AI時代に必要な新しいスキルにおけるデジタルクレデンシャルの重要性
安定したキャリアを築くための唯一の鍵が大学の学位だった時代は終わりを告げようとしています。今日の雇用主は、新たな需要の高いスキルを持つ求職者や従業員を必要としており、そうしたスキルを大学の成績証明書以外の様々な方法で実証して欲しいと期待しています。リモートワーク、デジタルトランスフォーメーション、AIなどの社会変化により、今日最も需要の高いスキル(創造的問題解決能力、ビジュアルコミュニケーション、デジタルスキル)を採用担当者が求人応募書類から見極めることは特に困難です。
このような進化し続ける環境に光を当てるため、アドビは調査結果レポート『クリエイティブの優位性:AI時代に必要な新しいスキルにおけるデジタルクレデンシャルの重要性』を発表しました。Edelmanによって実施されたこの世界規模の委託調査研究の結果は、求職者が自分のデジタルスキルやクリエイティブスキルを示して仕事を得るためにデジタルクレデンシャルが果たす役割を示しています。
調査結果は、こうした需要の高いスキルの重要性と、デジタルクレデンシャルをフル活用することが学生、求職者、大学、採用担当者、資格機関にとっていかに重要であるかをはっきり示しています。
AI時代の新たな必須スキル
デジタルクレデンシャルは、成功に不可欠なスキルを実証するための強力なツールとして登場しました。AIの台頭を受けて、創造的思考力の重要性は他のどのスキルよりも急速に高まっています。世界経済フォーラムによれば、創造的思考力は全世界で雇用主にとって2番目に需要の高いスキルになっています。その理由は、新たな価値のあるアイデアを生み出したり、問題やチャンスへの解決策を見つけたりできる人材をどの企業も必要としているからだと推測されます。クレデンシャル(資格)取得は、求職者にとってはこうしたスキルを示すための方法であり、採用担当者にとってはスキルを持っている候補者を迅速に見極めるための方法であると言えます。
さらに、『クリエイティブの優位性』の調査では、採用担当者と求職者(大学生を含む)がどのスキルを最も重要視しているかが明らかになりました。
調査結果によれば、デジタル文書、ビジュアル/マルチメディアコミュニケーション、コンテンツ作成などの上位スキルに関する見解は各グループ間でおおよそ一致しています。しかし、求職者はこれらのスキルの重要性を採用担当者よりも過小評価しています。
この調査に参加した採用担当者は、こうした必須スキルを従来の応募書類、履歴書、学位から見極めることは困難であると明かしています。同様に、求職者もこうした必須スキルを効果的に示すために苦労しています。このギャップを埋めるために、学位以外の形での資格が登場しました。求職者は、各種認定や、マイクロクレデンシャル、デジタルバッジなどの形で、主要なスキル領域の証明とすることができます。
必須スキルの確かな目印となるデジタルクレデンシャル
他の人に差をつけることは必ずしも簡単ではありません。今回の新しい調査により、資格を取得して提示することは、競争の激しい就職市場で他と差をつけるための明確な方法であることがわかりました。また雇用主は、現在および将来の課題に対して、ビジネスを前進させることができる必須スキルを備えた人材を見極めることができます。
調査に参加した採用担当者と求職者は、専門資格をクリエイティブスキルやデザインスキルを証明するための3番目に重要な方法とみなしていました。これは高校卒業資格や大学の学位よりも高いランクです。ただし求職者(学生を含む)は、やはり採用担当者よりもその重要性をやや低く見積もっています。
当然ながら、関連する実務経験や過去の業務実績は、採用担当者と求職者双方から最も高く評価されています。大学には、学生がこうした経験を束ねて成功への準備をおこなえるようにするための明確な機会が存在しています。例えば、学生に関連するスキルの資格取得を促し、インターンシップや職場実習の経験と合わせてポートフォリオを作成させるなどの方法が考えられます。
企業において自律的に学び続ける人材の雇用側からの需要は過去最大
世界経済フォーラムの仕事レポート2023の主要なインサイトによれば、AIイノベーションに大きな影響を受けて、人材に求められるスキルの急速な発展と変化が指摘されています。現在から2027年までに重要性が高まるであろう上位10のスキルのうち、3つが自己効力感に関係したものです。すなわち、「好奇心と学び続けること」(4位)、「レジリエンス、柔軟性、アジリティ」(5位)、「モチベーションと自己認識」(8位)というものです。
『クリエイティブの優位性』レポートからわかった予想外の発見は、デジタルクレデンシャルを取得した候補者について、こうした自己効力感に関するスキルがどの程度反映されていると採用担当者が考えているかということでした。採用担当者はコメントやインタビューの中で、デジタルクレデンシャルを取得するために努力した候補者は自発的、意欲的、献身的であると考えると述べています。調査に参加した採用担当者の53%が、デジタルクレデンシャルを持っていることはその候補者が熱心に能力開発に取り組んでいることを示していると述べています。
「資格は、その候補者が自分の目標をはっきり持っていることを示してくれます。勤勉に頑張ったことの証ですし、志を持てる人であることを評価します。複数の資格を持っている場合などは面接で印象がとても良くなります」
- 米国ソフトウェア企業採用担当者
デジタルクレデンシャルはあらゆる側面で必須スキルや生涯学習を続ける能力の目印となるため、採用担当者はかつてないほどデジタルクレデンシャルを評価しています。採用担当者は、資格によって人材の評価が容易になるだけでなく、資格を持つ従業員はビジネスに研修、リスキリング、スキルアップの費用対効果という付加価値ももたらすと述べています。
また採用担当者の74%が、資格を持つ候補者はより高い報酬に値するので、今後のキャリアを通じてより大きな経済的機会を用意するだろうということも認めています。つまり、採用担当者の受け取った求人応募にデジタルクレデンシャルが記載されていた場合、採用担当者はその候補者を高い能力を備えた、さらに努力する意欲のある、それに応じた報酬を受け取るに値する人物であるとみなすということです。
今後の道のり
今回の調査は、デジタルクレデンシャルが多方面にわたる影響を与えることを示しています。スキルアップやリスキリングを促進することで従業員の定着率が高まるだけでなく、安定した雇用やキャリアアップの可能性も高まり、多くの場合、収入の増加につながります。
成功への道を示すために、大学、専門組織、業界リーダーが連携することで、求職者が個人的および職業的な成長につながるスキルを習得できるようになるだけでなく、雇用主が変化し続ける世界で成功するために必要な人材を確保できるようになります。
- 求職者や学生:職種や業界全体で最も必要とされている必須スキルに合った資格を探し、アピールする。
- 大学や教育者:資格認定プログラムを大学のプログラム、カリキュラム、就職サポートに組み込み、将来も通用するスキルを学生に身に付けさせる。
- 雇用主:デジタルクレデンシャルを取り入れ、それらを利用して組織が柔軟かつ適応力のある人材リソースを構築するために必要なスキルを備えた候補者を見極める。
- 資格機関:大学、学生、求職者、雇用主などのあらゆる関係者と連携して、最も需要の高い資格を提供する。またそれらの認知度とアクセスを高め、その価値を十分に実現できるようにする。
※このブログは米国で2024年2月に掲載されたものの日本語抄訳版です。