Adobe Firefly徹底攻略!Photoshopの新機能で生成結果をイメージに近づけよう
Adobe Firefly を実務に活かしてみたい!と思っても、実際に試すとうまく行かない……。そんな経験をされた方は多いのではないでしょうか?
Adobe Firefly に興味のあるすべての方にお届けする、アドビの公式情報番組『Adobe Firefly Camp』では、今回アートディレクターのコネクリさんをゲストに迎え、新しい Photoshop のベータ版に搭載された機能を使って、よりイメージに近い生成結果を得るための使い方を伺いました。ここではその模様をダイジェストでレポートします。
番組 MC はアドビの Firefly 製品担当轟啓介さんと、アクセンチュアのデザイナー木村優子さんです。
イベントの詳細や、実際の作品のつくり方については、ぜひこちらのアーカイブ動画をご覧ください。
Firefly トピックス
まずは『Firefly トピックス』。このコーナーでは、アドビの轟さんが急速に進化を続ける Firefly の最新情報や活用のヒントを紹介してくれます。今回は 2 つのトピックがありました。
1 つ目は、5 月 21 日にリリースされた、Adobe Lightroom の「生成 AI 削除(早期アクセス)」機能です。Firefly を用いた不要なオブジェクトの削除は Photoshop ではすでにおなじみですが、Lightroom にも同様の機能が搭載されたことで、Photoshop で開き直す必要がなくなりました。
この機能は、Lightroom のモバイル、Web、デスクトップの各プラットフォームで提供が開始されています。
轟さんが自転車で奥多摩に行ったときの写真。景色は綺麗ですが、手前のガードケーブルの白い支柱が邪魔です
[生成 AI]にチェックをつけてドラッグします
違和感なく消し去ることができました
2 つ目のトピックは、Adobe Express に Firefly の Image 3 モデルが搭載されたことです。この進化によって、より品質の高い画像がスピーディに生成できるようになりました。また「スタイル参照」の機能によってタッチや色のイメージを指定したり、「構成参照」によって構図やモデルのポーズなどを指定することも可能になっています。豊富なテンプレートに生成した画像を取り込み、すぐにデザインに活かせるのも Express らしい生成 AI の使い方と言えるでしょう。
Express の画面です。写真と見分けがつかないほどのクオリティで画像生成できるようになりました
スタイル参照や、構成参照の機能も使えます
テンプレートに入れれば素早くデザインが完成
Photoshop の新機能で生成結果をイメージに近づけよう
さて、ここからいよいよコネクリさんの登場です!
コネクリさんの正式な姿はナマケモノなのですが、今回は諸事情により人の姿で登壇
2024 年 4 月に公開された Photoshop(Beta)デスクトップ版には、高品質で魅力的なコンテンツを効率よく生成できる、生成 AI の新しい機能や強化された機能が搭載されています。コネクリさんには、もうすぐ正式に利用できるようになるこれらの機能の中から、画像の「参照機能」を活用することでどんなことが可能になるのか、作例と共に紹介していただきました。
今回のセッションで紹介してもらう「参照機能」について
これまで Photoshop で「生成塗りつぶし」の機能を使う際は、描いて欲しい内容をすべてプロンプトとして言語化する必要がありました。簡単なものであればよいのですが、下の例のように人物の服を置き換えたい場合はどのようにプロンプトを書けばいいのでしょうか……?難しいですね。
「参照機能」は、このようなケースのときにとても便利な機能なのだそうです。
プロンプトで指定しにくいイメージを描く際に便利なのが「参照機能」です
では実際のやり方を見せてもらいましょう。まず画像の置き換えたい部分に選択範囲をつくります。
コネクリさんはここで[オブジェクト選択ツール]の[長方形ツール]を使って、服の部分をドラッグし素早く選択範囲を作成されました。その際、選択範囲をひとまわり拡張しておくのが大事なポイントです。次に行う「生成塗りつぶし」は背景となじませる領域が発生するため、このまま適用すると体型が若干縮小してしまうからです。
洋服部分を選択し、選択範囲を拡張しておきます
選択範囲ができたら、コンテキストタスクバーが表示されます。通常はここでテキストプロンプトを入力しますが、今回は何も入力せずに[参照画像]をクリックして、参照元となる画像(今回の場合は水色のレースのドレスを着たモデルの写真)を選択します。
プロンプトは入れずに[参照画像]を選びます
参照元の写真はこれです
すると、このように 3 つの生成候補ができてきました。微妙にレースの柄や形が異なっていますが、いずれもきれいに参照元の画像に近いドレスに置き換えられています。
生成された3つの画像
注意点は、生成したい場所と近い要素の画像(今回は同じ服)を選ぶことです。まったく異質な内容のものを参照画像にすると、結果が突拍子もないものになってしまうことも……。例えば上の例と同様の手順で参照画像を「みかん」にすると、服がみかんに置き換えられてしまいます。
全く違う内容の参照画像を選ぶと、結果がとんでもないことに!
続いて、「スタイル参照」の機能を使った水彩風のイラストの生成方法です。「スタイル参照」とは、指定した画像の色やタッチを参照して画像を生成する機能です。しかし、著作権を有していないイラストなどを参照画像として使用することはできません。コネクリさんは、参照元の画像も Firefly の画像生成で制作することで、この問題を解決する方法を提案してくれました。
まず最初に参照元になる画像を、プロンプト「シンプルで黄色い一輪のバラの花、青い葉、白い背景」と入力し、[効果]から[水彩画]を選んで生成します。モチーフはなんでも構いませんが、ここで自分のイメージする色やタッチになるようプロンプトや[効果]の内容で調整します。できたらこの画像を[書き出し]→[PNG としてクイック書き出し]しておきます。
[画像を生成]ダイアログ
水彩画風のイラストが生成されました
続いてこの画像を参照画像にして、プロンプト「ユニコーンの顔、夜空の背景」で画像を生成します。すると参照元と同じ水彩画の色とタッチの、ユニコーンの画像が生成されました。このように参照元の画像を自分で作っておけば、プロンプトだけを変えてさまざまなモチーフに展開させることが可能です。
プロンプトには具体的な情報を入力し、色やタッチは[参照画像]で指定します
生成された3つのイラスト
「スタイル参照」の機能を使って、もっとシンプルなイラストを描くこともできます。ここでの参照画像は、貂明朝というフォントに含まれる、黒い太めの線と鮮やかな黄色の組み合わせがかわいい印象のカラー絵文字です。同じ参照画像を使用することで、統一感のあるイラストのバリエーションを豊富につくり出すことができました。
貂明朝のカラー絵文字を画像にして参照画像として設定します
男性のシェフ
女性の会社員
そのほかにも、コネクリさんからは「スタイル参照」の活用例を多数ご紹介いただきました。参照画像を用いた画像生成は、プロンプトのみの場合よりも具体的な指示となり、より実用的な画像生成が可能になります。
また、参照する画像は写真やイラストだけでなく、落書きのような線やシルエットなど、さまざまなものが活用できるとのこと。特に ❸ のフォントの擬人化のアイディアは、轟さんも思わず「使わせてもらっていいですか?」とコネクリさんに聞いてしまうほどユニークで楽しいものでした。
ラフなものから細かい手技まで幅広く再現されています
同じ参照画像を使用して、デザインに応用した例
フォントを参照画像にすることで、その特徴を擬人化することができるという面白い例!
そんなコネクリさんが今年の 3 月に発売した著書が、『デザインの仕事がもっとはかどる Adobe Firefly 活用テクニック 50』です。Photoshop はもちろん、Illustrator、Web アプリでの Firefly の便利な使い方や、実用的な活用方法のヒントが満載!ぜひ書店でご確認ください。
コネクリさんの著書は現在絶賛発売中です!
Firefly デザインチャレンジ
さて、続いて MC の木村優子さんが、5 分で Firefly の機能を使ったチャレンジをする『Firefly デザインチャレンジ』コーナーです。
今回は Firefly の Web アプリから、轟さんの写真を参照画像にしてアメコミ風のイラストをつくってみます。コネクリさんのセッションでは、タッチや色を参照する「スタイル参照」を使用していましたが、木村さんのチャレンジでは構図やポーズを参照する「構成参照」を試しています。
「びっくりして怒っているイラスト、すべてコミックブックスタイル、背景無地の黒」で画像生成したもの
さらに左の轟さんの画像を[構成参照]の画像として生成。ポーズは一緒ですが、顔も似ていますか?
できたイラストをコミックの一コマに使用した例も見せてくれました。写真の中に一部だけイラストを入れる手法は、広告などでもときどき見かけますが、木村さんのチャレンジのように写真を[構成参照]の画像として使用することで、誰でも簡単に試すことができそうです。
熱くFireflyを語る轟さんがうまく表現されていて、思わず笑ってしまいます
最後に
Firefly の「参照機能」は、画像によってプロンプトを補完し、生成結果をコントロールできる非常に強力な機能です。コネクリさんが今回紹介された「生成塗りつぶし」における参照画像は、生成結果を参照画像の内容に近づける機能。また「スタイル参照」は、生成画像の色やタッチを参照画像に揃える便利な機能でした。また、木村さんがチャレンジした「構成参照」は、生成画像のポーズや構図を参照画像に近づけるもの。同じ「参照機能」でも、それぞれに使いどころが異なることもわかりました。
著作権に留意しつつ、ぜひ実務でも活用を楽しみたいですね。
次回の『Adobe Firefly Camp』は、6 月 19 日(水)の 20:00〜の開催予定です。
番組参加者からの質問への回答
以下は番組に寄せられた質問への回答です。デモ内容に関する質問はコネクリさんに、製品関連の質問は轟さんにご回答いただいています。
Q: シンプルなイラストの生成で参照画像のオブジェクトの大きさが重要とのことですが、小さいとどうなりますか?
A: 小さいとゆるいテイストのイラストが生成されます。これはこれで好きですが、配信中のデモでお見せしたテイストで生成したい場合は、ある程度カンバスに対して大きめのオブジェクトで参照画像を作成してください。
Q: 以前だと 3 分クッキング風が多かったと思いますが、Firefly の生成が Live で安心して出来ていることに衝撃を受けます。
A: 今回、「参照機能」がテーマというのも大きいです。プロンプトで生成結果の揺れを減らすにはワードを重ねる必要がありますが、参照画像を使うと短いプロンプトでもイメージに近い生成結果を出すことが可能です。これがまさに今回の配信のテーマなのでぜひ参照機能をご活用してみてください。
Q: フォントの擬人化はどのようなフォントがおすすめですか?
A: 配信でお見せするのにピックアップしたのは手書きフォントとデザインフォントと呼ばれる字形に特徴のあるフォントです。
また、筆文字だとどうなるか?という質問をいただき試してみたところ水墨画風のイメージが生成されて驚きました。シンプルなセリフ体でもその書体の雰囲気のある生成ができるので、まずはお好きなフォントでお試しいただき、結果をぜひ教えて下さい!
Q: Adobe Stock の画像を Firefly のスタイル参照や構成参照に利用することは OK ですか?
A: はい、Adobe Stockで購入した画像を Firefly に参照させることは問題ありません。
Q: プロンプトの欄に複数のキーワードを入れる時、キーワードとキーワードの間は「、」でも「 (空白)」でもどちらでも良いですか?
A: はい、どちらでも大丈夫です。
Q: Firefly の生成時間を短くするためにPCの性能はどれを盛ればいいでしょう?(CPU、GPU、メモリなど)
A: Firefly の利用時に PC 上で生成処理はしておりませんので、CPU や GPU などよりもネットワーク環境の方が大事になります。
- https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/05/17/cc-firefly-camp-vol2-generative-fill-and-type-decoration
- https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/04/09/cc-firefly-camp-vol1-generative-ai-and-copyright
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