Adobe Firefly を適切に活用するための著作権との付き合い方 第2回 Firefly の生成物は著作物になるか

前回は、AI 生成物の利用に関する主要な懸念点を整理しました。今回は、その中から Adobe Firefly 利用者が、「AI 生成物の著作権が認められず、法的な保護の対象とならない」という心配をする必要があるかどうかを掘り下げます。より詳しくこのトピックの法的な側面について学びたい方は、文化庁が公開している動画「AI と著作権」の視聴をお勧めします。

そもそも著作権は、クリエイターが時間をかけて生み出した知財を守るために考え出されたものだと思われます。だとすれば、AI が桁違いのスピードで生成するコンテンツ一つひとつに著作権を認めるのは筋違いという話になってもおかしくありません。しかしながら、今どきの AI では、人間がプロンプトを入力して生成ボタンを押すといった行為が発生します。生成過程に人間の意図や寄与が存在するなら、著作権を認めるべきだという議論もできそうです。

ちなみに、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術、または音楽の範囲に属するもの」とされています。著作物を創作すると、著作者は自動的に著作権を取得します。著作権を明確にするための登録制度もあります。

人間がプロンプトを入力して生成ボタンを押すと Firefly がコンテンツを生成する

AI を「道具として利用」する

このトピックに関して、内閣府の知的財産戦略推進事務局は以下のような見解を示しています。

一行目の「道具として利用」は、写真をカメラという道具を使って撮ったからといって著作権が無くならないのと同じように、道具として AI を使用したのなら著作権は認められるべきというものです。人間の創作意図、および、創作的寄与があれば、AI を道具として使用したと言えることになっています。

Firefly の場合、Adobe Photoshop の生成塗りつぶしや Adobe Illustrator の生成再配色のような、アプリ内の機能を通じて利用するケースはこれに該当すると考えてよさそうです。Photoshop を開いたことから何らかの創作意図を持っていたと言えますし、選択範囲を指定して塗りつぶす行為は、創作的寄与を示すものだと言えそうです。(「真っ白なカンバス全体を指定して生成する」のような使い方は別として)

Photoshop の生成塗りつぶしは選択した領域にコンテンツを生成できる

或いは、Firefly が組み込まれている機能を使用することにより、従来は時間がかかっていた修正や調整などの作業(例えばカラバリ作成とか)を効率化しているクリエイターは、AI を「道具として利用」していると言ってもよさそうです。

オンラインサービスの Firefly ( https://firefly.adobe.com/)を使用する場合も、プロンプト入力を繰り返しながら方向性を探ってデザインを深める行為は、AI を「道具として利用」していると言えそうな気がしなくもありません(実際はグレーの可能性高 - 後述)。このユースケースで著作権を主張したければ、少なくとも作業途中の状況を記録しておく必要があるでしょう。Firefly では、生成した画像をダウンロードしたり、ライブラリに保存したりすると、ファイル名に入力されたプロンプトが使われます。

プロンプト入力はどこまでが「簡単な指示」か

内閣府の見解の二行目の「AI が自律的に生成」は、単純に生成ボタンを押しただけだったり、簡単な指示を与えただけであれば、AI という名のプログラム(すなわち人間ではないもの)が、アルゴリズムに従って出力しただけとみなして、著作権を認めないというものです。

一見分かりやすそうに見える説明ですが、実際に AI に対する「簡単な指示」を明確に定義するのは難しそうです。プロンプトが長ければよいのなら、どこかからコピペすれば済む話です。少なくとも独創性が認められるプロンプトを使用することは求められるでしょう。

AI に独創的なプロンプトを入力してコンテンツを生成しようとしている人 Adobe Firefly で生成

また、同じプロンプトから同じコンテンツが生成されるとは限りません。Firefly では、一度の生成で 4 つの候補が提示されますし、ボタン一つ押すだけでさらに生成を繰り返すことができます。独創的なプロンプトが見つかったとして、そこから生成された数多くの表現がすべて著作物と認められるならば、個々の表現というよりも、プロンプトのアイデアに著作権が発生しているかのような状況です。とすると、独創的なプロンプトの入力も、「簡単な指示」の範疇とみなさざるをえないのでしょうか?

どのような AI 利用者の行為が創作的寄与にあたるのかは、文化庁著作権分科会の法制度小委員会が検討を進めている最中とのことです。

米国の事例

ここで米国の事例を見てみましょう。2022 年 8 月に、コロラド州の美術コンテストにおいて、Midjourney を使用した作品 Théâtre D'opéra Spatial がデジタルアート部門の 1 位を獲得しました。倫理的な問題は気になるところですが、AI により生成された画像の芸術性の高さを証明するエピソードです。

Midjourney を使用した作品 Théâtre D'opéra Spatial の著作権は認められなかった 出典: Wikipedia Commons

その後、Théâtre D'opéra Spatial の作者は、著作権登録の申請を行いました。しかし、米国著作権局は、2023 年 9 月にその申請を却下しました(作者は控訴)。その主たる理由の一部は「AI によって生成された、許可される量を超えるコンテンツが含まれている」です。

Théâtre D'opéra Spatial の作者は、数百回プロンプトを入力し、Photoshop を使って多少の修正もしたと話したそうです。法律の異なる米国のお話しですが、日本ではまだ基準となる事例もありませんし、著作権が気になるコンテンツに関しては「プロンプト頑張ったから」で終わりにしない方が安全かもしれません。

次回は、著作権により保護されるものと保護されないものは?をお送りします!