ロゴやアイコンを素早く形にしよう!ここまで進化した Illustrator の生成 AI 機能 #Fireflycamp
生成 AI と言えば、とかくビットマップ画像の生成に注目が集まりがちですが、Firefly のベクターモデルは 2023 年から Illustrator にも搭載されていて、配色のバリエーションが簡単に生成できる「生成再配色」や、プロンプトを入力するだけでベクターイラストが生成される「テキストからベクター生成」の機能が使用できます。
2024 年 7 月 17 日に開催された Firefly Camp では、イラストレーターでキャラクターデザイナーでもある北沢直樹さんをゲストにお迎えし、Illustrator バプリックベータ版に搭載された Firefly ベクターモデルの進化と、実際にロゴやアイコンの制作に活用する際のコツをご紹介いただきました。
このブログではイベントの模様をダイジェストでレポートし、番組内で参加者からご質問いただいた項目への回答をお伝えします。
番組 MC はアドビの Firefly 製品担当轟啓介さんと、アクセンチュアのデザイナー木村優子さんです。実際のイベントの様子や詳細な内容は、ぜひ下記のリンクからアーカイブ動画をご覧ください。
Firefly トピックス
まずはアドビの轟さんが、急速に進化を続ける Firefly の最新情報や活用のヒントを紹介してくれる『Firefly トピックス』のコーナーです。
今回のトピックは動画についてです。
アドビはすでに、Firefly ビデオモデルを開発中であると発表していますが、まだ一般には公開されていません。しかし現時点でも、 Firefly の機能を使って縦動画を 16:9 の横長のアスペクト比にすることができるそうです。いったいどのような方法なのでしょうか?
風景と人物の縦動画です。今回の方法は固定カメラの映像が適しています
まずは、Adobe Express(Premiere Pro でも可)で、16:9 のページをつくって縦長の動画を配置します。動画の適当なフレームを PNG で書き出して Photoshop で開き、左右の足りない部分を「生成塗りつぶし」で伸長します。
動画から書き出した画像を、Photoshopの「生成塗りつぶし」で横長にします
できた画像を、元動画の下に配置するだけで横長動画に!
できた画像を Adobe Express の動画の下のレイヤーに配置すると、もうそれだけで横長の動画のように見えますね!
ただしこの方法は 元動画以外の部分は静止画でしかありません。1 フレームだけ抜き出して「生成塗りつぶし」しているので、よく見ると元動画との境目が不自然になることもあります。轟さんは、Photoshop の動画機能を使うことで、より自然に境界線がなじむ方法についても紹介してくれました。この内容については、ぜひ記事冒頭の動画をご覧ください。
動画のフレームを抜き出すという、轟さんならではの眼からウロコの Firefly 活用法ですが、今後 Firefly ビデオモデルが登場すれば動画編集がより便利になりそうで待ち遠しいところです。
ロゴやアイコンを素早く形にしよう!ここまで進化した Illustrator の生成 AI 機能
さて、ここからは北沢直樹さんの登場です!
北沢さんは、イラストレーター/キャラクターデザイナーで、 Adobe MAX 2023 のキーノートにも登壇した注目のクリエイターさんです。POP でかわいいイラストやキャラクターが魅力ですね。
この日もトレードマークの黄色い帽子で登場!
まずは製品版の Illustrator 28.5 に搭載されている「テキストからベクター生成」と、番組配信時点でベータ公開されていた Illustrator 28.7 23 (Beta) の「生成ベクター」の違いについて説明がありました。Creative Cloud ユーザーであれば、どちらも利用することができます。この両バージョンでは、名称やパネルの表示方法などが少し異なっています。また、Firefly のベクターモデルが異なるため、同じプロンプトでも生成結果が異なります。
左が現行製品版、右がベータ公開されているバージョンです。インターフェースが変わっています
左が現行製品版、右がベータ公開されているバージョン。同じプロンプトでも生成結果が異なります
同じプロンプトで設定を変えて試した結果。それぞれ上が現行版、下がベータ版です
比較してみると、ベータ版の「生成ベクター」が、大きく進化していることがわかります。不自然な形や色使いが減って実用的な形になり、表現も精細でバリエーションの幅も大きく広がっています。
そして北沢さんと言えば、Firefly を使って生成したかわいいモンスターのキャラクター『ジェネモン』が有名ですね。Adobe MAX Japan 2023 でも『ジェネモン』のカプセルトイが大人気でした。
これまでの『ジェネモン』は、現行の製品版で生成されていました。こちらもベータ版の「生成ベクター」を使用することで、より幅広い表現でかわいいキャラクターをつくることができるようになったそうです。
『ジェネモン』のつくり方はアドビの公式 Instagramで公開されています
ベータ版の「生成ベクター」を使うことで、ゆるキャラのバリエーションも豊富に!
ベクター画像のいいところは、なんと言っても後加工がしやすいことです。形を整えたり、背景を追加・削除するといったイメージに合わせた編集が簡単にできます。ベクター画像がイラストやキャラクターとして使いやすい理由はここにあります。
生成されたパスの精度が高いのもポイント
北沢さんは上の図のようにスタイルや強度を変えて数多くの生成テストを行い、その中から気に入った設定を見つけてキャラクターやイラストを利用しているそうです。
同じ「生成ベクター」で、ロゴマークをつくる方法も見せてくれました。こちらもベクター画像ならではの扱いやすさはそのままに、より精度の高い生成ができるようになっています。生成されたロゴは「生成再配色」や「Retype (Bata)」の機能を使って簡単に編集することで、デザインのアイディア出しやクライアントとの方向性の確認などをよりスピーディに行うことが可能になります。
プロンプトに「ロゴ」と入れることで、ロゴマークやテキストまで生成してくれます
テキスト部分はアウトラインですが、Retype (Beta)の機能を使えば似たフォントに置き換えることもできます
ここにご紹介した以外にも、今回のセッションでは北沢さんが探求されてきたプロンプトに入れる文言のコツや、「スタイル」の設定内容についても詳しく解説されています。轟さんのリクエストに応えた即興のベクター生成も見応えがありました。興味のある方はぜひページ上のリンクからフル動画で視聴してください。
最後に北沢さんは、「ベクター生成は、イラストレーターやデザイナー以外の方がちょっとしたイラストカットが欲しいといった用途や、イラストレーターに発注する際のイメージのすり合わせなど、円滑に仕事を進めるために使うとよいと思います」と締め括りました。
北沢さんが SNS で今回ご紹介いただいた『生成ベクターチャート』を公開してくださっているので、こちらもぜひご活用ください。
Firefly デザインチャレンジ
続いて MC の木村優子さんが、5 分で Firefly を使ってチャレンジをする『Firefly デザインチャレンジ』コーナーです。
今回は Illustrator の生成機能でつくったロゴマークを、プロダクトに落とし込んでモックアップにするチャレンジです。北沢さんは新しいベクターモデルである、Illustrator 28.7 23 (Beta)の機能を紹介してくれましたが、木村さんは現行製品版の Illustrator に搭載されている「テキストからベクター生成」を使用しています。
Firefly Camp のイメージに合ったロゴマークをつくりたいので、「参照アセット」に本イベントのロゴを指定します。すると、色や線のイメージが共通したマークのバリエーションが生成されます。
シンプルで上品なイメージの木のロゴが生成されました
ロゴを入れるためのアイテム(テントやマグカップ、ランタン)の画像も、それぞれ Firefly の「テキストから画像生成」で作成したものです。
アイテムの画像にベクターのロゴを配置すれば、もうモックアップの完成です。簡単に配置して色や形を変えられるのも、ベクターならではの利点ですね。
左下がそれぞれの画像の生成プロンプトです
最後に
Illustrator は 30 年以上使われてきた、プロフェッショナル向けのアプリケーションです。昨年 Firefly の生成機能が組み合わされたことで、初心者でも簡単にベクターのイラストやロゴをつくることが可能になりました。これは Illustrator 史上最大の変化・進化と言ってよいかもしれません。
MC のお 2 人も改めて、色の変更や拡大・縮小が自由にできる Illustrator のベクターデータの魅力を実感したようで、口々に「ベクター最高!」と締め括りました。
次回の『Adobe Firefly Camp』は、8 月 21 日(水)の 20:00〜の開催予定です。
ゲストには、エバンジェリストのパパさんが大分から Camp に来てくださるそうです。SNS や書籍などで大活躍のパパさんのセッションをどうぞお楽しみに!
番組参加者からの質問への回答
Q: ウインドウメニューの「テキストからベクター生成」がみつからないのですが、なぜでしょうか?
A: 「テキストからベクターデータ生成」を利用できるのは Illustrator のバージョン 2024 Ver.28.0 からになります。
Q: Illustrator ベータ版のインストールはどこからできるのでしょうか?
A: CC アプリの「ベータ版アプリ」からインストールしてください。
Q: 自分で描いたイラストをスタイルとして、他のイラストを展開することはできますか?
A: はい!「生成ベクター」の詳細ダイアログボックスの「スタイル参照」に、ご自身で描いたイラストをアセットとして選択してください。