタンをオフにしたまま、代わりにSDRモードで編集してください。

また、HDRとSDRを目的に応じて使い分けたい場合もあるでしょう。例えば、SDRレンディションをプリントし、HDRレンディションをwebギャラリーに投稿することができます。「バージョン」(Adobe Lightroom、Adobe Lightroom iOS、Adobe Lightroom Android)と「スナップショット」(Adobe Camera RawとAdobe Lightroom Classic)は、これらの別々のレンディションを整理しておくのに便利な機能です。

Adobe Photoshopでの編集はどうですか?

私はほとんどの編集をAdobe Lightroomで行いますが、画像をAdobe Photoshopに読み込んで合成などの追加作業を行いたいときもあります。幸いなことに、Adobe Photoshopでの編集はHDR写真にも対応しています。8つのフレームを合成した次の画像の作り方を説明しましょう。

雪が積もっている山の絵 中程度の精度で自動的に生成された説明

いくつもの月。アルゼンチンのロス・グラシアレス国立公園。

アルゼンチンを訪れたある日の早朝、私はカメラを三脚に置き、一連のRAWフレームを記録しました。夜明けが近づき、月が徐々に山の向こうに沈んでいき、ちょうど山頂が色づき始めた頃です。月(アグハ・ポアンセノの峰に一部覆われた1つを含む)の7フレームと、前景の山々の画像(かなり長い露出を使用)を選択しました。Adobe Lightroomでこれらすべてを同じ設定でHDR編集してAdobe Photoshopに送り、すべてのフレームを「比較(明)」ブレンドモードを使って重ね(すべての月が一緒に見えるように)、結果を32ビットTIFFファイルとして保存しました。最後にAdobe Lightroomに戻り、トリミングやカーブの微調整など、合成画像の仕上げを行いました。

ちなみに、これこそがまさにエンドツーエンドのHDRワークフローの一例です。RAWキャプチャ、Adobe LightroomでのHDR編集、Adobe PhotoshopでのHDR合成、HDRファイルへの書き出しなど、すべての工程でHDRデータをそのまま扱っています。SDRへのトーンマッピングは一切行っていません。

HDR写真で「Adobe Photoshopで編集」を使うと、Adobe Photoshopのドキュメントが32ビットモードで開かれます。なお、Adobe Photoshop自体は現在、macOS上でのみHDR写真の表示をサポートいます(Windowsへの対応は進行中)。macOS上のAdobe PhotoshopでHDRコンテンツを正しく表示するには、Adobe Photoshopのメニューコマンドで「環境設定/テクノロジープレビュー」セクションに移動し、「HDRディスプレイの正確なカラーマネジメント」チェックボックスをオンにします。

この記事を書いている時点では、Adobe Photoshopは32ビットファイルの編集を限定的にサポートしています。しかし、「フィルター/Adobe Camera Rawフィルター」は、macOSとWindowsの両方でHDRでの表示と編集をサポートしています。これは現在、Adobe Photoshopで32ビットファイルのカラーやトーンを調整するための最良のオプションです。

以下は、同じAdobe Lightroom+Adobe PhotoshopのHDRワークフローを使って作成した別の合成画像です。当然ながら、HDRで拡張されたハイライトの範囲のおかげで、星の軌跡がSDRよりもはるかに明るく写っています。

デスバレーでの砂丘と星の軌跡

次のステップは?

最後に、まとめと今後の展望についてお伝えします。HDRディスプレイは、純粋にその写真の画質という点だけで、近年で最も大きな飛躍のひとつです。現在、多くの携帯電話、タブレット、ノートパソコンがHDRディスプレイを搭載しています。数年後にはおそらく、すべての新しい画面が少なくとも数ストップのヘッドルームを持つHDRになるでしょう。フォトグラファーにとっては信じられないほどエキサイティングな時代です。

Adobe LightroomとAdobe Camera Rawは現在、キャプチャから読み込み、結合、表示、編集、共有までの完全なHDRワークフローを提供しています。rawモードで写真を撮るのにこれほど適したタイミングはありません。まだrawキャプチャを試したことがない方は、今が始める絶好の機会です。また、昔のお気に入りの写真を見直してHDRで編集してみるのもいいでしょう。これはまさに、私が今回自分自身でやってみたことです。

この記事では皆さんに知ってほしい多くのトピックをお伝えしました。まとめとして、ぜひ次のことを覚えておいてください。

上を見上げているペンギン 自動的に生成された説明

南極大陸の皇帝ペンギン。写真によってはベストな選択がSDRだったりします。

アドビでも業界全体でも、HDR関連で残された仕事はまだたくさんあります。例えば、Adobe Lightroomが現在HDR写真の表示をサポートしているのは、編集と現像に限定されています。今後はスライドショーなどの他の機能にもHDR表示を拡大する予定です。HDRビデオ編集もまた、今後の課題です。

HDR写真の共有は依然として大きな課題です。まだすべてのアプリやプラットフォームがHDR写真をサポートしているわけではありません。対応しているアプリやプラットフォームでも、見た目の印象が大きく異なる場合もあります。HDR写真が一貫した外観であらゆる場所でサポートされるようになるには、しばらく時間がかかるでしょう。業界全体の取り組みが求められますが、苦労した分きっと大きな成果が得られると信じています。

その一環として、アドビは現在、HDRファイルフォーマットと画像処理の標準化についていくつかの企業と協力しています。例えば、現在進行中のプロジェクトの1つでは、HDRとSDRの両方のバージョンの写真を1つのファイルに保存可能にすることに取り組んでいます。実際、この記事のHDR写真は、提案されているハイブリッドフォーマットを使用しています。もっと詳しく知りたい方は、このページをご覧ください

Adobe LightroomのHDRについてどうお考えか、どうすれば改善できるか、みなさんの意見お聞かせください。あなたのHDR編集と作品をぜひ私たちに共有してください。

Adobe Lightroomの新機能については、こちらをご覧ください。

この記事は2023年10月10日(米国時間)に公開された High Dynamic Range Explained の抄訳です。