ブランディングから3Dレンダリングまで、パッケージデザインコンセプトのつくり方
この記事は、パリ出身で、過去 5 年間フリーランスのプロダクトデザイナーとして働いてきた Tony Parez-Edo がお届けします。私は、製品コンセプトやデザインのビジョンに対してグローバルな視点の提供を得意とするため、自身をグローバルデザイナーと定義しています。
Adobe Substance 3D はずっと学びたいと思っていたツールでした。Substance 3D チームから声をかけられて、3D パッケージと製品デザインのコンセプトをつくる機会を得ることができました。私が取り組んだのは、チョコレートバーのコンセプトとブランドアイデンティティです。この取り組みの目的は、Substance 3D ソフトウェアを使用しながら、グローバルなビジョンのあるコンセプトを提供することです。
デザインコンセプト
パッケージに取り組む前に、私は製品について考えます。製品について考える前に、私はストーリーについて考えます。
私が考え出したストーリーは、都市生活と人々のクオリティ・オブ・ライフに関わるものです。都市における生活の質には、仕事の機会、文化活動、教育、安全性などのさまざまな側面が含まれます。しかし、自然の存在も重要です。
自然は生態系の多様性や生物と社会とのつながりに貢献します。そこで、ストーリーの主軸を自然とクオリティ・オブ・ライフに置くことにしました。では、生物の多様性や社会とのつながりに貢献するコンセプトやパッケージは、どのようにしてつくることができるでしょうか?
選択したコンセプトは、都市の公園で採れた地元産の蜂蜜を砂糖とバターの代わりに使用したチョコレートバーです。これは、地元の職人さん達、チョコレート製造者、そして養蜂家をつなぐものです。
パッケージも生態系の多様性に貢献します。その主要なコンセプトは、パッケージの一部にシードペーパーを使うというものです。シードペーパーは、テラスやバルコニー、あるいは道路や公園にも植えることができます。そして、水をやれば、育って花を咲かせます。
これは生態系の多様性に貢献しますし、その蜂蜜は、地元の養蜂家が次につくるチョコレートバーの味わいを豊かにします。
このコンセプトは、世界中の都市公園で再現できるという点でユニークです。すなわち、製品の各バリエーションを、地域ごとの自然や都市環境と実際に結びつけられます。
このことが、製品コンセプトを世界規模に拡大するという挑戦につながりました。私は、それが世界的なブランドであることを明確にする必要がありましたが、写真撮影のために世界中を旅行することはできませんでした。そこでとても役に立ったのが、Substance 3D Stager の背景を生成する機能(ベータ版)でした。
Stager では、シーンを設定して、背景の生成を繰り返すことで、素早く私のビジョンに合ったものをみつけることができました。ここからは、私がパッケージデザインを制作したワークフローを紹介します。
ワークフロー
まず、概要です。私は、Adobe Illustrator を使って、プロジェクト用の最初のイラストを描きました。それから、カラーパレットのインスピレーションを得るために Adobe Capture を使いました。そして Substance 3D Assets からプロジェクトですぐに使えそうなアセットを入手して、Stager を使って製品をレンダリングしました。
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Illustrator と Stager の連携によるブランディング
Illustrator と Stager の連携はとても素晴らしいものです。ロゴを Illustrator で作成すると、Stager に簡単に書き出すことができます。そこで、私はチョコレートバーのモデルとパッケージのモデルを Stager に読み込んで、パッケージのモデルには Substance 3D Assets ライブラリで見つけたシードペーパーのマテリアルを追加しました。素早くロゴを貼り付けて、製品上でどのように見えるかを確認することができました。
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グラフィックデザインを Illustrator から Stager へ
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Adobe Stock のステッカーを Illustrator から Stager へ
それから、パッケージのコンセプトに着手しました。私はカラーパレットをつくるために、パリ、マドリッド、バレンシアを中心に、さまざまな都市のさまざまな公園に行きました。その目的は、公園を歩き回りながら携帯で写真を撮って、それぞれの場所にどんな種類の花が咲いているかを確認することです。その後、Adobe Capture を使って、その土地のカラーパレットのバリエーションを抽出しました。このように、実際に、ストーリーからパッケージデザインが始まっているのです。
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Adobe Capture で作成したカラーパレット
その他には、パッケージの柄にも取り組みました。その柄は、製品の都会的な側面と調和したものにしたいと思いました。そこで、Adobe Photoshop に搭載された、Adobe Firefly のテキストから画像を生成する機能を使ってパターンを作成しました。とても複雑なパターンをつくろうとしていたので、Photoshop の AI 機能は本当に時間を節約するための役に立ちました。
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Photoshop に搭載された Firefly 機能でパターンを作成
ブランディングとパッケージデザインに目途が付いたら、Substance 3D Stager の出番です。3D Assets サイトで、そのまま利用可能なマテリアルを見つけ、また、Illustrator のデザインから独自のマテリアルを作成しました。
Stager の画像から環境を設定する機能も使用しました。背景画像を追加すると、この機能は自動的に、背景画像のパースと照明に製品を一致させて、製品と背景の間に視覚的な一貫性をつくり出します。これは Stager の目玉機能で、私は頻繁に使用します。
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デフォルトの背景が表示された Stager のシーン
ワークフローの最後は、さまざまな製品のレンダリングでした。ここでも、どのようにストーリーを伝え続けるかが課題でした。そこで、製品、パッケージのレンダリングに加えて、異なるユニークなチョコレートバーのフレーバーがあることを示すために、パッケージのバリエーションを使ったパックショットもレンダリングしました。
最後に、機能的なレンダリング、すなわちユースケースのシナリオのレンダリングです。Substance 3D の強力な点は、すぐに使えるたくさんのコンテンツの存在で、そのため複数のシナリオのレンダリングを素早く作成できます。これはとても便利で、これからも Stager を使い続ける理由になりそうです。
Substance 3D の威力
このプロジェクトを通じて、私は制作と反復のスピード感を本当に楽しむことができました。Substance 3D ツールを使うのは初めてでしたが、自分のビジョンを素早く確認して実現することができました。今回のワークフローは、従来の 3D ワークフローよりも速くてより単純なものでしたが、その成果は同じように高品質でした。Substance 3D ツール、Illustrator、生成 AI モデル Firefly を使うことにより与えられる力は、特に 3D デザインに慣れていない人ほど、その威力を感じられるでしょう。
Substance 3D Assets の膨大なコンテンツのおかげで、シーンを素早く作成できる一方、クオリティを非常に高く保てることも、私はとても楽しめました。3D に慣れていなくて、多くの知識が無くても、とても面白いシーンをつくれるはずです。
環境照明は私の得意分野ではありません。どちらかといえば、レンダリングやマテリアルの微調整が守備範囲です。ほとんどのツールでは、自分で照明を作成しなければなりません。しかし、Stager を使えば、照明とカメラアングルの設定がとても簡単になります。Stager の画像から環境を設定する機能は、Firefly で生成した背景画像と照明を調和させるのに完璧なツールでした。さらに、レンダリングプロセスはとても速く、インターフェースはとても直感的です!こうして私は、環境照明について多くの学びを得ることができました。
この記事は How to create a packaging design concept, from branding to 3D render(著者: Pierre Bosset)の抄訳です
- https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/06/17/cc-immersive-substance-3d-meetup-2024-vol1
- https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/05/31/cc-immersive-painter-10th-anniversary-generative-ai-updates-for-substance-3d
- https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/04/10/cc-immercive-adobe-substance-days-tokyo-2024-report