NABで発表された最新トピック満載!Adobe Video Meetup 2024 #1 レポート

目次

  • アドビ映像製品最新アップデート
  • 日本における先駆け的なFrame.io導入事例
  • CAI(コンテンツ認証イニシアチブ)への取り組み
  • 次回は9/17に開催予定!

徐々に初夏の雰囲気も感じられ始めた2024年4月23日。2024年最初の開催となる、Adobe Video Meetup #1が開催されました。

今回の会場は、アドビ本社内に新たに設けられたスペース「パノラマスクエア」。周囲の風景をパノラマ的に見渡せる窓と、リラックスした空気を醸し出すスタイリッシュな家具や自由なレイアウトとなっており、前回までと大きく雰囲気が変わりました。

アドビ本社内にオープンしたスペース「パノラマスクエア」

今回も、映像制作の現場にすぐ役立てられる最新の情報や知見がいっぱいです!

今回の発表内容

アドビ映像製品最新アップデート

まずは毎回恒例となった、アドビ・高橋 絵未氏による映像製品の最新アップデート紹介。

アドビ・高橋 絵未氏

今回は、4/13-17にラスベガスで開催された、世界最大の映像・放送関連展示会である「NAB」にあわせて発表された内容が中心となります。

NABにはアドビもブースを出展。現在はアドビのプロダクトとなっているFrame.ioの創業者がブースに訪問した模様などの裏話も交えての紹介です。

AdobeブースのFrame.ioエリアにはFrame.io創業者も訪れるなどのサプライズも。

ビデオ製品の本丸・Premiere Proは、オーディオ系の機能が大幅に向上。音声を含む素材を読み込んだだけで、内容を自動判定してタグ付けが行われます。

Premiere Proのオーディオ機能が大幅に進化

また、従来はオーディオトランジションで行っていたクロスフェードが、Auditionのマルチトラックモードと同じような見やすい表示、および細かな調整も可能に。これらはまず、パブリックベータで提供されます。

クロスフェード部分も、従来より大幅にわかりやすい表示に。

また、世界的にもかなり凝ったテロップデザインを行う日本からのリクエストが叶い、スタイルブラウザーを使って簡単に様々な文字スタイルを適用することが可能となりました。その他、対応している編集ソフトが少ない「絵文字」に対応するなど、嬉しいアップデートが満載です。

After Effectsは、外部ツールやプラグインなどを必要とせず、3Dモデルを直に読み込んでの3Dコンポジティングがさらに機能アップ。After Effects内で完結させられる領域が増え、より一層の効率アップが望めます。

After Effectsは3D系の機能やワークフローが機能・効率共に進化。

アドビとの統合から2年以上が過ぎたFrame.ioは、世界で400万人以上のユーザーが使用するスタンダード的な存在に。新しいバージョン4では、さらに様々な機能が提供されます。

Frame.ioのユーザーは2021年のアドビとの統合以来、ユーザー数が大幅に増加。

元々は16:9の標準的な動画に最適化されていたFrame.ioも、マルチメディアに対応した縦動画はもちろん、デジタルコミュニケーションに必要不可欠な静止画も含めた全てのアセットとコンテンツの扱いが可能に。

縦型動画や、静止画、音声などあらゆるフッテージの共有に威力を発揮。

元々、テキストだけでなく映像上への描画など多彩な機能を持っているFrame.ioですが、それに加えてコメントに添付ファイルをつけられるようになり、わざわざ参考画像を他サービスへアップロードして、そのアドレスを記入するような手間も省けました。

レビュー時、テキストのコメントだけでなくファイルの添付も可能に。

また、既存のものに加えカスタムフィールドも含めたメタデータによる管理が行いやすくなり、膨大な素材を使うような用途にもさらに威力を発揮します。

カスタムフィールドを含むメタデータへの対応もより一層パワーアップ。

Frame.ioのバージョン4は、まず個人ユーザー向けにBeta版で提供された後、年末にエンタープライズ版が提供される予定です。

個人版はベータで提供開始、エンタープライズは年末に提供予定。

Premiere Proに生成AI機能搭載。

最後は、前日公開されたデモムービーで一般にも話題沸騰となった、Premiere Proへの生成AI搭載について。例えば、パラパラと宝石が入ったトランクを選択して、テキストで希望の内容を入れると…

プロンプトの入力で、映像中に任意の要素を追加!

あっという間に、宝石がぎっしりつまった状態が「動画で」生成されます!Photoshopでの静止画に対する同処理もまだ目新しい時期ですが、もう動画に装備されてしまうというスピードには驚きです!

オブジェクト拡張のほか、オブジェクトの削除、足りない尺を伸ばすなどあらゆる状況に対応。

また、現在はまだ探求段階ながら、サードパーティのAIモデルとアドビのツールを連携させるアプローチも進行中。こちらも、徐々に刺激的な未来を感じられるニュースが飛び込んで来そうです!

サードパーティモデルに関しては、こちらでもご紹介しています。

日本における先駆け的なFrame.io導入事例

今回のゲストは、株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービスの平野 翼氏。業務へのFrame.io導入についてと、NABショーの「Biased」な所感などをお話いただきます。

注目している技術についてご紹介

今回平野氏は、風雅な和装にて登壇。モダンで西洋的なパノラマスクエアとの対比が、非常にクリエイティブな文化のマリアージュ感を醸し出していました!

株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービス・平野 翼氏

平野氏が着けられていた友禅の帯の柄は、作家の感性とコンピュータによるアシストの連携をするシステム「Tomonami」作られたとの事。単にトラディショナルなだけでなく、先進的なアプローチとの融合に、観客の興味もいっそう惹きつけられます。

作家の感性をアシストするシステムで作られた柄の友禅の帯

IMAGICAエンタテインメントメディアサービス社は、日本でもっとも早くFrame.ioのエンタープライズプランを導入。素材の送信から、関係者や一般への試写。さらには、吹き替えを作る際の練習用素材を声優さんに送るといった用途(従来はDVDを使用)など、非常に多岐にわたった活用がなされています。

国内ではいち早く、2020年4月にFrame.ioを導入

Frame.ioを選んだポイントとして、業務用のシステムとしてタイムコードの表示にきちんと対応しているほか、通信環境にあわせて複数の解像度を切り替えられたり、テキストだけではない自由描画が行える点などが決め手に。またさらに専門的な所では、ほぼ全ての機能をAPIから呼び出し可能なため、様々な自動化への応用にも活用されているそうです。

Frame.ioを選んだ理由

Frame.ioでは、レビューやプレゼンテーションなどをブラウザ上で完結させることができるので、各所でPCにデータをダウンロードする手間や、情報漏洩のリスクなどにも対応しやすくなっています。

Frame.io運用時のワークフロー

現在も非常にハイレベルな活用をされているだけに、複数ファイルの同時処理など現状から改善を希望したいポイントも。バージョン4がリリース&導入された時に、ぜひまたその感想や活用事例などを伺いたいと感じました。

Frame.ioの今後に望む部分

平野氏はNAB会場では非常に多忙な合間を縫って会場を視察し、各社から出品されていたトレンドのPTZカメラなどについて、現状についての貴重な分析を語っていただきました。

NABで多数出品されていたPTZカメラについて

また、今年のトレンドの一つが、AI音声による自動の吹き替えシステム。日本語にも対応しているものの、まだ実用まではハードルがあるようです。しかし、現在のAI周辺の進化スピードからすると、驚くほど早い時期に劇的な機能アップがあるかもしれませんね。

AIによる吹き替え 日本語はまだ発展途上

CAI(コンテンツ認証イニシアチブ)への取り組み

最後は、アドビ・宇野 香織氏による、CAI(コンテンツ認証イニシアチブ)に関する現状の解説です。

アドビ・宇野 香織氏

おそらく皆さんもSNSなどでご覧になっていると思いますが、生成AIが劇的な進化を遂げている現在、その裏で巧妙に加工・生成された、有名人などのフェイク画像が大量に出回り初めており、画像自体の信頼性が根本からぐらつくような事態となっています。

生成AIで作られたフェイク画像の例

各報道機関でも、フェイク画像へ警鐘をならす記事が掲載され、クリエイティブ業界全体の問題として、すでに放置できない状態となっています。

メディアでもネガティブな報道が多数

アドビも、2010年にPhotoshopに搭載された、画像中の一部を簡単かつ精巧に消去する「コンテンツに応じた塗りつぶし」などAI機能に長年投資をしており、機能提供と同時に、それによって生じる問題への対策も急務となっています。

アドビでは、2010年にPhotoshopに装備された「コンテンツに応じた塗りつぶし」でAI系の機能を導入

アドビの生成AI「Adobe Firefly」は、Adobe Stockや、オープンライセンス、パブリックドメインの画像のみから学習を行っており、安心して商用利用が可能となっています。それに加え、コンテンツ認証情報のサポートにより、「来歴」の明確化による信頼性の担保を行います。

アドビ製生成AIの優位性

「コンテンツ認証イニシアチブ」は、オンライン上のコンテンツにおいて、信頼性と透明性を高めながら、偽情報などに対抗するための取り組みです。

コンテンツ認証イニシアチブとは

偽情報などに対抗するための取り組みとして「来歴」「教育」「ポリシー」「検出」の4領域が要点となりますが、この中の「検出」は対応する事が非常に難しい事から、コンテンツ認証イニシアチブでは3領域に注力する事になります。

不正に生成されたものの「検出」は非常に困難

Adobe Fireflyで生成された画像には、「コンテンツ認証情報」を付与することができるので、流通した後も出自をしっかりと明確にすることが可能です。

コンテンツの出所についての来歴を明確に。

コンテンツ認証情報は作成時だけでなく、編集や公開といった各プロセスを来歴として持つことができ、プロセス上のどこで加工が行われたかを把握することが可能です。

途中の加工までを含め、来歴をクリアにする。

今後は動画の分野にも生成AIの波が押し寄せる事は確実。それぞれのデベロッパー単体ではなく、連携しての対策が不可欠となります。

取り組みには、55カ国から2,500を超える企業や団体が参加し、あらゆる角度からの対策が進もうとしています。

多数の企業・団体が取り組みに参加。

またコンテンツ認証イニシアチブに関連して、デジタルコンテンツの真正性証明に取り組む標準化団体「C2PA」。このC2PAの規格にそった形で認証情報を入れることで、メーカーや国を問わず、コンテンツの透明性が検証可能になります。

標準化のための団体「C2PA」。

日本からは、新たにNHKもCAIに参加。今後日本国内でも様々なメディアの参加も期待されます。

日本からはNHKも参画。

また、編集よりさらに前、SONYのカメラで撮影した時点でC2PA規格の認証情報を付けるシステムの提供も進行中。より完全な形での信頼性確保に、大きく寄与しそうです。

カメラ自体にC2PA規格を適用。

テクノロジーの進化は、同時に様々な問題を生んでしまいますが、あらゆる垣根を超えた連携によって、コンテンツを守る取り組みが急ピッチで進んでいます。

次回は9/17に開催予定!

以上で今回の発表は終了。

次回のAdobe Video Meetupは、少し開いて9/17に開催予定。それ以前にも、3DやAdobe Fireflyなど、様々なテーマでのMeetupが開催されるので、ぜひご興味のある分野の情報をチェックしてください!