アドビの認定制教員コミュニティAdobe Creative Educator (ACE) Innovator 2024が活動をスタート

アドビの認定制教員コミュニティAdobe Creative Educator (ACE) Innovatorの2024年度メンバーによるキックオフミーティングが、2024年5月12日(日)にアドビ東京オフィスで開催されました。昨年度までAdobe Education Leader (AEL) として活動してきたコミュニティが新たにブランド名称を変え、日本では6年目を迎えました。子どもたちのクリエイティブデジタルリテラシーを育成するために先進的で実践的な学びを教育現場で実現し、それを広める活動をしている先生方が認定されます。

https://www.youtube.com/watch?v=Ild3wsNOL4w

Adobe Creative Educator (ACE) Innovator の2024年度メンバーによるキックオフミーティングの様子

新メンバーで活動をスタート

オープニングでアドビ教育事業本部 執行役員 本部長小池晴子は、2024年度のメンバーを紹介した上で新たなAdobe Creative Educator(以下ACE) Innovatorのグローバルでの位置付けを説明しました。ACEのコミュニティには3つのレベルがあり、Innovatorは最上位のLevel 3にあたります。今年は日本では全20名が認定され、新メンバーが2名加わりました。2024年度のメンバーのプロフィールとACEの認定プログラムの概要はこちらのページで詳しくご紹介しています。

アドビ小池晴子がメンバーを紹介

ACEのCommunityとInnovatorの位置付け

すでに顔馴染みの先生方も多く、新メンバーもすぐに打ち解けられる雰囲気で始まったキックオフミーティング。前半はアドビからの情報提供のセッション、後半はメンバーからの活動報告やAdobe Expressでの自己PR作成などが行われました。

生成AIに対するアドビの取り組み

アドビからの情報提供では、アドビ Senior Strategic Business Development / Community Lead, Creative Cloud Designの三好航一郎がアドビの生成AIに対する取り組みについて解説しました。アドビの生成AIであるAdobe Fireflyは2023年に発表されて1年が経ち、教育現場でよく活用されるAdobe Expressでは、その画像生成機能を手軽に使用することができます。著作権を侵害しない商用利用にも安全なように設計されていることや、画像に「コンテンツ認証情報」と呼ぶ来歴情報を持たせて透明性を確保していることなどが特徴です。

アドビ三好航一郎がAdobe Fireflyについて解説

「コンテンツ認証情報」は、偽情報や不正利用などに対抗して、コンテンツの信頼性や透明性を高めるためのものです。アドビは早くからその必要性に注目し、2019年には「コンテンツ認証イニシアチブ(CAI:Caontent Authenticity Initiative)」を数社と共に立ち上げました。生成AI時代を迎えた現在では55カ国2,500を超える企業が参画していて、2024年の3月にはNHK、5月にはTikTokが参画するという広がりを見せています。

三好は「コンテンツ認証情報」の例として、Adobe Fireflyで生成した画像に生成AIを使用したことや作成日などの来歴が付与されることを実際の画面で表示して見せました。先生方も興味深そうに注目し、アドビが生成AIの倫理に力を入れ、教育現場で児童生徒が利用するツールとしても安心安全な仕組みを提供していることについて、理解が広がりました。

Adobe Fireflyで生成してAdobe Expressで加工した画像。AIツール名、使用アプリ、日付などの情報が付与されている

新機能でさらに使いやすくなったAdobe Express

続いてアドビ Creative Cloudセグメントマーケティング部 マーケティングマネージャーの岩本崇が、Adobe Expressの最新機能についてデモンストレーションを交えて紹介しました。生成AI機能の強化に加え、プレゼンテーションに便利な機能も追加され、作品の全画面表示やPowerPointのデータの読み込みなどができるようになっています。

アドビ岩本崇がAdobe Expressの最新情報を紹介

生成AI機能のデモンストレーションでは、動画の背景をワンステップで削除して別の背景素材に差し替えて見せたり、写真の生成塗りつぶし機能でTシャツの首元を襟付きシャツとネクタイに変えて見せたりしました。会場から声が上がり拍手が起こります。

動画の背景を簡単に削除して透過させられる。別の背景素材を入れるのも簡単

Tシャツの首元部分を選択して生成塗りつぶしで「ネクタイ ワイシャツ」と指定するだけでネクタイ姿に

他にもいくつかの機能のデモンストレーションがあり、先生方は写真を撮ったりメモをとったりしてAdobe Expressの最新情報に注目していました。

社会共創プロジェクトでAdobe Expressの生成AI機能を活用

後半は昨年度AELとして活動してきたメンバーからの活動報告です。瀬戸SOLAN小学校(前・同志社中学校・高等学校)の反田任先生と同志社中学校・高等学校外村拓也 先生は、立命館大学とイオンモール茨木の社会共創プロジェクト「みんなで描くみらいの茨木」において、Adobe Expressを使ったワークショップを担当しました。

同志社中学校・高等学校外村拓也 先生(左)と瀬戸SOLAN小学校の反田任先生(右)

このプロジェクトでは、「理想の茨木市を実現するキーワード」を事前に市民から募集。ワークショップではそれらのキーワードをもとに、立命館大学の学生と社会人が共同でAdobe Expressの生成AI機能を使ってポスターを作成しました。制作されたポスターはイオンモールで展示され、市民による投票を経て表彰が行われました。

ワークショップで制作されたポスター。市民の投票が行われた

両先生とも、大学生や社会人を相手にワークショップをするのはとても新鮮で良い経験になったと報告しました。

高校生が「エモい」をAdobe Expressの生成AIで表現

関西学院千里国際中等部・高等部の西出新也先生は、高校生を対象に「エモい」を探究する授業を行ったことを報告しました。漠然とした感情表現に使われることが多い「エモい」を自分なりに解釈して表現するコンテンツを作るというのが課題です。Adobe Expressの生成AI機能で画像を作成するのに加えて、ビジュアルプログラミングで動きのあるインタラクティブなコンテンツを作れるアプリとテキストコードで曲を作れるアプリを使用して作品作りを行いました。

関西学院千里国際中等部・高等部の西出新也先生

生徒が制作した作品の一部

この授業を通じて、「画像生成AIにクリエイティビティはあるか」という議論を生徒としたところ、「ある」と肯定する声が多い中、「生成AIは自分が感じたものを拡張するだけのもので、AI自体にクリエイティビティはないのではないか」という意見も出たそうです。人の持つ創造性と生成AIの関係をどう捉えるのか、実際に生成AIを使ってみることが考えるきっかけになりそうです。

Adobe Expressで個性あふれる自己紹介を作成

キックオフミーティングで恒例の自己PRはAdobe Expressで行います。Adobe Expressでは複数ページのドキュメントの作成ができるようになり、プレゼンテーションも作成しやすくなりました。先生方は手慣れた様子で制作を進め、20分の制作時間、2分の発表時間という限られた時間ながら個性あふれる作品で自己紹介をしました。

一斉に制作をスタート!

真剣な表情で自己紹介の制作中

様々な作品で順番に自己紹介。Adobe Expressでコメント用のドキュメントが用意され、共同編集機能を使って発表者へのメッセージをそれぞれ書き込んだ(右下)

さらに、9月頃にACE Innovator主催でイベントを開催することが発表され、その企画会議も行われました。グループごとにイベントのプランを話し合います。

イベントのプランを話し合う

普段から授業作りや学校外でのワークショップなどもこなすメンバーからはアイデアがあふれ、笑顔で話し合う姿が印象的でした。終了後は交流タイムでさらに親交を深めることができました。

全国から集まった先生方の貴重な交流タイム。話がはずむ

ACE Innovatorの先生方の活躍で、自分の考えや思いを形にするデジタルクリエイションの経験をする子ども達が増え、広がっていくことが楽しみです。

(文:狩野さやか)