クリエイティブの最前線からの知見がたっぷり!Adobe Video Meetup #3 レポート

目次

  • 参加者もますます増加!
  • AIによる省力化がさらに促進!
  • 富士フイルムの新カメラとFrame.ioによる事例
  • トラブル対処への様々なノウハウを共有
  • 日テレ内プロジェクトから生まれたプラグイン
  • 次回は2023年12月7日

参加者もますます増加!

残暑厳しい中にも秋の声が聴こえ始めた2023年9月26日、約4ヶ月ぶりの開催となるAdobe Video Meetup #3が行われました。

前回から開催期間が多少開きましたが、今回も(席数が増えながらの!)満員御礼。ビデオ分野の盛り上がりをそのまま示すような盛況となりました。

冒頭は、毎回恒例となっている、アドビの三好 航一郎氏からの概要説明。

アドビ・三好 航一郎氏による概要説明

今回は過去最高のゲスト数で、各々のテーマも非常にボリュームのあるもの揃い。

今回の登壇者および発表内容

説明もそこそこに、さっそく発表へと移って行きます。

AIによる省力化がさらに促進!

最初の発表は、前回同様アドビの高橋 絵未氏による「Creative Cloudビデオ製品・サービス最新アップデート」

アドビ・高橋 絵未氏

直前にアムステルダムで開催された欧州最大の放送機器展「IBC2023」に併せ、Premiere ProとAfter Effectsの最新アップデートがリリースされました。

Premiere ProにBeta版として提供された注目の機能が、録音状態が悪くノイズが混入した素材を、AI処理により手軽にクリーンアップできる「スピーチを強調」

Premiere Proの注目機能「スピーチを強調」

これは、ポッドキャスト作成のためのオンラインサービス「Adobe Podcast」(https://podcast.adobe.com/)で最も人気だった機能を、Premiere Pro内に装備したもの。エッセンシャルサウンドパネルからアクセスし、適用量の調整のみで非常に簡単に音声をクリアにすることができます。

手軽な処理でオーディオの品質を大幅に向上できる

また、春に装備された「文字起こしベースの編集」には、「あの」「えーと」といったようなフィラーワード(言い淀み)を自動検出して、ワンクリックで削除できる機能が追加されました。長時間のトーク動画などでは非常に手間がかかっていた作業の時間を、飛躍的に短縮可能です。

言葉の間にはさまる余分な要素を、ワンタッチで認識&削除できる

続いてAfter Effectsには、新たに「True 3Dワークスペース」機能を提供。従来、After Effectsの3Dレイヤーは、平面のレイヤーや、Cinema 4D Liteと連携しての動作など限定的でしたが、 True 3Dワークスペースでは3Dモデルを直接読み込んでの作業が行なえ、多くのユーザーが望んでいたさらに高度な3D表現が、標準仕様のみで可能になります。

3Dモデルを直接読み込んで扱える「True 3Dワークスペース」

そして、この後のゲストスピーカーによる事例でも大きくフィーチャーされているFrame.ioには、分野別に特化された新たなCamera to Cloudの接続方法などが追加。これまでの常識を変える、様々な制作手法を実現可能となっています。

撮影直後から遠隔地での編集を進められるCamera to Cloudにはさらなる広がりが!

各ビデオ製品は、すぐ実戦投入できそうな着実なアップデートが実施されており、既存ユーザーから初心者までが大きな恩恵を得られる内容となっています。

富士フイルムの新カメラとFrame.ioによる事例

ここからはゲストスピーカーによる発表。トップバッターは、富士フイルムの新カメラ「GFX100 II」と、Frame.ioのCamera to Cloudを使った、新しい次元のチーム編集ワークフロー事例の紹介です。

最新のカメラとFrame.ioのCamera to Cloudをフル活用した事例を紹介!

まずは、今回の新製品発表用動画の制作を指揮した、デジタルシネマクリエイターであるマリモレコーズの江夏 由洋氏が登壇。

マリモレコーズ・江夏 由洋氏

GFX100 IIは、中判のイメージセンサーを採用し、圧倒的な画質での動画撮影が行えるミラーレスカメラシリーズの最新機種。本体が直接Frame.ioに対応。Wi-Fiだけでなく、本体に高速なLAN端子を装備するなど、大容量のファイル転送にもしっかりと対応しています。

カメラ本体から直接Frame.ioへのアップロードに対応した富士フイルム・GFX100 II

映像の収録は、スウェーデンのストックホルムで実施。現地のWifiを利用して、撮影された映像は次々とFrame.ioにアップロードされます。江夏氏からは、現場での様々な工夫など、多くの知見が共有されました。

新製品発表用の映像は、4台の GFX100 IIを使ってストックホルムで撮影

ストックホルムでの撮影中、日本では編集チームが待機。Frame.ioにアップロードされたプロキシファイルを使って、Premiere Proのチームプロジェクト上で即座に編集作業を開始します。

東京で待機する編集チーム。ストックホルムで撮影された素材を使って即座にエディットを実施。

Frame.ioにアップロードされた素材には、テキストのコメント以外に、画面上へ直接マーキングするなど様々な方法での書き込みが可能。それらはPremiere ProのFrame.ioパネルに反映されるので、数千kmの距離差を感じさせない、綿密なやりとりをしながらの作業が実現します。

素材のマーク箇所などは、Premie ProのFrame.ioパネル内で即座に共有

撮影終了とほぼ同時に仮組みが完成するので、撮影クルーが日本に帰る機内では、最終の4K素材に差し替えてオンライン編集が可能に!今回は、撮影から納品まで4日しか無かったそうですが、Camera to Cloudとの密接な連携で、余裕をもった作業フローが実現しています。

ストックホルムからの帰路で即オンライン編集へ!

続いて、富士フイルム株式会社のイメージングソリューション事業部・商品企画マネージャーである大石 誠氏から、GFX100 II全体に関する紹介がありました。

富士フイルム株式会社・大石 誠氏

富士フイルムならではの機能として、従来のポジフィルムだけでなく、ネガフィルムの質感再現もサポートされたフィルムシミュレーション「REALA ACE」について紹介。中判センサーやFrame.ioとの連携との相乗効果で、高い表現力を従来にないほどの自由度で活用できる環境となっています。

GFX100 IIには、新たなフィルムシミュレーションなど魅力的な機能を多数装備

トラブル対処への様々なノウハウを共有

小休憩をはさんだ後、後半は「逆引き!Premiere Pro、After Effectsお悩み解決相談室」と題して、制作現場で起こりがちなトラブルを回避するための様々なノウハウをご紹介。

制作現場で遭遇しやすいお悩みを解決!

担当するのは、モーションデザイナー/コンポジター/エディターであるサイバーエージェントの白戸 裕也氏です。

サイバーエージェント・白戸 裕也氏

今回は「素材コピー」「素材読み込み」「編集中」「書き出し」「アーカイブ」の5項目に渡って役立つ知識をご紹介。現場に従事する人であれば、どれもが興味津々になる項目ばかりです!

現場で培われた知見にあふれた発表内容

撮影素材や編集データのバックアップなど、映像制作業務において頻繁に行われるファイルのコピー作業にも、さまざまなポイントが。「ベリファイ」機能対応のソフトを使って確実にデータをコピーする方法など、現場で培われた情報が満載でした。

ひとつの現象に対しても、考えられる原因はさまざま

サードパーティー製エクステンションやプラグインの紹介

日テレ内プロジェクトから生まれたプラグイン

本日の最後は「アドビのツールで『テレビを越えろ、ボーダーを越えろ』」と題して、日テレ内のプロジェクトから生まれた、アドビのツールと連携することで作業の飛躍的な時短を実現するプラグインの紹介。

日テレ内のプロジェクトで生まれた、画期的な新ツールを紹介

事業全体の説明を行った、日本テレビ・社長室新規事業部のチーフアートディレクターの藤井 彩人氏は、非常に早い時期からAfter Effectsの高品質なチュートリアルを掲載したWebサイトを運営し、現在一線で活躍するモーションクリエイターの多くがそれで学んだことでも著名な人物です。

日本テレビ・藤井 彩人氏

日テレでは、従来の放送とは異なる形での、映像を使ったコンテンツの研究を実施。今回は、XR(AR、VR、MRといった技術の総称)を活用して、人気番組の出演者と記念撮影ができるユニークなシステム等の事例が紹介されました。

従来のテレビ放送の枠にとどまらない、XRを活用した新しい取り組み

続いて、今回のメインとなるツール「BlurOn」の事業責任者である、日本テレビ・社長室新規事業部の加藤 大樹氏にバトンタッチ。

日本テレビ・加藤 大樹氏

「 BlurOn」は、After Effectsの機能を拡張するプラグイン。従来は手作業で領域の設定を行っていた、人の顔などへのモザイクやぼかしの適用を、AIを使って自動化できるという、映像制作に関わる人であれば誰もが思わず身を乗り出すような夢のツールです。

自動でモザイク入れを行えるAfter Effectsプラグイン「BlurOn」

こうした作業を手動で行うと、時間・労力共に莫大なリソースが必要となりますが、「 BlurOn」を使って(しかも、細かな設定まで適用した上で)自動化できると、番組制作全体の作業フローやスケジューリングを激変させるほどの威力が。しかも、メインの処理はネットを経由したサーバー上で行われるため、それほどパワフルでないマシンを使った場合にも、十分な処理速度を得ることができます。

大きな手間と時間を要していた作業の、驚異的な省力化が実現!

またBlurOnでは、グリーンバックなど特殊な環境で撮影されていない映像でも、人物などを自動的にマスクし、他の背景へと合成するような処理も装備。編集時だけでなく、撮影時もスタジオを必須としないなどの、大幅な省力化が期待できます。

グリーンバック等を用いていない映像素材も、自動で高品質にマスク処理可能

メーカーではなく、放送局内のプロジェクトから誕生した同技術。すでに実際の番組制作内でも活用されており、一般へのリリースでどのような地殻変動が生じるか、今後が非常に楽しみなプロジェクトです。

次回は2023年12月7日

以上にて、過去最高レベルの情報密度となったAdobe Video Meetup #3は終了。年内最後の開催となる#4は、年の瀬の12月7日に開催予定です。11月上旬から告知開始予定ですので、ぜひお見逃しなきようチェックなさってください!